『風の聖痕』(かぜのスティグマ)は、山門敬弘による日本のライトノベル。イラスト・キャラクター原案は納都花丸。第13回ファンタジア長編小説大賞準入選作品(応募時のタイトルは「風に祈りを」)[3]。富士見ファンタジア文庫(富士見書房)より、2002年1月から2010年3月までに既刊12冊(本編6冊、短編集6冊)が刊行されたが、作者死去により絶筆となった[4][5][注 1]。
ドラマCDが発売された後、2007年にはアニメ化、漫画化、ゲーム(テーブルトークRPG)化などのメディアミックス展開が行われた。
一般人には知られていないが、この世界には魔術を操る魔術師が存在している。その中には自然の力を司る精霊の力を借りて妖魔を退治する人間「精霊術師」も含まれる。八神和麻は、炎術師の名門・神凪家に生まれながら炎術の才をまったく持たなかったために一族から追放され、日本を離れた。4年の月日が流れ、超一流の風術師となって再び日本の地を踏んだ和麻は、タイミングよく起こった神凪の術者の殺害容疑をかけられてしまう。
※声優はアニメ版、ドラマCD版と分けて記載。
神凪宗家の血を引く三者を記す。
皇居の堀から半ば近くに立てられた私立の学園。通っている人間の大半が金持ちか頭脳明晰な少年少女ばかり。裏口まがいの悪政は行われてはいない様子だが、近年進む少子化故に金はいくらあっても足りないのが現状なため、よほど問題を起こさない限り大口の支援者の生徒は退学に処さない模様。なお、理事長は魔術の世界のことを知っており、綾乃に依頼したこともあった。
風の聖痕リプレイ「深淵の水龍」の主人公たちであり、篠宮由香里の発案により集められた退魔師の素質を持つ生徒たち。なお、発足には宗主である重悟も許可しており、彼らを通して神凪に依頼すると依頼料が9割減額される。
警察によって妖魔に対抗するために結成された日本唯一の公営退魔組織。様々な異能を操る人間たちによって構成されているが、ほとんどが妖魔との戦闘に向かない能力のため、有名無実の見本として扱われている。組織名が長々として役割がわかりにくいのは、退魔組織であることを隠すためでもあるが、「死霊」と「資料」をかけたものという噂もある。公的な立場としては刑事だが、刑事として訓練をしていないので尾行はあまり上手くない。2巻では様々な術を駆使して操の居場所を探したりしていた。メンバーの充填は、霧香や和泉のように術者から引き抜かれるケースもあれば(ちゃんと試験は受けて公務員の資格を得ている)、新人警察官から素質を見出して強制入隊させるケースがある。風牙衆滅亡後、神凪は情報収集を特殊資料整理室に頼っており、整理室も実績を作るため、何かあれば神凪宗家に退魔を依頼し情報提供している。そのため両者の関係は非常に良好と言える。ただし「深淵の水龍」では、重悟は「身内と外部では連携に差が出る」ことから風牙衆の復活を考えている。
初代宗主の血脈を受け継ぐ者たち。
作中では大神、結城、久我、四条の四家が登場している。
神凪に仕える下部組織で、20名ほどの風術師で構成されている。表向きには神凪一族と祖を同じくするとされているが、実際は数百年前の江戸時代に金で何でも請け負う闇組織に過ぎなかった。幕府の依頼を受けた当時の神凪一族によって討伐され、風牙衆の力の源であり彼らが神と崇める超越存在(アニメ版ではゲホウと呼ばれる妖魔)を封じ込められてしまった。結果、戦闘能力が急落した風牙衆を神凪一族が「自分達に欠けている探索能力を補い、同時に自分達の火を煽る事の出来る便利な道具」として吸収した。それ以来は主に神凪一族専属の諜報や後方支援を担っているが、その扱いは奴隷同然の様な状態で、和麻からも「あれでは反乱も起こしたくなるだろう」と内心同情されるほどだった。アニメ版では屋敷に住んでいることが語られており、神凪から住居を提供されていたようである。戦闘能力こそ低いが、風術師としてはかなり優秀な組織で、その点は壊滅後に和麻からも言及されている。風牙衆壊滅後は神凪一族の情報網はほぼ壊滅状態に陥っており、情報網を求めた結果、警視庁特殊資料整理室との関係が生まれることになる。
霊峰・富士に魔獣を封印し、封印の管理・維持を続けてきた一族。日本における地術師の名門でもあり、「大祭」を執り行い身内を生贄にすることで魔獣の再封印を行ってきた。
