『異変街道』(いへんかいどう)は、松本清張の長編時代小説。『週刊現代』に連載され(1960年10月23日号 - 1961年12月24日号、連載時の挿絵は岩田専太郎)、1986年4月に講談社ノベルスから刊行された。江戸幕府直轄の地・甲斐国を主な舞台に、甲州の隠された歴史と欲望の交差が招いた策謀を描く時代長編。
1993年にテレビドラマ化されている。
あらすじ
旗本・三浦銀之助のもとに奇怪な話が伝えられた。両国の水茶屋の亭主が、甲州・七面山の山中で、銀之助の親友・鈴木栄吾に遭遇したという。甲府勤番に役替となった栄吾は、通告によれば、十日前に死んだとのことであったが…。
直接亭主に会おうとした銀之助だったが、亭主はすでに何者かによって殺害されていた。他方、岡っ引の常吉は、子分と共に事件の調査に乗り出す。
銀之助は、栄吾が小梅にある社「青日明神」を信仰していたことを知るが、その社は「釘〆ニ閂」の神紋や金槌の図柄の絵馬という変わった特徴を持っていた。
真相究明のため、銀之助は甲州街道を西へ向かう。事件探索への黒い圧力に突き当たった常吉も、そして栄吾を慕う女性も続いて甲州へ後を追う。
甲州の隠れ里へ足を運ぶ銀之助に接近する謎の暗躍者。出現する第二・第三の死体。甲斐の歴史に導かれた策謀事件の顛末は…。
主な登場人物
小説の舞台となる南アルプス山麓・早川流域の渓谷地帯
- 原作における設定を記述。歴史的人物の実際に関してはリンク先を参照。
- 三浦銀之助
- 徒士組の旗本。市ヶ谷・中根坂に住む。ぼんやりとした顔立ちだが、刀の腕は相当のもの。
- 鈴木栄吾
- 銀之助の親友。放蕩のかどで半年前に甲府勤番として赴任するが、九月朔日に病死したとの公報が入る。
- お蔦
- 両国の水茶屋につとめ、栄吾を慕っていた芸者。
- 深谷幸江
- 栄吾の元許婚者。父・作之進は栄吾の父・弥九郎と昵懇。
- 与兵衛
- 向両国の水茶屋の亭主。法華経の熱心な信者。
- 常吉
- 薬研堀に住む岡っ引。御用熱心で知られる。
- 庄太
- 常吉の子分。本職は髪結。
- 杉浦治郎作
- 常吉が附いている与力。八丁堀に住む。
- 山根伯耆守頼通
- 甲府勤番支配の一人。小梅に最近豪奢な別荘を建てた。
- 鹿谷伊織
- 山根の留守居格の旗本。
- お文
- 銀之助が甲州街道で遭遇した女性。
- 河村百介
- 栄吾の甲府での友人。
- 弥助
- 小梅にある植木屋の老人。
- 与四郎
- 西山温泉のさらに奥にある台里地区の、旧い百姓家の傭人。
- 平太
- 台里地区の百姓男。
- 松波筑後守正春
- 小説中では幕府大目付。
関連項目
テレビドラマ
「松本清張の異変街道」。1993年10月29日、フジテレビ系列の「金曜エンタテイメント」枠(21:02-22:52)にて放映。当初は1993年10月13日放映予定であったが延期され、同枠での放映となった。サブタイトル「江戸と甲州を結ぶ欲望の点と線!金をめぐる大陰謀」。視聴率16.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)[1]。
- キャスト
- スタッフ
- 撮影助手:江原祥二、後藤善昭
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脚注
- ^ 林悦子『松本清張映像の世界 霧にかけた夢』(2001年、ワイズ出版)