戸隠村(とがくしむら)は、かつて長野県上水内郡に存在した村。長野県の北部、戸隠山の麓に位置していた。2005年(平成17年)1月1日に長野市へ編入され消滅した。現在、長野市のうち町・字名に戸隠を冠している区域が旧戸隠村の区域である。最盛期には、人口が10000人ほどあったが、現在は4000人ほどに落ち込んでおり、過疎地域に指定されていた。
地理
長野県の北西部に位置する。村域は東西方向に9.9キロメートル、南北に20.1キロメートルで、総面積は132.76平方キロメートルである[1]。
隣接していた自治体
歴史
村名の由来
「戸隠」という地名には諸説ある[2]。
沿革
旧戸隠村域の人口推移
年 |
人口(人)
|
[2] 戸隠村 |
[3] 柵村 |
[4] 長野市 戸隠管内 |
合計
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1920 |
4780 |
3859 |
|
8639
|
1935 |
5009 |
4143 |
|
9152
|
1950 |
5883 |
4398 |
|
10281
|
1960 |
8709 |
|
|
8709
|
1970 |
6475 |
|
|
6475
|
1980 |
6074 |
|
|
6074
|
2005 |
|
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4800 |
4800
|
2010 |
|
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4289 |
4289
|
2015 |
|
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3784 |
3784
|
町丁
戸隠
現在の長野市戸隠(とがくし、郵便番号:381-4101)[10]。旧村域の北部から中部にかけての地域で、戸隠神社の門前町として発展し、戦後は戸隠スキー場や戸隠バードラインといった開発が行われ、観光客で賑わう[11]。
戸隠山門前と戸隠神社社地から成立した水内郡戸隠村と、楠川上流の水内郡上楠川村を前身とする。両村は1876年(明治9年)に合併。1889年(明治22年)、豊岡村と合併して以降は戸隠村の大字となる[12]。
豊岡
現在の長野市戸隠豊岡(とがくしとよおか、郵便番号:381-4102)[10]。旧村域の東部、飯縄山麓に広がる高原で、農業のほか食品加工・電子部品の工場が立地する。村役場(現・長野市役所戸隠支所)や保育所、戸隠小・中学校、長野県長野吉田高等学校戸隠分校が置かれる[11]。猿丸太夫ゆかりの地でもある[8]。
上水内郡豊岡村を前身とする。1876年(明治9年)、水内郡下楠川村・上野村・日照田村が合併して成立(当初は水内郡)。村名は当地の古名から[8]。
祖山
現在の長野市戸隠祖山(とがくしそやま、郵便番号:381-4103)[10]。裾花川以南の山村。裾花渓谷沿いに国道406号が通じ、長野市中心市街地へのアクセスが良く(自動車で30分)、兼業農家が多い。柵層と呼ばれる当地の第三紀地層からは、ステゴドンなどの化石(約400万年前)が発掘されている[11]。
上水内郡(旧・水内郡)祖山村を前身とする。古くは曽山とも。柵村を経て戸隠村の大字となる[9]。
栃原
現在の長野市戸隠栃原(とがくしとちわら、郵便番号:381-4104)[10]。旧村域の西部に位置し、裾花川を隔てて南に祖山と接する。鬼女・紅葉伝説が伝わり、これにちなんで設置された能舞台がある[11]。地名も平維茂率いる軍勢が藁を解き野営をした「ときわらの地」に由来する[5]。
上水内郡(旧・水内郡)栃原村を前身とする。江戸時代は松代藩領で、アサやウルシ(実)、和紙の産地であった。柵村を経て戸隠村の大字となる[5]。
旧・戸隠村の大字・区・組[13]
大字 |
区名 |
組名
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豊岡
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北部(ほくぶ)
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原(はら)、尾上(おかみ)、諸沢(もろざわ)、馬場(ばば)
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中央(ちゅうおう)
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二条(にじょう)、大中(だいちゅう)、和沢口(わさわぐち)
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東部(とうぶ)
