奈良クラブ(ならクラブ、英: NARA Club)は、日本の奈良市、生駒郡三郷町を中心とする奈良県全県をホームタウンとする[1]、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟するプロサッカークラブ。
1991年に奈良市立都南中学校のOBが都南クラブとして創設。2008年には、前年11月に加入した元Jリーガーの矢部次郎が活動を引き継いだ事を契機に、クラブ名が奈良クラブに変更された[3]。
エンブレムは、奈良の象徴で神の使いとされる「鹿」を中央に据え、「奈良」にかかる枕詞「あをによし(青丹よし)」に由来する「青」と「赤」のクラブカラーとチームが奈良の誇りとなるべく「PRIDE OF NARA」の文字が刻まれている。製作者はくまモンを製作した水野学[4][5]。またロゴである「N」は、平城京の朱雀大路を挟んだ右京と左京、そして左京の傾斜地にあった外京の地場がモチーフとなっており、加えて「N」が示す上下への動きは、「厳しい状況にも負けない不屈の心と、学び前進する奈良の伸び代」を表す[5]。こちらはアートディレクターとして高い山株式会社代表山野英之[6] が、クリエイティブディレクターとして早稲田大学国際文学館の村上春樹ライブラリー建設に関わった有限会社バッハ代表幅允孝が担当した[5][7]。
クラブスローガンは「共創」で、2016年に「みんなで創りあげる奈良クラブ」をイメージして、当時の奈良クラブ選手たちが考案した言葉であり「当時の想いを踏襲しつつ、共に奈良の未来を創っていきたい」との想いから掲げられている[5]。
また「地域に根差した総合型スポーツクラブ」を目標と掲げており、トップチームのほかに、小学生〜高校生までを指導する「奈良クラブアカデミー」、知的障がい者サッカーチーム「奈良クラブバモス」、ダンスを通して健康をはぐくむ「奈良クラブチアダンススクール」も運営している。2023年よりスケートボードストリートワールドスケートジャパン特定強化指定選手である中島野々花もクラブに所属している[8]。
ホームスタジアムは奈良市のロートフィールド奈良[1][3]。練習拠点は生駒郡三郷町の「ナラディーア」を使用している[9][10]。
2024年からタイ王国のBGグループとパートナーシップを締結。ユニフォームパートナーを務めたり、BGがオーナーとなっているBGパトゥム・ユナイテッドFCからパトリック・グスタフソンやキアッドティフォーン・ウドムといったタイ国籍選手が期限付き移籍で加入したりしていた[11]。2025年1月24日にはBGグループと資本提携を締結することを発表し、BGグループが14.98%の株式を約9200万円で購入して保有することとなった[12][13]。
1991年、初代監督・山口幸司を中心に都南クラブが創設される。1997年に奈良県リーグ1部に昇格。
2008年、クラブ名を奈良クラブに変更した。関西府県リーグ決勝大会で優勝した。翌2009年に関西サッカーリーグ2部を昇格1年目で制覇。2010年、サッカー部門にジュニアチームを設立[14]。また、クラブのサポート体制の確立のため、スペインのFCバルセロナに代表される「ソシオ」制度を発足させた[15]。3月29日には、奈良県から特定非営利活動法人の認証を受けた[16]。
2010年12月1日、近鉄奈良駅近くの角振町から率川神社近くの北向町に移転した[17]。
2011年2月3日、横浜FM元コーチの吉田悟が監督に就任[18]。関西リーグ1部で初優勝。第35回全国地域サッカーリーグ決勝大会は1次ラウンドで敗退した。
2012年、カマタマーレ讃岐元監督の羽中田昌を監督に迎えたが、6月30日の9節終了後に辞意を表明、7月3日付けで辞任した[19]。GMの矢部次郎が監督代行に就任。リーグ戦は2位。KSLカップで優勝した。12月19日、事務所を西九条町に移転した[20]。
2013年9月17日、Jリーグ準加盟クラブとして承認された[21]。10月15日、J3クラブライセンスのスタジアム基準を満たさないことより2014年のJ3リーグ入会は成らなかった[22]。また、申請していた日本フットボールリーグ(JFL)入会も叶わなかった[23]。
2014年、横浜FC元コーチの中村敦が監督に就任[24]。関西リーグ1部で3年ぶりに優勝。また、第38回全国地域サッカーリーグ決勝大会も優勝した。12月10日の日本フットボールリーグ(JFL)理事会でJFL入会が承認された[25]。
