『水戸黄門』(みとこうもん)は、1969年8月4日から2019年8月11日にかけての50年間[注 1]にわたり、TBSとその系列局における月曜20:00 - 20:54(JST)のテレビドラマ放送枠『ナショナル劇場』(第38部まで)→『パナソニック ドラマシアター』(第39部 - 第43部)、およびBS-TBSで放送された日本のテレビ時代劇シリーズ。制作協力は第18部までが東映、第19部以降が東映太秦映像、制作[注 2] → 製作[注 3]はC.A.L.。
1969年8月4日に『ナショナル劇場』枠で放送を開始し、2003年12月15日で放送1000回を迎えた。世界でも類を見ない[要出典]長編テレビ番組である。再放送も、TBS系列各局(一部地域を除く)[注 4]やBS-TBS、CS放送・TBSチャンネルで行なわれている。また、TBSテレビ系列でもニュース番組、情報番組などの影響で放送枠がない場合、他系列で放送されることがある(例:愛知県の中部日本放送(現・CBCテレビ)では2019年4月の改編でなくなり、7月からテレビ東京系列のテレビ愛知で放送されている)[注 5]。
1969年の放送開始から2000年の第28部までは放送期間が必ずしも一定していなかったが、2001年の第29部からは原則として半年間、現代劇ドラマ(3か月)と交互に放送されていた。
音声形式は第25部まではモノラル放送だったが、第26部からはステレオ放送で放送されている。第39部では地上デジタルテレビジョン放送において、第1話に限り5.1chサラウンド放送を実施されたものの、第2話目以降は通常の2チャンネルによるステレオ放送に戻っている(第40部でも同様)。第43部からは音声多重放送(解説放送)で放送された。
1978年には、テレビと同じキャスト、スタッフによる映画『水戸黄門』が製作された。
『ナショナル劇場』は松下電器産業がスポンサーをする(一社提供)放送枠であり、水戸黄門も一貫して松下電器産業がスポンサーだった。ただし、1989年1月9日の放送では、昭和天皇の崩御により松下電器が9日までを服喪期間と認め、提供なしでの放送となり、CM時間帯は印籠のアイキャッチがBGMとともに放送された。2008年10月から松下電器産業がパナソニックへ社名変更したことに伴い、放送枠の名称も『パナソニック ドラマシアター』へ変更された。
本作とは別に、TBSのブラザー劇場枠において1964年11月から1965年12月まで、『水戸黄門』が放送されていたが、設定や製作スタッフも異なり直接の関連性はない。水戸黄門(ブラザー劇場)で光圀役を演じたのは、戦後に東映が製作した水戸黄門漫遊記の映画シリーズで主演していた月形龍之介であった。月形は後に1969年12月8日放送の本作第1部第19話「どっこい生きてた湊川 -兵庫-」でゲスト出演している。
2011年12月19日(最終回スペシャル)放送分で42年間続いたゴールデンタイムの水戸黄門が幕を閉じた。全1227回の平均視聴率22.2%[1]。最高視聴率は1979年2月5日に記録した43.7%で、積木くずし最終回の45.3%に次いで民放ドラマ史上2番目の高さだった[2]。
2011年4月期よりNHKの土曜時代劇が終了したことにより、地上波でのレギュラー放送における時代劇ドラマは水戸黄門と大河ドラマだけとなった[3]。水戸黄門終了後の地上波での時代劇はNHK大河ドラマと2012年1月クール開始の『逃亡者 おりん2』(テレビ東京)[注 6][4]のみとなり、2012年4月期より地上波での民放レギュラー放送の時代劇は消滅、現時点[いつ?]ではNHK大河ドラマのみがレギュラー放送の時代劇となっている。
2012年、ザテレビジョンドラマアカデミー賞より本シリーズの「42年の歴史」に対しザテレビジョン特別賞が贈られた[5]。
