亀山駅(かめやまえき)は、三重県亀山市御幸町にある、東海旅客鉄道(JR東海)・西日本旅客鉄道(JR西日本)の駅である。
概要
名古屋駅(名古屋市)とJR難波駅(大阪市)を結ぶ関西本線と、当駅を起点として紀伊半島を海沿いに走り和歌山市駅(和歌山市)までを結ぶ紀勢本線の2路線の接続駅となっている。このうち関西本線を当駅の所属線としている。かつては日本国有鉄道(国鉄)のみの管轄であったが、1987年4月の国鉄分割民営化によって当駅は会社間の境界駅となる。関西本線の名古屋方面と紀勢本線(新宮駅まで)がJR東海、関西本線の奈良方面がJR西日本に継承された[1]。このほか、日本貨物鉄道(JR貨物)が関西本線の当駅以東の区間で第二種鉄道事業許可を保有しているが、当駅での貨物取り扱いはない。
JR東海の関西本線は、当駅にCJ17の駅番号が設定されている。
駅構内には、JR東海の亀山運輸区と亀山変電所、JR西日本の吹田総合車両所京都支所亀山派出所と亀山指令所(大阪総合指令所の分所扱い)がある。国鉄時代は天王寺鉄道管理局の管轄であった。その後、1987年3月に名古屋鉄道管理局に移管され、民営化により、9つあるJR東海在来線のJR他社境界駅の中で唯一、JR東海の管轄駅となった。また、保安装置に関しても、JR東海は現在在来線全線でATS-PTのみを使用しATS-STの地上設備は大部分が撤去されているが、ATS-P車上装置を設置していないJR西日本キハ120形気動車が乗り入れる関係上当駅構内のみATS-STが使用されている。
かつては、機関区や客貨車区などが置かれた三重県内でも有数の鉄道の要衝であり[1]、名古屋方面・京都方面から来る多くの優等列車が、当駅を経由して伊勢・新宮方面に向かっていた。これは、伊勢・新宮方面から京都・奈良方面に向かう場合にはスイッチバックにならないように建設された為である。しかし、四日市 - 津間は当駅経由では大きく迂回する経路であり、逆に名古屋方面から伊勢・新宮方面に向かう場合にはスイッチバックを強いられるため、短絡線である国鉄伊勢線の建設が検討されるようになった。そして1973年に伊勢線が開通すると名古屋方面の優等列車の大半は伊勢線経由となり、モータリゼーションの普及も加わって、徐々にローカル輸送へと移ることになった。伊勢線開通後も寝台特急「紀伊」は当駅経由で運行されていたが1984年に廃止され、当駅に停車する特急列車が消滅した。さらに京都方面からの急行(「平安」・「志摩」)も運賃と速度で勝る近鉄特急に客足を奪われ、1986年に消滅した。そして2006年3月18日のダイヤ改正で名古屋と奈良を結ぶ急行「かすが」が廃止されたのを最後に、当駅に停車する優等列車が全て消滅した。かつて賑わっていたことを示すのが駅構内の広さであり、東西方向に1km以上に渡って続いている。
優等列車の消滅後は、快速列車と普通列車のみが発着する。関西本線名古屋方面および奈良方面(加茂駅で乗り換え)・紀勢本線の3方向での運行形態となっており、当駅をまたいで運転される列車は設定されていない[1]。3方向とも日中は1時間に1本のみの運転である[1]。乗り換えの便を図ったダイヤ編成となっており、列車遅延の際は接続できるよう発車時刻が調整される[1]。なお、奈良方面については、過去に線路の保守工事のため第2土曜の日中に運休する列車があった。終日駅員配置駅かつ全ての列車が当駅で折り返すため、ワンマン列車でもホーム側の全てのドアが開く。また、東海3県(中京圏)ではもっとも遅く最終列車が到着する駅であったが、2022年3月12日のダイヤ改正で当該列車の終電運転区間が四日市駅までに短縮されたため、同日より東海道本線の豊橋駅にこの座を譲ることとなったものの、三重県内ではもっとも遅く最終列車が到着する。
JR東海が発売する特別企画乗車券「青空フリーパス」は当駅が関西本線の南端である[4]。
歴史
亀山は伊勢亀山藩6万石の城下町かつ東海道の46番目の宿場町であったが、当駅開設以後、鉄道の町となった[5]。宿場町起源の町の多くが鉄道駅の設置に消極的な姿勢を示した明治期に、亀山では地元有志が関西鉄道に嘆願書を提出して駅の設置に積極的に動いている[6]。国鉄時代の最盛期には機関区・客貨車区・保線区・車掌区なども併設され、亀山駅に勤務する職員は1,000人弱に上った[1]。
年表
駅構造
単式ホーム1面1線と島式ホーム2面4線、合計3面5線のホームを持つ地上駅[1]。通常は北側の2面3線を関西本線、南側の1面2線を紀勢本線が使用する[1]。5番線には架線がない[1]。各ホームはエレベーター完備の跨線橋で連絡している。
1番線と2番線の間に電車留置用の側線が1線ある他、構内に多くの側線がある。1番線と4・5番線ホームの柱は古くなったレールを再利用したものである[17]。2・3番線ホームの柱は木製[18]。
東京や大阪から長距離列車が乗り入れていた名残でホームは広く長くとられている[19]。
駅舎は構内北側、単式ホーム(1番線)に隣接しておかれている。現在の駅舎は1913年(大正2年)11月3日竣工の二代目[8]で、天窓を付けるなど改修・増築しながら使用している[19]。駅舎には同年の建物資産票が付けられている[12]。
