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排気ガス
自動車排出ガス規制 (じどうしゃはいしゅつガスきせい、英 : Vehicle emissions control )とは、自動車 の内燃機関 から排出されるガス (排出ガス、排気ガス、排気)に含まれる有害物質の量の規制の総称である。自動車排ガス規制 、自動車排気ガス規制 とも呼ばれる。
国 や自治体 、中央政府 や各州(各自治体)の政府ごとに規制値が定められており、例えば一酸化炭素 (CO)・窒素酸化物 (NOx)・炭化水素 類(HC)・黒煙 など、大気汚染 や健康被害をもたらす物質の排出上限を定めている。
アメリカ合衆国 において1963年 に「大気浄化法」、1970年 に「マスキー法」が成立したことで、世界各国でも本格的な排出ガス規制が行われるようになっていった。
歴史
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ガソリン を燃焼させる内燃機関を備えた自動車は、20世紀初頭に米国や欧州で急速に普及が進んだが、自動車の排気ガスによって大気の汚染が生じた。
米国の例では、自動車販売台数は1951年 時点で627万台、1955年 には800万台を越えた[1] 。走行する自動車が増えた分、都市部を中心に大気汚染が進み、健康被害が出始めた。さらに1950年代から排気量を増やしトルクを高めた車(いわゆる「マッスルカー 」)が登場し、有毒排気ガスにより大気汚染がさらに進んだ。
米国では1950年代から各州や連邦政府により排ガスによる大気汚染の研究が徐々に進んだ。当時の排ガス規制は地方の街でわずかに実施されていただけであったが、調査によって大気汚染は一つの街や特定の州の中だけで収まらず、境界線(街境や州境)を越える点が指摘された。それにもかかわらず、自動車メーカー各社は排気ガスの浄化対策は遅れ、逆に1960年代では売上台数を伸ばそうとマッスルカーのような高排気量の新車ラインアップを広げることに注力した。消費者側も自動車の排ガスの影響は周知されず排気量の多い車を購入し続け、大気汚染や健康被害はさらに深刻化した。
1963年に連邦法(米国全体の法)として大気浄化法 が成立した。さらに米国上院議員のエドマンド・マスキー が環境保護 のために、さらに厳格な排ガス規制のため大気浄化法の改正案(大気汚染防止法、通称「マスキー法 」)を提出し、1970年に成立した。これにより、自動車メーカー会社は排ガス規制の対策に前向きに取り組むようになり、代わりにマッスルカーのような排気量が過度に多い車種は衰退していった[注釈 1] 。
米国の自動車メーカー各社は排ガス対策のノウハウが不足しており、すぐには規制値をクリアできなかった。一方、日本の自動車メーカーでは米国の新しい規制値をも満たすエンジンおよびコンパクトカーの開発に成功し、米国への輸出が拡大する一因になり、日本車が世界で高い認知を得ることに繋がった。大規模な排気ガス規制により、自動車の普及と人々の健康や環境保護が両立する可能性が見えてきて、米国を倣う形で各国で排気ガス規制法の制定が進んだ。
関連法規と規制
世界各国
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米国
アメリカ合衆国 内においては1963年 に成立した大気浄化法 (Clean Air Act of 1963)を根拠として、連邦政府 が定める規制と各州政府(state government )が独自に定める規制が存在する。
特にカリフォルニア州 は周年の排ガス検査の義務付け(カリフォルニア州スモッグチェック制度 (英語版 ) )を含めた厳しい規制を実施している。その他の49州は特に規制値の制定が無い限りは、1968年 に成立し原則として1994年以降に義務付けられたアメリカ合衆国環境保護庁 (EPA )の定める米連邦排出ガス規制 (英語版 ) に依る。米国では1996年以降ECUの通信規格のOBD2 規格への完全移行を達成し、この世代を境に規制基準値の強化が行われた。カリフォルニア州 の規制は、カリフォルニア州大気資源局 (英語版 ) (CARB )により定められており、州知事命令(Executive Order、EO )により、具体的な適用車種やモデルイヤー の範囲、規制値などが決定された。
