貨物線(かもつせん)とは、鉄道貨物輸送のための貨物列車が主に運行される鉄道路線である。
日本における貨物線
日本においては鉄道路線は一般に旅客列車を中心に運行されることが多いが、創業時の鉄道は一般に貨物輸送が主体であった路線が多い。
特に、臨海鉄道と呼ばれる臨海工業地帯等に敷設する鉄道では、日本国有鉄道(国鉄分割民営化後は日本貨物鉄道(JR貨物))と地方自治体・大口荷主である沿線工場立地企業が合同出資し、旅客列車が運行されず貨物列車のみを運行する路線が多い。
なお、都市部においては一般に旅客列車の本数が多いため、別路線を建設して比較的速度が遅くなる貨物列車をその新路線に移す工事が行われたことがある。この一例として、武蔵野線や京葉線は、貨物列車のバイパス線である東京外環状線の一部として建設された。
また、これ以前には山手線・東海道本線等において旅客列車を運行する線路と分離して複々線化されたことがある。
しかし、山手線では湘南新宿ライン・埼京線、東海道本線の場合はSM分離に伴う横須賀線列車の乗り入れなどで、現在では「貨物線」とされた軌道にも旅客列車が定期的に運行されることから、あまり意識されていないことが多い。山手線の場合は「急行線」または「列車線」、東海道本線の場合は「緩行線」または「電車線」的役割が強くなっている。
名古屋臨海高速鉄道あおなみ線も、元々は名古屋港西側への貨物支線だったのを地元の要望で旅客化したものである。また、おおさか東線は西日本旅客鉄道(JR西日本)の片町線の貨物支線である城東貨物線を改良し、新大阪駅から久宝寺駅の間で旅客営業する鉄道路線で、このうち南側の放出駅から久宝寺駅までが2008年3月15日に、北側の新大阪駅から放出駅までが2019年3月16日に開業した。
貨物線の旅客化(完全転換や日常的な併用)だけでなく、貨物専用線に旅客列車を臨時的に乗り入れさせるツアーも、首都圏で実施されている[注 1]。
- 以下ではJR・各私鉄直営の路線について掲載する。
- なお、これらには貨物列車が主に運行される鉄道路線だけでなく、歴史的経緯から貨物線と呼ばれる路線が含まれている。
現用路線
※廃止はしていないが列車の運行が全くなくなった休止路線・区間については#廃止・休止路線を参照。
JRグループ
- 凡例
- □印は全線で定期旅客列車が運行している路線
- ■印は一部区間で定期旅客列車が運行している路線
- △印は全区間で臨時旅客列車が運行している路線
- ▲印は一部区間で臨時旅客列車が運行している路線
- ▽印は過去に全区間で旅客列車が運行していた路線
- ▼印は過去に一部区間で旅客列車が運行していた路線
- ★印は団体列車のみ運行実績あり
- 【管轄欄】 1種…第1種鉄道事業者 2種…第2種鉄道事業者
- 北印…北海道旅客鉄道(JR北海道) 東印…東日本旅客鉄道(JR東日本) 海印…東海旅客鉄道(JR東海) 西印…西日本旅客鉄道(JR西日本) 四印…四国旅客鉄道(JR四国) 九印…九州旅客鉄道(JR九州) 貨印…日本貨物鉄道(JR貨物)
私鉄・第三セクター
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会社名
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路線名
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区間
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営業キロ
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電化方式
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複線・単線
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主な貨物駅・操車場・信号場
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旅客列車
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備考
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秩父鉄道 |
三ヶ尻線 |
武川 - 三ヶ尻 |
7.6km |
直流1500V |
単線 |
熊谷貨物(タ) |
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通常の貨物列車のほか東武東上線の甲種輸送列車も運行される。
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▽ |
相模鉄道 |
厚木線 |
相模国分(信) - (JR)厚木 |
2.2km |
直流1500V |
単線 |
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全区間 |
神中鉄道時代の1941年まではこちらが本線であり旅客列車も運行していた。 1941年に相模国分駅 - 海老名駅間が開業した際に厚木駅 - 相模国分駅間は旅客営業を廃止して貨物線となった。 かつては航空燃料の輸送もあったが、現在は甲種輸送列車のみ運行されている。
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▽ |
