井上 麻里奈(いのうえ まりな、1985年1月20日[8] - )は、日本の女性声優、ナレーター[9]。東京都出身[5]。青二プロダクション所属[7]。
代表作に『図書館戦争』(笠原郁)、『スマイルプリキュア!』(緑川なお/キュアマーチ)、『進撃の巨人』(アルミン・アルレルト、ナレーション)、『境界のRINNE』(真宮桜)などがある[5][10][11]。
学習院初等科、学習院女子中・高等科を経て、学習院大学法学部政治学科を卒業[12][13]。
声優を志したきっかけは「男の子役をやりたかったから」と述べている[14][15][16][17]。幼少期からごっこ遊びや芝居が好きで、小学校時代に所属していた演劇部では主役も演じていた[18]。
転機となった女子中・高校時代は、中高一貫かつ学年ごとに必ず芝居を披露する決まりがあるほど学校全体で演劇が盛んで、井上の学年は特に活発だったため、演劇部に所属こそしていなかったが、文化祭等の行事がある度に集まっては活動するなど、芝居漬けの日々を送っていた[14][16]。その中で、同志の友人らと趣味で芝居に打ち込み、友人の中では身長が高いほうであったため男の子役を任されるようになる[15][16][17]。そこで“自分とはまったく違うもの”になれる芝居ならではのよさや楽しさを知り、高校時代はいつも男の子役を演じるほど好きになっていた[15][16][17]。「このまま大学に入っても芝居を続けていきたい」と考える一方で[17]、男女共学になるため「自分が男の子役をやる機会はなくなるかもしれない」と感じた時[17]、性別・外見・年齢問わず何にでもなれる"声優"という選択肢が頭に浮かぶ[15][16][17]。
大学へ進学後もその思いは変わらず、声優の道へ進む決心をするも、当時はまだ「声優になりたい」という漠然とした程度だった[15][16][17]。大学に通いながら声優になる方法を調べていた矢先、大学のパソコン室のネットで偶然に一般公募オーディションの情報を見つける[17]。声優業界の知識が何もない状態だったが、「自分の力でどこまで行けるのかな?」と思い、力試しのつもりで応募した[14][15][16][17]。これが初めて受けたオーディションであり、声優を目指していることは両親や友人らにも事前に一切明かしていなかった[12][17]。また、声優になるという覚悟がまだ不十分だったため、「もし運よく最終審査まで残れたら声優になれる芽があるということだから、そこで辞退して改めて考えよう」と思っていたが、最終審査を待たずしてグランプリに選ばれ、声優デビューを果たす[15][16][17]。合格を勝ち取り、嬉しさや感謝の気持ちがあった一方で、予想外の結果に対する驚きや上記の理由から戸惑いの気持ちも強かったと語っている[15][16]。
2003年秋、大学1年生でソニー・ミュージックSDグループ声優オーディションを受け、2,000人の中からグランプリを受賞した[19][20]。
同年12月10日、声優月刊誌『声優グランプリ』2004年1月号の誌面にて初披露。インタビュー記事が掲載され、「声優未経験でオーディションを突破したシンデレラガール」と評される[21]。
翌2004年1月、上記オーディションにより、新房昭之監督によるOVA『コゼットの肖像』のヒロインに抜擢され、コゼット・ドーヴェルニュ役でデビュー[14][20]。 同作品において、梶浦由記プロデュースによる主題歌「宝石」と挿入歌「Ballad」を担当した[22]。
2007年、ドラマ『電車男』の劇中スピンオフアニメ『月面兎兵器ミーナ』の主人公・佃美奈 / 月城ミーナ役でテレビアニメ初主演。同作品において、中田ヤスタカプロデュースによるエンディングテーマ「ビューティフル・ストーリー」を担当した。
同年、長寿アニメラジオ番組『ノン子とのび太のアニメスクランブル』のアニメグランプリ部門において、2007年度(第17回)最優秀女性声優賞を受賞。