いずれも『すべては愛のために』のみ登場。千年前に実在した陰陽師、阿倍晴明の直系。神凪とは友好関係にある。ただし、術者の多くが「阿倍晴明の直系」を名乗るため、疑う者の方がはるかに多い模様。陰陽師としては最高峰にあるため、「それ以下」の陰陽師と比べられるのは侮辱と受け取る。
本作における主要な敵に位置する魔術結社。三百年以上前から存在しており、西欧を中心に活動する、近代魔術の最高峰とも謡われる権威ある組織である。名前はプレイトマイオスの「大星表(アルマゲスト)」に由来する。その名のとおり元々は占星術を扱う者たちで構成されていたが、貪欲に様々な術者を募った結果、今の形に落ち着いた。首領の仇である和麻を憎んでいる。和麻曰く、所属する魔術師たちは全員が最悪の愉快犯らしい。なお、魔術師だけが所属しているわけではなく、何も知らない一般人のみで構成されている支部も存在する。ヴェルンハルト・ローデスを筆頭にする高位魔術師たちの会合――「評議会」が運営を行っている。アーウィン・レスザールは存在そのものが疑わしく思われており(後述)、アルマゲストにおいて最高峰の魔術師はヴェルンハルト・ローデスであると見られている。
ヴェサリウスの妖魔憑依実験により、異能の力を手にした少年達(正確には、妖魔に喰われていく過程に「一時的にその能力を行使できる期間がある」にすぎない。力を授かったわけではない)。法の裁きを受けない上に、「自分は選ばれた特別な人間」と大半が思い込んでしまうため、好き勝手に暴れて他者を殺している。力を望めば望むほど、能力が強くなればなるほど、内なる魔性に自我を喰われ、最後は完全に妖魔によって肉体を乗っ取られ、自我を失い、姿形も変化してしまう(まれに半分だけ人の形を維持するものもいる)。憑依させられた妖魔は同一のもので、電子コピーとして複製されている。宿主と結合することで、その人間にあった能力を生み出すという特性がある(能力が同一でないのは、種となった妖魔が宿主と結びつくことで初めて開花するため、その宿主に合った能力になる。妖魔化後の形態も同じ理由で統一性がない)。妖魔の正体は、魔界の大公爵「無価値」のベリアル(後述)のコピーを電子化したもの。アニメでは「妖魔を宿し穢れきった魂はベリアルの生贄に最適」という理由も付け加えられている。
原作6巻における敵対勢力。四属性の精霊と神器を用いた魔術儀式を行おうとしている者たち。目的のためには手段を選ばず、仲間になることを拒んだ小雷の家族を殺害し、更には神凪から炎雷覇を強奪しようとしていた。どのような魔術儀式なのか、四つの異なる属性の精霊をどのようにして調整するのか。神凪だけ敵に回すような態度を取っていたのはなぜかなど、色々謎が多い。アニメではこのエピソードの前に放映が終了したため登場していない。
作中に登場する妖魔、悪霊、魔獣、悪魔、その他などを50音順に記載。名称不明の妖魔に関しては「超解!風の聖痕」に記されている名前で記す。また固有名詞が存在しないものについては「名称不明」と追記。
名称が不明なものは「超解!」より記載。
2006年12月にアニメ化が発表され[31]、2007年4月から9月までアニメスピリッツ枠[注 63]にて放送。題名は『風のスティグマ』としている(ロゴには「聖痕」の文字も併記)。
エンディングテーマは、エンディング映像の背景の違いで使い分けている(12話除く)。背景が昼で寝転がっているのが綾乃なら「瞬きのキヲク」、夜で寝転がっているのが和麻なら「ひとりきりの空」といった具合である。また、昼と夜とでは途中に挿入される絵も異なる。なお、12話では夜のバージョンが使われたほか、寝転がっているのが煉になっている(最後に手を差し出すのは昼は和麻、夜はいずれも綾乃である)。最終話のエンディングでは昼を背景に綾乃と煉が和麻に手を差し伸べる。
ストーリーは原作をもとにしているが、改変箇所も多くアニメ独自のシーンや舞台になっているものもある。
発売は角川書店、販売は角川エンタテインメント(レンタル版のみクロックワークス)。
2007年3月から11月まで『炎のツンデレ女子高生 綾乃の放課後ケーキバイキング!』のタイトルで配信された。風のスティグマを100倍楽しむための「お出かけWeb動画バラエティ」として、全ての回がスタジオの外へ出掛けて公開収録を行っている。アニメイトTVブログにて、公開録画の後の楽屋トークが配信された。
1回の公開収録で2度の配信を行っている。いわゆる2本録りである。