『ULTRAMAN』(ウルトラマン)は、2004年12月18日から全国松竹系映画館にて公開されたウルトラシリーズの映画作品であり、ULTRA N PROJECTの一つ。第17回東京国際映画祭・特別招待作品[1]。
キャッチコピーは「銀色の流星…舞い降りる」、「高度3万フィート! 6.5G! 極限の一戦!!」。
テレビシリーズ『ウルトラマン』第1話での出来事が、現代社会において現実に起こった場合を想定する形でリメイクされた作品[2]。また、本作品の公開時に放映されていたテレビシリーズ『ウルトラマンネクサス』と同じ世界観を持ち、テレビシリーズの前史にあたる[1]。
それまでのイメージから大きく外れたデザインや、映像表現の難しい10メートル級の身長など、ウルトラマン自体の表現にも数多くの意欲的な試みがなされた。
スタッフには、小中和哉や長谷川圭一など平成ウルトラシリーズメインスタッフから、菊地雄一や板野一郎、松本孝弘など、それまでウルトラシリーズには馴染みの薄かった人物までが幅広く参加している。CGが多く取り入れており、フルCGによるクライマックスの空中戦シーン(板野サーカス)が大きな見所となった[3]。この技術は、後年の作品にも大きく取り入れられている。また、防衛庁の全面協力を受けており、F-15の離陸シーンなどは全て実物である。
本作品や、後年の『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』などといった映画作品は、ウルトラシリーズ中でも空中戦をメインにしている部分が多い。アニメーションによる空中戦で高い評価を持つ板野一郎がフライングシーケンスディレクター(空中戦担当)を担当することで、CGを中心とした空中戦を最大限に引き出した。CGIには、板野が特技監督を担当したOVA『マクロス ゼロ』のCGIチームが参加している[4]。
本作品はテレビシリーズ『ウルトラマン』第1話「ウルトラ作戦第一号」のリメイクとなっているため、真木舜一の搭乗しているF-15が赤い発光体(ネクスト)に接触するのは、ハヤタの搭乗したビートルがウルトラマンに衝突するオマージュで、ザ・ワン(特にレプティリア)のデザインは、(青い怪光の演出も含め)同話に登場の怪獣ベムラーを意識したものになっている。
『ネクサス』最終話でのノアVSザギの最終決戦の舞台も映画同様新宿であるため、『ULTRA N PROJECT』の一連の決戦は新宿で始まり、新宿で終わるという形になった。[独自研究?]
未公開シーンが幾つか存在し、後に発売されたDVDの映像特典で視聴できる。
スタッフによるトークやコメンタリー[要文献特定詳細情報]では、『ウルトラマン』との区別のため、「横文字ウルトラマン」などと称されている。
鈴木清は、2002年以降にテレビシリーズを前提としない、映画のみで企画されたウルトラマンの劇場映画のオリジナル作品の企画を練っており、元々は人間心理を重視する方向性を持ってSF属性を突き詰めた真正のSF企画として『ウルトラマン』を組み立て直した、『YELLOW EYES(警告)』というシリアスかつダークな作風の「想像を超えた謎の力(光の力)を手にした青年が不条理な戦いの中で暴力的衝動から脱し、正義に目覚めていく」物語の予定だったが、9.11を見たスタッフらによってストレートに暴力性を描くことが極めて難しくなり、暴力性の表現を調整し、やや別方向に主題を振る必要が出てきたため、リアル・シミュレーションや生物的なニュアンスと初代ウルトラマンのリボーンというコンセプトを構築するためのミリタリー設定を引き継ぎつつ、現在のような「ウルトラマンとなって子供のために戦う父親」が主人公という家庭的なマイルドさを加味した家族向け映画として作られた[5][3]。そのため、リアルな怪獣災害という側面を持ちながら、父親が子供のために戦うストーリーなど、暗くならない配慮がなされている。また、随所に『ウルトラマン』や『ウルトラQ』など過去作品へのオマージュも込められている。『YELLOW EYES』は監督を小中和哉、脚本を長谷川圭一が担当する予定であった[5]。初期タイトル『YELLOW EYES』はウルトラマンの目と、危険信号としての黄色のダブルミーニングである。[要出典]
