新河岸川産業廃棄物処理対策(しんがしがわさんぎょうはいきぶつしょりたいさく)とは、1970年前後に埼玉県朝霞市上内間木の新河岸川河川敷[1]で不法投棄された産業廃棄物に対し、埼玉県が遮蔽処置や除去処分などを実施している対策である。[2][3]。河川敷に埋設された廃棄物による土壌汚染・地下水汚染問題の解決(適正処理)を進めている。
埼玉県は1987年(昭和62年)8月から1988年(昭和63年)10月にかけて、一級河川である新河岸川の河川改修事業に伴う用地買収を行った[3]。同年12月、朝霞市上内間木の新河岸川左岸河川敷で掘削築堤工事中に高水敷予定箇所を掘削したところ、ガラス、ゴムくず、廃プラスチック、有機溶剤入りドラム缶等の廃棄物が埋められているのが発見された[3]。県の調査によれば、廃棄物は高濃度のPCB、ダイオキシン類、鉛などの重金属、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トルエンなどの揮発性有機化合物により汚染されていることが判明した[2]。
1990年(平成2年)5月、廃棄物中の有害物質が河川や地下水に流出し水質汚染することを防ぐため、現場周囲に遮水壁(深さ13mの鋼矢板)を設置し、雨水の浸入防止のため防水シートで覆い、さらにその上からに約1mの覆土を行う応急処置を行った[2]。対策を施した面積は2,450平方メートルに及んだ[2]。1994年(平成6年)3月には、洪水防止と廃棄物の流出防止のため、廃棄物が埋設されている区間の護岸工事を実施した。川底の地盤改良を施した上で、新河岸川と河川敷の廃棄物埋設箇所の間に深度21mの鋼管矢板を設置した[2]。
1991年(平成3年)には、一時保管する移転先確保の必要性についても議論された。当該廃棄物にはトリクロロエチレン・テトラクロロエチレン等の揮発性有機溶剤(特定有害産業廃棄物に規定されている有害物質)も多く含まれていたため、これらの物質が地下水や大気等の周辺環境に影響を与えないようにするための暫定措置として1996年(平成8年)から有機溶剤(揮発性有機化合物:VOC)の吸引除去工事を行ない、1996年(平成8年)から2010年(平成22年)までの間、推定50トン以上の有機溶剤を回収している[4]。
1994年度(平成6年度)に試験的に一部掘削し保管した廃棄物はドラム缶約950本に及んだ[2]。1996年(平成8年)に69か所のボーリング調査を行い、廃棄物の埋設量を約11,000立方メートルと推定した[2]。掘削試行工事の結果、廃棄物が高濃度の揮発性有機溶剤で汚染されていることが確認されたため、廃棄物中の有機溶剤を吸引除去する工事を開始した[2]。
2009年(平成21年)6月、県は専門家による「埼玉県新河岸川産業廃棄物処理推進委員会 技術検討委員会」を設置[2]。廃棄物の無害化処理の工法案の検討を行い、2020年時点でも委員会による検討を継続している[5]。しかし事態の全面解決には至っておらず、第2回新河岸川産業廃棄物処理技術検討委員会では、ガス吸引の効率が悪くなっている事や今後“第2帯水層”の地下水への影響が心配される等の討議がなされた[6][7]。
1990年(平成2年)に応急措置で現場周囲に鉛直遮水壁(鋼矢板=シートパイル)が打設されてから年月が経ち、防食対策[8]がされていない鋼矢板は、耐用年数が経過すると腐食により穴が開く。廃棄物が地中に埋まった状態では、有害物質が漏れ出しても発見が遅れる可能性は極めて高い。県の基本方針では、PCB処理特別措置法(ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法)により、PCB廃棄物の処理期限が明確になっているため、2016年(平成28年)までに無害化処理するものと位置付けられていた[9]。
現地で掘削しドラム缶に収納して保管している廃棄物は、2016年(平成28年)12月までに無害化処理認定施設での処理を完了した[2]。しかし2021年現在、鋼管矢板で護岸した部分にはまだ廃棄物が埋設されたままとなっている[2]。
不法投棄については、犯人の特定ができず公訴時効が成立し未解決事件となった[10]。
