えちごトキめき鉄道株式会社(えちごトキめきてつどう、英: Echigo TOKImeki Railway Company)は、日本の新潟県上越市に本社を置く第三セクター方式の鉄道事業者(第三セクター鉄道)である。妙高はねうまライン、日本海ひすいラインの2路線を運営している[ETR 2]。愛称はトキてつ、トキ鉄[2][3]。
2015年(平成27年)3月14日の北陸新幹線の長野駅 - 金沢駅間延伸開業に伴い並行在来線として経営分離される路線のうち、東日本旅客鉄道(JR東日本)信越本線の妙高高原駅 - 直江津駅間(→妙高はねうまライン)と、西日本旅客鉄道(JR西日本)北陸本線の市振駅[注 1] - 直江津駅間(→日本海ひすいライン)の2区間を運営する鉄道事業者として2010年(平成22年)11月22日に「新潟県並行在来線株式会社」として設立された。新潟県と妙高市、上越市、糸魚川市などが出資している。
2011年(平成23年)12月に社名と路線名称の一般公募を実施し、応募総数2,215通の中から検討委員会等での審査を経て社名を「えちごトキめき鉄道」とする旨を決定し、2012年(平成24年)7月1日付で現在の社名に改称した[ETR 3]。
社名の「えちごトキめき鉄道」は、新潟県の旧国名「越後国」を冠して越後の玄関であることをアピールするとともに、心躍る様子を表す「ときめき」に、同じ新潟県の佐渡島で繁殖と放鳥が進められ、県の観光資源の一つでもあるトキをカタカナ表記で配したもので、明るい未来をイメージさせる社名として選定された。
前掲の北陸新幹線の延伸開業に際し、新規設立された3県の第三セクター法人[注 2]のうち、えちごトキめき鉄道は富山県のあいの風とやま鉄道、石川県のIRいしかわ鉄道(共に2012年設立)に2年先立つ形で設立された。設立を早めた理由としては、県内の経営分離区間における隣県との相互直通運転区間が長野県と富山県の計3県に跨っている点や、整備新幹線制度のもとでJRグループ2社から並行在来線の運営を継承する初のケースとなり、指令システムの管理方法の調整などに加えて、全線が直流電化の信越本線に対し、北陸本線は交流電化区間と直流電化区間が混在するなど、2路線で性格が大幅に異なる点、北陸本線の新潟県内区間の輸送密度が経営分離区間の中でも特に低い点など、様々な課題が存在していることが背景にあった[4]。
法人発足以降、新潟県と沿線自治体による「新潟県並行在来線開業準備協議会」と共同で資金計画など各種施策の検討を進め、また沿線地域では地域活性化セミナーや住民への説明会などを実施し、経営計画が策定された。
経営計画では、引き継ぎから5年間は運賃をJR時代と同水準で据え置き、6年目以降は値上げする方針を掲げていた[ETR 4](消費税増税分を除く)。2020年1月16日、6年目となる同年4月1日から約30%引き上げることを国土交通省北陸信越運輸局に申請した[5]。「運賃」節も参照。
2024年6月、2019年から社長を務めていた鳥塚亮が同月26日に社長を退任して相談役となり[6]、28日より大井川鐵道社長に就任することが発表された[7]。
2015年(平成27年)3月14日、下記の2路線をJR西日本およびJR東日本から継承して開業した。
2路線とも営業上の境界駅を含めて全ての駅をえちごトキめき鉄道が管理する。両路線の路線名の由来や、運行形態などの詳細・歴史については各路線の記事を参照のこと。いずれも2両編成以下での運転時に「1両目後ろ乗り・前降り」方式の車内収受式ワンマン運転が実施されている[注 4][ETR 17]。
近接する他社線とは列車の乗り入れを実施し、定期列車での直通先はJR東日本、あいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道の3社にわたり、このうち、JR東日本、あいの風とやま鉄道とは車両の相互乗り入れを実施している[注 5]。
2017年4月7日より、運行管理と指令業務をJRのシステムから独立させ、上越市内の指令所から自社で2路線を担当している[27]。開業からそれまでは2路線で運行管理は別に行われており、日本海ひすいラインはあいの風とやま鉄道に委託の上、あいの風とやま鉄道線とIRいしかわ鉄道と一括のシステムで、あいの風とやま鉄道社員が石川県金沢市にあるJR西日本金沢支社の金沢総合指令所から指令、妙高はねうまラインは新潟市にあるJR東日本新潟支社の総合指令室から、配置した自社社員が指令を行っていた[ETR 19][ETR 20][ETR 21]。
えちごトキめき鉄道のトータルデザインは、川西康之が率いる株式会社イチバンセンが手掛けている[28]。車両のエクステリアや駅名標などのカラーリングは、妙高はねうまラインでは妙高山のフレッシュグリーンと山並みをイメージしたもの、日本海ひすいラインでは日本海のブルーと荒波をイメージしたものが、それぞれ施される。
トキ鉄くん:2013年3月29日生まれ、当初の名称は「トッちゃん(仮称)」であった[29]。みんなに愛される人なつっこい男の子。えちごトキめき鉄道の魅力を親しみ感を持ってみんなに伝えていくために誕生。デザインはトキと列車が融合したものである[30]。
以下いずれも、JR東日本から直江津駅構内の直江津運輸区の施設・設備等を譲り受けた直江津運転センターに配置している。ただし直江津運転センターには全般検査・重要部検査以上の検査をできる設備を備えていないため、これらはJR東日本長野総合車両センターに委託している。
なお特急列車が自社線内を走行するが、特急形車両は保有していない。
