劇団四季 (げきだんしき)は、四季株式会社が制作企画・興行運営を行う、日本の商業演劇 を代表する劇団 である。初期はアート志向であり、シェイクスピア 、チェーホフ など既存商業演劇(新派 、コマ劇場 、新橋演舞場 など)よりは、新劇 団体(俳優座 、文学座 など)に近い演目を持っていたが、1972年ごろからブロードウェイ やディズニー映画 などの商業演劇に転向した。年間3,500公演(1日9 - 10公演)を行うともいわれている。
概要
700名以上の俳優 、経営350人、技術350人のスタッフにより、東京 5か所・大阪 1か所・名古屋 1か所に設置した専用劇場を中心に年間3,000ステージ超を上演(興行)する。年間観客動員数はリピーター を含めて約300万人。1970年代以降、海外ミュージカル 作品のロングラン上演を通じて日本にミュージカルを定着させるのに大きな役割を果たした。
海外ミュージカルの輸入によらない、浅利慶太 がプロデュースを手がけて制作する「劇団四季オリジナルミュージカル」や「劇団四季ファミリーミュージカル」も人気がある。また、自由劇場 開業後は従前のストレートプレイ の上演も増加している。
概歴
1953年(昭和28年)7月14日に浅利慶太 ・日下武史 らを中心として10人で結成した学生演劇集団であった。劇団演出は浅利慶太 であった。
第一作は1954年(昭和29年)公演の『アンチゴーネ 』[ 1] 。
最初からミュージカル劇団を志向していたわけではなく、設立からかなり長い期間の間はストレートプレイ専門の劇団だった。これは、当時新劇 界を席巻していたイデオロギー優先で演劇的な面白さを欠いた潮流に懸念を抱いた創立者たちが、演劇そのものの面白さを追求する劇団として創設したこととも関連している。おもにジャン・ジロドゥ やジャン・アヌイ らフランス文学 作家の書いた戯曲を演じていた。
芸術性を優先して、日本人による創作劇を連続上演して経営危機に陥ったり、生活を支えるためにアルバイト を優先する劇団員と、それを批判した劇団幹部の対立によって内部分裂の危機に見舞われたりしたが、安定した集客力を持つ高水準の芝居を上演することで、公演だけで法人運営が成り立ち、劇団員も生活できる経営を志向するようになっていく。
1971年(昭和46年)に浅利のプロデュースで越路吹雪 主演のミュージカル『アプローズ 』がヒットすると、さまざまなミュージカルを上演しながらノウハウを蓄積し、1979年 (昭和54年)に『コーラスライン 』を上演したことが転機になる。
日本の劇場は月単位契約のため、大ヒットを重ねても結局収益が限られる傾向があり、浅利は専用劇場の確保を模索し始める。1983年(昭和58年)に西新宿 の都有地空地を借り、テント張りの仮設劇場を設置し、1984年(昭和59年)11月10日まで『CATS 』のロングラン公演 に踏み切った(山田卓 振付)。1985年(昭和60年)には大阪市 西梅田の旧国鉄 コンテナヤードに設置した仮設テント劇場で『CATS』を再演、13か月のロングラン公演を達成した。
浅利は、中曽根内閣 時代に中曽根康弘 のブレーンを務め、政界から経済界 への広い人脈を活かすようになる。まず福岡、1996年、キャナルシティ博多 内に完成した「福岡シティ劇場」を劇団四季日本初の専用劇場として開場[ 2] 。創立45周年の1998年(平成10年)には、国鉄改革 により接点が生じた松田昌士 が当時社長を務めた東日本旅客鉄道 (JR東日本)がメセナ 活動の一環として「JR東日本アートセンター 四季劇場」を竣工し、それを関東地方初の専用劇場とした[ 3] 。
四季劇場[春]のこけら落とし作品である『ライオンキング』は、日本最長である20年以上のロングラン公演記録を日々更新し、ターニングポイントとなった。以後、電通 ・阪神電気鉄道 など大手企業が自社ビルなどに設置した劇場 を専用劇場として独占的に使用したり、『アイーダ 』『マンマ・ミーア! 』『ウィキッド 』など最新の海外ミュージカル作品の輸入上演により動員数を拡大し、週におおむね4日以上ミュージカルやストレートプレイ を上演し続けている。
『コーラスライン』を上演するまで、劇団四季の上演回数は多くても年19回で、年平均10回程度だった。しかし『コーラスライン』を上演した1979年(昭和54年)は前年の50倍の581回となり、『CATS』を初演した1983年(昭和58年)は707回を数える。以後一貫して上演回数が増え続け、2002年 (平成14年)には2,530回上演している。
