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この項目では、松本清張の小説について説明しています。韓国映画については「悪いやつら」をご覧ください。 |
『わるいやつら』は、松本清張の長編小説[1]。『週刊新潮』に連載(1960年1月11日号 - 1961年6月5日号、全73回、連載時の挿絵は御正伸)、加筆訂正の上、1961年11月、新潮社から単行本として刊行された。後に電子書籍版も発売されている。
医者の社会的権威を利用して犯罪に手を染めてゆく医師と、その人間関係を描く、長編ピカレスク・サスペンス。
1980年に松竹で映画化、また4度テレビドラマ化されている。
あらすじ
戸谷信一はある病院の院長、病院の経営は苦しく、赤字は毎月増えるばかりであったが、妻・慶子との別居中に作った愛人から、金を巻き上げては赤字の穴埋めに充てていた。最近新たにデザイナーの槙村隆子を知った戸谷は、彼女に強い興味を持ち、結婚に持ち込みたいと思うようになった。そのためさらに多額の金が必要になったが、その金も愛人から絞り取ることで乗り切れると戸谷は考えていた。しかし、愛人の一人である横武たつ子の病夫の急死に、思わぬ関わりを持った[2] ことから、戸谷とその周囲の人間の運命は狂い出し…。
出版
単行本刊行後、1962年に新潮社ポケット・ライブラリ版、1966年に上下巻に分冊した新潮文庫版が刊行された。1970年に光文社のカッパ・ノベルスから上下巻の分冊版が刊行され、1971年には文藝春秋の『松本清張全集』第14巻に収録された。
登場人物
以下は原作における設定を記述。
- 戸谷 信一
- 東京・中野のとある病院の院長。高名な医者であった亡父・信寛の病院を継ぐが、医療への情熱はとうに失っている。
- 槙村 隆子
- 若くして銀座で一流洋装店を経営するデザイナー。美貌と資産を兼ね備えている。
- 藤島 チセ
- 銀座の高級洋品店「パウゼ」の経営者。戸谷の3年越しの愛人。
- 横武 たつ子
- 大きな家具店の妻女。戸谷の愛人。
- 藤島 春彦
- 藤島チセの夫。
- 横武 常治郎
- 横武たつ子の夫。
- 横武 二郎
- 横武たつ子の義弟。
- 寺島 トヨ
- 看護婦長。表には出さないが、蒼い情念を持っている。
- 下見沢 作雄
- 弁護士。奇妙に世間のいろいろな事情に通じる男。
エピソード
- 本作執筆のきっかけとして、著者の母が1955年に死んだ際、埋葬許可証を発行する区役所の手続きが非常に簡単で、係員が死亡診断書を発行した医者に問い合わせることをせず、診断書の記載がそのまま形式的に通過していくことに驚き、創作のヒントを得たと著者は述べている[3]。
- 本作は連載中から読者の反響が大きく、当時、著者がバーや料亭に行くと、ホステスや女中から、次の展開をよく訊かれたという[4]。
- 雑誌連載時は原稿用紙1460枚であったが、単行本化時には1200枚分に圧縮された。一例として、戸谷が藤島チセと皆生温泉へ行き、チセと関係を持つ場面が描写された連載第4回は、単行本化時にすべて削除されている。また、連載時の物語は冬に始まる設定となっているが、単行本では夏に変更されている[5]。
映画版
1980年6月28日に松竹系にて公開された。松竹・霧プロダクション第1回提携作品[7]。英語題名『Bad Sorts』。上映時間は129分。槙村隆子のその後に関して、原作にないエピソードがラストに追加されている。現在はDVD化されている。
キャスト
スタッフ
エピソード
- ファッションデザイナーの森英恵が衣裳を提供したが、原作者自身が出演交渉をして、最後のファッションショーのシーンでは客席に座ることになった[8]。
- 製作発表は1980年5月8日、六本木のディスコ「GIZA(ギゼ)」(現存しない。日本初の「お立ち台」と「すしバー」が設置されたとする説がある)で行われたが、写真家の大竹省二や紀伊國屋書店社長の田辺茂一、デザイナーの石津謙介をメンバーに、「わるいやつらの会」を発足させるという変わった趣向のものであった。この時、槙村隆子を演じる松坂慶子と原作者は、マスコミの注文に応じ、ダンスを披露した[9]。
テレビドラマ
1985年版
『松本清張スペシャル・わるいやつら』は、1985年4月2日に日本テレビ系列「火曜サスペンス劇場」(火曜日21:02 - 23:24)で放送された2時間ドラマである。主演は古谷一行。
視聴率は22.7%(関東地区・ビデオリサーチ社調べ)。
当初、戸谷信一役は田村正和が演じる予定であったが、クランクイン初日に田村が緊急入院、ドクターストップがかけられた。これを受け、休暇中の古谷一行が急遽戸谷役を演じることになったが、このことが2002年放送の『松本清張スペシャル・事故』まで、同枠の松本清張原作ドラマ計13作に出演する契機となった[10]。
キャスト
スタッフ
2001年版
『松本清張特別企画・わるいやつら』は、2001年4月8日にBSジャパン「BSミステリー」(日曜日21:00 - 23:24)で放送されたテレビ東京・BSジャパン共同制作の2時間ドラマである。地上波では、2001年4月18日にテレビ東京系列「女と愛とミステリー」(水曜日20:54 - 23:18)で放送。主演は豊川悦司。
制作局でもあるBSジャパン(現:BSテレ東)で繰り返し再放送されたほか最近では、BS12で2022年9月21日に再放送された[11]。
キャスト
スタッフ
2007年版
『松本清張・最終章 わるいやつら』は、2007年1月19日より3月9日まで、ABC・テレビ朝日の共同制作により、テレビ朝日系列で毎週金曜日21:00 - 21:54[12] に放送された連続テレビドラマである。主演は米倉涼子。
