ウィリアム1世によって最初に制度化された貴族称号は伯爵(Earl)であり、1072年にウィリアム1世の甥にあたるヒュー(英語版)に与えられたチェスター伯爵(Earl of Chester)がその最初の物である[注釈 5]。伯爵は大陸では"Count"と呼ぶが、イングランドに導入するにあたってウィリアム1世は、エドワード懺悔王時代の"Eorl"を意識して"Earl"とした。ところが伯爵夫人たちには"Earless"ではなく大陸と同じ"Countess"の称号を与えた。これは現在に至るまでこういう表記であり、伯爵だけ夫と妻で称号がバラバラになっている[54][55]。
侯爵から男爵までの貴族は家名(姓)ではなく爵位名にLordをつけて「○○卿(Lord)」と呼ぶことができる(公爵のみは卿で呼ぶことはできず「○○公 Duke of ○○」のみ)。例えばカーナーヴォン伯爵の「カーナーヴォン」は爵位名であって家名はハーバートだが、カーナーヴォン卿と呼び、ハーバート卿にはならない。また日本の華族は一つしか爵位を持たないが、イギリスでは一人で複数の爵位を持つことが多い。中でも公爵・侯爵・伯爵の嫡男は当主の持つ従属爵位のうち二番目の爵位を儀礼称号として称する[59]。