カリフォルニア州、とりわけロサンゼルス は盆地 が多く大気の滞留が起こりやすい地形であったが、郊外 住宅地を重視した高速道路 網や、地下鉄 や鉄道 等の公共交通 機関の整備が遅れ、都市部のモータリゼーション が急速な発展した[3] 。その結果、全米50州でも特に大気汚染が深刻となり、第二次世界大戦 中の1943年 には早くも光化学スモッグ の発生が記録された[4] 。
このスモッグは1952年 に自動車から排出されるHC 及びNOx が原因である事が特定され、1962年 には米国初の排ガス規制である「クランクケース ・エミッション規制」が州法で規定され、同州内で販売される車両へのPCVバルブ 装着が義務付けられた。1965年からは独自に排気ガスへの規制も始まり[5] 、1967年にCARBが創立されて以降は、世界的にも先進的な規制政策が実施された。そのため自動車メーカーはカリフォルニア州で販売される車種には新型の排ガス対策機器の搭載や触媒の連装化、エンジン自体の特殊な改修を盛り込んだ「カリフォルニア州仕様」を別途設定するようになった。
現在でも [いつ? ] 米国内の排ガス対策機器の補修部品(特に触媒)においては、カリフォルニア州向けの専用品がラインナップされている。前述の1994年全米規制値のモデルともなった1993年時点のCARB規制値では、日本の昭和53年規制に匹敵する基準が課され、1990年以降段階的に制定されている各種の低公害車(LEV )仕様では、日欧の規制値を上回る厳しい値が制定される事もある。
カリフォルニア州以外では、テキサス州 のテキサス鉄道委員会 (英語版 ) (RRC)がLPGエンジン のみを対象に独自の規制値を定めている。これは同州のガス田 やパイプライン輸送 開発などのエネルギー産業に対する規制と密接に関連する。
米連邦内では石油危機 を契機に、1978年から企業別燃費基準(CAFE )が世界に先駆けて制定された。1975年前後の各社の排出ガス対策は、キャブレターの予熱等の霧化効率向上(CO、HC抑制)、希薄燃焼 やバルブオーバーラップ の増大等で燃焼室 温度を下げるエンジンの改良(NOx抑制)、排気再循環 (EGR)や二次空気導入装置 (サーマルリアクター)などの後処理装置の追加などが主流であった。当時は還元 ・酸化 などの二元触媒や三元触媒 はまだ高価な上に信頼性が不十分であり、十分に普及しなかった。
1970年代 当時は、触媒は耐久性の課題から定期交換を前提とした法整備がされており、交換コストを下げるために粒状の触媒を排気管に詰め込み、触媒のみの定期交換を容易としたペレット式 を採用することが多かった。しかし、ペレット式は浄化効率や排圧 の面で難があり、なんらかの要因で容器内のペレットの保持構造が破損した場合、排気口から車外にペレットが飛散する恐れがあった。
しかし従来型の排ガス対策では排ガス性能向上と燃費がトレードオフ の関係になりやすかったため、CAFEの制定以降は浄化性能と燃費基準の両立が次第に難しくなり、各メーカーは構造面や方向性における転換を迫られた。
その後、三元触媒の製造技術の向上により排気効率や耐久性が確保され、ペレット式ではなく排気管形状に合わせて成型固化するモノリス式[注釈 2] が採用され、定期交換は必須ではなくなった。1980年代初頭より三元触媒にO2センサーを組み合わせ、空燃比 測定による燃調のフィードバック 制御を電気的に行う事で、浄化性能と出力性能、省燃費の全ての要素を満足する三元触媒方式が今日まで続く世界的なデファクトスタンダード となった[6] 。
