一般社団法人日本民営鉄道協会(にほんみんえいてつどうきょうかい)[1]は、日本の鉄道事業者および軌道経営者で構成する業界団体である。略称は民鉄協(みんてっきょう)。元国土交通省鉄道局所管。
概要
会員は、主に国鉄分割民営化(1987年)・鉄道事業法施行(1986年)前から旧地方鉄道法に基づいて鉄道事業を行っていた鉄道事業者と軌道法に基づいて事業を行っていた軌道経営者で、地方公営企業を除く事業者である。地方公営企業として鉄道事業・軌道経営する地方公共団体(東京都、大阪市・名古屋市・札幌市など日本の一部の市(政令指定都市))は一般社団法人 公営交通事業協会の会員である。
会員資格は「鉄道事業及び軌道事業を営む法人」であり、「民営」に限定されておらず[注 1]、会員はほとんどが純民間資本の株式会社であるものの一部に地方公共団体も出資する第三セクターの株式会社(青い森鉄道、ひたちなか海浜鉄道など)も加盟している他、東京地下鉄の前身である公共企業体・帝都高速度交通営団も会員であった。現在は南海電気鉄道の子会社である泉北高速鉄道も、前身の大阪府都市開発(大阪府出資の第三セクター会社であった)の時代から加盟している。とさでん交通は、純公共資本の企業ではあるものの、民営鉄道の土佐電気鉄道から会員資格を引き継いだため、加盟している。
入会は任意であり、日本の民間鉄道事業者全てが加盟しているわけではない。例えば、分割民営化により日本国有鉄道の鉄道事業の大部分を地域別に継承したJRグループ7社[注 2]は会員ではない。JR傘下の鉄道事業者では仙台空港鉄道・嵯峨野観光鉄道は会員であるが、東京モノレール・東海交通事業などは未加盟である。財団法人(札幌市交通事業振興公社(札幌市電)・青函トンネル記念館・神戸住環境整備公社)や宗教法人(鞍馬寺)も未加盟である。
大手私鉄でも西日本鉄道(西鉄)が、自社の経営格差[注 3]および地域格差が関東・関西の大手私鉄と隔たりがあったことを理由に1969年6月に脱退していた[2]。また、名古屋鉄道も同様の理由で1971年に脱退していたが、協会側の対応の変化を見て西鉄と名鉄は1982年8月に復帰している[3][2]。その後京成電鉄が自社の経営危機に突入した1980年3月に脱退したが、同社も1990年4月に復帰した[注 4]。2005年に開業した首都圏新都市鉄道や、旧大阪市交通局の鉄道・軌道事業を2018年に民営化した大阪市高速電気軌道の2社[注 5]も、規模的には大手私鉄の一角と認められるレベルであるが[4]、2023年4月現在は未加盟[注 6]である。国土交通省の資料でも静岡県の2大私鉄である静岡鉄道と遠州鉄道[注 7]とともに中小民鉄に区分されている[5]。
関連組織に地方毎の鉄道協会(東北鉄道協会・関東鉄道協会・中部鉄道協会・関西鉄道協会・中国地方鉄道協会・四国鉄道協会・九州鉄道協会)があり、そちらには第三セクターの多くも加盟しており、総加盟者数は本協会より多い。
役員
会長職は、関西大手と関東大手から持ち回りで選出されている。
- 会長
- 副会長
会員の一覧
括弧内は本社所在地。地方区分および一覧の掲載順序は日本民営鉄道協会の公式発表に準ずる。
- ★印は地方公共団体も出資する第三セクター鉄道
- ☆印は完全公的資本の株式会社
- ●印は大株主に非加盟鉄道会社のある会社
- ■印は特別法に拠る特殊会社
- ▲印は鉄道事業法施行後に設立あるいは加盟した会社
- ◎印は交通系ICカード全国相互利用サービスが利用できる鉄道会社
大手
東北
北陸信越