所属事務所ボイスアンドハートの事業撤退に伴い、2008年1月1日付けでシグマ・セブンに移籍[23]。
2012年11月3日、母校である学習院大学にて学祭トークショーを行う[13]。
2013年5月30日、自身初となる連載まとめ本『井上麻里奈 MariIro』を出版[24]。
同年12月31日、第64回NHK紅白歌合戦において、Linked Horizonによるアニメ『進撃の巨人』のOP主題歌「紅蓮の弓矢 紅白スペシャルver.」が披露された際、アルミン・アルレルト役として冒頭のナレーションを担当した[25]。
2014年、バンクーバー国際アニメ祭典「Anime Revolution 2014」にて、"INTERNATIONAL VOICE ACTOR AWARD"受賞[26]。
2021年4月4日より、JFNによる音楽ミニ番組『Good-Track!』のラジオパーソナリティを務める[27]。
同年10月1日より、日本テレビ報道番組『news zero』の金曜ナレーターを[28]、加えて2022年3月31日からは木曜ナレーターも担当している[29]。
2022年1月1日より、所属事務所であるシグマ・セブンを退所し、青二プロダクション[30]に移籍[31]。
同年8月より、MCUシリーズにおける『シー・ハルク:ザ・アトーニー』で、主人公であるシー・ハルクの日本語版声優を務める[32]。
2025年1月、5年ぶりに[注 1]開催された青二プロダクションの新年会にて、新規加入者およそ20名を代表して挨拶を務めた[33][34][35]。
音域はG - C[36]。「役どころにあわせてさまざまな表情をみせつつも、まっすぐに、クリアに、人々の心に刺さる声」と評される[28]。
『進撃の巨人』の大ファンと公言する関俊彦は、アルミン役の井上の演技に感銘を受けており、「誰からも愛される、すごくピュアな台詞を発する声優さん」と絶賛している[37]。
名字の「井上」は芸名であり[注 2]、デビュー当時のマネージャーが「姓名判断で良かったから」という理由で命名した[38]。
ファンからの愛称は「マリーナ」[1]。先輩からは「麻里奈」「麻里奈ちゃん」「まりな嬢」[注 3][39]、後輩からは「井上さん」「麻里奈さん」、同年代からは「麻里奈」「麻里奈ちゃん」「まりなん」[注 4][2][3]等と呼ばれている。
父親は現役時代に教師をしており、社会科を教えていた[40]。母親は書道教室の先生をしており、幼少期の井上にも指南している[41]。2歳年上で同じ誕生日の兄がおり、毎年お祝いメッセージを送っている[42][43]。また、誕生日の当日にお祝いメッセージを送ってくれたファン一人一人に、仕事の合間を縫いながら日頃の感謝も込めた御礼の返信をする活動を2021年より毎年行っている[44]。子供の頃の誕生日の際は必ず自分用と兄用にバースデーケーキが2つ用意され、親戚も集まって誕生日会をしていたので、食べる量も丁度よく、悲しい思いをしたことはなかったと語っている[45]。また、幼少期は友達や従妹とのごっこ遊び以外では虫捕りや木登りをするなど非常に活発であり[18][46]、兄と一緒に遊ぶことが多かったという[47] 。
共演陣と懇意にすることが多く、朴璐美[48]や緒方恵美[49] 、前野智昭[50][51]、田野アサミ[52]、下田麻美[53]、松澤ネキ[54][55]など同業者や司会者からも人柄を評価されている。現場での座長としての立ち振る舞いで指針となっている人物には吉野裕行を挙げている[56]。朴を師として慕い、主催する演劇や稽古に度々誘われるなど実力を評価され可愛がられており、朗読や公演等に定期的に参加している[48][57][58][59][60]。青二プロダクションの新年会では、新人時代に担当したラジオ番組『神戸前向女学院。』から縁のある竹内健次郎社長の指名により、新規加入者挨拶の代表を務めた[33][34][35]。
