美唄市(びばいし)は、北海道中部(道央地方)に位置し、空知総合振興局に属する市。
概要
地名の由来
アイヌ語に由来する[1]。
経緯は諸説あるが、いずれもカラス貝にちなみ、「ピパイ(pipa-i)」〔カラス貝・川〕、「ピパオマナイ(pipa-oma-nay)」〔カラス貝・ある・川〕、あるいは「ピパオイ(pipa-o-i)」〔カラス貝・多い・所〕のいずれかから転訛したとされる[1]。
前身の自治体名である「沼貝」はこのアイヌ語を意訳したとされるもので、美唄駅開設後の1882年(明治25年)に駅周辺が字ピパイと付けられ、1900年(明治33年)に漢字の「美唄」となった。つまり「美唄」は行政より駅名が先行して付けられた[2]。
地理
- 空知地方の中央部に位置し、市内を南北に国道12号と函館本線が並行して縦貫している。地形相は国道12号を境に東西に分かれ、石狩川東岸沿いに発達した石狩平野である西部には、石狩川の河跡湖群である湖沼が点在するほか、泥炭と呼ばれる寒冷地特有の湿地帯が多い。東部は夕張山地につづく丘陵・山岳地であり、かつては石狩炭田の一部で豊富な石炭を産出し、道内有数の採炭地であった。また、光珠内地区の山岳部ではアンモナイトの化石が多数発掘されている。
- 主な市街地は国道12号沿線に発展しているほか、炭鉱により発達した旧市街地が点在している。
- 市内を縦貫する国道12号は、日本の道路で最も長い直線区間である。
- 石狩川河跡湖群の一つである宮島沼はマガンの飛来地として知られ、ラムサール条約登録湿地となっている。
気候
ケッペンの気候区分によると、美唄市は湿潤大陸性気候または亜寒帯湿潤気候に属する。寒暖の差が大きく気温の年較差、日較差が大きい顕著な大陸性気候である。降雪量が多く、周辺の自治体と同様に特別豪雪地帯に指定されている。
過去最高気温は2021年7月31日、及び同年8月6日の35.6℃で、2021年にはこれまで一度も無かった猛暑日が3日観測された。過去最低気温は2023年1月30日に観測された-29.6℃であり、-30℃に迫る低温となった。過去最深積雪は2018年2月26日と2012年2月27日の167cmである。
美唄(1991年 - 2020年)の気候
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月 |
1月 |
2月 |
3月 |
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
11月 |
12月 |
年
|
最高気温記録 °C (°F)
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8.5 (47.3)
|
11.7 (53.1)
|
13.6 (56.5)
|
25.6 (78.1)
|
32.6 (90.7)
|
33.2 (91.8)
|
35.6 (96.1)
|
35.6 (96.1)
|
32.4 (90.3)
|
27.0 (80.6)
|
20.0 (68)
|
13.9 (57)
|
35.6 (96.1)
|
平均最高気温 °C (°F)
|
−2.6 (27.3)
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−1.4 (29.5)
|
2.9 (37.2)
|
10.8 (51.4)
|
17.9 (64.2)
|
22.0 (71.6)
|
25.6 (78.1)
|
26.3 (79.3)
|
22.6 (72.7)
|
15.6 (60.1)
|
7.2 (45)
|
−0.3 (31.5)
|
12.2 (54)
|
日平均気温 °C (°F)
|
−6.6 (20.1)
|
−5.9 (21.4)
|
−1.5 (29.3)
|
5.4 (41.7)
|
12.1 (53.8)
|
16.5 (61.7)
|
20.4 (68.7)
|
21.2 (70.2)
|
16.9 (62.4)
|
10.1 (50.2)
|
3.1 (37.6)
|
−3.8 (25.2)
|
7.3 (45.1)
|
平均最低気温 °C (°F)
|
−12.4 (9.7)
|
−12.1 (10.2)
|
−6.9 (19.6)
|
0.1 (32.2)
|
6.8 (44.2)
|
12.2 (54)
|
16.6 (61.9)
|
17.1 (62.8)
|
11.8 (53.2)
|
5.0 (41)
|
−1.1 (30)
|
−8.5 (16.7)
|
2.4 (36.3)
|
最低気温記録 °C (°F)
|
−29.6 (−21.3)
|
−26.2 (−15.2)
|
−22.4 (−8.3)
|
−12.4 (9.7)
|
−2.4 (27.7)
|
3.4 (38.1)
|
8.0 (46.4)
|
8.6 (47.5)
|
2.1 (35.8)
|
−4.3 (24.3)
|
−14.5 (5.9)
|
−26.5 (−15.7)
|
−29.6 (−21.3)
|
降水量 mm (inch)
|
77.6 (3.055)
|
63.5 (2.5)
|
54.6 (2.15)
|
53.8 (2.118)
|
80.8 (3.181)
|
69.1 (2.72)
|
122.0 (4.803)
|
164.9 (6.492)