2017年、事務所を神殿町に移転した[26]
2018年の天皇杯2回戦でJ1の名古屋にPK戦で一度は勝利したが、その後に審判の競技規則適応ミスが発覚。PK戦やり直しが行われ敗れた(詳細は天皇杯 JFA 第98回全日本サッカー選手権大会#マッチナンバー44の扱いを参照)。
2018年11月26日、トップチームの運営を新設する「株式会社奈良クラブ」に移管し、代表取締役社長にクラブスポンサーでもある中川政七商店会長の十三代・中川政七が就任[27]。NPO法人奈良クラブ代表の矢部次郎は代表取締役副社長に就任し、GMとしてポルト大学大学院在籍中で、イングランドとポルトガルのプロクラブ下部組織でコーチを務めた経験を持つ林舞輝が就任することが発表された[28]。なお、育成部門の運営は引き続きNPO法人奈良クラブが行う[29]。
2019年12月7日、J3リーグ加入に必要な年間入場者数を満たすために、2015年から2019年まで5年間の主催試合の入場者数を水増ししていたことを明らかにした[30][31]。これを受けて、日本サッカー協会からクラブおよび社長に対する処分が科された[32] ことを受けて、1月31日付けで中川は代表取締役社長を辞任し、2月1日付で濵田満が代表取締役社長に就任した[31]。2020年1月30日には、Jリーグから、解除条件を伴ったJリーグ百年構想クラブの失格処分となった[33] が、同年6月23日に処分が解除された[34]。
2022年、チームはJ3昇格の成績での案件(4位以内、かつ百年構想クラブの上位2番目まで、かつJ3ライセンス保有必須)クリアへ向けて着実に成果を上げていたが、同年度から「1試合の平均観客動員2,000人以上」の条件が3年ぶりに復活した[35] ため、集客の課題を残していた(平均観客動員の規定人数を下回った場合J3昇格ができない恐れがある)。残り3試合で13,048人以上の集客を集めなければならないという厳しい条件の中迎えた、10月23日の鈴鹿ポイントゲッターズとの対戦で、鈴鹿側に三浦知良が在籍していることが功を奏し、ロートフィールド奈良に14,202人を集客し、最大の課題だった「平均2,000人以上」の集客案件をクリアした[36]。その後、第28節ヴィアティン三重との対戦に勝利し、成績案件のクリアも確定。クラブの悲願であったJリーグ参入が決定した[37]。そして、11月20日の最終節ソニー仙台FCとの対戦は引き分けに終わったが、2位のFC大阪も最下位のMIOびわこ滋賀との対戦で引き分けに終わり、3位のHonda FCも東京武蔵野ユナイテッドFCとの対戦に敗れたため、初優勝を決めた。なお、JFL優勝とJ3昇格を同時に達成したのは、前年度のいわきFCに続く史上2クラブ目となった。
ホームスタジアムはロートフィールド奈良(奈良市鴻ノ池陸上競技場)[1]。奈良県の北端にあるため、京都府との府県境まで1800mほどであり、隣接する木津川市は京都サンガFCのホームタウンのひとつである。
なおロートフィールドは2023年度までJリーグの開催基準に充足した1500ルクス以上の照度のある照明設備がなかった(簡易型の夜間練習用のもののみ)ため、J3昇格最初の同シーズンは薄暮開催(15時開始)までしか対応できなかったが、2024年にJ3開催基準を満たす1500ルクスの照明4基が完成し、ナイターが可能となる[45]。
その他の開催スタジアムについては奈良クラブの年度別成績一覧#年度別入場者数を参照。
2022年11月13日に、奈良県の荒井正吾知事は、奈良クラブのホームゲームの試合後に、磯城郡田原本町に2万人以上が集客する天然芝のサッカー専用のスタジアムを整備する考えを明らかにした[46]。
2031年の国民スポーツ大会(現・国民体育大会)の会場整備に端を発した「大和平野中央田園都市構想」として、奈良県が田原本町に計画している5000人規模の球技専用スタジアムを、奈良クラブがJリーグへの昇格を決定したことを受けて、J1の基準を満たす事ができる2万人規模のサッカー専用スタジアムにするもの[47]。また、荒井知事は、2022年11月14日に、報道機関の取材に対し「サブグラウンドもつくり、サッカーの聖地のような場所にしたい」と話している[46]。