石川由依[61]、諏訪彩花[62]、三上枝織[63]は、憧れの声優に井上を挙げている。特に石川とは『進撃の巨人』等で長きにわたり共演しており仲が良く、姉のように慕われ尊敬されている[64][61][65][66][67]。同じく共演者である梶裕貴とは、他作品でも縁のある役柄で共演することが多く[注 5][注 6][注 7][注 8]、共に「戦友」と認め合う間柄である[68][69][70][71]。また、菅井友香(元・欅坂46および櫻坂46の初代キャプテン)は母校の後輩であり、憧れの人物に井上を挙げている[72][73]。菅井は自身のラジオで井上をゲストに招き、長年の夢だった対面を果たして喜びの思いを綴った[74]。ラジオのゲストで共演して以来、共に連絡先を交換し合う仲で[75]、菅井が『進撃の巨人』と井上演じるアルミンを好きなこともあり、イベント「進撃の巨人10th ANNIVERSARY “ATTACK FES”」に菅井を特別に招待した[76]。
趣味はドライブ、写真[7][77][78]。ドライブ中に流すお気に入りの曲は「Good Time」[77]。温泉や旅行も好きで、仕事終わりやオフの日に車で出かけて各地の名所や季節の花や風景を観に行き、写真を撮っている[77]。リフレッシュ方法は自然に触れること[79]。学生時代の芝居では衣装や小道具も手掛けていたため特技に裁縫を挙げており、雑誌等の自身の企画で着る衣装は、既製品を自ら詰めたり縫い合わせたりしてアレンジすることもある[80]。
風景や人物などのデッサン・絵を描くことも好き[81]で、2〜3歳から色々な絵を描いていたという[47]。イラストに定評があり、『月面兎兵器ミーナ』[注 9]、『ハヤテのごとく!』[注 10]、『ゼーガペイン』[注 11]、『天元突破グレンラガン』[注 12]、『さよなら絶望先生』[注 13]、『みなみけ』、『戦場のヴァルキュリア』[注 14][82]など、自身が出演した作品でも手掛けることがある。「梶裕貴 音声AIプロジェクト#そよぎフラクタル」における『進撃の巨人』の主人公・エレンの誕生日企画「悪魔の子」のカバーMVとして梶本人からオファーを受け、イラストを提供した[83][84][85]。
ピアス恐怖症であり、ピアスホールを今まで一度も開けたことがなく、普段着けている耳飾りはすべてイヤリングである[注 15][64]。
好きな食べ物は米飯と米飯に合うおかず[86]。健康を意識して極力自炊を心がけている[81]。好きな動物は猫で、実家では「ちくたん」という猫を長年飼っていたが[注 16][87][88]、2024年の秋に大往生した[89]。その後も実家では、井上の兄によって拾われた野良の雌猫が子猫を数匹出産している[89]。
2013年5月30日、声優雑誌『声優アニメディア』で毎月号連載されていた企画「MariIro」の約2年分の内容を一冊にまとめた自身初となる連載本『井上麻里奈 MariIro』を出版した。「MariIro」では、毎月ひとつの「色(もしくは模様)」をテーマにファッションとコーディネイトを紹介していた。フォトブック化されるにあたり、連載時に掲載されたものを含め、新たに撮り下ろしたものもまとめられている[24]。
当初は本を出すということに抵抗を感じていたが、「応援してくださるファンの方や熱心にオファーし続けてくださった編集さんやスタッフの方への恩返しがしたいと思い、出させて頂くことを決断した」という[24]。
同年6月22日、自身にとって約3年ぶりの対面イベントでもある『MariIro』発売記念サイン会が開催された。
