『惑星大戦争』(わくせいだいせんそう)は、1977年(昭和52年)12月17日に公開された東宝製作の特撮SF映画[11]。カラー、シネマスコープ[出典 6]。監督は福田純、主演は森田健作。
同時上映は『霧の旗』[出典 7]。
1988年、太陽系外惑星から飛来した異星人の地球侵略に対抗するため、宇宙防衛艦「轟天」が、金星を前線基地とした異星人の宇宙戦艦「大魔艦」に立ち向かう。主要メカの轟天は、映画『海底軍艦』(1963年)に登場する同名メカの宇宙版リメイクであり[19][20]、原作の神宮寺八郎も同作品の登場人物にちなんだものである[8]。
製作の背景には、1977年はアメリカでSF映画『未知との遭遇』『スター・ウォーズ』、日本ではアニメ映画『宇宙戦艦ヤマト』が公開され、空前のSFブームを迎えていたことがあった[出典 8]。タイトルの『惑星大戦争』は『スター・ウォーズ』の邦題になる予定だった[4][9]が、同映画が本国のアメリカで大ヒットしたことや、日本ではアメリカの翌年に公開されることなどに加え、ジョージ・ルーカスによる「全世界で(『スター・ウォーズ』という)タイトルを統一させる」との意向から却下され、最終的に本作品のタイトルとして流用された[出典 9]。
監督と特技監督には、1970年代の東宝でゴジラシリーズやSF作品を手がけてきた福田純と中野昭慶のコンビが登板した[23]。
助監督を務めた川北紘一は、「和製『スター・ウォーズ』を作るという意気込みの作品であったが、田中は本家とは異なる宇宙像を描くという意図があり、単なる便乗作品ではなく差別化しようという志があった」と述べている[26]。田中は、本作品を「『スター・ウォーズ』の亜流と評される不遇の作品」と述べている[27]。
日本国内での評判は芳しくない[27][9][注釈 4]が、海外(特にドイツ〈当時は西ドイツ〉)では大ヒットを記録した。有名人の賛辞としては、矢作俊彦の「なぜ日本アカデミー賞が『惑星大戦争』であってはいけないのか」という一文がある[28]。
東宝特撮映画としてはアナモルフィックレンズで撮影された純正35mmシネマスコープ・サイズの最後の作品であった。[独自研究?]
1980年代、世界各地でUFO騒ぎが起きたうえ、電波障害による大混乱が発生した。これを宇宙からの侵略の前兆と捉えた国連宇宙局・日本支部所長の松沢は三好孝次に日本アルプスに落下した謎の飛行部隊の調査を依頼した。それと同時に国連宇宙局の秘密機関・宇宙防衛軍 (UNSF) は、宇宙防衛艦の設計建造を宇宙工学の博士・滝川正人に依頼して隊員の訓練を開始した。しかし、次第にその騒ぎは収まり、平和な地球に不要と判断された滝川は宇宙防衛艦の建造を中止し、退任する。
1988年[出典 10]、再びUFO騒動と大規模な通信障害が発生したため、国連宇宙局の三好は宇宙防衛艦轟天を完成させる使命を帯び、滝川を説得しようと日本に帰還する。滝川は消極的だったが、彼を暗殺しようとした刺客から三好、室井、冬木によって救われる。さらには、宇宙ステーション「テラ」が「巨大なローマ船」という通信を残して爆発し[14][9]、国防軍は滝川に轟天建造の再開と乗員の編成を要請する[9]。
敵の侵略軍のUFO「ヘル・ファイター」によって世界各地の大都市と地上の国連軍基地が壊滅状態となる中、滝川は隊員たちを再招集して太平洋のマウグ島で轟天の完成を急ぐ[14][9]。侵入した工作員の妨害も排除しつつ轟天は完成し、地球上を飛び回っていたヘル・ファイターを全滅させ、侵略軍の前線基地がある金星への進撃を開始する[15][9]。しかし、その途中で三笠の遺体に扮して侵入した敵兵により、滝川の娘・ジュンが拉致されてしまう[出典 10]。三好は冬木たちとともに、敵艦の心臓部爆破とジュンの救出のため、大魔艦に潜入する[15][9]。