また2010年代後半からはオリジナル作品の創作に取り組んでおり、2019年上演の『カモメに飛ぶことを教えた猫 』や2020年上演の「はじまりの樹の神話〜こそあどの森の物語〜 』・『ロボット・イン・ザ・ガーデン 』、2022年上演の『バケモノの子 』、2024年4月上演予定の『ゴースト&レディ 』などがある。
2020年10月24日から、東京・JR東日本四季劇場[秋] のオープニング作品として『オペラ座の怪人 』が上演される[ 4] 。
2021年6月15日、『劇団四季 The Bridge ~歌の架け橋~』宮城県・多賀城公演(多賀城市民会館 大ホール)の公演準備中、派遣労働者が舞台セットで2.47メートルの高さから墜落し、脳挫傷の重傷を負った。2022年1月27日、仙台労働基準監督署 は、手すりの設置などの墜落防止措置を怠った四季株式会社と舞台監督を労働安全衛生法違反 の罪で書類送検 した[ 5] 。2022年3月8日、仙台簡易裁判所 が四季株式会社と舞台監督にそれぞれ罰金 20万円の略式命令 を出した[ 6] 。
2022年10月から東京ディズニーリゾート (千葉県 浦安市 )内の多目的ホール である舞浜アンフィシアター にて『美女と野獣 』が上演することを2021年12月に発表した。劇団四季はこれまでに7作品のディズニーミュージカルを上演しているが、同リゾート内で上演するのは同作品が初めてとなる[ 7] [ 8] 。
2024年1月24日、海外新作ミュージカル「バック・トゥー・ザ・フューチャー」を2025年4月にJR東日本四季劇場[秋]で上演決定したことが発表された。[ 9]
2024年12月25日、名古屋市熱田区 に新たな専用劇場を建設し、2026年夏に移転することが発表された[ 10] 。なお今回の新劇場建設は、名古屋市中村区 にある現名古屋四季劇場 の土地契約終了に伴うものである。また同劇場の公演は、2025年10月19日に開幕が予定され、2026年2月23日に千秋楽を迎える「マンマ・ミーア! 」を以て終了する。
特徴
方法論
演技にあたり、常に背筋を伸ばして腹式呼吸 を意識し、母音をはっきり発音する独特の朗唱法(母音法 )を「四季メソッド」として徹底させている[ 11] 。
この発声方法は舞台上から観客の耳へと台詞がはっきり届くよう生み出された。
技術
シアター・イン・シアター方式
従来、海外の大型ミュージカルを上演するには劇場に大がかりな仕込みを行う必要があった。
たとえば『オペラ座の怪人』を上演する場合、奈落からせり上がってくるキャンドル群やプロセニアム・アーチなどの設営などの仕込みと撤去だけで数週間を必要とするため、専用劇場や長期間占有できる劇場(日生劇場、近鉄劇場、中日劇場など)でしか上演することができなかった。シアター・イン・シアター方式 とは、簡単にいえばプラモデル のようなものである。
あらかじめ別の場所で舞台装置(音響装置を含む)を一度組み立て、それを小さなユニットに分割する。上演したい劇場では、分割されたユニットをその劇場内に組み立てる(組み入れる)だけで完成することが可能であるため、短期間で作業を終えることが可能になる。これにより、今まで上演できなかった都市での公演が実現できるようになった。
必ず同じ大きさで完成するため、間口や奥行きが大きく異なる劇場で使用することはできない。
劇団四季ギフトサービス
2010年 8月2日 、凸版印刷 と富士通エフ・アイ・ピー のインフラを用いた「劇団四季ギフトサービス 」を導入することが発表される。
劇団四季のウェブショップや、全国の劇場などにてチケットを購入する際に利用できるプリペイドカード で、日本のエンターテイメント業界では初めての導入となる[ 12] 。
カードの販売は、劇団四季のウェブショップ、一部の常設劇場にて実施されており、入金(チャージ)金額は3,000円、6,000円、9,800円の3種類の中から選択される形となっている。
Amazonログイン&ペイメント
2015年 5月11日 、Amazon.co.jp の「Amazonログイン&ペイメント 」を導入。これにより、Amazon.co.jpのアカウントで公演チケットが購入できるようになった[ 13] 。
役者
通常は劇団四季研究所の研究生オーディションで選出され研究生として入団し、劇団内で育成されて役者 (実演家)として所属契約を結んで出演となるが、近年は外部の劇団や芸能プロダクション所属の役者・歌手 が登用されて出演することもかなり増加している。
北京・ソウルでのオーディション を毎年行っていたが、現在は行っていない。海外出身者にダンス ・歌 と並行して日本語 の授業を設けており、中には主役を務めた者もいる。