その後も大ヒットを記録し[90]、同年11月15日には増刷が決定した。2014年2月9日の増刷記念イベント[91]では、「ずっと悩んでいましたが、改めて本を出させて頂いて良かったなと実感し、皆様には感謝してもし尽せません。本当に有難うございました。引き続き『声優アニメディア』で連載の「Mariナビ」も楽しんで頂けるものをお見せしていけたらと思っているので、よろしくお願いします」と感謝の言葉を述べた[92]。
堀江由衣は井上に憧れており、特に『MariIro』を気に入っている。上記の連載記事の大ファンで毎月欠かさずチェックしており、同じ担当編集者には「今月もかわいい」と感想を伝えているとのこと[93]。両者が巻頭と巻末を飾った『Voice Actress』の対談では、「第2弾楽しみにしています!」という堀江のコメントに対して、「じゃあ公には出さず、堀江さんのためだけに作ります(笑)」と談笑を交えた約束を交わしている。また、同対談で堀江から要望された「外国のモデルさんが着るような可愛らしい服」を『声優アニメディア』2016年4月号の「Mariナビ」企画で着ており、約束を果たした[注 17][注 18]。
デビュー作『コゼットの肖像』のヒロイン:コゼット役を決めるオーディションの一つには歌唱審査があり、課題曲が『機動戦士ガンダムSEED』のエンディング主題歌「あんなに一緒だったのに」だった[94]。当時、オーディション審査会場に同席していた梶浦由記は、「この曲は歌うことが一見簡単そうで歌い手にとって実はとても難しい曲。だけど麻里奈ちゃんの歌がすごく良くて。メロディを歌いつつ、言葉をちゃんと歌おうとしている。演劇をやっていると知ってなるほど、何かを訴えかける力強さを持った声で素敵だな。だからきっとこういう歌もうまいだろうなと(コゼットの)仮歌を歌ってもらう前から思ってたんです。」と評した[94]。また、井上の声優として初めての仕事が本作の主題歌「宝石」の収録であり、梶浦の自宅に通い詰めて練習、僅か1週間でレコーディングをした経緯がある。主題歌を歌うにあたり、コゼットの声と低めの声のどちらで歌うか悩んだが、作品や音楽の雰囲気に合わせて低めのハスキーな声で歌ったと語っている[94]。
デビュー作でいきなりの主役級を演じたために、声優未経験でのスタートで苦労する面も多かったが、相手役の斎賀みつきら共演者に分からないことを聞いたり、優しく丁寧に教わったりしながら先輩たちのやることを見て覚え、声優としての知識や技術を吸収することができたと述べている[15]。
井上は、10年後の2013年に『コゼットの肖像』Blu-rayが発売された際、謝辞として以下のように述べた。
私の大切な大切なデビュー作品です。(中略)アフレコでは、専門用語を何も知らない素人同然の私に、斎賀みつきさんがひとつひとつ丁寧に優しく教えて下さって、助けて頂きました。沢山の方に支えられて素晴らしい環境でお仕事をさせて頂けた私は、本当に運がよく、恵まれていたと思います。お芝居は拙く、今見返すととても恥ずかしいものですが、当時の私にとっての全力で演じさせて頂きました。井上麻里奈のスタートが全て詰まった『コゼットの肖像』を、是非楽しんで頂けたら嬉しいです。そして改めて、私をコゼット役に選んで下さってありがとうございました。これからも井上麻里奈は声優として、お芝居で恩返しさせて頂きたいと思います。 — 『コゼットの肖像』特別編集版解説書「スタッフ&キャストコメント」pp.8より引用
デビュー1年目の大学在学中に『焼きたて!!ジャぱん 』(冠茂)の合格連絡を貰った時は、初めてTVアニメのオーディションで受かったレギュラーかつずっと憧れだった少年役だったこともあり、早くに演じる夢が叶ってとても嬉しかったと語っている[14]。