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和沢(わさわ)、中村(なかむら)、中耕(なこう)、銚子口(ちょうしぐち)
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南部(なんぶ)
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横道(よこみち)、上楡木(かみにれぎ)、南原(みなみはら)、猿丸(さるまる)、東原(ひがしはら)
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川手(かわて)
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川下(かわしも)、日照田(ひでりだ)、平沢(ひらさわ)、折橋(おりはし)
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西部(せいぶ)
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下楠川(しもくすがわ)、宇和原(うわはら)、奈良尾(ならお)、母袋(もたい)
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戸隠
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上楠川(かみくすがわ)
|
上楠川
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宝光社(ほうこうしゃ)
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宝光社
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中社(ちゅうしゃ)
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中社、越水(こしみず)
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栃原
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志垣(しがき)
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桜峰(さくらみね)、向(むかい)、西之矢(にしのや)、市場平(いちばだいら)、番場(ばんば)、倉平(くらだいら)
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平(たいら)
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清水(しみず)、町(まち)、針立(はりだち)、今井(いまい)、福平(ふくだいら)
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西条(にしじょう)
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五十土東(いかづちひがし)、五十土西(いかづちにし)、笹原(ささはら)、田頭(たがしら)、宮ノ前(みやのまえ)
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追通(おっかよう)
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中尾口(なこうぐち)、東組(ひがしぐみ)、中組(なかぐみ)、西組(にしぐみ)
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祖山
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上祖山(かみそやま)
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西部(せいぶ)、中部(ちゅうぶ)、第一(だいいち)、宮浦(みやうら)、上組(かみぐみ)、渡土(わたど)、平出(ひらいで)
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下祖山(しもそやま)
|
積沢(つむざわ)、土合(どあい)、中組(なかぐみ)、下内(しもうち)、坪山(つぼやま)
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経済
特産品
