『結婚物語』(けっこんものがたり)は、新井素子によるラブコメディ小説。1985年から1987年まで角川書店の雑誌『野性時代』で連載され、後に角川文庫より全3巻で発売された。その後、続編にあたる『新婚物語』(しんこんものがたり)が1988年に同じく『野性時代』に連載され、こちらも角川文庫より全3巻で発売された。
また両作とも、日本テレビ系の「土曜グランド劇場」にて、沢口靖子主演でテレビドラマ化されている(後述)。
その後、新井は2010年から2011年にかけて『web小説中公』(中央公論新社)において後日譚である『銀婚式物語』(ぎんこんしきものがたり)を連載し、2011年に中央公論新社から発売された。これに伴い『結婚物語』も中公文庫から全2巻で復刊された。その後も「大腸ポリープ物語」を2015年4月から同年7月まで『yomiDr.』(読売新聞)に、「ダイエット物語」を2016年1月から同年6月まで『Web小説中公』で連載、後に両作品は『ダイエット物語……ただし猫』(だいえっとものがたり……ただしねこ)として、2016年に中央公論新社から発売された。そして、『定年物語』(ていねんものがたり)を2022年7月から2023年10月まで『web BOC』(中央公論新社)で連載して、2024年に中央公論新社から発売された。
本項目では『新婚物語』及び『銀婚式物語』、『ダイエット物語……ただし猫』、『定年物語』についても合わせて記述する。
新井素子は1985年に大学時代の同期生と結婚しているが、本作はその結婚を巡る本人及びその周辺のドタバタぶりをヒントに脚色・小説化したものである。本人にとっては初めてのSF以外の分野の小説である。
なお、新井のそれまでの作品やキャラクターから「いつからSF小説に発展するのか?」「これは全て実話なのか?」という読者からの問い合わせが多く、作者は「あとがき」でこの作品がSF小説ではなく、また「実話そのもの」(エッセイ)でもなく、フィクションとして大幅に脚色したものであることを強調している。
若手女性作家・原陽子は、先日別れ話を切り出されて別れた筈の大学時代の同期生・大島正彦から、「結婚の話を両親にしてきた」と告げられる。別れた恋人に自分の結婚話をする正彦に激怒する陽子。だが、陽子が別れ話だと思って聞いていた正彦の告白は、実は正彦が必死で考えた一世一代のプロポーズの言葉で、陽子も同意した(陽子は別れ話と思っていたわけだが)と思った正彦は結婚の準備を始めていたのである。
誤解が解けて、改めてプロポーズを受け入れた陽子であったが、思いがけない展開で決まった結婚が婚約を経て結婚式にこぎつけるまでには、考えもしなかったトラブルが次々と発生することになったのである。
続編の『新婚物語』では、何とか結婚式を挙げた陽子と正彦が、最初の結婚記念日を迎えるまでの1年間を描いている。
『銀婚式物語』は結婚式から25年、すなわち銀婚式当日の朝を迎えた陽子が夕方に約束した正彦との食事会までの間に『新婚物語』の結末からの24年間を振り返ってゆく姿を描いていく。
「大腸ポリープ物語」(『ダイエット物語……ただし猫』所収)は新井自身の体験を、便潜血による発覚、検査、入院、ポリープ切除術といった陽子の闘病記として描く。
「ダイエット物語」(『ダイエット物語……ただし猫』所収)では、正彦のみならず猫ズまでも糖尿病予備軍と診断されたため、陽子は両者のダイエットに奮闘する。
「リバウンド物語」(『ダイエット物語……ただし猫』文庫版に追加)では、折角ダイエットに成功した正彦と猫ズがリバウンドを始めるが、陽子は正彦が60歳で定年を迎えるのを機に運動をさせようと考える。ところが、会社から雇用延長を打診されたことで陽子の思惑が狂い始める。
『定年物語』は、2020年6月30日、コロナ禍での勤務に不安を覚えた陽子の説得で正彦は退職することになり、作家を続ける陽子と趣味に没頭する正彦、そして猫ズとの新たな生活に入ることになる。
カバーイラストはいずれもさべあのまが担当している。ただし、ドラマ放映前後には、陽子を演じる沢口靖子の写真がカバーとなった版も存在する。『ダイエット物語』の文庫版は猫の写真である。
『結婚物語』が1987年2月14日〜3月28日(全7回)、『新婚物語』が1988年10月8日〜1989年1月28日(全15回)、どちらも日本テレビ系の「土曜グランド劇場」で放送。当時のテレビドラマでは珍しく、結婚にまつわるデータや各儀式の説明[注 1]が本編内の要所で流れ、主演の沢口と陣内がこれらの説明を読み上げていた(両作とも共通)。 『新婚物語』では、放送開始前週の1988年10月1日に1時間のプレ番組『新婚物語は来週から始まるよ!』が放送されたほか、初回は陽子と正彦の新婚旅行という設定でマレーシアロケを敢行し、21:00~22:24の30分拡大放送であった[注 2]。また放送期間中、第13回の放送予定日である1989年1月7日に昭和天皇が崩御した影響で、13回以後の放送は当初の予定より1週遅れとなった。
(レコード、CDはEPICソニー)