音楽 ジャンルとしてのロック 、もしくはロック・ミュージック 、ロック音楽 (ロックおんがく、英語 : Rock music )は、1950年代 にアメリカ合衆国 の黒人音楽 であるロックンロール やブルース 、カントリーミュージック を起源とし、1960年代 以降、特にイギリス やアメリカ合衆国で、幅広く多様な様式へと展開した[ 3] [ 4] [ 5] 強いビート と電気的に増幅した大音量のサウンドを特色とする[ 6] 。
また、ロックミュージックは英国のモッズ やスウィンギング・ロンドン 、1960年代後半の米国のヒッピー ムーブメントやカウンターカルチャー などの社会運動 が高揚した時代と同時期に絶頂期を迎えた。1970年代後半のパンク は、ニューウェイヴ へと発展した。
概要
ロックンロールは、R&B 、ブルースとカントリーなどを融合することで誕生した[ 7] 。その後ビートルズ の登場により、ロックンロールは抽象的な要素を含むようになり「ロック」と呼ばれるようになっている。1950年代から1960年代初頭のラブ・ソング主体のポップス やロックンロールとは異なり、「ロック」の歌詞 は、体制に対する反乱 、政治 ・社会的問題 、芸術 、恋愛 、哲学 など、幅広いテーマを扱っていた。
音楽のロバート・クリストガウ は多くの場合、白人 中流階級 のミュージシャンが優勢なジャンルであるとも述べているが、実際にはビートルズ、ザ・フー [ 注 1] 、アニマルズ [ 注 2] などイギリスのロッカーには、「白人労働者階級 出身者」が多かった。アメリカのブルース・スプリングスティーン も、労働者 の一部のアイコンとなっていった[ 8] 。
社会音楽学者サイモン・フリス (英語版 ) は、ロックは「どこかポップ以上のもの、どこかロックンロール以上のもの」であり、それは「ミュージシャンが、スキルやテクニックに重点をおき、それをロマンチックなアート表現のコンセプトと組み合わせたからだ」とした。またロックは、ブルース・ギタリストやエレクトリック・ギタリストの強い影響を受けて発展してきた[ 9] 。
詳細
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ (2006年撮影):リードボーカル、ギター、ベース、ドラムという4人編成ロックバンドの典型的構成である。
ロックのサウンドは、伝統的にエレクトリックギター が中心となるが、現代的な形態のエレクトリックギターは1950年代にロックンロール の人気とともに登場したものであった[ 10] 。ロックにおけるエレクトリックギターのサウンドは、典型的な場合、同時期のジャズ にいち早く導入されたエレクトリックベース [ 11] と、ドラムとシンバル を組み合わせたドラムセット によるパーカッション によって支えられる[ 12] 。この3つの楽器によるトリオに加えて、他の楽器が追加されることも多く、特にピアノ 、ハモンドオルガン 、シンセサイザー といったキーボード 類が加えられることがよくある[ 13] 。ロック音楽を演奏するミュージシャンのグループは、「ロックバンド 」「ロックグループ」と呼ばれることが多く、典型的には2人から5人のメンバーから構成される。ロックバンドの古典的な形は、ボーカル 、リードギター 、リズムギター 、ベース、ドラムス、また時にはキーボード、その他の楽器から、ひとつ以上の役割を引き受けるメンバー4人によって編成される[ 14] 。
1956年に「ハートブレイク・ホテル 」がヒット。その後も「ハウンド・ドッグ 」「監獄ロック 」などのヒットで、ロカビリー /ロックンロール のキングとも呼ばれたエルヴィス・プレスリー [ 15] 。
初期
ロックンロールという言葉は、1951年にDJ のアラン・フリード によって、ダンス向きの黒人音楽を指す言葉として名付けられたとされる[ 16] 。1954年にはビル・ヘイリー とヒズ・コメッツの「ロック・アラウンド・ザ・クロック 」が発表され[ 17] 、さらに1956年にエルヴィス・プレスリー がロカビリー で成功を収めると、多くのアーティストがロックの演奏をはじめ、ロックは音楽の一大ジャンルとなった[ 18] 。ロックは時を置かずイギリスにも上陸したものの[ 19] 、一方アメリカでは商業化の進展とともに活力が失われていき、1950年代末から1960年代初頭にかけては一時失速した[ 20] 。フォーク のプロテスト 精神を継承し、ロック・ミュージックは政治行動や人種、性別、セックス、ドラッグに対する社会的態度とも結びついており、旧世代による体制や、消費主義に対する若者による反乱でもあった。
ブリティッシュ・インヴェイジョンとフォーク・ロックほか
1960年代を象徴するアイドルロックグループとなったビートルズ [ 21] 。
1960年代 後半の時期は、ロックの「黄金時代 (golden age)[ 3] 」「ルネッサンス」、後にクラシック・ロック (classic rock)[ 4] 」とも呼ばれた。