三岐鉄道 |
三岐線 |
(JR)富田 - 三岐朝明(信) |
1.0km |
直流1500V |
単線 |
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全区間 |
1985年までは旅客列車も運行していた。 旅客列車は現在、全て近鉄富田駅 - 三岐朝明信号場間の近鉄連絡線を通り、近鉄富田駅発着となっている。 なお、旅客輸送がなくなった現在でもこちらが三岐線の本線である。
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▽ |
水島臨海鉄道 |
港東線 |
水島 - 東水島 |
3.6km |
全線非電化 |
単線 |
東水島駅・倉敷貨物ターミナル |
倉敷市 - 三菱自工前 |
貨物専用線であるため、旅客列車の運行はされていない。 普段は貨物列車のみの運行であるが、水島臨海鉄道のイベントや地域主催イベント・鉄道の日イベント・鉄道愛好者が企画したイベントなどが開催される際には特別列車や団体専用列車などが、貨物列車専用線を走行するときがある。
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▽
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西濃鉄道
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市橋線
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美濃赤坂駅 - 乙女坂駅
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1.3km
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全線非電化
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単線
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全区間
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1930年2月に市橋線の美濃赤坂~市橋間で、ガソリン動車による旅客営業開始した。1945年4月に旅客営業を終了し、貨物専用線となった。
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廃止・休止路線
貨物線の休廃止は数が膨大なため、主なものを掲載(Wikipedia日本語版に掲載されている路線が中心)。
国鉄・JRグループ
- 凡例
- ?印…詳細不明
- 【旅客欄】
- ▽印…全区間で旅客列車の運行があった路線 ▼印…一部区間で旅客列車の運行があった路線(いずれも団体列車は除く)
- 無印…団体列車を除き旅客列車の運行実績はなし。
- 【休廃止欄】
- ◇印…休止路線であるが施設等は完全に残っているため復活は可能。
- ◆印…休止路線であるが部分的または全区間にわたり施設が撤去されていたり、軌道敷上に他の構造物が建てられていたりしているため復活は不可能、事実上の廃止路線。
- 無印…廃止路線
- 【管轄欄】 1種…第1種鉄道事業者 2種…第2種鉄道事業者
- 国印…日本国有鉄道(国鉄) 北印…北海道旅客鉄道(JR北海道) 東印…東日本旅客鉄道(JR東日本) 海印…東海旅客鉄道(JR東海) 西印…西日本旅客鉄道(JR西日本) 四印…四国旅客鉄道(JR四国) 九印…九州旅客鉄道(JR九州) 貨印…日本貨物鉄道(JR貨物)
大陸における貨物線
中欧班列
ユーラシア大陸では2011年に重慶とドイツ・デュースブルク間で貨物鉄道「中欧班列」の運行が開始された[13]。
中欧班列の運行本数は開設当初は年間17本だったが、2018年には6,300本となっており、成都や西安、鄭州、武漢などにもルートを拡大している[13]。
中欧班列の主な所要日数は、東莞-ハンブルク間で20日、瀋陽-ハンブルク間で19日、西安-ハンブルク間で18日、蘇州-ハンブルク間で16日、武漢-ハンブルク間で15日となっている[13]。
国際陸海貿易新通道
国際陸海貿易新通道(CCI-ILSTC)は中国とシンガポールが締結した新たな陸海複合輸送ルートで、中国の重慶市から広西チワン族自治区の欽州港まで鉄道輸送し、欽州港から東南アジアへ海上輸送するものである[13]。重慶市と欽州港の鉄道貨物線の定期運行は2017年12月に開始された[13]。欽州港を起点とする貨物鉄道の定期便の所要日数は、欽州-重慶間が2日、欽州-成都間が3日、欽州-昆明間が27時間である[13]。
広西チワン族自治区の南寧市では2017年9月に中国・シンガポール南寧国際物流団地(CSILP)の開発が正式決定され、CSILPは南寧国際空港から20km、南寧南駅(貨物専用駅)や南寧駅(乗客専用駅)から10-15km圏内に位置する[13]。
脚注
注釈
- ^ 経由するのは新金線、常磐貨物線、山手貨物線、高島貨物線。出典は、「貨物線」を行くツアー特集クラブツーリズム(2019年4月14日閲覧)および『日経MJ』2018年12月30日(ライフスタイル面)掲載記事【新サービス 記者がチェック】都会の貨物線走る鉄道ツアー/普段通れない鉄橋に興奮 お座敷列車「華」で広々風景。
- ^ 分岐駅の路線は現在、日南線に編入されている。
出典
関連項目