2012年 、バラク・オバマ 政権下のアメリカ合衆国環境保護庁 は、2022年 から2025年 型(モデルイヤー )車までの基準について技術的な評価を行い、2025年 の規制値を1ガロン当たり54.5マイル(1リットル当たり23.2キロメートル)の燃費にするなどの基準を設定。カリフォルニア州など独自に厳しい規制(ZEV規制 )を設定していた州も新たな連邦政府の基準に交流することとなった。
2016年アメリカ合衆国大統領選挙 で地球温暖化 を否定するドナルド・トランプ 政権が発足すると、2018年 8月には燃費基準の大幅な緩和方針を発表。緩和に反対するカリフォルニア州などと対立した。2019年9月、連邦政府はカリフォルニア州などに認めてきた独自環境規制の特例撤廃を発表。同州を含む23州は決定無効を求めて提訴した[7] [8] 。
カナダ
カナダ ではカナダ環境省 (英語版 ) が規制を定めている。
ヨーロッパ
旧西ドイツ 時代の1985年 から独自の規制値(西独排出ガス規制)を定めていたドイツ のような事例もあるが、今日のヨーロッパ諸国は欧州連合 (EU)が定めるEU圏内統一排出ガス規制 (英語版 ) に則り、それぞれの国内法にて規制値を制定している。
EUの規制値はその世代により「ユーロx (数字)」の表記で区分が行われ、日本では2ストローク機関 搭載のオートバイ も規制対象となったユーロ3 でにわかに注目が集まった。EU圏内では1992年 7月のユーロ1 に始まり、2023年現在はユーロ6 、2025年7月(少量生産車は2030年7月)からはユーロ7 が適用される予定であり、中国 を始めとする新興国 や発展途上国 の多くも、ユーロ2やユーロ3等の世代の古い規格を準用している場合が多い。
EUの2021年の燃費規制は、欧州で販売するメーカー平均で走行1キロメートルあたりの二酸化炭素 (CO2 )排出量を95グラム以下に抑える必要がある。三井物産戦略研究所によると、ガソリン車の燃費に直すと1リットルあたり24.4キロメートルとなる。1グラム超過するごとに販売1台あたり95ユーロの罰金 を払わなければならない[9] 。2030年までに2021年目標比で、CO2 排出量を新車の乗用車は37.5 %、新車の小型商用車では31 %削減することも決定している[10] 。
インド
2010年代の首都ニューデリー の空気質指数 (AQI)は、大気汚染で深刻なレベルとされてきた北京市 より悪化した。このことからインド政府は、2017年 にBS4(BSはバーラトステージの略。規制内容はユーロ3と同レベル)規制を導入したほか、2020年 からはBS6(ユーロ5と同レベル)規制を導入する[11] 。2018年にはBS6適合車両向けの低硫黄燃料の供給も始まった[12] 。
日本
この節は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。
ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。 免責事項 もお読みください。
大気汚染防止法 や自動車NOx・PM法 、都道府県 によるディーゼル車規制条例 などが含まれる。近年は特に、ディーゼルエンジン から排出される窒素酸化物(NOx)・粒子状物質 (PM)、硫黄酸化物 (SOx)の排出規制が厳しくなっている。
この節では日本の法律用語における記載にならって「自動車排出ガス規制」とする。
規制手法
2018年現在、日本国内で行われている自動車排出ガス規制の手法は、単体規制、車種規制、運行規制と呼ばれる3種に大別される。
単体規制
一定の走行条件下で測定された排出ガス濃度が基準を満たしていない車両の新車登録をさせないことにより、基準を満たす排出ガス性能を持つ車両のみを製造・輸入・販売させる規制手法である。新車登録時のみに適用され、中古車および使用過程車には適用されない。狭義の自動車排出ガス規制はこの手法による規制を指す。
道路運送車両法 [注釈 3] 、自動車排出ガスの量の許容限度 [注釈 4] に基づく道路運送車両の保安基準 [注釈 5] による規制がこれにあたる。米国のマスキー法 もこの手法をとる。
単体規制における排出ガス濃度基準の詳細は、以下の外部リンクを参照。