役者の雇用区分は個人事業主 (請負社員 )であり、出演料 は配役と出演回数に応じて変動する。主役や2番手クラスでは年1,000万円を超えている者がいると2000年代前半までゴシップ や都市伝説 として報じられていたが、2007年以降になると浅利のインタビュー記事や公式サイト内の社史コラムページ「四季物語」の文中で事実であると四季側が公表するようになっている。
浅利が「受かっても落とされる」「慣れ、だれ、崩れ」「1音落とす者は去れ」と発言するように、配役されても出来が悪いと途中でキャスト交代されることがある。
専属の俳優 は出演作品のパンフレットや公式サイトの記事以外では詳細なプロフィールは公表されず、個人のブログの設置も行われていないため私生活については窺い知ることができない。退団した場合も劇団からは公表されない場合がほとんどである。
俳優のギャラは1年間ごとに更新される年間契約料と出演料があり、年間契約料は俳優が俳優に専念するための最低保障で、その分内面から外面まで俳優としての要求に応えるために発声・ダンス・体型維持など厳格である。要求に応えられなければ年間契約料は更新されない。また出演料も入団合格後キャストオーディション・稽古キャストオーディション・最終舞台稽古オーディション・本番舞台出演オーディションを経て出演して払われる。2017年実績では1,300人が応募し、コース別の書類・実技で400人選考後、即戦力俳優と1年間の研究生を経た者との合格者は40人[ 14] 。
副業禁止であり、劇団四季関係以外の役者活動やアルバイト は出来ない為、劇団四季が生活する分の給料を保障している。
四季株式会社
四季株式会社 (しき)は、商業演劇 である劇団四季を運営する演劇 興行 会社である。衣装メンテナンスも自社で行われ、ロングラン上演中の破損にも対応できる[ 17] 。
専用・常設劇場
現在
専用劇場がある大阪・名古屋では、劇団員は、劇団も劇団員にもコストがかかるホテル住まいでなく、劇団四季専用マンションから通勤している。
準専用劇場
閉館となった専用劇場
過去に常設・通年公演をしていた劇場
関連施設
四季芸術センター
2006年 に神奈川県 横浜市 青葉区 あざみ野 に開所され、劇団を統括する四季株式会社の本社所在地ともなっている。
敷地面積1万7404.34平方メートル 、延床面積1万1741.98平方メートル。地下1階・地上2階構造、従来の稽古場棟である南館と増設された新稽古場棟である本館の2棟から成り立っている。屋上には太陽光発電 パネルが設置されて、環境に配慮されている。
おもな設備としては、実際の舞台とほぼ同じ機構で稽古をすることが可能な大・中稽古場をはじめ、さまざまな広さの稽古場が計10か所あるほか、個人レッスン向けの研究室、ナレーション取りなどを行う音響スタジオ、衣装・床山部屋、食堂、トレーニングジム、医務室、マッサージ室、四季株式会社のバックオフィスなどがある。
ほとんどの上演演目の稽古はこのセンターで実施されており、劇団四季の中枢となっている。
配役のない研究生は無給であるが、多くの劇団 では有料であるレッスン料が、公演収益のある劇団四季では無料で受講でき、食堂も割引で利用できるとマツコの知らない世界 で放送された。
代々木アトリエ
1965年 、渋谷区 代々木参宮橋 に落成。3階建て、約430平方メートルで、現在も稽古場として使用されている。また、四季から独立した浅利演出事務所はここに事務所を置いている。また「冬」の名称で呼ばれることもある。
四季演劇資料センター・劇団四季 浅利慶太記念館
四季演劇資料センター
長野県 大町市 に開所され、劇団四季 浅利慶太記念館 (旧・四季演劇資料館→劇団四季記念館)と舞台美術保管倉庫がある。
四季演劇資料館は、1996年 に四季演劇資料センター内に開所され、舞台模型・写真・台本・大道具・小道具・衣裳や関連する記録資料が展示されている。また、劇団四季のコマーシャルビデオが閲覧できるライブラリーも備えている。管理・運営は、財団法人 舞台芸術センター。2016年4月に一度目のリニューアルを行い、名称を「劇団四季記念館」に変更。2020年7月に二度目のリニューアルを行い、名称を「劇団四季 浅利慶太記念館」に再度変更した。
舞台美術保管倉庫は、約4万3000平方メートルの広大な敷地に、15棟の倉庫群から構成されており、これまでの劇団四季の約45演目[ 17] の照明・音響機材、大道具・小道具・衣裳、さまざまな資料などが保管されている。四季芸術センターはじめ各地とオンラインで結ばれ、コンピューター管理が行われている。
