マリオット・インターナショナル (英: Marriott International) は、アメリカ合衆国メリーランド州に本部を置き、ホテルの運営・フランチャイズを手がける多国籍企業。世界最大のホテルチェーンであり、世界141ヵ国と地域に「マリオット」や「リッツ・カールトン」など30を超えるブランドの約8,900軒のホテル/リゾートを展開する(2024年現在)。
ヒルトン・ワールドワイド、インターコンチネンタルホテルズグループ、アコーホテルズ、ハイアットホテルアンドリゾーツなどと並ぶ世界的なホテルチェーンである。
歴史
設立
アメリカにおいて禁酒法が施行されている1927年に、J・ウィラード・マリオットとヒュー・コルトンという2人の男が「ホットショップ」という名のノンアルコールビールを扱う居酒屋を開業した。質の高い料理を提供したこの居酒屋は高い評判を呼び、順調に業績を伸ばして行った。
機内食事業進出
1937年のある日、マリオットがワシントンD.C.郊外のフーバー飛行場(英語版)に隣接する「ホットショップ」で、乗客が機内に持ち込む飲食物を買っていることに気づいたことから飛行機の機内食事業を開拓する。
第二次世界大戦後の民間航空の成長期には、機内食事業が順調に業績を伸ばし、1963年には10の空港と25の航空会社にサービスをするようになり、1966年には海外進出を果たす。機内食事業開拓後も大学や病院などの給食事業などのフード産業に進出するなど、事業範囲を拡大していく。
ホテル事業進出
1957年にはホテル事業に進出し、第1号となるホテルをバージニア州アーリントンに開業した。開業から10年後の1966年の時点では、わずか6軒だったホテルも1977年を境に急激に増やし、1981年には100軒目を突破するなど急成長した。
急激に運営ホテルを増やした背景にはそれまで巨額のローンが足枷となってホテルの数を増やせずにいたが、いったん建設したホテルを投資家や外部企業に売却し、その投資家や外部企業との間に運営契約を結ぶという現在も続く手法に切り替えたことにある。
現在マリオット・コーポレーションが運営する多くのホテルは建物を所有する投資家や外部企業と運営会社であるマリオット・コーポレーションとの契約で成り立っており、例えばザ・リッツ・カールトン東京の建物は三井不動産が所有している。ザ・リッツ・カールトン東京に関しては、三井不動産とのリース契約であり、マリオット直営のホテルである。他の国内のリッツ・カールトンホテルは、所有者との間での運営契約の形態をとっている。
ホテル専業化
1967年には「ホットショップ」から、「マリオット・コーポレーション」に商号を変更した。ホテル事業が拡大したマリオット・コーポレーションは1989年にかつての中心事業だったレストラン・機内食部門を売却し、ホテル運営事業専業の会社となった。
1993年に分社化しホテル運営事業はマリオット・インターナショナルとなる。1995年には世界の主要ホテルチェーン運用会社として初めてウェブサイトでの予約システムの提供を始めた。
同年4月ジョージア州アトランタに拠点を置く高級ホテルチェーン運営会社の「ザ・リッツ・カールトン」の株式の49パーセントを手に入れ、その後1998年には完全に傘下に入れた。
世界最大のホテルチェーンに
2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件では、ワールドトレードセンター内にあったホテルが崩壊したほか、その後旅行業を襲った不況によりグループ内再編を余儀なくされた。
しかしその後経営効率化が進んだことで業績が好転し、2010年代にはACホテル、ゲイロードホテル、プロテアホテル、デルタホテル、ブルガリホテルズ&リゾーツなど次々と買収を進める。
2015年11月16日に、同業で同じくアメリカに本拠を置くスターウッド・ホテルズ&リゾーツ・ワールドワイドを買収することで合意したと発表した。
買収総額は約122億ドル。2016年4月に両社の株主総会で承認され、ホテル数は計5500余りとなり、客室数は世界で110万室。これにより世界最大のホテル企業が誕生した[3]。
リワードプログラムの大幅刷新・統合