1964年 、ビートルズ はロックンロールが誕生した国、アメリカへの上陸を果たし、全米チャートでヒットを連発することになった。ビートルズ以外にも、エリック・バードン 率いるアニマルズ やローリング・ストーンズ 、ザ・フー 、キンクス 、ゾンビーズ 、デイヴ・クラーク5といったイギリスのロック・バンドなどがこの時期にアメリカでヒットを出したことから、これはブリティッシュ・インヴェイジョン [ 22] (British Invasion : イギリスの侵略)と呼ばれる。アメリカでもブリティッシュ・インヴェイジョン の影響を受けて、後にガレージロック と呼ばれるグループが次々と登場し、一部のバンドは成功を収めた。その中で特に人気を博したのは、カリフォルニア 出身のビーチ・ボーイズ であった[ 23] 。ニューヨーク で結成されたヴェルヴェット・アンダーグラウンド は、商業的な成功を収めることはできなかったが、ルー・リード の実験的音楽性や文学的素養からアート・ロック と呼ばれ、ドアーズ やザ・ストゥージズ 、後のパンク・ロック やニュー・ウェイヴ に影響を与えた[ 24] 。
また、時を同じくしてブリティッシュ・インヴェイジョンの影響を受けたフォーク ・グループも次々と登場した。これらのグループの多くは元々はフォークを演奏していた若者たちによって結成されたものであり、彼らの音楽性もフォークからの影響を受けたものであったため、この動きはフォーク・ロック [ 25] と呼ばれた。フォーク・ロックの代表的アーティストには、ボブ・ディラン 、バーズ 、タートルズ 、ママス&パパス 、ボー・ブラメルズ、グラスルーツ 、バッファロー・スプリングフィールド などがいた。1960年代末からは、サンタナ などのラテン・ロック [ 26] 、カントリーロック のニール・ヤング やイーグルス も登場した[ 27] 。
このころには、1967年にカリフォルニア州 のモントレー でモントレー・ポップ・フェスティバル が開催されたのを皮切りに大規模なロック・フェスティバル が各地で開催されるようになり、なかでも1969年に行われたウッドストック・フェスティバル は40万人もの観客が集結した伝説的なイベントとして語り継がれている[ 28] 。
ハードロックとグラム・ロック
ハードロック の有名バンドとして活動したレッド・ツェッペリン [ 29] 。
1960年代 末にレッド・ツェッペリン 、クリーム などが登場し、ブルースをよりロック的に演奏することに重点を置くようになった。エレクトリックギター のエフェクター 類の発展や、大音量の出せるPA 等も、これらの新しいサウンドを支えた。そしてビートルズ(曲「ヘルタースケルター 」)、ジミ・ヘンドリクス 、クリーム、キンクスなどをルーツしたハードロック [ 30] が登場した。ディープ・パープル 、レッド・ツェッペリンは1970年代 前半に商業的成功を収めたハード・ロックとなった。グランド・ファンク・レイルロード 、フリー 、ブラック・サバス 、マウンテン 、ユーライア・ヒープ らが後に続き、1970年代にはその影響を受けたクイーン 、キッス 、エアロスミス がデビューした。1970年代前半には、派手なメイクのT・レックス 、デヴィッド・ボウイ 、ロキシー・ミュージック 、モット・ザ・フープル やアリス・クーパー らのグラム・ロック [ 注 3] も人気を博した。
プログレッシヴ・ロック
1960年代末には実験的サウンドへの志向が強まり、長尺の曲や、難解な歌詞、楽器の演奏技術を極限まで極める傾向も出てきた。この傾向はヨーロッパ、特にイギリスにおいて強かった。シンセサイザー やメロトロン など最新の楽器を使用し、クラシック を背景に高度な技術を駆使したロックはプログレッシブ・ロック [ 31] と呼ばれた。代表的なバンドにはピンク・フロイド 、イエス 、キング・クリムゾン 、エマーソン・レイク・アンド・パーマー 、ジェネシス 、ムーディー・ブルース などがいた。
パンク/ニューウェイヴ
『勝手にしやがれ!! 』を発表しロンドン・パンク の中心的存在となったセックス・ピストルズ [ 32]
ザ・クラッシュ はパンクの代表的バンドの一組だった
1970年代 前半のプログレッシブ・ロックやハードロックが隆盛だったが、75年以降は産業ロック がチャートに目立つようになってきた。それに対して「ロックは死んだ」と宣言しストレートでシンプルなロックに回帰したのが、1970年代後半に生まれたパンク・ロック [ 33] だった。
1973年デビューのニューヨーク・ドールズ や、1970年代半ばに登場したパティ・スミス 、ラモーンズ 、ディクテイターズなどにより1975年ごろ誕生したといわれるパンク・ロック[ 34] (いわゆるニューヨーク・パンク )は、ラモーンズのロンドン 公演などを機にロンドンでも存在が知られるようになる。