新都市公演
東京エレクトロンホール宮城 (仙台市 青葉区 )、静岡市民文化会館 (静岡市 葵区 )、上野学園ホール (広島市 中区 )にて数週間から最長半年程度のロングラン公演 が定期的に行われている。それらの公演は全国公演とは別に新都市公演と銘打って開催されている。さらに2017年からはKAAT 神奈川芸術劇場 (横浜市 中区 )でも半年程度のロングラン公演が行われている。
公演作品
ミュージカル(五十音順)
※()内は改題のタイトル。
ストレートプレイ(五十音順)
ファミリーミュージカル(五十音順)
ニッセイ名作劇場→ニッセイ名作シリーズ でも、多くの作品が上演されている。また、こころの劇場 シリーズとしてブランド展開している。
その他の作品
おもな俳優(五十音順)
女優
男優
海外出身者
かつて所属していた俳優(五十音順)
女優
男優
故人
おもな客演出演(五十音順)
※多数につき、Category:劇団四季の演目契約者 も参照。
かつて所属していた研究生
取引先企業
北海道旅客鉄道 (JR北海道)
かつて専用劇場を共同で運営したが、北海道四季劇場で上演される作品のチケット販売を請け負っている。
TBSホールディングス (旧:東京放送ホールディングス)
かつて本社旧社屋跡に四季専用劇場開設。ただし関係は他の地域と比べると濃密ではない。
日本テレビ放送網
電通が運営している専用劇場公演の主催に名を連ねている。また、同社お天気キャラクターのそらジロー とコラボレーション企画を行ったこともある[ 24] 。
電通
東京と大阪に四季専用劇場を開設し、現在は東京のみ四季専用劇場を運営している。
フジサンケイグループ
四季劇場春で長期上演中の「ライオンキング」の主催に名を連ねている。
キヤノン
スポンサーだが横浜に専用劇場「キヤノン・キャッツ・シアター」を開設し、運営してきた。
積水ハウス
スポンサーだが東京に専用劇場(積水ハウスミュージカルシアター四季劇場[夏])の命名権を購入し、運営してきた。
大同生命
「アラジン」に特別協賛し、東京に専用劇場(大同生命ミュージカルシアター 電通四季劇場[海])の命名権を購入している。
第一三共ヘルスケア
スポンサーだが四季劇場秋で上演される学校の夏季休暇期間に伴うファミリーミュージカル(こころの劇場)の協賛に名を連ねている。
野村ホールディングス
スポンサーだが東京に専用劇場(NOMURAミュージカルシアターJR東日本四季劇場[春])の命名権を購入している。
清水建設
スポンサーだが東京に専用劇場(清水建設ミュージカルシアターJR東日本四季劇場[秋])の命名権を購入している。
東日本旅客鉄道 (JR東日本)
共同で東京都区部の四季専用劇場の運営のほか、東京23区にある四季専用劇場及び東京エレクトロンホール宮城・KAATで上演される作品のチケット販売を請け負っている。
毎日放送
関西地区の公演において特に支援。
西日本旅客鉄道 (JR西日本)
共同で京都劇場の運営のほか京都劇場、大阪四季劇場および上野学園ホールで上演される作品のチケット販売を請け負っている。
日本生命
企業メセナ 活動の一環としてニッセイ文化振興財団との共同でニッセイ名作劇場→ニッセイ名作シリーズ を実施している。
中日新聞社 、東海テレビ放送
名古屋での公演の主催に名を連ねている。
東海旅客鉄道 (JR東海)
新名古屋ミュージカル劇場(新名古屋ミュージカル劇場は2015年9月閉館)→名古屋四季劇場(2016年秋オープン)及び静岡市民文化会館で上演される作品のチケット販売を請け負っている。
西日本新聞社
RKB毎日放送
西日本シティ銀行 (うち旧福岡シティ銀行 が関係)
福岡シティ劇場 開設において特に支援。現在もそれぞれの本業において公演PRなどを行っている。
九州旅客鉄道 (JR九州)
キャナルシティ劇場で上演される作品のチケット販売を請け負っている。
テレビ番組
関連書籍
脚注
関連項目
企業に関する関連項目は前述の取引先企業 を参照のこと。
特別版 放送において「オペラ調で吹き替えをしなくてはいけない」という都合から同役を演じているメンバーが声優 として参加している。
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
劇団四季 に関連するカテゴリがあります。
劇団四季専用劇場
首都圏
首都圏以外 準専用劇場 現存しない劇場 関連項目
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