2015年2月、TBSテレビは『水戸黄門』を同年夏、2時間スペシャルドラマとして復活させることを発表[6]。翌2015年5月、「月曜ゴールデン特別企画」として『水戸黄門スペシャル』を同年6月29日21時から放送することを正式に発表した。
2017年3月、TBSHDグループ局のBS-TBSが『水戸黄門』の新作をレギュラー放送する予定と発表[7]した。制作会社とスタッフなどはTBS版と同じ、光圀役は武田鉄矢が演じている。
以下は本作における基本的なストーリーの流れである。
水戸光圀(御老公)が家臣の佐々木助三郎(助さん)、渥美格之進(格さん)らとともに諸国漫遊の旅先で世直しをする[注 7]。光圀の道中での名は石坂シリーズを除くと「越後の縮緬問屋の隠居・光右衛門」であるが、越後国内では単に「縮緬問屋」、越後と同様に縮緬の産地として知られる「丹後の縮緬問屋」「京(または江戸)の和菓子屋」と称したこともある。石坂シリーズは、「江戸の太物問屋の隠居・光右衛門」か、光圀の実際の号でもある「日新斎」を名乗った。身分は旅の町人であるが、お供を複数連れ、服装も立派で人品卑しからぬ雰囲気を醸し出しているので、旅の先々ではそれなりに敬意を以て扱われ、単なる浮浪人といった扱いを受けることはない。 助、格は相手が真剣で立ち向かってきても素手で対応できる超人的な武道の達人という設定である。時には光圀自身も杖で真剣と渡り合うこともある。
また各レギュラー放映回ストーリーの大筋の展開は次のようなパターンが主流である。1.旅の途中で悪漢に絡まれた庶民を見つけ助ける。2.助けた庶民と仲良くなり、悪漢に絡まれる事情を教えてもらう。3.困った人を見捨てられないご隠居が協力を申し出る。4.予め誰かが悪者共の一味に探りを入れた上でご隠居様一行が乗り込む。5.怒って襲い掛かってくる一味を撃退してから印籠を見せ付ける。6.悪者共は手下含め一同ひれ伏し、万事解決。ご隠居様一行は次の目的地へ旅立つ。
この様にお決まりのパターンであり、安心感をもって視聴することができる。
多くの場合、光圀一行が旅の途中で事件の被害者と出会う所から始まる。被害者との出会い方にはいくつかのパターンがあり、以下にその代表例を挙げる。
光圀一行が状況を察し、出会った被害者や近親者に事情を訊ねている最中に、悪徳商人や被害者の上司などの有力者が(手下や護衛を率いて)自ら被害者の下に現れ、被害者に最後通牒を突きつける(暴力に訴えてきた場合は、助と格が食い止める)。有力者が引き上げた後、事態に窮した被害者や近親者は光圀に詳しい事情を明かし、光圀が問題の解決を約束する。東野黄門後期以降では、この時被害者が「そういや、御隠居様はいったいどのようなお方で?」や「御隠居さんはただの旅の者ではないでしょう?」など(場合によって、頑固な人物や風来坊などは「俺たちを助けている爺さんは一体?」や「爺さん、ただの町人だとは思えないが?」など)と訊ね、光圀が「ご覧の通り、お節介焼きのただの旅の隠居(爺)ですよ」「だから、ただのお節介焼きの田舎じじいですよ」「それは後で分かる事です」などと返すのが定番化した[注 8]。
被害者から聞き出した事情に光圀一行は不審な点を見出し、事件の裏に隠された真相の調査に乗り出す。多くの場合、有力者が藩の高官と結託しており、光圀の手下である密偵が悪事の決定的な証言や証拠を探り出す。
証言や証拠が集まり事件の真相が判明したところで、有力者が強硬手段に出る(期日が設定されている場合は、その期日となる)。関係者が一堂に会し、被害者にとって最悪の状況に追い込まれたとき、制止する光圀の声が割って入り、一行が現れる(最初から光圀一行が許しを得て同席している場合もある)。そして光圀が関係者一同の前で全ての真相を暴露する。
史実の徳川光圀は62歳で隠居しているので、それ以降の年齢の話ということになるが、石坂浩二版はこれから隠居しようとする時期から始まっている。