車種規制
一定の走行条件下で測定された排出ガス濃度が基準を満たしていない車両の新規登録、移転登録及び継続登録をさせないことにより、基準を満たさない車両を排除する規制手法である。中古車及び使用過程車も対象となるため、単体規制よりも新車代替 が促進される。自動車NOx・PM法 による規制がこれにあたる。
運行規制
車種、用途、燃料種、排出ガス性能その他について要件を定めて車両の運行を制限し、排出ガス性能の劣る車両の流入阻止や渋滞緩和を図り、沿道の大気汚染を防止する規制手法である。首都圏 (埼玉県 ・千葉県 ・東京都 ・神奈川県 )、大阪府 ・兵庫県 ・愛知県 で実施中のディーゼル車規制条例 による規制や、尾瀬 ・乗鞍スカイライン ・上高地 で自然保護 のために行われるマイカー規制 がこれにあたる。
識別記号
各規制ごとに識別記号があり、車両型式(かたしき)の前にハイフン (-)を伴って付与される。
排出ガス規制を受けない電気自動車 や水素 を燃料とする燃料電池自動車 にも、それぞれ専用の記号が新設された。
詳細は以下の外部リンクを参照。
ディーゼル車の長短期規制
以下のように段階的に実施されてきた。
年次ごとの排出ガス規制の詳細については以下で説明する。
年次ごとの排出ガス規制
1973年以前
日本における排出ガス規制は、1963年 (昭和38年)に運輸省 船舶技術研究所内に日本初の排気ガス測定装置を設置し、省内にて自動車排出ガス規制のための研究が開始されたこと[13] に端を発する。具体的な規制は1966年 (昭和41年)、ガソリンを燃料とする普通自動車及び小型自動車の一酸化炭素濃度規制 により開始された。これはアイドリング 、加速、定速、減速の4つの走行状態(4モード)で台上測定を行い、CO濃度が3%以下[14] となることを普通自動車 及び小型自動車 の新車に対して義務付けたものである。
当初は運輸省 の行政指導という体裁[13] であったが、1968年 (昭和43年)には大気汚染防止法 が成立したことで法的な根拠も確立され、同年の保安基準にて正式なものとなった。1969年 (昭和44年)からは保安基準改正により段階的にCO濃度2.5%以下に規制が強化された[13] 。
同時に使用過程車に対しては、1967年 (昭和42年)より整備事業者に対して排気ガス対策点検整備要領 が交付され、エアクリーナー の状態、キャブレター からの燃料漏れなど16項目[14] の点検整備を励行することが行政指導された。1970年 (昭和45年)からは使用過程車に対するCO濃度試験も開始され、アイドリング検査でCO濃度が5.5%以下(1972年 (昭和47年)からは4.5%以下)になることが求められるようになった[15] 。当時、このような排出ガス規制を本格的に行っていた国家は、大気浄化法 のアメリカ合衆国と日本のみである。
1970年 (昭和45年)、運輸技術審議会自動車部会において「自動車排出ガス対策基本計画」が策定され、昭和48年・50年の二段階での排出ガスの低減目標を設定。この時点では東京都内の排出ガス総量を、昭和50年において昭和38年相当量へ、昭和55年において昭和36年相当量への抑制を目標とすることを主旨としていた[16] 。
同時に、同年5月に東京都 新宿区 牛込柳町 にて発覚した、大気汚染による牛込柳町鉛中毒事件 への対策のため、段階的に有鉛ガソリン を無鉛化 する方針も決定された。結果的に、昭和53年規制以降の三元触媒 の普及にあたり、触媒の寿命を縮める要因の一つである、ガソリン 中の鉛 が除去される道筋が付けられた。
そして1973年 (昭和48年)、新車及び使用過程車に対する排ガス試験項目が、炭化水素 及び窒素酸化物 にも拡大される形で、昭和48年排出ガス規制が成立[17] 。同時に、1970年大気浄化法改正法(マスキー法)を元として、同法が目標としていた1975年式以降のCO / HC及び1976年式以降のNOxは、それぞれ1970年式以前のCO / HC及び1971年式のNOxの少なくとも1/10以下に低減する という環境基準を、日本の排出ガス規制(昭和50年及び51年規制)においても、正式に適用することが決定された[17] 。