一方で、デビュー3年目にオーディションで受かったゲーム『BLUE DRAGON』(シュウ)は、当時演じることを苦手としていた熱血主人公かつ叫ぶシーンが非常に多い役柄だっため、声量の調節と限界が分からず初めて喉を潰して病院へ通いながら収録するという、声優になって初めての大きな挫折を味わう[14][16]。何度もリテイクを繰り返し、自分の演技のギャップに悩む日々だったが、当時の音響監督やスタッフに「井上さんが一番良いものを出せるように私たちは集まったんだから大丈夫だよ」と温かく支えてもらえたことで救われたとのこと[14][16]。この時の経験が声帯を強くさせ、アフレコの幅も広がるなど大きな転機となり、様々な少年役を演じることに自信が持てたと述べている[14][16]。また、自身の叫べる限界値を知ることにも繋がり、以後の作品で叫ぶ演技をする際は声量を自在に調節する等、本作で培った経験を一つの判断基準にしているとのこと[14][16]。
以降、幼年~中学生まで様々な少年役を多数演じ、時にはハイティーンを演じることもある。『けんぷファー』(瀬能ナツル)では変身主人公ということもあり、男女の二役を一人で演じた。ほかにも、『デジモンクロスウォーズ』シリーズ(明石タギル)や『ベイブレードバースト』シリーズ(蒼井バルト)などの熱血少年主人公から、『進撃の巨人』シリーズ(アルミン・アルレルト)といった冷静で理知的な少年まで多数演じている。
特に『進撃の巨人』のアルミンは、10歳の少年期から22歳の青年期を10年にわたり最後まで一人で演じきり、物語のナレーションと次回予告も務めた。2013年12月31日、第64回NHK紅白歌合戦では、『進撃の巨人』の主題歌「紅蓮の弓矢」の冒頭ナレーションを担当し、「歴史ある紅白において、"声優"として関われたことを光栄に思います」と語っている[注 19][25]。完結編の最終話において、アルミンが死んだエレンを抱いて泣き叫ぶシーンは自身のシャツを握りしめながら演じていた。このシーンは完結編放送後に『100カメ アニメ「進撃の巨人」最終話 トップ声優たちのアフレコに完全密着!』の番組内でも取り上げられる等、その演技力の高さを監督や制作スタッフをはじめ、メディアでも絶賛された[95][96]。
また、青二プロダクションでジュニア所属の山崎真花は、本作を観て、井上の声と演技に感銘を受け声優を志したと述べている[97][98]。
『スマイルプリキュア!』では緑川なお/キュアマーチを演じることが決定し、「変身ヒロインに憧れていたので、夢が叶って、報告を頂いたときは泣いて喜んだ」とのこと[99]。
第16話では、青木れいか/キュアビューティの母・静子役の篠原恵美と共演した。篠原はかつて『美少女戦士セーラームーン』シリーズで木野まこと/セーラージュピターを演じており、第16話のアフレコの後で篠原から「麻里奈ちゃんが緑(のプリキュア)で嬉しい」と言われ、嬉しさのあまり泣きながら帰宅したという[100]。
後に井上は『劇場版 美少女戦士セーラームーンCosmos』でセーラー戦士の一人である星野光/セーラースターファイターを担当している[101]。2023年には、スリーライツのメンバーの一人として劇中歌「流れ星へ」と新曲「Star Line」を歌唱する。また、セーラー火球を演じた水樹奈々のFCライブにてシークレットゲストとして登場し、劇場版後編のOPでも歌った「セーラースターソング」のデュエットを披露した[102][103]。
『図書館戦争』では、文芸誌『ダ・ヴィンチ』2012年7月号にて、有川浩による『図書館戦争 革命のつばさ』特別インタビューが掲載された。本誌で有川は、アフレコにまつわる素敵なエピソードがあったと語った。「今回、当麻役のイッセー尾形さんは声優初挑戦だったんですね。みんなでアフレコをした後、イッセーさんが一人で声を別録りする機会があったんです。その時に、郁を演じた麻里奈ちゃんがブースに一人残って、“私も一緒に声を出していいですか?”って。相手とナマで気持ちを交換させたほうが、芝居は絶対良くなる。郁が最後まで当麻に寄り添ってくれたように、麻里奈ちゃんは自分の録りが終わっているのに、イッセーさんに寄り添うためだけに、声を出してくれたんですよ」と、井上の作品とキャラクターに対する深い愛情を改めて感じたという[104]。