ネオスタンダードヒーローを目指した『ULTRA N PROJECT』の企画は本作品を最初として立てられており(詳細は『ULTRA N PROJECT』の項目を参照)、『ULTRA N PROJECT』の一環として再構成され[3]、本来は『ネクサス』の放映前の2004年夏に公開される予定であった[1][2]。
制作当初の題名は『ULTRAMAN THE NEXT』(ウルトラマン・ザ・ネクスト)であった[6]が、途中で題名が変更された。この名前は本作品のウルトラマンの名前や、漫画版のタイトルとして使われている。
制作の背景には『バットマン』や『スパイダーマン』が大人も楽しめるヒーロー映画として成功を収めたことがあり、その日本版を狙って制作された。
本編は2003年10月にクランクインした[6]。
ウルトラシリーズの劇場版としては宣伝や上映館数が少なかったことも影響してか[注釈 1]、興行収入は1億5000万円[要出典]と振るわなかった。
続編『ULTRAMAN2 requiem』(ウルトラマン2 レクイエム)の制作も予定され、公開時には本編後に「2005年冬 公開」を知らせる特報も流されたが、その後は公式な告知も行われないまま立ち消えた[注釈 2]。当時の円谷プロダクション社長であった円谷英明は、総製作費2億円ですでに製作に着手していた映画を『ネクサス』の評価を踏まえて同作の放送短縮とともに中止にしたと、自著の中で述べている[8]。監督の小中和哉も2016年の上映イベントで『ULTRAMAN2』がクランクインしていたことを明かしている[9]。中止にあたっては円谷英明と当時の会長であった円谷一夫が製作現場に赴いて中止の説明を行ったが、その後に円谷一夫は撤退は本意ではなかったと周囲に漏らすようになり、後の社長交代の一因になったとされる[8]。
太平洋沖に落下した未確認飛行物体を調査中の海上自衛隊の深海探査艇が破壊される。探査艇操縦者の有働貴文は奇跡的に生還し、青い発光体に破壊された旨を証言するが、有堂の容貌は次第に凶暴な「ビースト・ザ・ワン」(以下「ザ・ワン」と表記)に変質して逃亡する。
3か月後、航空自衛隊のイーグル・ドライバーの真木舜一は、赤い発光体の調査のため緊急発進して激突後、やはり生還する。真木はかねての希望により除隊し、民間航空会社へ勤め始める。
有働の前例があったため、陸上自衛隊の対バイオテロ研究機関BCSTはひそかに真木の監視を続け、ある日真木を強制連行して軟禁する。真木をおとりにして「ザ・ワン」をおびき寄せて射殺する作戦であった。ザ・ワンは誘い出されるが、BCSTが準備した毒殺弾が効果なく、作戦は失敗する。ザ・ワンは周辺のトカゲを吸収し巨大化する。陸自施設の地下に監禁されていた真木はウルトラマン・ザ・ネクストに変身し「ザ・ワン」と対峙する。
青い発光体(ビースト・ザ・ワン)を追って地球に飛来した赤い発光体が、航空自衛隊のパイロット真木舜一に触れて同化することによって出現した銀色の巨人[15][5]。日本へ2番目に飛来した地球外生命体として「ザ・ネクスト」のコードネームを与えられた。ザ・ワンとの戦いで人々を守り抜いたことから、子供たちをはじめとした人々から憧れを込めて「ウルトラマン」と呼ばれるようになる。変身道具は存在せず、真木がザ・ワンへの怒りの感情が頂点に達した際に自動的に変身する[16]。
初めて真木が覚醒した際に変身したザ・ネクストの不完全体(幼体)。身体の各部が不完全で本来の能力・戦闘力は発揮できない。また、真木本人の自覚がないまま闘争本能のみで戦うため、腕の刃や光刃による攻撃は使えても威力が低く、破壊力のある大型光線技が使えないため、ほとんどは強化された身体能力を駆使した肉弾戦や力技のみという戦い方であり、体格差の大きな相手には苦戦すると予想される[26]。
ザ・ワンとの最終決戦時に進化変身したザ・ネクストの完全体。身長も40メートルと巨大になり、超音速飛行も可能である。アンファンスではグレー一色であった筋繊維状の関節部は赤くなり、配色はよりウルトラマンのイメージに近くなっている。また、後頭部の襟足に突起物(あるいは肉厚なヒレ状の部位)が生まれ、ウルトラマンネクサスのそれに近くなっているほか、全身に血流をイメージした赤いラインが入っている。腕は鋭い武器となって飛行時の安定に役立つうえ、光線発射時の源ともなるエルボーカッターストラトス・エッジが出現する。また、背中や脹脛(ふくらはぎ)に姿勢制御用のヒレ(フィン)が存在する。アンファンスよりも体つきはよく、よりパワフルによりスピーディーに動くことが可能。