2019年2月13日に、これまでのマリオット向け「マリオット リワード」、リッツ・カールトン向け「ザ・リッツ・カールトン・リワード」、スターウッド向け「SPG(スターウッド プリファード ゲスト)」を統合した新ロイヤリティプログラム「マリオット ボンヴォイ(Marriott Bonvoy)」を開始した[4]。これと同時に、2つの上位エリートランクが更新され、年間75泊以上の旧プラチナプレミアエリートは「チタンエリート」、そして年間100泊以上の宿泊かつ年間20,000ドル以上の支払いを行った会員に付与される旧アンバサダープラチナプレミアエリートは「アンバサダーエリート」に変更される。
運営ブランド
マリオット・インターナショナルは、スターウッド・ホテルズ&リゾーツ・ワールドワイド(下表で★印が旧スターウッドのブランド)を合併後、ブランドを「クラシック」と「ディスティンクティブ」(特色のある)ブランドに分類。
またサービスのレベルおよびコンセプトを「ラグジュアリー」「プレミアム」「セレクト」「長期滞在」「コレクション」に区分した[5][6][7]。
マリオット
ラグジュアリー
最高級クラスのホテルブランド(Luxury)[6]。
クラシックラグジュアリー
ディスティンクティブラグジュアリー
プレミアム
高級クラスのホテルブランド(Upper Upscale, Upscale)[6]。
クラシックプレミアム
ディスティンクティブプレミアム
- ル・メリディアン(★)
- ウェスティン(★)
- ルネッサンス・ホテル(英語版)
- 1997年より傘下に入った高級ブランド。元々はアメリカ郊外でモーテルを中心に展開していたが、マリオットによる買収後は世界各地に展開されている[8]。
- ゲイロード・ホテル
- 2012年より傘下に入った。アメリカ国内でコンベンションセンター、アミューズメント・パーク、ショッピング・モールなどを備えた大型ホテルを展開[8]。
セレクト
セレクトサービスによる中級クラスのホテルブランド(Upscale、Upper Midscale)[6]。
クラシックセレクト
- コートヤード・バイ・マリオット
- 中規模のホテルを中心とした中価格ホテルブランド。
- フォーポイント(★)
- スプリングヒル・スイート(英語版)
- 高級階層かつ最大の全室スイートのホテルブランド[9]。1998年にフェアフィールド・イン・バイ・マリオットの内、スイートルーム主体のホテルを分割して開設された。
- プロテアホテル
- 2014年より傘下に加わった、アフリカで展開されるホテルブランド。
- フェアフィールド・バイ・マリオット(英語版)
- シンプルな美しさに重点を置いたホテルブランド[10]。レストランなどの無いリミテッドサービスホテルブランド。
- フォーポイント フレックス by シェラトン
- マリオットでは初となるビジネスホテルブランド[11]。日本では、KKRとマリオットが協業し、KKRが買収したユニゾホテルの施設(ホテルユニゾ、ユニゾイン、ユニゾインエクスプレス)を改修して同ブランドとして立ち上げる。
ディスティンクティブセレクト
- ACホテル
- 2011年より傘下に加わったスペイン発祥のホテルブランド[8]。若年層をターゲットとし、モダンなデザインが特徴。
- アロフトホテル(★)
- モクシー・ホテル
- 楽しさを追い求める次世代の旅行者をターゲットとしたホテルブランド。
- シティエクスプレス
長期滞在型
長期滞在者向けのフルサービス・ホテルブランド[6]。
クラシック長期滞在
- マリオット・エグゼクティブ・アパートメント
- 長期滞在の出張者向けに設計された5つ星の環境を提供するホテルブランド[12]。
- レジデンス・イン(英語版)
- 全室スイートのホテルブランド[13]。
- タウンプレース・スイート(英語版)
- フルキッチン付きの広々としたスイートを備えたホテルブランド[8][14]。
ディスティンクティブ長期滞在
コレクション
個性豊かな中高級ホテル等のブランド(Upper Upscal)[6]。
日本での展開