えちごトキめき鉄道は自社の検測車を保有していない。JR東日本とJR西日本の2社から路線を引き継いだため、検測車はこの2社のものが入線する。妙高はねうまラインはJR東日本のE491系電車が単独で担当するが、日本海ひすいラインは2社の車両が入線しており、JR東日本キヤE193系気動車、JR西日本キヤ141系気動車、JR西日本DEC741形気動車の3種類が入線する。
2023年度[34]。乗車人員が多い順。
観光列車「えちごトキめきリゾート雪月花」(通常運行分)については、同社主催の旅行商品(団体臨時列車)としての運行であり、料金も別体系である[注 11]。詳細は「えちごトキめきリゾート雪月花#運行」を参照。
大人普通旅客運賃(小児は半額・10円未満切り上げ)。2020年4月1日改定[ETR 24]。
えちごトキめき鉄道から隣接する各社の管轄する路線に跨って乗車する場合、原則として各社の運賃を合算するが、開業時から一部の区間で乗継割引運賃が設定されている[11]。
JR東日本の特急列車「しらゆき」が妙高はねうまラインへ乗り入れるため、特急料金が設定されている。
えちごトキめき鉄道では座席指定料金・グリーン料金を設定していない。
このため「しらゆき」やJR線に乗り入れる臨時列車の一部(「越乃Shu*kura」等)に設定された指定席に乗車する場合、えちごトキめき鉄道線区間に対する追加料金は不要(JR線区間部分のみ必要)である。但し、えちごトキめき鉄道線内各駅とJR線内各駅の相互間を発着駅とする指定席券(例:上越妙高駅 - 直江津駅)は発行されない。また、2017年(平成29年)3月4日まで運転された、日本海ひすいラインと信越本線の直通快速列車に連結されたグリーン自由席に乗車する場合、グリーン料金はJR線内乗車の場合のみ必要とされた[36]。
自社で発売するえちごトキめき鉄道各駅からの連絡運輸区間は以下の通りとなっており、線区・駅によって範囲が異なっている[ETR 25][ETR 26]。
凡例
ほくほく線経由
えちごトキめき鉄道では申し込みができないが、上記の連絡運輸区間のほか、以下の条件に当てはまる場合、直江津駅みどりの窓口・指定席券売機を含むJR側でえちごトキめき鉄道線発着・経由の乗車券を申し込むことができる[38]。
上記の区間と重複しない区間のみ示す。
上越新幹線・北陸新幹線停車駅(上越妙高駅除く)
営業キロが100km以上の区間の乗車券についてはJRと同様に後戻りしない限り何度でも途中下車が可能である。開業以来、自社線内のみで営業キロが100kmを超える区間は存在しないが、他社線との連絡乗車券についても他社線の営業キロと合算して100km以上(例:直江津駅 - (あいの風)富山駅間)であれば途中下車は可能である。有効期間についてはJRと同様である。但し、自社線内各駅と大都市近郊区間(新潟近郊区間)に含まれる連絡運輸範囲各駅相互間の連絡乗車券(例:糸魚川駅 - 新潟駅)については有効期間が1日となり、途中下車も不可となる。
現在、直江津駅以東のJR東日本管内の主要駅は同社の「Suica」の新潟エリアとして、あいの風とやま鉄道では市振駅を除く全線全駅[注 20]がJR西日本の「ICOCA」の石川・富山エリアとして[39]、それぞれIC乗車カードのサービスを実施しているが、えちごトキめき鉄道では開業時点でのICカードのシステム導入は見送られ、2エリア間の通過利用もできない。
JRと同様、手帳を提示すれば身体障害者、知的障害者の割引が受けられる。
また、隣接するあいの風とやま鉄道と同様に精神障害者保健福祉手帳提示時の運賃も距離を問わず半額となる。
下記の特別企画乗車券を、線内の有人駅及び、普通列車の車内で発売している。[ETR 27]
以下の4種類はJR東日本の企画した特別企画乗車券であり、えちごトキめき鉄道が在来線を管轄する駅では、直江津駅ではみどりの窓口もしくは指定席券売機、春日山駅、高田駅、新井駅、妙高高原駅はマルス端末(MR51型)、糸魚川駅自社窓口はJR東日本ビジネスえきねっとを通じて発券される。ただし、糸魚川駅では※印を記した2種類のみ発売となり、発券時間が窓口営業時間のうち、8時30分 - 19時30分の間に制限される[ETR 26]。
なお、上越妙高駅は自社窓口ではこれらの企画乗車券を扱わないが、JR東日本みどりの窓口で取り扱う。
このほか、しなの鉄道との境界であり同社が管轄する妙高高原駅では、しなの鉄道北しなの線の企画乗車券「北しなの線フリーきっぷ」「北しなの線シルバーパス」を2015年12月1日から、直江津駅では同駅に乗り入れる北越急行の企画乗車券「土休日のほくほく2日フリーパス」を2017年4月1日から取り扱っている[43]が、これらはえちごトキめき鉄道の区間では使用できない。
JR各社の企画乗車券については、下記のとおりの扱いとなっており、券種によって利用できる区間の設定が異なっている。なお、以下に記載のない企画乗車券(青春18きっぷや北海道&東日本パス等)はえちごトキめき鉄道線内で使用できない。
以下の特別企画乗車券は、2020年3月31日をもって発売終了となった[ETR 28]。
以下の特別企画乗車券は、2025年3月9日をもって発売終了となった[40]。
当会社は北信越地域の第三セクター鉄道会社の一つであり、北越急行・しなの鉄道・あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道・ハピラインふくいと連携し、共同で企画を行うなどして地域活性化につなげている。