「SLスチーム号」。2024年、京都鉄道博物館 にて
「SL北びわこ号」。2004年、長浜駅 にて
「SL阿波四国三郎号」。2002年、徳島駅 にて。これが平成期の徳島県における唯一のSL運転である。
C56 160 は、西日本旅客鉄道 (JR西日本)の梅小路運転区 に所属し、京都鉄道博物館 (旧梅小路蒸気機関車館 )にて動態保存 されている蒸気機関車 (SL) で、日本国有鉄道 (国鉄)の前身である鉄道省 が製造したC56形蒸気機関車 の1両である。SL北びわこ号 やSLやまぐち号 の牽引機関車だったが、2018年 (平成 30年)5月27日 をもって本線運転を終了した。同じ梅小路運転区に所属するC57 1 とともに、現在まで一度も廃車(車籍抹消) されたことのない動態保存機である。
経歴
現役時代から動態保存機へ
1939年 (昭和 14年)4月20日 、川崎車輌 兵庫工場にて、C56形 のラストナンバー機(製造番号 2099)として完成。戦前は津山機関区 、戦後鹿児島機関区 から横浜機関区 を経て、1964年 (昭和39年)に上諏訪機関区 と移り、その後は小海線 ・飯山線 ・七尾線 で運用された経歴を持つ。上諏訪機関区所属時には、入換用として警戒色 のペイントをされて運用されていた時期もあり、また先に配属済みのC12 66 (真岡鐵道 の動態保存機)の僚友として過ごしてきた。
1972年 (昭和47年)七尾機関区 から梅小路運転区 へ移動し、他から転属して来たSLの搬入に使用されるなどしたが[ 1] 、梅小路蒸気機関車館開館後は特に目立った動きはなかった。
動態保存機としての運用
国鉄時代ならびにJR時代初期は全国からの貸出依頼が多く、各地を走行した。
1980年 (昭和55年)11月22日 には、函館本線 小樽 - 札幌 間で「北海道100周年記念号」の牽引機として抜擢されて以降は、走れる路線を選ばないとの特性から全国各地での出張運転に供されるようになった。
JRとなって全国各地でSLが復活した後は、1995年 (平成7年)8月19日 に運転を開始した北陸本線 米原 - 木ノ本 間の「SL北びわこ号 」をメインに、山口線 新山口 - 津和野 間の「SLやまぐち号 」でC57 1 との重連運転、C57 1牽引不能時の代理牽引機関車など、JR西日本管内にて使用されるほか、JR東日本やJR四国、仙台臨海鉄道 、樽見鉄道 など他社での運転実績がある。四国の路線を中心に、脱線事故のおそれがあるとされているバック運転(逆機 )も数多く行ってきたが、無事故の運転を行っていた。
1995年8月19日の運転開始当初から2003年 (平成15年)8月までは木ノ本 - 米原間にて、SL北びわこ号を逆機で牽引していたが、特急列車や貨物列車、さらに琵琶湖線 からの新快速列車の新規乗り入れなどによってダイヤ上の制限がかけられたことから中止され、同年11月8日 からは回送列車となった。ただし、定期検査明けの試運転では、木ノ本 - 米原間で逆機で運転された。
2006年 (平成18年)、「梅小路の蒸気機関車群と関連施設」として、準鉄道記念物 に指定された。
なお、現在の同機の汽笛は、汽笛の鳴りが悪くなったために、2000年代に入ってからは、当機が山口線へ入線される前までにかつて動態保存されていたC58 1 のものと交換され使用している。
「SL北びわこ号」や「SLやまぐち号」の牽引運転以外の時期には、現在も梅小路運転区 にて整備や試運転が行われているほか、併設する京都鉄道博物館 (旧梅小路蒸気機関車館 )の展示運転「スチーム号」の代行運用に就くこともあった。
2017年 (平成29年)9月23日 、京都駅ビル開業20周年およびJR(西日本)発足30周年の記念イベント「SL WONDERLAND in 京都駅ビル」において、京都駅7番のりばに有火状態で展示された。京都鉄道博物館と京都駅との間の牽引は、同じ梅小路運転区に所属するDE10 1118により牽引された。