駅舎とホームはJR東海の管理であり、本線上の会社境界は亀山市野村町にある上り場内信号機(名古屋起点61.495キロ地点)である[注釈 1]が、構内にJR西日本の亀山鉄道部があるため、建物や車両留置線の一部はJR西日本が所有している。
駅舎内には自動改札機(TOICA・ICOCA対応)や自動券売機、JR全線きっぷうりば、待合所などが設置されている[20]。かつては売店があったが廃止され自動販売機に置き換えられている。自動券売機には東海区間と西日本区間を区別する機能は付いておらず(往復券と回数券は除く)、片道普通乗車券の券面はすべて「東海会社線」と表示される[注釈 2]が、西日本会社線の乗車も可能である(その詳しい説明はない)。
交通系ICカードは名古屋方面のTOICAエリア、奈良・大阪方面のICOCAエリアともに当駅がエリアの端であり、当駅を跨いだSF乗車はできない[16]。入場処理については両エリアともに改札機で対応するが、ICOCAエリア(奈良方面)の出場処理だけは有人改札通路に設置されたIC処理機で行う。なお、津方面はICカードのエリア外となっている。
JR東海の駅長・駅員配置駅(直営駅)で、管理駅として関西本線の南四日市駅 - 井田川駅間の各駅および紀勢本線の下庄駅を管理している。2013年(平成25年)現在、駅員は21人[19]。
旅客営業はJR東海の駅長権限下にあり、JR西日本は駅員を配置しないが、同社の駅としての営業管理事務は伊賀上野駅が担っている。
また、駅構内にJR西日本のかめやま運転区、吹田総合車両所京都支所亀山派出所、亀山指令所の3現業組織が所在する。2021年7月まではそれらの業務を亀山鉄道部という現業組織が複合的に担っており、関駅 - 笠置駅間の各駅も管理していた。
のりば
番線 |
路線 |
方向 |
行先 |
備考
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1・2
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関西本線
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上り
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名古屋方面
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主に1番線を使用(2番線は朝夕のみ、3番線は1日1本のみ)
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3・4
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関西本線
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下り
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加茂方面
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主に3番線を使用(4番線は朝のみ、5番線は1日1本のみ)
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4・5
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■紀勢本線
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-
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新宮方面
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主に5番線を使用(4番線は朝夕のみ)
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(出典:JR東海:駅構内図)
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改札口(2023年7月)
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自動券売機(2023年7月)
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1番線ホーム(2023年7月)
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2・3番線ホーム(2023年7月)
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4・5番線ホーム(2023年7月)
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紀勢本線の起点を示すキロポスト(2007年9月)
駅弁
『JR時刻表』には駅弁の表示がないが、亀山駅前のいとう弁当店がしぐれ茶漬け弁当(要予約)の製造・販売を行っていた[21]。しかし、2018年12月に同弁当店が入居するビルが再開発事業の対象となったため[22]、閉店した[いつ?]。その後、ビルの解体は2020年に行われた[23]。
