米澤 穂信(よねざわ ほのぶ、男性、1978年[1] -)は、日本の小説家、推理作家。岐阜県出身[2]。岐阜県立斐太高等学校[3]、金沢大学文学部卒業[4]。
物心ついた頃から漠然と作家業を志すようになる。11歳でハーバート・ジョージ・ウェルズ『宇宙戦争』の続篇という形で二次創作を書き[5]、中学2年生あたりからオリジナルの小説を書き始めた。金沢大学文学部の2年生から、ウェブサイトでネット小説サイト「汎夢殿」(はんむでん)を運営し、作品を発表し始める(デビューが決まった後「汎夢殿」は一旦閉鎖され、これらの作品は現在読むことが出来ない[6])。様々な種類のエンターテイメント作品を書いていたが、大学時代に北村薫の『空飛ぶ馬』、『六の宮の姫君』(東京創元社、1992年)を読み衝撃を受け、ミステリーへの方向性を決める[6][7]。
大学卒業後は、「2年間だけ小説の夢にチャレンジしたい」と両親を説得して、岐阜県高山市で書店員をしながら[8]執筆を続ける。そして2001年、『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞してデビュー。『氷菓』は「汎夢殿」で発表した作品の中で反響が大きかったのを受けて応募を決めた[9]。この賞に応募した理由として、ライトノベルとミステリーの組合せに未来を感じたこと[10]と、また別の賞の締切りに遅れてしまったこと、の2つを挙げている。そして〈古典部〉シリーズである『氷菓』が、角川スニーカー文庫内に新たに立てられた「スニーカー・ミステリ倶楽部」の第1回配本として、これに続いて『愚者のエンドロール』が刊行された。
ところが、〈古典部〉シリーズ3作目にして完結編として執筆されていた『さよなら妖精』の出版がレーベルの傾向との違いにより困難となった[11]。苦境に陥ったが、推理作家の笠井潔の推薦もあって[注 1][12]、2004年、推理小説に強い東京創元社から出版される運びとなる。架空の国から、米澤の卒業論文のテーマであったユーゴスラヴィア[13]へと舞台を変え、ノンシリーズ作品として出版された本作[14][注 2]は、2005年版の『このミステリーがすごい!』(宝島社)の国内部門で20位となり、米澤穂信の名を広く世に広める結果となった。同年には〈古典部〉シリーズと同じく日常の謎を主に扱う〈小市民〉シリーズの第1作『春期限定いちごタルト事件』(創元推理文庫)を刊行した。この前後の時期、岐阜から東京へ住まいを移している。
2008年に刊行した『儚い羊たちの祝宴』(新潮社)の頃から謎解き部分だけでなく物語の味わいの点でも優れた作品作りを心がけるようになり[15]、2010年発表のファンタジーテイストを取り入れた本格推理小説『折れた竜骨』(東京創元社)は、日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門を受賞した[2]。
2012年に〈古典部〉シリーズが『氷菓』という題名で京都アニメーション制作によりアニメ化され人気を博し、米澤の名はアニメファンにも知れ渡るようになった。2013年よりミステリーズ!新人賞の選考委員を務めている。
2014年に刊行した短篇集『満願』は「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」の国内部門1位で史上初のミステリ・ランキング3冠に輝くとともに、第27回山本周五郎賞を受賞し[2]、第151回直木三十五賞の候補作にもなった。
2015年に刊行した『王とサーカス』も「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」の国内部門1位となり、『満願』に続いて2年連続でミステリ・ランキング3冠に輝いた。
2016年、英語圏最大の文芸誌『Granta』日本語版でGranta Best of Young Japanese Novelistsに選出される。
2021年、『黒牢城』で第12回山田風太郎賞を受賞した[16]。また、同作で「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」「本格ミステリ・ベスト10」の国内部門1位となり、史上初となるミステリ・ランキング4冠を達成した[17]。さらに『週刊朝日』の「2021年 歴史・時代小説ベスト3」で1位に選出された[18]。
2022年、同作で第166回直木三十五賞[19]、第22回本格ミステリ大賞小説部門を受賞[20]。
2023年、『可燃物』で「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」の国内部門1位となり、4回目のミステリ・ランキング3冠に輝いた[21]。
2025年7月から直木賞の選考委員を務める[22]。
太字が受賞したもの
初期は推理小説の中でも青春ミステリと呼ばれるジャンルにおいて、「日常の謎」を扱った作品を主に発表していた。作風が地味だという声もあったが、その端正な文体と登場人物に対する巧みなキャラクター設定により、特に若い世代に支持を広げている[要出典]。米澤は自著について、これらの作品群に通底するテーマは「全能感」であり、思春期における全能感の揺れ動き、変化していく過程を書いてきたと述べている[33]。このテーマは8冊目となる長編『ボトルネック』で一次決算をむかえることになる。
9冊目である新本格へのオマージュをテーマにした長編『インシテミル』を皮切りに、『儚い羊たちの祝宴』『追想五断章』など青春小説の枠を外した作品も発表するようになった。
「」内が米澤穂信の作品