第1部第1話は隠居後の暮らしの話から始まっているが、ある事件の解決のために江戸へ向かい、光圀初の旅路となる。その事件の解決後に江戸で、実子の高松藩藩主松平頼常や藩の悪い噂を聞き、高松へ行ってみるとして、本格的な旅がスタートする。その後は、事あるごとに旅に出ている。旅に出ていない時は、水戸での晴耕雨読の暮らしをして、『大日本史』の編纂も行っている。
旅先で名乗る身分は町人であるが、お供を複数連れ、服装も立派で人品卑しからぬ雰囲気を醸し出しているので、旅の先々ではそれなりに敬意をもって扱われ、単なる浮浪人といった扱いを受けることはない。
立ち回りの時は、刀などを使わず、竹製の杖を剣にして戦う。第1話目などで、江戸などにいる際に武家の格好で悪の巣窟に乗り込む場合も、大小の刀を使わず、敵の持っている槍などを奪い取り、杖での立ち回りのように使っている。また、稀に扇子や腰に下げている脇差を用いて戦う事もある。
東野英治郎版のシリーズの第5部までは、頭髪、眉毛、髭が総白よりわずかに黒みのある毛の色だったが、第6部から総白になっている。その後の西村晃版、佐野浅夫版、里見浩太朗版も総白の毛の色合いであった。
石坂版、武田鉄矢版は、頭髪、髭の毛の色は、少し黒みのある白髪であった。眉毛は、付け毛ではなく自身の眉毛のままである。石坂版のみ、演じる石坂浩二の意向で髭なしの風貌であったが、第29部最終話(第25話)で髭のある姿が登場して第30部に至っている。
光圀の道中での名は、石坂版を除き「越後の縮緬問屋の隠居・光右衛門」である。 これは、史実にて実際に光圀が越後産のちりめん製品を愛好していた事と、当時、北前船や佐渡金山等、諸藩だけでなく幕府にとっても重要な資金源となる産業が盛んだった越後は日本でも有数の豪商の地とされ、その越後の商人の隠居と名乗る事で、対面した人物から必然的に相応の身分と富の持ち主であると認知されやすかったからである。 越後国内では単に「縮緬問屋」、越後と同様に縮緬の産地として知られる「丹後の縮緬問屋」「京(または江戸)の和菓子屋」「江戸の戯作者」と称したこともある。石坂版は「江戸の太物問屋の隠居・光右衛門」か、光圀の実際の号でもある「日新斎」を名乗った。
ラストの身分明かしのシーンでは、シリーズ初期(第5部辺りまで)は、後の定番「(前の)副将軍」[注 45]ではなく「天下の副将軍」[注 46]や「(前の)中納言」[注 47]と名乗る回もあり、名前も水戸光圀ではなく、徳川光圀[注 48]と名乗る時もあった[注 49]。その後定番の台詞になり、「副将軍」「水戸光圀公」が常となった。東野版の一部[注 50]や、石坂版では、定番の台詞の名前の部分を「水戸中納言光圀公」と言っている回もあった。また、東野版の一部では、「水戸黄門光圀公」と言っている回も存在した[注 51]。
第21部にてシリーズ初の2時間スペシャルが放送されてからはしばらくはスペシャル版の放送はなされなかったが、第24部にて久しぶりに放送され、第28部以降は2時間スペシャルが年1回 - 3回放送されている。再放送時、2時間スペシャルの場合は前編・後編にわけて放送される[注 52]。しかし再放送されるのは、ほとんどが第1話と最終話のみでありシリーズ途中のスペシャルは再放送されないケースが多い[注 53][要出典]。また、過去の作品で現代では放送禁止用語となっている言葉が使われている場合、再放送ではその部分を無音にするなどして対処している。
一般に、主演(水戸光圀役)の交代をシリーズの節目として扱うのが通例のため、各部の詳細は以下の個別記事を参照。
1995年5月22日から9月4日(第23部と第24部の合間)に由美かおるが演じるかげろうお銀を主人公とするスピンオフ作品『水戸黄門外伝 かげろう忍法帖』が放送された。
本作の歴代ナレーターは、同時期のナショナル劇場におけるC.A.L制作 → 製作の時代劇作品(『大岡越前』、『江戸を斬る』、『翔んでる!平賀源内』、『南町奉行事件帖 怒れ!求馬・南町奉行事件帖 怒れ!求馬II・大江戸を駈ける!』)も上記放送期間と同様のナレーターが担当している。