- 戸隠そば - 5月下旬から6月上旬にかけて種をまき、7月下旬から8月上旬にかけて収穫する「夏そば」と、8月上旬から中旬にかけて種をまき、10月中旬に収穫する「秋そば」があるが、質・量ともに秋そばが勝る。1965年(昭和40年)に121ヘクタールあった作付面積は昭和50年代に10ヘクタール台まで減少し、それに伴い収穫量も10トン台まで落ち込んだが、その後回復し、平成以降は40ないし50トン以上の収穫量で推移している(村勢要覧・村総生産額調)[14]。
- 竹細工 - 当地の伝統工芸。観光客向けの土産物として生産・販売されている[11]。
姉妹都市・提携都市
地域
健康・介護
- 長野市国民健康保険戸隠診療所(戸隠豊岡1554番地) - 診療科目は内科・小児科・歯科。15台分の駐車場がある[15]。
- 今井医院(戸隠栃原4776-2) - 診療科目は内科。5台分の駐車場がある[16]。
- 特別養護老人ホーム豊岡荘(戸隠豊岡1384番地) - 入所定員50人、ショートステイ入所定員10人[17]。戸隠デイサービスセンター(定員25人)[18]、診療所(内科)を併設[19]。
生活
- 水道
- 上水道
- 水源[20]
- 越水第3,4水源 - 深井戸
- 宝光社第1,2水源 - 湧水
- 上野第1水源 - 湧水
- 上野第3水源 - 浅井戸
- 上野第4水源 - 深井戸
- 南部水源(シナノキ池水源) - 湧水
- 下祖山第一水源 - 湧水
- 下祖山第二水源 - 湧水
- 下楠川水源 - 湧水
- 谷沢水源 - 湧水
- 山入水源 - 地下水
- 宮浦第2水源 - 深井戸
- 水景苑水源 - 深井戸
- 上楠川水源 - 表流水(河川水)
- 尾倉沢水源 - 表流水
- 川下水源 - 地下水
- 祖山水源 - 表流水(休止中)
- 浄水場 - 上楠川水源付近に上楠川浄水場、尾倉沢水源付近に尾倉沢浄水場がある[21]。
- 下水道[22]
- 戸隠高原浄化センター(長野市戸隠1603番地1) - 1996年(平成8年)供用開始。計画面積85ヘクタール、計画人口950人で、オキシデーションディッチ法を採用し、1日あたり最大3,300立方メートルの汚水を処理し、仁王堂川へと放流する。
- 豊岡浄化センター(長野市戸隠豊岡7033番地2) - 1999年(平成11年)供用開始。計画面積112ヘクタール、計画人口1,500人で、プレハブオキシデーションディッチ法を採用し、1日あたり最大1,100立方メートルの汚水を処理し、楠川へと放流する。
- 電力
- LPガス
- ながの農業協同組合(JAながの)ながの裾花ガスセンター(戸隠豊岡9714)[23]
- ごみ
- ごみ収集エリアは「中社ほか」・「北部ほか」・「西部ほか」の3エリアに分かれている[24]。
教育
通信・放送
- 郵便
- 柵郵便局(戸隠栃原3421-5) - 郵便・貯金・保健窓口、ATMを設置。4台分の駐車場がある[28]。
- 祖山郵便局(戸隠祖山268-1) - 郵便・貯金・保健窓口、ATMを設置。5台分の駐車場がある[29]。
- 戸隠郵便局(戸隠豊岡1372-2) - 郵便・貯金・保健窓口、ATMを設置。2台分の駐車場がある[30]。
- 戸隠神社前郵便局(戸隠2280-5) - 郵便・貯金・保健窓口、ATMを設置。4台分の駐車場がある[31]。
- 携帯電話
- ケーブルテレビ - 戸隠ケーブルテレビを参照。
交通
道路
バス
鉄道路線
名所・旧跡・観光スポット・祭事・催事
- 神社[37]
- 中社五斎神社(戸隠3505)
- 健南方神社(長野市戸隠豊岡字宇和原8242-イ)
- 豊岡神社(とよおかじんじゃ、長野市戸隠豊岡字和沢口1577) - 祭神は応神天皇・健御名方命。安和2年9月、平維茂による鬼女・紅葉討伐の際に勧請。例祭日は9月15日[38]。
- 上野神社(戸隠豊岡字大中1676)
- 戸隠神社
- 古宮神社(戸隠豊岡字下沖3140)
- 上楠川神社 (かみくすがわじんじゃ、戸隠361) - 祭神は健御名方命・天照皇大神。元々奥地にあったが、災害で神体である石体が現在の場所に流れ着き、そこを社地として再建されたという。明治になって豊岡神社に合併。地元住民によって新しく上楠川神社が設立された。例祭日は9月1日に近い日曜日[39]。
- 矢本八幡宮 (戸隠祖山1752-イ)
- 柵健代神社(戸隠祖山870)
- 伊勢社 (いせしゃ、戸隠栃原字不動坂5215) - 祭神は天照大御神。創建は不詳。例祭日は8月31日[40]。
- 菅沼神社(すがぬまじんじゃ、戸隠栃原字下谷澤5551-1) - 祭神は健御名方命。創建は不詳。社殿は棟札によると寛延2年(1749年)7月の建築とある。例祭日は4月16日[41]。
- 裾花川神社 (すそばながわじんじゃ、戸隠栃原字追通8594) - 通称・川鎮めの社。祭神は健御名方命・事代主命。古くは諏訪社。例祭日は10月13日[42]。