関東
中部
関西
中国
四国
九州
非加盟会社
日本の民間鉄道会社のうち民鉄協非加盟の会社。民鉄協に加盟している大手私鉄の子会社または大口出資会社、バス・建設業など異業種から参入した会社、第三セクターの会社が多数を占める。民鉄協には加盟せず、公営交通事業協会の特別会員もしくは賛助会員となっている会社や、第三セクター鉄道等協議会に加盟している会社も少なくない。本表からはJR7社と貨物専業を除外した。
- 純民間資本
- 筑波観光鉄道(京成電鉄の子会社)/千葉ニュータウン鉄道(京成電鉄の子会社)/東京モノレール(JR東日本グループ)/御岳登山鉄道(京王電鉄の子会社)/JR東海交通事業(JR東海の子会社)/黒部峡谷鉄道(関西電力の子会社)/養老鉄道(近畿日本鉄道の子会社)/近江鉄道(西武鉄道の子会社)/WILLER TRAINS(京都丹後鉄道・WILLER ALLIANCEの子会社)/比叡山鉄道(京阪電鉄の子会社)/阪堺電気軌道(南海電鉄の子会社)/スカイレールサービス(積水ハウスが大株主)/筑豊電気鉄道(西日本鉄道の子会社)
- 公的資本の出資(間接含む)がある会社
- 函館山ロープウェイ/道南いさりび鉄道/IGRいわて銀河鉄道/三陸鉄道/秋田内陸縦貫鉄道/由利高原鉄道/山形鉄道/阿武隈急行/会津鉄道/野岩鉄道/鹿島臨海鉄道/首都圏新都市鉄道/真岡鐵道/わたらせ渓谷鐵道/埼玉新都市交通/埼玉高速鉄道/流鉄/千葉都市モノレール/舞浜リゾートライン/いすみ鉄道/北総鉄道/成田高速鉄道アクセス/芝山鉄道/東葉高速鉄道/東京臨海高速鉄道/ゆりかもめ/多摩都市モノレール/横浜高速鉄道/横浜シーサイドライン/大山観光電鉄/北越急行/しなの鉄道/えちごトキめき鉄道/あいの風とやま鉄道/IRいしかわ鉄道/のと鉄道/立山黒部貫光/天竜浜名湖鉄道/愛知環状鉄道/上飯田連絡線/名古屋ガイドウェイバス/伊勢鉄道/四日市あすなろう鉄道/伊賀鉄道/明知鉄道/長良川鉄道/信楽高原鉄道/北近畿タンゴ鉄道/大阪モノレール/大阪港トランスポートシステム/中之島高速鉄道/関西高速鉄道/大阪外環状鉄道/西大阪高速鉄道/大阪市高速電気軌道/奈良生駒高速鉄道/神戸高速鉄道/神戸新交通/北条鉄道/智頭急行/若桜鉄道/広島高速交通/錦川鉄道/阿佐海岸鉄道/土佐くろしお鉄道/北九州高速鉄道/平成筑豊鉄道/松浦鉄道/甘木鉄道/南阿蘇鉄道/くま川鉄道/肥薩おれんじ鉄道/沖縄都市モノレール
- 神戸高速鉄道は阪急阪神ホールディングスの子会社で、以前は民鉄協に加盟していたが2021年9月現在では加盟していない。
加盟の会社の路線が存在しない都道府県
前述のとおり入会は任意であるため、加盟の会社の路線が存在しない都道府県も多い。
- 北海道[注 10]/秋田県/山形県/新潟県[注 11]/鳥取県/山口県/徳島県[注 12]/佐賀県/大分県[注 13]/宮崎県[注 13]/鹿児島県/沖縄県[注 14]
上記以外の都府県には必ず1社は加盟の会社の路線が存在するが、岩手県は貨物専業の岩手開発鉄道[注 15]のみであるため、旅客営業を行う会社に限れば岩手県も加盟の会社の路線が存在しない県に該当する。
(参考)加盟の会社の路線が大手私鉄以外存在しない都道府県
- 栃木県[注 16]/岐阜県[注 17]/滋賀県[注 18]/奈良県[注 19]/福岡県[注 20]
(参考)以前加盟していた会社
鉄道事業撤退後も会社が存続する事業者
この場合は鉄道路線の廃線で鉄道事業のみ撤退した例や鉄道事業を分社した例も含む。