1976年末にはダムド が活動をはじめ、翌年にはセックス・ピストルズ [ 注 4] が結成され、ジャム 、ザ・クラッシュ 、ストラングラーズ らが続きロンドン・パンクが興隆、社会現象となった。当時のロンドン・パンクは、1960年代 のシンプルなロックンロールの原点に戻った。パンクは、テクニックを気にしないアグレッシヴな演奏、右翼 からの襲撃対象となる程、権力や体制に反抗的で過激なロックだった。パンクが短期間で終息した後は、スティッフ 、2トーン らのインディー・レーベル によるニュー・ウェイヴ が登場した。
ニュー・ヴェイヴの代表的ミュージシャン、バンドとして、エルヴィス・コステロ 率いるジ・アトラクションズやポリス 、トーキング・ヘッズ 、ジョイ・ディヴィジョン 、ニュー・オーダー 、パブリック・イメージ・リミテッド などがいる[ 35] 。
オルタナティブ・ロックとグランジ
怒りや絶望、混乱をダイレクトに表現した詞とサウンドで若者の支持を集め全米一位を獲得し、グランジ ・ブームの牽引役を担ったニルヴァーナ [ 36] 。
1980年代 以降、メインストリームから外れ、パンク・ロックなどの影響を受けたオルタナティヴ・ロック が台頭した[ 37] 。代表的なバンドとして、ザ・ストーン・ローゼズ 、プライマル・スクリーム 、ザ・スミス 、R.E.M. 、ソニック・ユース 、ピクシーズ 、スマッシング・パンプキンズ などがいる。中でも、パンク・ロックとヘヴィメタル の要素を融合したグランジ は、ニルヴァーナ 、パール・ジャム 、サウンドガーデン などを生み、ロックの潮流を大きく変えた[ 38] 。
電子音楽 やノイズミュージック とハードロックやヘヴィメタルを融合したインダストリアル・ロック も登場した。代表的なバンドとして、ミニストリー やナイン・インチ・ネイルズ などがいる[ 39] 。
また、ヒップホップ の台頭を受け、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ 、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン 、コーン など、ファンク やヘヴィメタルとヒップホップを融合させるバンドも現れた[ 40] 。
ブリットポップ
1990年代 、ロンドン やマンチェスター を中心に、ブリティッシュ・インヴェイジョン、グラム・ロック、パンク・ロックといったイギリスのロック黄金期の影響を受けたブリットポップ と呼ばれるバンドが多くデビューした[ 41] 。代表的なバンドとして、ブラー 、オアシス 、スウェード 、パルプ 、ザ・ヴァーヴ などがいる。また、フィードバック・ノイズ やディストーション などを複雑に用いたギターによるミニマル なリフ の繰り返し、浮遊感のあるサウンドが特徴のシューゲイザー も登場する。代表的なバンドとして、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン 、ジーザス&メリーチェイン 、ライド などがいる[ 42] 。
ポストロック
1990年代以降、ギターをリフ やパワーコード ではなく音色や響きを重視して演奏するなど、ロックの枠組みにとらわれない新しいサウンドを目指すアーティストが出現する。代表的なミュージシャンとして、シカゴ 出身のトータス やジム・オルーク がいる[ 43] 。
テクノ・ミュージック の隆盛により、ロックとテクノを融合させたアーティストも多く生まれた。代表的なミュージシャンとして、マッシヴ・アタック 、プロディジー 、ケミカル・ブラザーズ などがいる。また、ブリットポップ出身のレディオヘッド がエレクトロニカ の要素を強め、電子音楽とロックの境界はさらに縮まった[ 44] 。
2000年代 以降は、音楽性の多様化でロックをカテゴライズするのが難しくなっていく。パンクやニューウェイヴの流れをくむガレージロック では、ザ・ホワイト・ストライプス 、ザ・ストロークス 、ザ・リバティーンズ 、アークティック・モンキーズ などがいる[ 45] 。ダンス・ミュージック とパンクを融合したダンス・パンク では、LCDサウンドシステム 、フランツ・フェルディナンド 、!!! などがいる[ 46] 。プログレッシブ・ロックとヘヴィメタルを融合したプログレッシブ・メタル では、トゥール やアイシス がいる[ 47] 。インストゥルメンタル を主軸に置くポストロック では、モグワイ やゴッドスピード・ユー!・ブラック・エンペラー がいる[ 48] 。実験音楽 やサイケデリック・ロック などを融合したドリーム・ポップ では、シガー・ロス やアニマル・コレクティヴ がいる[ 49] 。
脚注
注釈
^ 「マイ・ジェネレーション」「サマータイム・ブルース」などが代表曲。
^ 「朝日のあたる家」「悲しき願い」などがヒット。反戦歌 の「スカイ・パイロット」も発表した。
^ Tレックスの「メタル・グゥルー」、デヴィッド・ボウイの「スター・マン」などがグラム・ロックの有名曲である。
^ 代表曲は「ゴッド・セイブ・ザ・クイーン 」「アナーキー・イン・ザ・UK 」など。
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関連項目
外部リンク