1973年以後
使用過程車 - 昭和48年規制以前のいわゆる未対策車 。昭和48年規制後は、昭和43年(1968年)以前に登録された車種を対象に暫定措置として、点火時期 を数度遅らせる調整(遅角)し、点火時期調整 ステッカー(正方形)の貼付を行うことが広く実施された。なお、この点火時期調整を経ても昭和48年規制の基準に適合出来ない4サイクルガソリンエンジン車に対しては、アイドルHC特殊 ステッカー(楕円形)の貼付が行われた。
なお現在でも、現時点での排出ガス規制の施行以前に登録された車両は、法令上は全て「使用過程車」として扱われることになる。
昭和48年排出ガス規制 - 1973年施行。識別記号なし。ただし新車についてはエンジンルーム内にエンジン型式、排気量及び装着されている装置、エンジン調整値などを表記した上で、昭和48年排出ガス規制対策済車 であることを示すコーションプレートやステッカーが貼付されていることで識別が行えた。
この年から出荷される車種には恒久措置 としてディストリビューター に負圧式進角装置もしくは触媒 (酸化 触媒)コンバータの取り付けのいずれかが義務付けられた。さらにNOx値の高いものには排気再循環 装置(EGR)が追加された。排出基準は車両総重量 2,500 kgを境にこれより軽量なものを軽量車 、重いものを重量車 として区分し、多くの小型自動車 と軽自動車 は軽量車として区分された。また、2ストローク と4ストローク の排出基準が別に設定された[18] 。
なお「使用過程車」においても、昭和43年から49年度末に登録された車種に対しては、触媒か負圧式進角装置の後付けで排出ガス対策済(点火時期制御方式の排出ガス減少装置) ステッカー(丸形)貼付が認められた点が、後年の排ガス規制との決定的な違いである。
昭和49年排出ガス規制 - 1974年 施行。識別記号なし。ディーゼルエンジン車に対する初の規制 。NOxを49年使用過程車比80 %[19] に。燃焼室 形状、噴射ポンプ 、噴射ノズル、ガバナー 、タイマーの変更で対応。以降、平成6年排出ガス規制までこれにEGRを追加した程度で対応。
昭和50年排出ガス規制 - 1975年 施行。識別記号A (定員10人以下の乗用車 )またはH (それ以外)。CO、HCを中心に大幅強化が行われたいわゆる「日本版マスキー法」。適合した車両に対しては排出ガス対策済 ステッカー(丸形、横ストライプ入り)が貼付された。
昭和51年排出ガス規制 - 1976年 施行。識別記号B (主に等価慣性重量1トン以下)またはC (それ以外)。NOxの大幅強化が行われた日本版マスキー法第二弾。適合した車両に対しては排出ガス対策済 ステッカー(丸形、横ストライプ、二重輪郭のクローバーマーク)が貼付された。
本来はこの年度の規制でマスキー法の規定値を完全達成する予定であったが、74年に数度実施された環境庁 及び衆議院 での聴聞の席上、トヨタ自動車 を筆頭とする国産 9メーカー が連名で、「現時点の技術水準では昭和51年実施予定のマスキー法正規規定値への適合は、耐久性 を度外視する手法以外では困難であり、昭和50年規制値を2年間継続することで技術開発の猶予期間を与えてほしい」旨を答申。これを承けた中央公害対策審議会は、マスキー法正規規定値を2年延長した1978年 (昭和53年)より完全実施する旨を発表、昭和51年規制はNOxをメーカー答申を考慮した値に強化するに留まる暫定的なものとなった[20] 。
昭和50年暫定規制 - 2ストロークの軽自動車のために51年規制内に別枠で設けられた規制値[21] 。1976年4月1日より1977年9月30日までに製造される2ストローク車には、暫定措置として若干緩い規制値が適用された。なお、軽貨物車 向け2ストローク機関については、昭和50年と51年以降で規制値に変化がないため、識別記号は50年のH が継続して使用された。