2004年の『松本清張 黒革の手帖』、2006年の『松本清張 けものみち』に続く3部作の最終章と位置付けられており、本ドラマの主演も米倉が務めた。原作は病院長・戸谷信一を主人公とするが、本作では主人公が米倉演ずる看護師・寺島豊美(寺島トヨ)に変更されている。映像ソフトとしてDVD-BOXが発売されている。
キャスト
- 戸谷病院
-
- 寺島豊美〈31〉(戸谷病院の中堅看護師) - 米倉涼子
- 戸谷信一〈40〉(戸谷病院院長・口が巧く複数の女性と関係を持っている) - 上川隆也
- 葉山耕太〈28〉(経験の浅い新人医師) - 平山広行
- 沼田看護師長(粕谷と共に先代から仕えてきた看護師長) - 朝加真由美
- 粕谷事務長(先代から仕えている戸谷病院事務長) - 伊武雅刀
- 槇村家
-
- 横武家
-
- 藤島家
-
- その他
-
※以下、カッコ内は出演話数
スタッフ
放送日程
各話 |
放送日 |
サブタイトル |
演出 |
視聴率
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第1話 |
2007年1月19日 |
医師と看護師の危険な情事 |
松田秀知 |
13.6%
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第2話 |
2007年1月26日 |
悪党VS白衣を脱いだ悪女 |
10.1%
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第3話 |
2007年2月02日 |
悪女が牙をむく! |
藤田明二 |
09.1%
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第4話 |
2007年2月09日 |
誘惑と愛憎の果て |
07.2%
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第5話 |
2007年2月16日 |
決別…悪女の最期 |
松田秀知 |
06.2%
|
第6話 |
2007年2月23日 |
大逆転悪女のワナ |
藤田明二 |
08.7%
|
第7話 |
2007年3月02日 |
三億円を奪う!! |
09.8%
|
最終話 |
2007年3月09日 |
最後に笑う女 |
松田秀知 |
10.1%
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平均視聴率 9.35%(視聴率は関東地区・ビデオリサーチ社調べ)
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遅れネット局
2014年版
『松本清張 わるいやつら』は、2014年3月16日(日曜日20:00 - 21:54)にBS日テレで放送された2時間ドラマである。「BS日テレオリジナルドラマ作品」と銘打ち放送された。
キャスト
スタッフ
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関連項目 | |
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関連項目
脚注・出典
- ^ 『昭和55年 写真生活』(2017年、ダイアプレス)p39
- ^ 新潮文庫版下巻(1966年)の裏表紙(および新潮社ホームページ)では、「(戸谷は)横武たつ子の病夫を殺したあげく」と記述されている(2016年現在)が、小説の内容としては不正確な記述となっている。第一章第4節参照。
- ^ 著者のエッセイ「創作「ヒント帖」から」(『別冊小説新潮』1961年10月号掲載、『小説新潮』2007年8月号に再掲)参照。実際に虚偽の死亡診断書が書かれた例として、法医学者の上野正彦は、1983年の中川一郎自殺事件を挙げている。『週刊 松本清張』第5号(2009年、デアゴスティーニ・ジャパン)15頁参照。
- ^ 福岡隆『人間松本清張 - 専属速記者九年間の記録』(1968年、大光社)56頁参照。
- ^ 『週刊 松本清張』第5号 10-11頁参照。
- ^ 「1980年邦画四社<封切配収ベスト作品>」『キネマ旬報』1981年(昭和56年)2月下旬号、キネマ旬報社、1981年、118頁。
- ^ 霧プロダクションは、本作原作者の松本清張と監督の野村芳太郎が中心となり、1979年に設立された映像プロダクション。この後1984年公開の『彩り河』に至るまで、松竹と霧プロダクションの提携は5作続いた。
- ^ 林悦子『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』(2001年、ワイズ出版) 20頁参照。
- ^ 『週刊 松本清張』第5号 20-21頁、または林『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』20頁参照。
- ^ 林『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』 57-60頁参照。
- ^ “わるいやつら | ドラマ「松本清張 傑作選」 | 無料ドラマ・映画 | BS無料放送ならBS12(トゥエルビ)”. BS12トゥエルビ. 2022年9月22日閲覧。
- ^ 第1話は15分拡大(21:00 - 22:09)。
- ^ 「ほら、君も知ってるだろう。健康保険というものが出来て、いちいち点数制度になったんだ」。第一章第2節参照。
外部リンク