パリ条約によるイギリスとの講和が達成間近になるとアメリカ人の間では危機感が薄れ、戦争で荒廃した国土の復興に労力を振り向ける必要性もあって、同条約が調印された1783年には大陸軍は解散した[17]。翌年には職業軍人による連隊 (First American Regiment) が創設されたものの[17]、以後も連邦政府の軍事力は最低限に留められており、軍事作戦の必要が生じた際には、植民地民兵隊を引き継いだ各州の民兵隊に依存せざるをえない時代が続いた[11]。国内での集団警備力としての運用もなされており、さっそく1794年のウィスキー税反乱で暴動鎮圧のために大規模に動員されている[5]。
第一次世界大戦での州兵部隊の活躍を受けて、正規軍の指導による州兵の再編制が進み[31]、中央統制が強化された[11]。まず1920年国防法 (National Defense Act of 1920) によって予備役の構成が定められ、州兵はその中心組織として位置付けられた[31]。更に1933年の改正(National Defense Act Amendments of 1933)により、連邦政府からの資金提供を受けている各州州兵(National Guard)の隊員について、新設された連邦政府の予備役組織たる連邦州兵(National Guard of the United States)にも同時に登録されるものとした[31]。これにより、連邦政府は州兵に直接命令できるようになり、部隊はもちろん個々の隊員単位でも、州外・国外にも派遣できるようになった[31]。
ベトナム戦争では、戦争の長期化による連邦軍の人員損耗を補うため、補充要員としての州兵や予備役の比重が増加したことから、1973年、常備軍と予備部隊間の差異を小さくし、一体的な運用を行えるようにする総戦力方針 (Total Force Policy) が採択された[1]。これを受けて、州兵の訓練・装備面での更なる充実が図られ、連邦軍に見劣りしないほどの人員装備を擁するようになった[1]。また1972年には徴兵制も停止されており、州兵と連邦軍との差異はますます減っていくことになった[35]。
州兵総局長は、大統領の指名・上院の承認を経て将官から任命され、統合参謀本部のメンバーであり、その下に、陸軍長官によって任用される陸軍州兵局長(Director, Army National Guard)、空軍長官によって任用される空軍州兵局長(Director, Air National Guard)が配されている[1]。
各州において州兵の制服組トップとなるのが州兵総監(英語版)であり、連邦軍における統合参謀本部議長と同様、州知事の軍事面における最高顧問となる他、日常の管理などにあたっている。一般的には州知事により任命されるが、バーモント州では州議会によって任命される。サウスカロライナ州では2016年までは州民の直接選挙で選ばれていたが、それ以降、住民投票の決議により州知事に任命されるようになった。州兵総監を長とする部局として州兵局(State Military Department)が設置されており、多くは知事直轄の独立機関であるが、公安局や防衛局に属している場合もある。なお州兵総監は、陸軍長官および空軍長官に対して所定の報告をする義務がある[5]。
第一は、原則として州知事の指揮下で、州内における治安維持(暴動鎮圧)や災害救援など郷土防衛隊としての機能である[1]。「純然たる州任務に基づく地位」(Pure state status)の場合、基本的には各州法を根拠法とするが、アメリカ同時多発テロ事件後の国家緊急事態宣言に伴う出動のように、合衆国法典第32編第502条に基づき、連邦政府の要請を受けて各州知事が命令を発出することもでき、「州の指揮下で行う連邦任務」(State active duty)と称される。この場合、所要経費は連邦政府の負担となる。なおロサンゼルス暴動に対する出動は、当初は州の任務として発令されたものの、情勢悪化に伴って反乱法 (Insurrection Act of 1807) が発動され、連邦軍が動員されるのに伴って、後に連邦任務に移行した[37]。
第二に、連邦軍の予備役部隊としての作戦参加である。この「連邦政府の指揮下で行う連邦任務」(Federal active duty)は合衆国法典第10編第12302条を根拠法とするもので、州兵部隊は大統領令によって動員され、連邦政府の指揮下で各種任務に従事することになる[1]。現代のアメリカでは、軍の国内活動には、民警団法(英語版)(PCA)による規制が課せられているが[注 4]、州兵の場合、州知事の指揮下で通常の任務に服している場合は、その規制を免除される。ただし連邦政府の任務に動員されている場合は、陸空軍の他の部隊と同様にPCAの規制が課せられる[8]。
州独自災害等 (Pure state status)
国家的災害・治安維持 (State active duty)
国外軍事活動 (Federal active duty)
根拠法
各州法
合衆国法典第32編
合衆国法典第10編
指揮・招集権
州知事
州知事(連邦が州に出動依頼)
大統領
費用
州
連邦
警察権
有
無
実施部隊
陸軍に対応した陸軍州兵(Army National Guard、州兵陸軍[52]とも)と、空軍に対応した空軍州兵(Air National Guard、州兵空軍[53][52]とも)で構成され、連邦軍と同等の能力を発揮できるような実質を備えており、特に空軍州兵は、アメリカ本土防空を一手に担っている[1]。
招集対象期間は、陸軍州兵では全8年で、そのうち3年から6年は「即応予備役」(RR)となる[55]。残りの期間はRRのなかでも「個人即応予備役」(IRR)として勤務することもできるが、緊急時には招集対象となる[55]。一方、空軍州兵は6年間だが、状況により8年間まで召集対象とされることもある[56]。召集期間中の州兵隊員は定期的な訓練への参加が義務付けられている[5]。基本的には連邦任務に備えたものであるが、治安維持や災害救援のような州の任務のための訓練もなされている[5]。週末に開講される訓練集会と年次定例訓練期間があり、年間に48単位の訓練集会と15日の年次定例訓練期間が義務付けられてきた[5]。このことから、「ひと月に週末1回、年間に2週間」 (One weekend a month, two weeks a year) という標語も造られた。しかし2000年代以降のアメリカ軍においては、対テロ戦争やイラク戦争の影響もあり、州兵を含む予備部隊が多数動員され、国内外で活動を行っている(テネシー州兵部隊は1950年代の装備のままで半年も派遣されていた)。そのため、フルタイム勤務が増加し、先の標語のような勤務状態ではなくなった。