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「介助」あるいは「介護」とは異なります。 |
肉体的援助(にくたいてきえんじょ)とは、野球における反則行為の一つである。走者が走塁を行っているときにベースコーチの援助を受ける行為を指す。
概要
ベースコーチの肉体的援助は、公認野球規則6.01(a)(8)で定められているルールである。「三塁または一塁のベースコーチが、走者に触れるか、または支えるかして、走者の三塁または一塁への帰塁、あるいはそれらの離塁を、肉体的に援助したと審判員が認めた場合[1]」、審判員は援助を受けた走者にインターフェア(守備妨害)を宣告し、その走者をアウトにしてボールデッドにする[2]。
したがって、例えば二塁走者が三塁へスライディングしたときにオーバースライドしそうになったのを三塁ベースコーチが支えたとか、本塁へのタッグアップに際して三塁ベースコーチが背中をたたくなどして離塁を促した場合などは、明らかに肉体的に走塁を援助したものであるから、その走者にアウトが宣告される。
本塁打後に打者がベースコーチ等と接触する行為
フェンスを越える本塁打を打った打者がベースコーチとハイタッチをする行為は、日本プロ野球などでしばしば見られる。これについては、打球がフェンスを越えた時点でボールデッドになっているため、離塁や帰塁を援助するものではなく、6.01(a)(8)で規定する行為に該当しない。
なお、日本のアマチュア野球ではこれを禁じている地域・大会や、実際にハイタッチ行為を行ったら、その打者は「肉体的援助を受けた」としてアウトにするというローカルルールの制定や申し合わせが行われていることがある。
また、打者や走者が、走塁中にベースコーチ以外の攻撃側メンバー(たとえばプレイヤーズ・ベンチから出てきた選手など)やその他の人と接触することについては、公認野球規則に記述がない。これは、規則上、競技中に選手や審判員、ベースコーチ以外の人物がグラウンドに出ること自体が認められていないからである[2]。
適用された事例
三塁ベースコーチとハイタッチ
- 1985年7月16日の全国高等学校野球選手権大会西東京大会2回戦、東京都立南野高等学校対東京都立永山高等学校戦で、2回、南野高校の打者が左翼フェンスを越える本塁打を打ち、三塁を蹴った直後三塁ベースコーチとハイタッチをした。この行為に対して三塁塁審はアウトを宣告した。南野高校からは抗議はなく、記録は三塁打となった。この後南野高校は勝利した。
- このとき三塁塁審が宣告したアウトの理由は「はしゃぎ過ぎで、高校野球において見苦しい」と判断した、というものであったが、高野連では後日この判定に関する疑問の声が上がった。
三塁ベースコーチが帰塁を援助
走者とベースコーチが接触しながら適用されなかった事例
本塁打の後に走者がベンチ選手と接触
2018年10月21日、秋季関東地区高等学校野球大会の常総学院高校(茨城県)対桐蔭学園高校(神奈川県)戦で、9回裏、桐蔭学園の攻撃。3-5で桐蔭学園が2点負けている状況で、二死満塁から、打者の森敬斗は中堅越えの逆転サヨナラ満塁本塁打を打った。
喜びのあまり、桐蔭学園の選手はプレイヤーズベンチから本塁付近へ飛び出し、一塁走者が三塁を回って本塁を踏む直前(すなわちスコア6-5となって逆転サヨナラ勝利が確定する直前)、ベンチから飛び出してきた控え選手の一人が、三塁線上で同走者と抱き合う形で接触した。直後に控え選手は離れ、一塁走者は本塁を踏んで6-5とし、続けて打者走者も本塁を踏んで7-5とした。
ここで常総学院の選手は、「走者と控え選手の接触行為が肉体的援助にあたり、一塁走者がアウトとなって、桐蔭学園の勝利は確定しないのではないか」と審判員に主張した。審判団は協議を行い、その後、球審の辰巳忍が「身体的援助にあたりませんので試合終了といたします」と場内放送で説明して、桐蔭学園の勝利が認められた[10]。
翌日、関東地区高校野球連盟は、「オーバーフェンスのホームラン(ボールデッド)なので、肉体的な援助には当たらないと審判は判断し、球審が場内アナウンスを行った上でゲームセットとした。大会本部から、桐蔭学園に対して試合後、注意をした」との見解を示した[11]。
脚注
関連項目