昭和52年排出ガス規制 - 1977年 施行。識別記号なし。ディーゼルエンジン車および車両総重量2.5トンを超えるガソリン・LPGを燃料とする貨物自動車(いわゆる「重量車」)に対する規制。NOxは49年使用過程車比ディーゼル車68 %、ガソリン・LPG車59 %[19] 。
昭和53年排出ガス規制 - 1978年 施行。識別記号E (定員10人以下の乗用車)。昭和48年より始まった日本版マスキー法導入の集大成であり、NOx排出基準は48年4月以前使用過程車比8 %[19] まで縮減。この数値の達成は三元触媒 コンバータの実用 化によるところが大きい。マスキー法の目標値を完全達成し、当時「世界で最も厳しい規制」と言われた[22] 規制値の厳しさのみならず、自動車検査登録制度 (車検)により、定期的な排ガス試験が義務付けられていること、排ガス対策機器の取り外しが検査官により厳しく目視点検されていたことなども一因であった。
また、本規制より2ストロークと4ストロークの区分もなくなった。この後平成12年までさほど大きな基準値の変化はなく、平成12年規制まで一般乗用車や軽乗用車の代表的な規制 であった。平成3年以降は試験モードが10・15モード に移行。
排ガス対策機器
マスキー法関連
昭和48年規制関連
点火装置 - ディストリビューター の改良やCDI などの強力な点火装置の採用も排ガス対策に貢献した。
点火プラグ - 点火装置の改良により、火花ギャップは大きく広がることになった。
PCVバルブ - 1960年代初頭に北米で光化学スモッグ 対策のために導入。日本では昭和45年9月からブローバイガス還元装置 としてPCVバルブまたはシールド式クランクケースブリーザー の装着が義務付けられる[28] 。
チャコールキャニスター - 1971年に北米で初採用
ダッシュポット - キャブレター車において、スロットルの急激な戻りによるHC増加を抑制するショックアブソーバー [29]
排ガス減少装置 - BCDDとも呼ばれる。エンジンブレーキ 時に適量混合気や空気を追加投入する事でHCを抑制するバイパス機構[30]
2ストロークオイル - オイルの品質改良も2ストローク機関の排ガス対策には重要な要素であった。
スズキ・SRIS - S uzuki R ecycle I njection S ystem。1972年よりオートバイ のGT380 やGT750 で採用された機構で、1973年よりL50型にも採用された。アイドリング時にクランクケース 下部に滞留した未燃焼オイルを加速の際に隣のシリンダーへ送り込み再燃焼させる事で、排気ガスへの未燃焼オイルの混入を軽減し、2ストローク特有の白い排気煙の減少を図った機構。後のLJ50型はこの機構に3気筒の排気干渉 を利用した[31] チャンバー を組み合わせる事で、昭和50年暫定規制及び51年以降の正規規制値をもクリアし、1988年に至るまで2ストロークの命脈を保った[32] 。
それ以降の規制関連
三元触媒 /酸化触媒/還元触媒 - 三元触媒として機能するためには、排気中の酸素濃度(O2 センサー で測定)に対する空燃比 のフィードバック制御が必須である。酸化触媒を経て登場した三元触媒は、後にほぼ全てのメーカーに採用された。
スズキ・TC-53 - ハニカム構造の酸化触媒を二重に配置(T win C atalyst)し、エアポンプで二次空気も供給する事で、2ストローク機関における排ガス浄化を強化。これによりスズキは軽乗用車向けのT4A型とT5A型で昭和53年規制をクリアした[32] 。
NAPS - 日産自動車の排ガス対策技術の総称。当初は酸化触媒を採用。
排気再循環 (EGR) - 吸気に排気ガスを加えることで吸気中の酸素濃度を下げ、燃焼温度を下げることで窒素酸化物(NOX )の生成を抑制する。一旦排気バルブから出された排ガスを再度取り込む外部EGR方式と、可変バルブタイミング機構を用いて内部的に行う内部EGR方式とがある。EGRで取り込む排気ガスを冷却して効率を高めるクールドEGR式も実用化されている。
ツインプラグ