県の公表によれば、推定10,000平方メートル以上の廃棄物にはPCBや鉛などの有害物質が含まれていた。廃棄物に含まれる主な有害物質は、PCB、ダイオキシン類、重金属等(カドミウム、水銀、鉛、砒素、六価クロム[11]。)、揮発性有機化合物(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ベンゼン)などである。
県が公表している廃棄物の量は、埋まっている状態のものが推定で10,100立方メートル。試験的に掘削しドラム缶で保管している状態のものが307立方メートル。合計で10,407立方メートル。有毒な特定有害物質は混合しているため比率が確認できていない。立方メートルをキログラムに換算すると莫大な数値となる。
当該対策にかかった総費用や、浄化(廃棄物の撤去および処分)に要する費用は明らかにされていない。県から地域住民に対して、産廃特措法(特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法)[21] の実施計画を定めるかどうか(同法に基づく特定支障除去等を講ずる必要がある事案かどうか)の説明はなされておらず [22][23]、 県は国に対して同法の期限延長を要望していなかった。
同法の期限延長を望む意見は滋賀県など他県でも出ており、民主党が「有効期限の10年延長を求める改正法案」[24] を衆院に提出した経緯はあるが、同法案は廃案の公算[25] が大きいとされていた。その後、環境省は2012年度末で失効する同法の期限を延長する方針を決めている[26]。
2004年(平成16年)以降に同法の適用を受けた事案では数億円から数十億円級の事業費が公表されているが、いまだ問題解決していない当該対策には、部分的に公表されている金額だけでも既に数億円の費用が生じている。不法投棄の原因者や、県外から持ち込まれた廃棄物かどうかが特定できないまま、国の財政支援を受けずに県民が当該対策費用を負担し続けている。
環境省は産廃特措法の適用について「不法投棄等の不適正処理を未然に防ぎ拡大を阻止するために、行政が法制度等を的確に執行するのは当然だが、あえてそのことについて触れなければならない現実がある」と前置きした上で、香川県の豊島事件や青森・岩手県境不法投棄の事例を具体的に挙げ「地方自治体が早期に的確な行政措置を執行することで不法投棄の継続や拡大が防げた事案が散見される」と指摘した[27]。同法適用に関しては「そのような観点から、都道府県等が講じる不法投棄に係る支障除去等の措置に関して実施計画を策定させ、立入検査など当該事案に関して行った措置や責任の所在など行政対応を厳しく検証し、その内容を明らかにさせる」こととし、同法適用に対して「行政の的確な執行」を条件付けている[27]。埼玉県が同法適用を受けるとすれば同様に県の対応が問われることとなる。
河川法第59条では「河川の管理に要する費用の負担原則」として、同法および他の法律に特別の定めがある場合を除き一級河川に係るものにあっては国が河川の管理に要する費用を負担することとされている[28]。新河岸川は一級河川であり、さらに同法第60条2項では「第9条2項の規定により都道府県知事が行うものとされた指定区間内の一級河川の管理に要する費用は、当該都道府県知事の統轄する都道府県の負担とする。(当該費用のうち)その他の改良工事に要する費用にあつては(国が)その2分の1を負担する」こととされている。
当該現場の土地所有者である国(国土交通省)は、対策費用の捻出や有害物質の撤去・完全無害化を推進する役割(当該処理対策の主管)をしていない。本来であれば不法投棄された土地の場合、排出事業者が産業廃棄物の撤去計画を立案し、当該事業者がかかる費用を負担する事になる(排出事業者責任)。排出事業者や不法投棄した行為者が特定できない場合は、土地所有者が責任を持つのが通例とされている。
大学及び国の研究機関の専門家らで構成。新河岸川産業廃棄物の無害化処理に向けて、具体的かつ現実的な工法案の検討を行う。 会議は原則公開で傍聴が可能。会議の結果は埼玉県公式ホームージで公開される。
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