犠牲を払いつつもジュンの救出に成功した三好は大魔艦からの脱出にも成功し、轟天と大魔艦は金星の空で激突する[15][9]。大魔艦の超重力砲によって轟天は危機に陥るが、滝川博士がエーテル爆弾を内蔵した艦首ドリルに乗り込み、自らの命と引き換えに大魔艦を打ち破る[15]。
太陽系から2万2千光年、地球がメシエ13と呼ぶ球状星団、恒星ヨミの第三惑星から来た宇宙人[出典 11]。銀河帝国司令官ヘル(演:睦五郎)は劇中で母星をその位置とともに「銀河帝国」と称し、惑星自体が年老いたことから新しい星を求め、第3惑星に似た地球に目をつけたと語る。金星に大魔艦で根城を構え、地球をヘル・ファイターで攻撃する。
ヘルの装束や大魔艦はローマ帝国風にまとめられている[14][23]。地球人と風貌は似ているが、体色が緑色をしている[8][注釈 5]。ヘルはテレキネシスを発する杖を武器にしている。
兵士[注釈 6]は全員、布製の覆面をかぶっており[8]、地球人に化けて行動するシーンが見られた。
大魔艦内で警護に当たる2本の鋭い角を頭部に持つ、全身毛むくじゃらの怪物。知能は高くないが、ヘルの命令には従順で、ジュンを捕縛するほか、レーザー光線を吸収して宇宙金属をも切断する威力を持つ斧で相手を攻撃する[6]。脱走したジュンと三好に襲いかかるが、三好の投げた電磁ナイフが胸に刺さり絶命した。
参照[10][11][23]
1978年夏の『スター・ウォーズ』の日本公開を控え、東宝は本作品を急遽製作して同年の正月映画として公開した[注釈 16]。正月映画として1977年末から公開の予定でありながら脚本が仕上がったのは同年10月に入ってからで、クランクインが公開の2か月前というタイトな製作期間であった[17][9]。監督の福田純も、後年に「とにかくもっと時間があれば面白くなったと思うね」と述懐している[76]。
監督の福田と脚本の中西隆三はゴジラシリーズの新作『ゴジラの復活』の企画に、特技監督の中野昭慶は日英合作映画『ネッシー』の制作準備にそれぞれあたっていたが、製作が急遽決定した本作品にスライドする形となった[25]。福田は本作品を監督した後、東宝との専属契約を打ち切ったため、本作品が東宝での最後の監督作品となった。
製作期間が非常に短いことから、それを補うために本編は3班、特撮は2班で撮影された[25][17]。破壊される各国の都市などは、『宇宙大戦争』や『世界大戦争』『ノストラダムスの大予言』からの流用である[17]。これは前述の製作期間ゆえの、苦肉の策であった。また、プロデューサーの田中友幸は予算の都合により、轟天が現代の地表から宇宙に飛び出すチグハグな設定になったと述懐している[27]。
当初は小松左京に原作の依頼が持ち込まれたが、彼のブーム便乗企画でない本格的なSF映画を作りたいという希望で別途企画が立てられ[9]、『さよならジュピター』が製作されている。『海底軍艦』の宇宙版という企画自体は田中がかねてから温めていたもので、実現の機会をうかがっていた[出典 42]。
田中は絵画的な世界観を描きたかったと述べており[27]、中野は純粋なSFとは異なる独特なものになったと述べている[60]。
金星を舞うホコリにはフライアッシュが用いられ、着色したものを複数種用意していた[60]。金星の爆発シーンでは撮影に広がって映るスタンダードレンズを用いており、これをシネスコサイズにすることでより爆発の広がりを見せている[60]。
滝川ジュンが身に纏う黒のボンデージファッションは、演じる浅野ゆう子の私物で撮影が行われた[79]。
公開に先駆け、『月刊少年マガジン』(講談社)昭和53年1月号に、居村眞二による読み切り漫画が掲載された[17]。ヒロインの滝川ジュンが全裸で拷問されるシーンがあるなど、コミカライズに際してのアレンジがうかがえる[79]。
2021年のアニメーション映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇』では、本作品のBGM[88]の1曲である「激突!轟天対大魔艦」が新規録音のうえで使われている[89][90]。