|
144.2 (5.677)
|
120.6 (4.748)
|
117.6 (4.63)
|
104.9 (4.13)
|
1,173.5 (46.201)
|
降雪量 cm (inch)
|
203 (79.9)
|
156 (61.4)
|
107 (42.1)
|
13 (5.1)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
0 (0)
|
1 (0.4)
|
77 (30.3)
|
216 (85)
|
766 (301.6)
|
平均降水日数 (≥1.0 mm)
|
19.5
|
16.3
|
13.7
|
10.7
|
10.3
|
8.6
|
10.0
|
10.5
|
11.9
|
15.1
|
19.2
|
21.9
|
167.7
|
平均月間日照時間
|
63.3
|
78.4
|
131.0
|
167.5
|
193.6
|
171.8
|
156.2
|
157.8
|
158.2
|
130.6
|
68.5
|
42.6
|
1,519.5
|
出典1:Japan Meteorological Agency
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出典2:気象庁[3]
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隣接する自治体
- 空知総合振興局
地域
住宅団地
- 市営住宅
- 共練団地
- 有明団地
- 有為団地
- 東光団地
- 東雲団地
- 東明恵愛団地
- 東明中央団地
- 東明中央第2団地
- いなほ団地
- 進徳団地
- 進徳東団地
- 南美唄団地
- 日東団地
- 峰延東陽光団地
- 美の里団地
- 道営住宅
人口
- 1935年(昭和10年):約37,100人
- 1940年(昭和15年):約54,100人
- 1945年(昭和20年):約63,700人
- 1950年(昭和25年):約87,100人(市制施行)
- 1954年(昭和29年):約91,400人(ピーク時)
- 1955年(昭和30年):約88,700人
- 1960年(昭和35年):約88,800人
- 1965年(昭和40年):約63,100人
- 1970年(昭和45年):約49,600人(1972年三菱美唄炭鉱閉山。美唄鉄道廃止。)
- 1975年(昭和50年):約38,400人(1973年三美炭鉱閉山。北菱我路炭鉱閉山。)
- 1980年(昭和55年):約38,400人
- 1985年(昭和60年):約36,800人
- 1990年(平成02年):約35,100人
- 1995年(平成07年):約33,400人
- 2000年(平成12年):約31,400人
- 2005年(平成17年):29,235人
- 2010年(平成22年):26,359人
- 2015年(平成27年):23,783人
- 2020年(令和02年):20,839人
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美唄市と全国の年齢別人口分布(2005年)
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美唄市の年齢・男女別人口分布(2005年)
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■紫色 ― 美唄市 ■緑色 ― 日本全国
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■青色 ― 男性 ■赤色 ― 女性
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美唄市(に相当する地域)の人口の推移
1970年(昭和45年)
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47,369人
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1975年(昭和50年)
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38,416人
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1980年(昭和55年)
|
38,552人
|
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1985年(昭和60年)
|
37,414人
|
|
1990年(平成2年)
|
35,176人
|
|
1995年(平成7年)
|
33,434人
|
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2000年(平成12年)
|
31,183人
|
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2005年(平成17年)
|
29,083人
|
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2010年(平成22年)
