今村 夏子(いまむら なつこ、1980年2月20日[2] - )は、日本の小説家。広島県広島市安佐南区生まれ[3]。大阪市在住[4]。
経歴
広島県内の高校を経て大阪市内の大学を卒業[5]。その後は清掃のアルバイトなどを転転とした[5]。29歳の時、職場で「あした休んでください」といわれ、帰宅途中に突然、小説を書こうと思いつく[5]。そうして書き上げた「あたらしい娘」が2010年、第26回太宰治賞を受賞した[5][6]。同作を改題した「こちらあみ子」と新作中篇「ピクニック」を収めた『こちらあみ子』(筑摩書房)で、2011年に第24回三島由紀夫賞受賞[7][8]。広島の実家近くで2014年に起きた広島土砂災害では、泥水が実家の周囲に押し寄せ、祖母の墓が流された[5]。「こちらあみ子」には、子どもの頃の郷里の思い出も散りばめ、広島弁もさりげなく登場する[5]。2014年刊の『こちらあみ子』ちくま文庫版に新作「チズさん」が併録されたが、それ以外に作品の発表はなく、半引退状態となっていた[9]。
2016年、西崎憲に声をかけられ、西崎が編集長をつとめる新創刊文芸誌『たべるのがおそい』(書肆侃侃房)で2年ぶりとなる新作「あひる」を発表し、第155回芥川龍之介賞候補に挙がった[10]。同作を収録した短篇集『あひる』で、第5回河合隼雄物語賞受賞[11]。2017年、『星の子』で第157回芥川賞候補[3]、第39回野間文芸新人賞受賞[12]。2019年、『むらさきのスカートの女』で第161回芥川賞を受賞[13]。笙野頼子、鹿島田真希、本谷有希子、村田沙耶香に続いて5人目の純文学新人賞三冠[注 1]作家となる。2019年度咲くやこの花賞受賞[14]。
2013年に結婚し、大阪市内で夫と娘と3人暮らし[10]。庄野潤三の長女(1947年生れ)は同姓同名の別人。岡山市出身の小川洋子を「神様みたいな人」と敬愛し、「ずっとあんなふうに書いていけたらすてき」と話している[5]。
2020年2月、広島市民賞を受賞[15]。
2022年、「こちらあみ子」が実写映画化[16][17]。『とんこつQ&A』で第39回織田作之助賞候補。
作品リスト
単行本
- 『こちらあみ子』(2011年1月 筑摩書房 / 2014年6月 ちくま文庫 解説:町田康、穂村弘)
- 「こちらあみ子」 - 『太宰治賞2010』掲載時「あたらしい娘」から改題
- 「ピクニック」 - 書き下ろし
- 「チズさん」(文庫版のみ) - 書き下ろし
- 『あひる』(2016年11月 書肆侃侃房 / 2019年1月 角川文庫 解説:西崎憲)
- 「あひる」 - 文学ムック『たべるのがおそい』vol.1
- 「おばあちゃんの家」 - 書き下ろし
- 「森の兄妹」 - 書き下ろし
- 『星の子』(2017年6月 朝日新聞出版 / 2019年12月 朝日文庫)※ 2020年に芦田愛菜主演で映画化[18]。
- 「星の子」 - 『小説トリッパー』2017年春号
- 「対談 書くことがない、けれど書く 小川洋子×今村夏子」(文庫版のみ) - 『群像』2018年2月号
- 『父と私の桜尾通り商店街』(2019年2月 角川書店 / 2022年1月 角川文庫 解説:瀧井朝世)
- 「白いセーター」 - 文学ムック『たべるのがおそい』vol.3
- 「ルルちゃん」 - 『文芸カドカワ』2017年12月号
- 「ひょうたんの精」 - 『文芸カドカワ』2017年10月号
- 「せとのママの誕生日」 - 『早稲田文学』増刊女性号
- 「冬の夜」(文庫版のみ) - 『文芸カドカワ』2017年8月号
- 「モグラハウスの扉」 - 書き下ろし
- 「父と私の桜尾通り商店街」 - 『文芸カドカワ』2016年9月号
- 『むらさきのスカートの女』(2019年6月 朝日新聞出版 / 2022年6月 朝日文庫 解説:ルーシー・ノース[19])
- 「むらさきのスカートの女」 - 『小説トリッパー』2019年春号
- 芥川賞受賞記念エッセイ(文庫版のみ)
- 「むらさきのスカートの女と、私」 - 『文學界』2019年9月号
- 「今日までのこと」 - 『文藝春秋』2019年9月号
- 「何とも思わなくなる日」 - 『共同通信』2019年7月22日配信
- 「人と接しない仕事」 - 『朝日新聞』2019年7月25日
- 「ぐるりと回るレストラン」 - 『毎日新聞』2019年8月1日夕刊
- 「芥川賞に決まって」 - 2019年8月20日付『西日本新聞』ほか
- 「懐かしの本屋さん訪ねたい」 - 『中国新聞』2019年7月30日
- 「背中を押してくれた小説」[20] - 『産経新聞』2019年9月8日
- 「受賞のことば」
- 『木になった亜沙』(2020年4月 文藝春秋 / 2023年4月 文春文庫 解説:村田沙耶香)
- 「木になった亜沙」 - 『文學界』2017年10月号
- 「的になった七未」 - 『文學界』2020年1月号
- 「ある夜の思い出」 - 文学ムック『たべるのがおそい』vol.5
- ボーナスエッセイ(文庫版のみ)
- 「バイキング」 - 『文學界』2016年9月号
- 「日記とエッセイ」 - 『文學界』2021年2月号
- 「日記」 - 『新潮』2021年3月号
- 『とんこつQ&A』(2022年7月 講談社)
- 「とんこつQ&A」 - 『群像』2020年7月号
- 「嘘の道」 - 『群像』2020年10月号
- 「良夫婦」 - 『群像』2021年7月号
- 「冷たい大根の煮物」 - 『群像』2021年12月号
アンソロジー収録
- 「あひる」 - 『文学2017』(2017年4月 講談社)