- 備考
- 事前に亀山駅の到着時刻を伝えると、ホームや改札口まで届けるサービスを行っていた[21]。
- 元は自家製の時雨蛤を使用していたが、原料高騰のため桑名産のアサリ時雨煮に変更した[21]。
利用状況
「三重県統計書」によると、近年の1日平均乗車人員は以下の通り。この数字には各線の乗り換え客は含まれていない。シャープ亀山工場の稼働開始により一時期乗客数が回復したが、同社の経営不振に伴って再び減少傾向に転じた[12]。2015年には再び増加に転じた。
年度
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1日平均 乗車人員
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1998年
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2,444
|
1999年
|
2,387
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2000年
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2,348
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2001年
|
2,302
|
2002年
|
2,213
|
2003年
|
1,732
|
2004年
|
2,184
|
2005年
|
2,191
|
2006年
|
2,209
|
2007年
|
2,171
|
2008年
|
2,170
|
2009年
|
2,108
|
2010年
|
2,120
|
2011年
|
2,137
|
2012年
|
2,120
|
2013年
|
2,164
|
2014年
|
2,068
|
2015年
|
2,084
|
2016年
|
2,153
|
2017年
|
2,227
|
2018年
|
2,203
|
2019年
|
2,156
|
2020年
|
1,576
|
2021年
|
1,677
|
2022年
|
1,908
|
駅周辺
駅から少し離れた裏側を鈴鹿川が流れ、国道1号へのアクセス道路として三重県道302号線が設けられているが、国道1号は駅から北へやや離れた所を通る。駅付近は商業地となっているが、そこから少し離れると住宅が多く建ち、所々に商店も建つ。消防署や警察署は駅西側、紡績工場は駅南東側、文化会館や専門店街は駅東側にある。
2020年に駅前で再開発事業が行われ、図書館・商業施設・分譲マンションが入居する複合施設が建設された[24][25][26]。なお、この再開発ビルのタウンネーム(愛称)は「Kitto terrace()」であり[注釈 3][27]、同ビルの建設を含む公共施設整備工事は2022年10月21日に完了し[28][29]、同年11月24日に再開発事業の完成式と完成記念式典が行われた[30]。
バス路線
「亀山駅前」停留所にて、以下の路線バスやコミュニティバスが発着する。
その他
隣の駅
- 東海旅客鉄道(JR東海)
- 関西本線
- ■快速・■区間快速・■普通(快速は四日市駅まで、区間快速は桑名駅まで各駅に停車)
- 井田川駅 (CJ16) - 亀山駅 (CJ17)
- ■紀勢本線(普通列車のみ運転)
- 亀山駅 - 下庄駅
- 西日本旅客鉄道(JR西日本)
- 関西本線(普通列車のみ運転)
- 亀山駅 - 関駅
脚注
注釈
- ^ この会社境界は、googleストリートビューでも見ることができる。
- ^ 1987年の民営化当初、会社境界周辺の駅では自社区間のみ(例:東海会社線)と他社関連(近距離区間に境界が複数ある場合は他社区間最初の駅を経由地として表示し〈当駅の場合関経由・彦根経由・坂田経由など〉、岡山駅など境界が単一〈児島駅〉の場合は直通会社線〈この場合は『四国会社腺』〉を表示)を区別して口座が設けられていたが、1990年代中頃まで(明確な時期不明)には区別が廃止されているため、当駅のように自社名のみで統一する例や下関駅のように「旅客会社線」と表示する例とがある。
- ^ (複合施設の愛称は一般公募により決定。「未来を『きっと』照らす」がその由来となった(※伊勢新聞「JR亀山駅前再開発 整備完了を祝う、知事ら記念式典」(2022年11月26日)を基に再構成))
出典
参考文献
- 『週刊JR全駅・全車両基地 No.45』朝日新聞出版、2013年6月30日、34p. 全国書誌番号:22263803
- 平賀尉哲(2013)"厳選!ターミナル駅 亀山"『週刊JR全駅・全車両基地 No.45』.4-10.
- 平賀尉哲(2013)"亀山鉄道部"『週刊JR全駅・全車両基地 No.45』.16-17.
- 石野哲 編『停車場変遷大事典 国鉄・JR編 Ⅱ』(初版)JTB、1998年10月1日。ISBN 978-4-533-02980-6。
関連項目
外部リンク
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貨物支線 | |
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