これについて、奈良市の仲川げん市長は2022年11月15日に行われた定例記者会見で「今まで奈良市が全面的にホームタウンとして支援してきたので、引き続き奈良市のロートフィールド奈良をホームスタジアムとして活動していくということは奈良クラブからも確認が取れている。」と述べ、奈良クラブのホームスタジアムが奈良市から移転することはないという見通しを示したうえで、「ロートフィールド奈良をJ2まで対応できる1万人以上の規模に改修する考えをすでに奈良クラブに伝えている」とも述べた[48]。その一方で、奈良県が2万人規模のサッカー場を整備することについて、仲川市長は「奈良クラブのためにではなく、県民全体のサッカー文化振興のためにつくるということであれば歓迎すべきことだ。」とも述べている[48]。
2023年6月8日、新たに奈良県知事に就任した日本維新の会の山下真は、磯城郡3町で県などが計画する「大和平野中央田園都市構想」について、新たな大学や球技専用スタジアムなど中核施設の整備を中止する方向で検討していることが、毎日新聞の取材で判明した。事業の内容を精査した結果、多額の公金を費やす「箱もの」の建設に妥当性がないと判断したとみられる[49]。
同年6月15日、奈良市と同クラブが新スタジアムの具体的な整備内容などについて合意文書を交わす予定であることが奈良新聞の取材で分かった[50]。
同年12月25日、山下知事と仲川市長は、2031年の国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会のメイン会場としてロートフィールド奈良を使用し、既存施設で対応する方針を発表。前知事時代に計画されていた中南和地域での施設整備計画は実質的に白紙となった[51]。
練習場は主に奈良県フットボールセンター(磯城郡田原本町)を使用していたが、2022年2月に生駒郡三郷町の奈良学園大学信貴山グラウンド跡地に練習場やクラブハウスを併設した新たな拠点「ナラディーア」を整備することが発表され[52]、2023年1月に完成した[53]。
2019年11月29日に、あるサポーターがSNSに投稿した写真によると、入場者数を水増ししていたとの指摘があり、奈良クラブが調査したところ、2015年のJFL昇格当初から常習的に入場者数を水増ししていたことが分かった[30]。
水増しした人数は2016年度までは資料がないため不明だが、2017年以後は、実際の入場者数と公表された公式入場者数とは異なる人数を発表した。各年度の1試合平均の人数差異は次に示す通り[54]。
水増しの方法としては、実際には入場者としてはみなされていない人物まで入場者としてカウントするとともに、最終的に集計された数字を水増しして公式入場者数としてカウントされた。特にJ3リーグ昇格に際しては、「原則として1試合平均2000人以上、1年間で3万人以上動員」をすることが審査で求められており、なるべく多く見せたいとする気持ちから、徐々に水増しが常態化されたとしている。特に2019年度のシーズンは開幕2試合で入場者数が伸び悩んだ影響で、水増しを繰り返したとされる。
これを受けて奈良クラブでは、再発防止策として、
とした防止策を取りまとめた。それとともに、代表取締役社長・中川政七の報酬1年間全額返上と、前代表(2015-2018年度)の矢部次郎に対しても報酬1年間3割減とする懲戒処分を行った。その後日本サッカー協会裁定委員会による事情聴取を行い、12月26日に同協会から以下の懲罰処分を科されることとなった[32]。
2020年1月30日には、Jリーグから、Jリーグ百年構想クラブの失格処分が下された。ただし、以下の解除条件をすべて満たしていることがJリーグの理事会で判断された場合には、処分が解除されるとともに、翌シーズンのJ3クラブライセンス申請が可能になる[33]。
2020年6月23日、失格処分は解除となり、Jリーグ百年構想クラブの再認定がされた。これにより、2021年度J3クラブライセンス申請が可能となった[34]。
LeakLubJapan(GKのみ)
クラブマスコットは鹿をモチーフにしたシューカ(蹴鹿)くん。奈良県内の小学生より公募し、合計655作品の中からクラブが選定した最終候補3作品の中から一般投票を行い、名称も公募から選ばれ、2024年10月13日にお披露目式が行われた[86]。
性別は男の子で、奈良クラブのJリーグ昇格を目撃した一匹のシカがサポーターになり、観戦中に飛んできたボールが頭にぶつかってシューカくんに生まれ変わったという設定。頭に乗っているボールにも顔があるが詳細は不明。奈良クラブのエンブレムが描かれたポンチョのようなものを着ている[86]。
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