本線運転終了、展示運転へ
JR西日本は2017年を目処に、梅小路蒸気機関車館で「SLスチーム号」として構内運転用に動態保存されていたD51 200 を本線で運用できるように大規模な修理を施し復活させ、「SL北びわこ号」および「SLやまぐち号」(C57 1の代理牽引)の牽引機関車を置き換えることを2014年 (平成26年)10月17日 に発表した[ 2] 。それにより本機は本線運転を終了することとなった。その要因としては、今後運転を続けていくために必要とされる新型の保安装置ATS-P形 を追加する際、電源機器の設置スペースを大きく取る必要があり、本機の小形の炭水車に搭載すると、10㎥とテンダー機の炭水車としては元々少ない水容量がさらに減少するとともに航続距離が減少し、「SL北びわこ号」での本線運転すら難しくなってしまうためである[ 3] 。また、「SLスチーム号」として使用する機関車の検査も併せて行うこと、作業従事者の数の都合などから本線運用機は2台までというJR西日本自身の方針により置き換えが決定された。なお、報道などでは老朽化を理由として掲げているが、梅小路運転区で整備を担当している職員によると、本機は不具合が少なく今まで大規模修繕が必要になるほどの状態悪化が確認されていなかったといい、全国の動態機全体で見てもかなりの好調機であった[ 4] 。
2018年2月23日 、JR西日本は同5月5日にD51 200との重連運転を行い、翌6日に津和野 → 新山口間で運行予定の臨時列車「ありがとうC56号 」の運転をもって、「SLやまぐち号」ならびに山口線内での運行を終了する方針の発表が行われた[ 5] 。また、山口線での運転終了発表後の同年3月19日、5月27日の「SL北びわこ号」の牽引をもって、本機の本線最終運転が公表され、これが最後の本線運転となった[ 6] 。
京都鉄道博物館 にて
2018年5月27日、最後の営業列車である「SL北びわこ3号」が13時15分に米原駅を発車、14時に木ノ本駅 に到着し、これをもって本線運転を終了。梅小路運転区へ回送後、京都鉄道博物館の扇形車庫で「本線運転引退セレモニー」が行われた。総走行距離は141万km。「SL北びわこ号」および「SLやまぐち号」(C57 1の代理牽引)の運用をD51 200と交代し、今後はそのD51 200が今まで担ってきた役割を引き継ぎ、京都鉄道博物館の展示運転「SLスチーム号」として運用される[ 7] [ 8] [ 9] 。その後、本機は本来受けるべきである中間検査Bの施工を行わず、同車庫内にて構内運転用の機関車と同じ整備基準、いわゆる「動態Bグループ」としての整備を実施。これにより、本線走行は事実上不可能となった。この整備に際して、本線走行時に必須装備とされていた、煙突上の回転式火の粉止めと前後の標識灯は取り外され、すっきりとした姿となった以外、表面上から確認できる変化は見られていない。同8月18日、「SLスチーム号」での運転が開始された。なお、車籍の扱いについて現時点では未定である[ 注 1] 。
運転記録
2018年5月27日の本線運転終了までの間の「SLやまぐち」と「SL北びわこ号」[ 注 2] 以外の臨時列車としての運転記録は、以下のとおりである。客車は基本的に12系客車を牽引する。
脚注
注釈
^ ただし、2017年11月24日に山口市内で開催された「SLサミットIN山口」における京都鉄道博物館副館長の講義によれば「いつでも本線走行が可能な状態で保存する」と明言しているが、検査基準が構内運転用の機関車用であり、今後の本線走行は全般検査を行わない限りできないのが現状である。
^ これらと同じ区間を運転する臨時列車を含める。
出典
関連項目
外部リンク
電車
気動車
客車
貨車 電気機関車
ディーゼル機関車