- 南方神社(みなみかたじんじゃ、戸隠祖山5649) - 旧社格は村社。上祖山の産土神。祭神は健御名方命ほか7柱。創建は不詳。古くは諏訪大明神といい、寛政6年に現在の社名となる。社殿は室町時代後期の建築で、長野県宝。12月例祭日は5月3日[43]。
- 宮前神社(みやさきじんじゃ、戸隠栃原7535) - 旧社格は村社。栃原の産土神。祭神は健御名方命・事代主命。創建は不詳。古くは諏訪大明神。例祭日は5月4日[44]。
- 金刀比羅神社(ことひらじんじゃ、戸隠栃原字浦ノ山7521) - 祭神は金山彦命。西条地区の住民から信仰を集める。創建は不詳。社地内に広場がある。例祭日は9月の第2日曜日[45]。
- 伊勢社(いせしゃ、戸隠栃原字浦ノ山6941) - 祭神は天照大御神。創建は不詳。例祭日は10月16日[46]。
- 伊勢社(いせしゃ、戸隠栃原字倉手217) - 祭神は天照大御神。創建は不詳。古くは神明社。文久3年9月11日に現在の社名となる。例祭日は10月4日[47]。
- 妙見神社(みょうけんじんじゃ、戸隠栃原字浦ノ山6951-1) - 祭神は天御中主命。創建は不詳。例祭日は4月17日[48]。
- 伊勢社(いせしゃ、戸隠栃原字笹原5978) - 笹原の産土神。祭神は天照大御神ほか2柱。創建は不詳。古くは神明社。例祭日は5月17日[49]。
- 橡原御厨神明宮(とちわらみくりしんめいごう、戸隠栃原字追通8913) - 旧社格は村社。追通の産土神。祭神は天照大日霊神・迦具土命。創建は不詳。明治になって秋葉社を合併。例祭日は4月15日(4月の第3日曜日)[50]。
- 解藁神社(戸隠栃原1899)
- 諏訪神社(戸隠栃原宮沢1015)
- 清三神社(戸隠栃原3104)
- 柵神社(しがらみじんじゃ、戸隠栃原字西之矢4581) - 旧社格は村社(供進指定神社)。志垣の産土神。祭神は誉田別尊。安和年間、平維茂による鬼女・紅葉討伐の際、維茂が放った矢が落ちた場所に勧請。天保14年の古文書には柵宇佐八幡宮と見える。1877年(明治10年)6月に現社名となる。例祭日は9月5日[51]。
- 宮本正八幡宮(戸隠祖山1635-ロ)
- 寺院
- 博物館・美術館
- 戸隠民俗館・戸隠流忍法資料館・忍者からくり屋敷(戸隠3688-12) - 地元の民俗資料や戸隠流忍者に関する展示をしている。手裏剣体験も可[55]。
- 北野美術館 戸隠館(戸隠3685-12) - 休館中[56]。
- 長野市立博物館分館 戸隠地質化石博物館(戸隠栃原3400) - 旧・長野市立柵小学校校舎を活用。太古のクジラや貝などの化石を展示している[57]。
- 長野市そば博物館とんくるりん(戸隠3018) - 蕎麦をテーマとする博物館。食事処を併設。蕎麦打ち体験も可[58]。
-
北野美術館 戸隠館
-
戸隠地質化石博物館
-
そば博物館とんくるりん
- アウトドア・スポーツ
- 戸隠森林植物園(戸隠3510-35) - ミズバショウの名所[59]。
- 戸隠牧場(戸隠3694) - 戸隠山麓の牧場。牛や馬を放牧している[60]。
- 戸隠キャンプ場(戸隠3694) - 標高1,200メートル、戸隠牧場付近にある、広さ22ヘクタールのキャンプ場[61]。
- 戸隠倶楽部Poleiro(戸隠字午王峯3688-9) - 株式会社ラポーザによる自然体験活動ツアー拠点[62]。
- チビッ子忍者村(戸隠3193) - 忍者のテーマパーク[63]。
- 戸隠スキー場(戸隠3682) - コース数19[64]。
- 祭事・催事
- 戸隠そば祭り - 毎年秋、新そばを戸隠神社に奉納する[67]。
- 鬼女紅葉祭り - 鬼女・紅葉伝説にちなみ、秋の紅葉の時期に開催。会場は戸隠栃原の荒倉キャンプ場[68]。
- その他、各神社の例祭については個別の神社の項目を参照。
防犯・防災
- 長野市は、裾花川上流(戸隠参宮橋上流)の地区を対象に、約100年に1回の大雨を想定した洪水ハザードマップや[69]、土砂災害ハザードマップを作成・公開している[70]。
- 長野市は、ため池の小鳥ヶ池が決壊した場合を想定したハザードマップを作成・公開している[71]。
警察・消防
伝承
- 鬼女・紅葉伝説が伝わる。討伐に赴いた平維茂の放った矢が立ったという「柵神社」や、討たれた紅葉の墓「鬼の塚」、維茂と紅葉を合祀する「大昌寺」といった名所がある[72]。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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東海 |
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