2020年8月22日、リバイバルコメンタリーイベントの記念すべき第1回目の作品として『図書館戦争』が選ばれる。前野智昭とともになかのZEROホールに登壇し、リバイバル上映の生コメンタリー、トークショーや生アフレコを披露した[105]。
また、2021年には劇場アニメ化10周年記念としてWOWOWプラスにて放送され、前野とともに声優コメンタリーで出演し、インタビューが掲載された[106]。
『境界のRINNE』のオーディションを受けた時期は、偶然にも高橋留美子の代表作の一つである『らんま1/2』のDVD BOXを購入して視聴し続けている真っ只中だったとのこと[107]。井上は、「小さい頃から当たり前のように親しんできた留美子先生の作品に携われることが光栄で、オーディションを受けられるだけでも幸せだった」「ヒロイン役に抜擢されて驚いたと同時に、嬉しくもありプレッシャーでもあった」と明かしている[107][108]。
ヒロイン・真宮桜を演じるにあたり、「桜は普通の女の子だけど動じない。これまで感情を出すキャラクターを演じることが多かったので、当初は感情の振り幅を表現する難しさがあった」と同時に「桜は一見クールだけど、とても心温かい女の子。自分にとって桜はちょっとした挑戦の役であり、アフレコが進むにつれ、桜の微妙な感情の起伏を表現することが楽しみになっている」と語っている[109]。
なお、桜役は指名によるオーディションで、原作者の高橋留美子によって直々に選ばれたという経緯がある[110][111]。後にアフレコ現場を訪れた高橋から「麻里奈ちゃんが桜を演じてくれてとても嬉しい」と言われたことに、井上は「留美子先生とお会いするといつもホッとして、自然に涙が出てくるんです。声優をやっていて、本当によかったと思いました」と嬉しさを表している[110][111]。 また、高橋は後のインタビューでも「声がついてより生き生きとしたキャラクター」に桜を挙げており、「井上さんが桜のキャラを守りながら、とても可愛らしくより魅力的に演じてくださっているので、よくぞやってくれた!とすごく有難いなと思っています」と評している[112]。
出演作の『境界のRINNE』や上記の『らんま1/2』以外の高橋作品も読了しており、中でも感銘を受けた作品に『めぞん一刻』を挙げている[113]。
また、事務所の先輩であり『うる星やつら』のヒロイン・ラム役である平野文とは、『境界のRINNE』で桜の母役や2022年版の『うる星やつら』で共演し[114]、ともに高橋留美子作品のヒロインを演じている仲である。当時の『うる星やつら』のアフレコ秘話等を教えてもらうなど親交を深め[109]、2022年には福岡県、2023年には福井県にてトークショーを開催している[111][115]。
デビュー作である『コゼットの肖像』から監督として携わり、『さよなら絶望先生』シリーズなど数々の監督作品で井上を見てきた新房昭之は、『〈物語〉シリーズ』の老倉育役の声優に井上を起用したことに関し、老倉の魅力を声の部分で表現できるのは小説を読んでいる時から井上だというイメージがあり、〈物語〉シリーズのキャストはほぼオーディションで決めているが、今回は異例に直接指名したと語っている[116]。
また、『3月のライオン』原作者の羽海野チカは、老倉が本作の主人公の姉・幸田香子と重なるイメージがあったため、アニメで老倉役を演じた井上に香子を演じてほしいと希望したという[117]。
太字はメインキャラクター。
※はインターネット配信。
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