鉄道事業撤退により会社が消滅した事業者
沿革
前史
民鉄協
国会議員用の乗車証
国会議員が無料で鉄軌道線に乗車できる「鉄道軌道乗車証」は民鉄協加盟社が中心となって共同で無償提供している。経営上の都合から、一部利用できない会社線もある。この制度は国鉄が存在した1946年、衆議院・参議院両議長から日本鉄道会(民鉄協の前身)に依頼があったことに始まる[8]。国鉄分割民営化で誕生したJRグループの無料乗車証は公費で購入しており、違いがある。
協会内で「公平性という点で利用者の同意が得づらい」という声が上がり、1995年(平成7年)以来、各議院に廃止あるいは費用負担の打診を続けていたが、正式な要請だと受け取られないまま20年近くが経過してきた[9]。2012年5月には、民鉄協として正式に廃止を求める方向性で検討を開始することとなった[10]。
脚注
注釈
- ^ 定款第5条より。
- ^ 東日本旅客鉄道(JR東日本)・東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)・九州旅客鉄道(JR九州)の4社は純民間資本。
- ^ 同社は鉄道よりもバス事業の比重が大きい。
- ^ 京成電鉄社史「京成電鉄85年のあゆみ」1980年および1990年の欄内の記事に記載。
- ^ 首都圏新都市鉄道の連結売上高は300億円台、大阪市高速電気軌道は連結売上高が1000億を超えている。
- ^ 2018年6月現在、大阪市高速電気軌道は大阪市交通局時代の名残で公営交通事業協会の特別会員となっている。
- ^ 静岡鉄道は大阪市高速電気軌道とともに連結売上高が1000億を超えており、遠州鉄道に至っては連結売上高が2000億円を突破している。
- ^ 名古屋鉄道の社長交代までは安藤隆司。
- ^ 近畿日本鉄道の社長交代までは都司尚。
- ^ 北海道は地方単位で唯一加盟する会社の路線が存在しない都道府県である。また加盟する会社の路線が存在しない都道府県のなかでは人口が最も多い。
- ^ 北陸信越地方では唯一で、加盟する会社の路線が存在しない本州の都道府県では人口が最も多い。
- ^ 四国地方では唯一。
- ^ a b JR以外の鉄道路線が存在しない。
- ^ 県内の鉄道路線は沖縄都市モノレールのみ。
- ^ 同社は1992年4月1日まで旅客営業も行っていた。
- ^ 県内で加盟の会社の路線は大手私鉄の東武のみで第三セクターの野岩鉄道、真岡鐵道、わたらせ渓谷鐵道は未加盟。
- ^ 県内で加盟の会社の路線は大手私鉄の名鉄のみで近鉄グループの養老鉄道や第三セクターの明知鉄道、長良川鉄道、樽見鉄道は未加盟。
- ^ 県内で加盟の会社の路線は大手私鉄の京阪のみで西武グループの近江鉄道、京阪グループの比叡山鉄道や第三セクターの信楽高原鉄道は未加盟。
- ^ 県内ではJR西日本と近鉄以外の鉄道会社が存在しない。
- ^ 県内で加盟の会社の路線のは大手私鉄の西鉄のみで西鉄グループの筑豊電気鉄道や第三セクターの北九州高速鉄道、平成筑豊鉄道、甘木鉄道は未加盟。
- ^ 定款第43条より。
出典
関連項目
外部リンク
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大手私鉄 16社 |
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準大手私鉄 5社 |
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