- 「父と私の桜尾通り商店街」 - 『短篇ベストコレクション 現代の小説 2017』(2017年6月 徳間文庫)
- 『パンデミック日記』(2021年6月 新潮社)
- 初出:『新潮』2021年3月号「創る人52人の「2020コロナ禍」日記リレー」
単行本未収録
- 小説
- 「ティラミス」 - 『ちくま』2022年6月号
- 「三影電機工業株式会社社員寮しらかば」 - 『群像』2024年5月号
- 「貯金箱」 - 『新潮』2024年5月号
- 「トラの顔」 - 『文藝』2024年秋季号
- 「七月三十一日晴れ」『新潮』2024年10月号
- エッセイ
- 「思い出ステーション」 - 『小説すばる』2011年3月号
- 「サクランボの家」 - 『群像』2022年9月号
脚注
注釈
出典
関連項目
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筑摩書房単独主催(第1回 - 第14回) |
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第1回 - 第10回 | |
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第11回 - 第14回 | |
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三鷹市・筑摩書房共催(第15回 - ) |
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第15回 - 第25回 | |
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第26回 - 第35回 | |
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第36回 - 第45回 | |
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- 第3回 久間十義 『世紀末鯨鯢記』
- 第4回 佐伯一麦 『ア・ルース・ボーイ』
- 第5回 該当作品なし
- 第6回 車谷長吉 『塩壺の匙』 / 福田和也 『日本の家郷』
- 第7回 笙野頼子 『二百回忌』
- 第8回 山本昌代 『緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道』
- 第9回 松浦寿輝 『折口信夫論』
- 第10回 樋口覚 『三絃の誘惑 近代日本精神史覚え書』
- 第11回 小林恭二 『カブキの日』
- 第12回 鈴木清剛 『ロックンロールミシン』 / 堀江敏幸 『おぱらばん』
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野間文芸新人賞 |
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- 第42回 李龍徳『あなたが私を竹槍で突き殺す前に』
- 第43回 井戸川射子『ここはとても速い川』
- 第44回 町屋良平『ほんのこども』
- 第45回 朝比奈秋『あなたの燃える左手で』、九段理江「しをかくうま」
- 第46回 豊永浩平『月ぬ走いや、馬ぬ走い』
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1930年代 - 1950年代(第1回 - 第42回) |
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1960年代 - 1970年代(第43回 - 第82回) |
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1980年代 - 1990年代(第83回 - 第122回) |
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1980年代 |
- 第83回 該当作品なし
- 第84回 尾辻克彦「父が消えた」
- 第85回 吉行理恵「小さな貴婦人」
- 第86回 該当作品なし
- 第87回 該当作品なし
- 第88回 加藤幸子 「夢の壁」/ 唐十郎「佐川君からの手紙」
- 第89回 該当作品なし
- 第90回 笠原淳「杢二の世界」、高樹のぶ子「光抱く友よ」
- 第91回 該当作品なし
- 第92回 木崎さと子「青桐」
- 第93回 該当作品なし
- 第94回 米谷ふみ子「過越しの祭」
- 第95回 該当作品なし
- 第96回 該当作品なし
- 第97回 村田喜代子「鍋の中」
- 第98回 池澤夏樹「スティル・ライフ」/ 三浦清宏「長男の出家」
- 第99回 新井満 「尋ね人の時間」
- 第100回 南木佳士「ダイヤモンドダスト」/ 李良枝「由煕」
- 第101回 該当作品なし
- 第102回 大岡玲「表層生活」/瀧澤美恵子「ネコババのいる町で」
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2000年代 - 2010年代(第123回 - 第162回) |
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2020年代 - 2030年代(第163回 - ) |
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