作中で「ザ・ネクストはどこからやってきたのか」や「何者なのか」が説明されることはほとんどなく、ザ・ワンとザ・ネクストが敵対関係にあること、ザ・ネクストはザ・ワンの殲滅を目的に訪れたことが、わずかに説明される程度である。ザ・ワンが海上自衛官・有働貴文の記憶・能力を我が物にしたことをはじめ、融合する地球の生物の能力・生命力を無制限に吸収していく一方、ザ・ネクストはザ・ワンと同じく融合が可能であるにもかかわらず、真木舜一の人格・自立性を尊重する、モラルや理性を持った存在として描かれている。また、人間形態でESP(超感覚的知覚)を発現させたが、これは真木の病弱な息子・継夢を案じる気持ちからである。
作中ではアンファンスもジュネッスも長期戦になると胸部エナジーコアが点滅し、危険信号を発していた。それは真木と完全な融合を果たしていないがための代償であることが、ザ・ワンに言及されている。それでも、ザ・ワンとの決戦で真木はザ・ネクストから生命の危機を警告されても自身の意志で戦いを続行し、最終的には空中戦でザ・ワンを圧倒したところに自衛隊の支援も受け、ザ・ワンを地上へ引きずり下ろして殲滅を果たしている。
映画と同一の世界観であるテレビシリーズ『ウルトラマンネクサス』Episode.33「忘却 -A.D.2004-」では、防衛組織TLT(ティルト)内の回想シーン(本作品の映像)に加えて本編に水原沙羅も登場し、本作品が『ネクサス』の5年前の物語であることが明かされた。
TLTの設立によって、スペースビーストへの記憶消去装置である来訪者のレーテが使用された結果、TLT設立のメンバーを除いた全ての一般大衆の記憶から新宿での戦いの事実(新宿大災害[15])は消され、ザ・ワンだけではなくザ・ネクストの存在も忘れ去られてしまった。しかし、Final Episode「絆 -ネクサス-」では、レーテが消滅すると同時に人々から5年前の記憶と共にウルトラマンも蘇り、ダークザギと戦うネクサスを応援した。なお、レーテからの脱出時にはネクスト アンファンスらしき姿が確認される。
他の生物に寄生・吸収することで成長・進化できる謎の生命体。青い発光体の状態で地球の太平洋沖に落下し、調査に来た海上自衛官・有働貴文と同化した。「ザ・ワン」とは、日本で初めて確認された地球外生物であることから名付けられたコードネームである。ベルゼブア形態以降は、吸収した生物の頭を模した首が肩に現れる。
その正体は後に『ウルトラマンネクサス』に登場するスペースビーストの第1号と考えられ[14]、ザ・ワン自体は本作品でウルトラマン・ザ・ネクストに倒されるが、その破片は後に多数のビーストに成長する。スペースビーストのうちガルベロス、ノスフェル、リザリアスは、『週刊 ウルトラマンオフィシャルデータファイル』ではザ・ワンの要素を受け継ぐ上級ビーストとされている[要ページ番号](ノスフェル・リザリアスは取り込んだ生物がモデルに、ガルベロスはザ・ワンの核に当たるものが犬を取り込んでおり、そのフォルムなどに特徴を色濃く残している)。
真木の人格と生命を尊重したザ・ネクストとは対照的に、ザ・ワンは有働を完全に取り込んで支配し、彼の生命も人格も全て奪い去るという、非常に狡猾で残忍な性格の邪悪な生命体である。取り込んだ生物は、吸収されても短時間のうちならば分離・解放することが可能な模様。
『ウルトラマン THE NEXT』のタイトルで『特撮エース』に連載(作画:沢樹隆広)。基本的には映画版と同一の内容だが、最終話で『ウルトラマンネクサス』へと繋がる描写が追加されている。
2005年に角川書店から発売された単行本は途中までを収録した第1巻のみで未完となっていたが、2008年にウェッジホールディングスより最終話まで収録した完全版(全1巻)が発売された。
PlayStation 2ゲームソフト『ウルトラマンネクサス』では、ウルトラマン・ザ・ネクスト(ジュネッス)とビースト・ザ・ワン(ベルゼブア・コローネ)も登場し、ゲームで条件を満たせばvsモードなどで操作可能になる。
2005年7月25日にDVDが発売された。