プロデューサーの括弧内は所属会社 ※括弧内の所属会社はクレジットなし
音楽は木下忠司が担当。劇伴BGMは一部、『雪姫隠密道中記』『江戸を斬る』『遠山の金さん』[注 71]、効果音は、『長七郎江戸日記』[注 72]からの流用がある。
「あゝ人生に涙あり」 作詞・山上路夫 作曲・木下忠司
また、主題歌の第30部 - 第32部までで使われた、御三家の橋幸夫・舟木一夫・西郷輝彦が1人で歌ったものや第33部のみ使われた原田・合田が歌ったもの(もっと言えば、発売後に登場した原田・合田版1番3番)は収録されていない。なお、主題歌のカラオケは第1部 - 第17部までの伴奏(2コーラス)と第30部(橋幸夫バージョン)から第41部までで使われた伴奏(3コーラス)が収録されており、第18部 - 第28部であおい輝彦・伊吹吾朗[注 75]の歌った伴奏と第29部 - 第32部で御三家が歌った伴奏のものは収録されていない。 ※第18部 - 第28部のあおい・伊吹のオリジナルカラオケはシングルCDおよび【あゝ人生に涙あり"スペシャル】に収録されている。
長年にわたり2桁視聴率を維持してきたが、2008年10月20日放映回(第39部第2話「母の一念 関所を破る! -箱根-」)の平均視聴率は9.7%(関東地区、関西地区では10.2%)で、1969年のスタート以来40年目で初の視聴率1桁を記録した。さらに2009年8月17日放送分(第40部第4話「赤と青 風車の秘密! -米沢-」)では9.1%(関東地区)であった。1シリーズ平均でみると、近年は10%台前半になることが多かったが、2010年放映の第41部では9.2%と、シリーズ平均で初めて1桁視聴率を記録した。
※関西地区の第1位は第11部最終話(第26話)(1981年2月9日放映)の42.2%、第2位は第12部 第19話(1982年1月4日放映)の37.4%。
数字はいずれもビデオリサーチ調べ。
本作の誕生やキャスティングなどの経緯は文献によって大きく異なる記述がされている。
詳細は各個別記事も参照。
本番組においては綿密な時代考証より「わかりやすさ」「ストーリー性」の方を重視して製作しているため(要は江戸時代を表現するという意味で)、以下の相違点を始め、史実と異なる点が含まれる。
現在、第1部から第13部(東野英治郎主演)までと第14部から第21部(西村晃主演)までがエイベックス・ピクチャーズより(第1部から第3部までは2003年 - 2004年の間に日本ソフトサービス(Project-T)からもDVD版が発売されている)、第31部から第38部(里見浩太朗主演)がポニーキャニオンよりDVD版で映像ソフト化されているが、第22部から第28部(佐野浅夫主演)までと第29部から第30部まで(石坂浩二主演)、および第39部から第43部まで・最終回スペシャル・水戸黄門スペシャル(里見浩太朗主演)の映像ソフト化はなされていない。その他には、水戸黄門名作選其之壱(歴代の五代黄門作品の中で最高視聴率獲得回を収録)、水戸黄門名作選其之弐(歴代の五代黄門とゲスト女優(松坂慶子・斉藤慶子・水野美紀・三船美佳・佐藤江梨子)の共演を収録)、水戸黄門名作選由美かおるスペシャル(レギュラー以前のゲスト出演3話を収録)の映像ソフトが発売されており、第23部と第24部の間のスピンオフ作品である『水戸黄門外伝 かげろう忍法帖』も、2005年にタキ・コーポレーション(現オデッサ・エンタテインメント)よりDVD版が発売された。
パナソニック ドラマシアター#ネット局も合わせて参照
【 】内の放送系列は現在の系列
山形放送は金曜21:00。福島テレビは1983年9月まで同時ネット。北日本放送は1988年3月まで、南海放送は1989年3月まで日曜22:30、以後はTBS系開局まで月曜22:00から放送。
かげろう忍法帖
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