|
26,032人
|
|
2015年(平成27年)
|
23,035人
|
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2020年(令和2年)
|
20,413人
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総務省統計局 国勢調査より
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消滅集落
2015年国勢調査によれば、以下の集落は調査時点で人口0人の消滅集落となっている[4]。
歴史
沿革
石狩炭田の一角である美唄炭鉱は、かつては三菱鉱業・三井鉱山の大規模炭鉱のほか、中小の炭鉱も多数拡がり、道内有数の石炭の町として栄えた。最盛期である1950年代の人口は9万人以上を数えたが、現在はその大半が閉山し、北菱産業埠頭株式会社が盤の沢地区で露天掘りを電力会社向けに行っているのみである。
行政区域・町名の変遷
- 1906年(明治39年)4月1日 - 北海道一・二級町村制施行により、二級町村として空知郡沼貝村(ぬまかいむら)が成立。
- 1909年(明治42年)4月1日 - 一級町村に移行。
- 1925年(大正14年)6月11日 - 町制施行により沼貝町となる。
- 1926年(大正15年)6月11日 - 美唄町に改称。
- 1946年(昭和21年)9月1日 - 茶志内地区の一部を奈井江村に編入。
- 1950年(昭和25年)4月1日 - 市制施行により美唄市となる(北海道で15番目の市制施行)。
- 1951年(昭和26年)1月1日 - 3地区を以下の町名に再編[11]。
- 美唄地区 → 進徳、一心、共練、沼の内、癸巳、盤の沢町、落合町、東明町、有為(うい)、我路町、東美唄町、南美唄町、西1条~西2条南北、東1条~東5条南北、東6条南、東7条南
- 光珠内地区 → 峰延町、光珠内町、西美唄
- 茶志内地区 → 茶志内町、中村町、開発、上美唄、西美唄元村
- 1968年(昭和43年)- 8町を廃止し、以下の町名に再編。
- 進徳、一心、共練、沼の内、癸巳、西美唄、開発、上美唄 → 東6条北、東7条北、西3条~西4条南北、進徳町、一心町、共練町、沼の内町、癸巳町、西美唄町、開発町、上美唄町、北美唄町、日東町、豊葦町
政治
行政
歴代市長
特記なき場合『日本の歴代市長 : 市制施行百年の歩み』などによる。
代 |
氏名 |
就任 |
退任 |
備考
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1 |
桜井省吾 |
1950年(昭和25年)4月1日 |
1956年(昭和31年)8月31日 |
旧美唄町長、辞職
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2 |
菅秀基 |
1956年(昭和31年)10月7日 |
1964年(昭和39年)9月30日 |
辞職
|
3 |
沢田孝夫 |
1964年(昭和39年)10月1日 |
1980年(昭和55年)9月30日 |
|
4 |
滝正 |
1980年(昭和55年)10月1日 |
1996年(平成8年)9月30日 |
|
5 |
井坂紘一郎 |
1996年(平成8年)10月1日 |
2004年(平成16年)9月30日 |
|
6 |
桜井道夫 |
2004年(平成16年)10月1日 |
2011年(平成23年)6月6日 |
辞職
|
7 |
高橋幹夫 |
2011年(平成23年)7月3日 |
2019年(令和元年)7月2日 |
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8 |
板東知文 |
2019年(令和元年)7月3日 |
2023年(令和5年)7月2日 |
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9 |
桜井恒 |
2023年(令和5年)7月3日 |
現職 |
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議会
市議会
国家機関
防衛省
- 自衛隊
施設
警察
消防
医療
旧・美唄労災病院(現・北海道せき損センター)が早期より炭鉱事故による脊髄損傷者など中途障害者のリハビリテーションに力を入れていたことから、他都市と比べて福祉施策が行き届いている。駅や道路等の公共施設、商業施設等ではバリアフリー・ユニバーサルデザインが積極的に取り入れられている。
郵便局
- 美唄郵便局(集配局)
- 美唄東一条北郵便局
- 東明郵便局
- 南美唄郵便局
- 大富郵便局
- 峰延郵便局
- 茶志内郵便局
経済
第一次産業
農協
第二次産業
工業
特徴として、多くのプラスチック関連企業や食品加工メーカーが拠点を置いている。
第三次産業
物流
金融機関
美唄市に拠点を置く主な企業
- 中央化学北海道工場(プラスチック食器など)
- デンカ美唄分工場(コルゲート管など)
- 矢崎化工美唄工場(プラスチック製品)
- 北新有限会社(インテリアクッションなど)
- ホリ第3工場
- 菓子司かいや(マガンの卵)
市内に東明工業団地、また北隣の奈井江町とまたがる空知中核工業団地を有する。
情報・通信
マスメディア
新聞社