マリオット・インターナショナルのグローバル・セールスオフィスが、東京都港区新橋と渋谷区恵比寿に置かれており、日本国内における傘下ホテルのセールスやマーケティングなどの業務を行っている。現在日本国内で展開している傘下ホテルは下記のとおりである。2016年には森トラスト・ホテルズ&リゾーツとフランチャイズ契約を結び[17]、ラフォーレ倶楽部ブランドのホテルの一部がマリオットへリブランドされた。
営業中のホテル
スターウッド・ホテル&リゾートの施設については、スターウッド・ホテル&リゾートにおいても記載あり。
- Trip Base 道の駅プロジェクト(フェアフィールド・バイ・マリオット)
- 自治体と連携した地方創生事業として、道の駅に近接するホテルが展開されている(「Trip Base 道の駅プロジェクト」)。マネジメントは積水ハウスが行い、2025年に25道府県、3,000室規模へ拡大する計画がある[55](TRIP BASE STYLE [トリップベーススタイル] 道の駅から、未知の旅へ / Fairfield フェアフィールド・バイ・マリオット公式サイト)。レストランなどは周辺の施設を利用してもらうことをコンセプトにしているため、リミテッドサービス業態のフェアフィールド・バイ・マリオットで展開している。
オープン予定ホテル
- JW マリオット・ホテル東京 - JR東日本(東日本旅客鉄道)が進める品川開発プロジェクト(第I期)の高輪ゲートウェイシティ(仮称)で2025年春に開業予定[60]。
- 北5西1・西2地区再開発ビル(仮称)(2028年秋開業予定、北海道札幌市中央区)- 札幌駅交流拠点 北5西1・西2地区市街地再開発準備組合が進める再開発事業で、JR北海道ホテルズと協業で出店予定。[61]
- コートヤード・バイ・マリオット京都駅(2026年度開業予定、京都府京都市南区) - JR東海、ジェイアール東海不動産、ジェイアール東海ホテルズと協業で出店予定[62]。JR東海ホテルズとしては関西地区初出店となり、マリオットとしても「コートヤード・バイ・マリオット」ブランドは京都初出店となる。
- コートヤード・バイ・マリオット高知(2028年度秋開業予定、高知県高知市)マリオットとしては四国初進出となる
- 2024年4月に、マリオットとホテルマネージメントインターナショナルが戦略的パートナーシップを締結。これにより、以下の7ホテルが改装後マリオットホテル及びコートヤード・バイ・マリオットへと2025年秋から2026年にかけてリブランドされる予定[63]。
- 浜松マリオットホテル(現「グランドホテル浜松」、2025年度秋開業予定、静岡県浜松市中央区)
- 京都マリオットホテル(現「ホテル平安の森京都」、2025年度秋開業予定、京都府京都市左京区)
- 神戸マリオットホテル(現「ホテルクラウンパレス神戸」、2025年度秋開業予定、兵庫県神戸市中央区)
- 沖縄マリオット・リザン・リゾート&スパ(現「リザンシーパークホテル谷茶ベイ」、2025年度秋開業予定、沖縄県国頭郡恩納村) - マリオットブランドとしては4年ぶりの沖縄再進出となる。
- コートヤード・バイ・マリオット神戸(現「ホテルパールシティ神戸」、2025年度秋開業予定、兵庫県神戸市中央区)
- コートヤード・バイ・マリオット小倉(現「ホテルクラウンパレス小倉」、2025年度秋開業予定、福岡県北九州市小倉北区)
- コートヤード・バイ・マリオット北九州(現「ホテルクラウンパレス北九州」、2025年度秋開業予定、福岡県北九州市八幡西区)
- コートヤード・バイ・マリオット高知(2028年度秋開業予定、高知県高知市)
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かつて運営していたホテル
宿泊業以外での展開
関連項目
脚注
出典
外部リンク
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- 銘柄入替日時点でのウェイト順
- 緑字は2024年6月24日入替銘柄
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