日産・Z型エンジン (NAPS-Z) / 日産・CAエンジン (NAPS-X) - 大量のEGR化でも安定した燃焼を行う目的で、燃焼室 に2本の点火プラグを配置するツインプラグによる急速燃焼 技術を採用。
スズキ・EPIC - 排気孔点火浄化装置(E xhaust P ort I gnition C leaner)の意。2ストローク機関における排ガス浄化を強化する為に、燃焼室と排気ポート に1本ずつの点火プラグを配置し、未燃焼ガス(HC)を再燃焼。併せてエアポンプでCOも浄化する仕組みである。1970年には既に特許を取得していた機構[33] であり、LC10W型 (英語版 ) は更に前述のSRISも組み合わせられた[32] ものが、アメリカ合衆国環境保護庁 のマスキー法試験に挑んだ記録が残っている。これによると、1973年に未対策のLC10型(フロンテGX)での試験では75モデルイヤー規制値に適合しなかったが[34] 、翌1974年にEPIC機構搭載の試作型フロンテは日本の50年正規規制値よりも遙かに低い値で合格している[35] 。しかし、この装置が必要となる1977年の50年正規規制値発効当時には既にLC10/10W型は550ccへの移行により姿を消しており、後継のT5A及びLJ50はいずれもEPICとは異なる機構で規制への適合を図った事から、市販車両への採用は行われなかったようである。
DPF (DPF) - ディーゼルエンジンの排気ガスから粒子状物質 (PM) を捕集するフィルター。
選択触媒還元脱硝装置 (SCR) - ディーゼルエンジンの排気ガス中の窒素酸化物 (NOx) をハイシリカゼオライト 触媒や金属酸化物 を触媒として窒素 (N2 ) と水 (H2 O ) に分解する装置。
エンジンコントロールユニット (ECU) - エアフロメーター とO2センサーによる空燃比制御も排ガス規制に貢献した。
OBD - ECUの自己診断機能の統一規格。各社まちまちであった通信規格の統合により、当局による排ガス基準値チェック体制の強化に貢献した。
電子制御燃料噴射装置 (EFI/EGI) - ガソリンエンジンでは精密な空燃比制御が必要になるにつれ普及し、キャブレターと置き換わっていった。噴射する位置により、シングルポイント(SPI)、マルチポイント(MPI)、筒内直噴 (DI)に大別される。
電子制御式キャブレター (ECC) - EFIに比較して安価であり、万一ECUが故障してもフィードバック制御が無くなるのみで走行自体は一応可能である点が、初期のEFIと比較して長所とされた[6] 。
いすゞ・I-CAS - I zusu C lean A ir S ystem。GM より供与された酸化触媒技術が主体。1975年式117クーペ では、70年に登場した日本初のEGIであるECGIに酸化触媒、EGR、二次空気導入装置を組み合わせたシステムを採用した。
希薄燃焼
排気デバイス
スズキ・ERV(エキゾーストロータリーバルブ) - 1975年、2ストローク2気筒のL50型にて採用され、昭和50年規制を通過。3気筒化されたLJ50では排気干渉を利用した集合エキゾーストマニホールド のみで規制を通過できた事から、ごく短期間のみの採用となった。
不正機器
脚注
注釈
^ マッスルカーはその後、1973年に起こった第一次オイルショック により、ガソリンを浪費する「ガスガズラー」とされ、完全に消滅した。
^ ウール やヘチマ 状の多孔質、あるいはハニカム ・レンコン 様の孔を開け、そこに触媒粒子を塗布する手法
^ 第41条(自動車の装置)。
^ 昭和四十九年一月環境庁告示第一号、根拠規定は大気汚染防止法第19条第1項。
^ 第31条第2項(ばい煙 、悪臭のあるガス、有害なガス等の発散防止装置)、昭和二十六年七月運輸省令第六十七号。根拠規定は大気汚染防止法第19条第2項。
出典
関連項目
外部リンク
自動車部品
その他の部品・関連項目
安全装置 安全技術 ミラー セキュリティ 常備品 オプション部品 空調設備 関連項目
その他
安全装置・安全技術 常備品・オプション部品・アクセサリー 関連項目 油脂類