教育
小学校
- 美唄市立中央小学校
- 美唄市立東小学校
- 美唄市立南美唄小学校
- 北海道美唄養護学校小学部
中学校
高等学校
特別支援学校
学校教育以外の教育施設
閉校となった学校
交通
鉄道
- 北海道旅客鉄道(JR北海道)
かつて存在した鉄道
- 三菱鉱業
- 日本国有鉄道(国鉄)
バス
道路
高速道路
- 道央自動車道
-
国道
道道
航空
観光
文化財
- 北海道三鉱石油・三美炭鉱事務所(旧三井美唄炭鉱事務所) - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三井美唄炭鉱事務所関連施設 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三井美唄炭鉱職員住宅群 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三井美唄互楽館 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三井美唄炭鉱事務所関連施設 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三井美唄炭鉱第二坑選炭場 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三菱鉱業美唄鉄道線東明駅舎 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三菱鉱業美唄鉄道2号蒸気機関車 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三菱美唄炭鉱竪坑捲揚櫓 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三菱美唄炭鉱原炭ポケット - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧三菱美唄炭鉱開閉所 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧落合会館(旧映画館) - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 旧美唄市立栄小学校(アルテピアッツァ美唄) - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 岡田春夫生家 - 経済産業省認定近代化産業遺産
- 美唄屯田兵屋 - 道指定有形文化財
- 旧桜井家住宅 - 美唄市指定文化財
- 美唄屯田騎兵隊火薬庫 - 美唄市指定文化財
- 4110形式十輪連結タンク機関車2号 - 美唄市有形文化財
- 峰延獅子舞 - 美唄市指定文化財、峰延獅子舞保存会
- 峰延東傘踊り - 美唄市指定文化財、峰延東傘踊り保存会
- 光珠内隕石 - 美唄市指定文化財、美唄市郷土史料館
名所・旧跡
- 旧樺戸街道(峰樺道路:北海道道275号月形峰延線)の防風林
- 光珠内隕石落下地点
- 北海道溜池発祥の地
観光スポット
温泉
- 美唄温泉:美唄市交流拠点施設(青の洞窟温泉ピパの湯ゆ〜りん館)
- 茶志内温泉(泉源のみ)
博物館・資料館
- 美唄市郷土史料館
- 北海道立林業試験場展示室
- 三菱美唄記念館
文化・名物
祭事・催事
- 1月 びばいっ子フェスティバル
- 2月 ピパオイの里 SNOW FESTA
- 5月 びばい桜まつり(東明公園)
- 7月 美唄市福祉スポーツ大会
- 7月 美唄健康まつり
- 7月 美唄ダムまつり(休止中)
- 8月 びばい歌舞裸まつり
- 9月 百万凧祭り
- 9月 ピパオイヘルシーロードレース
名産・特産
- グリーン・ツーリズムを重点施策としており、農産物直売所が多数あり、美唄発安心・安全な農産物の開発・販路拡大に力を注いでいる。
- 国内でも有数の穀倉地帯であり、きらら397やほしのゆめ等の北海道産ブランド米を生産しているほか、北海道各地に先駆けて、美唄産米を用いた「米粉」利活用について前向きに調査・検討を重ねている。
- 2006年(平成18年)に全国の米農家1782戸が出品した「第8回全国食味分析鑑定コンクール」総合部門で美唄産の「おぼろづき」が北海道の米として初めて金賞を受賞した。
- 花卉や農作物を数多く出荷しており、特にグリーンアスパラガスは全国でも一二を競う出荷量を誇っていたが、近年作付面積は減少している。
- 特産品農産物『ハスカップ』は日本一の収穫量を誇り、数々の加工品に利用されている。6月下旬 - 7月上旬には8つのハスカップ農家ではハスカップ狩りを楽しめる。
- 「恋つむぎ」という糖度12.5度を超える非常に甘いイチゴを生産しているが、品質管理上長距離輸送ができないため、市内でしか出回らない幻のイチゴである。
スポーツ
日本一
出身・関連著名人
軍人・政治・実業
学者
文化
芸能・報道
スポーツ
美唄市を舞台とした作品
漫画
脚注
参考文献
- 歴代知事編纂会 編集『日本の歴代市長 : 市制施行百年の歩み』 第1、歴代知事編纂会、1983年。
関連項目
関連文献
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
美唄市に関連するカテゴリがあります。
- 行政
- 観光