『ストリートファイターZERO』(ストリートファイターゼロ、Street Fighter ZERO)は、カプコン製作の2D対戦型格闘ゲームである。通称『ストZERO』。1995年に1作目が登場した後、シリーズ化された。
発売は『ストリートファイターII』(以下『II』と表記)シリーズの後であり、タイトルは『ZERO』となっているが、物語の時代設定は初代『ストリートファイター』(以下『I』と表記)と『II』との間である。
『ストリートファイターIII』(以下『III』と表記)の開発が遅々として進まないために発案された繋ぎ企画だった[1]が、『ZERO』が作られた後も『III』が完成していなかったため『ZERO2』が作られ、シリーズ化された[1]。『ZERO』の前年(1994年)に登場した『スーパーストリートファイターII X』(以下『II X』と表記)のタイトル案に『スパIIZ』というものがあり、その名残として開発者の間では当初『スーパーストリートファイターZ』と呼ばれていた[1]。『III』が「究極の2D格闘対戦ゲーム」として練り込まれたのに対し、『ZERO』シリーズは「一定の開発期間でどこまで作り込めるか」という従来とは異なるコンセプトで制作された。家庭用ゲーム機への移植を前提に制作されており、アーケード版の発売から3か月 - 半年という、従来では考えられなかった短期間で発売され、また移植度も高かった。
本シリーズの特徴として、『II』シリーズのようにドットパターンを駆使したグラデーションで陰影を表現するのではなく、『ヴァンパイア』シリーズに採用されたアニメ絵の手法を用いたグラフィックを採用したことが挙げられる。これにより、クオリティーを統一しつつもアニメーションパターンを増やすことに成功している。それに伴ってキャラクターデザインもデフォルメ色の強いアニメ絵調のタッチとなり、本家シリーズと大きく異なる雰囲気となった。「ミステリアス・ファクト」として隠しキャラクターや隠しモードを多く入れているのも特徴。
なお本シリーズの時間軸は『I』と『II』シリーズの間をイメージされており、『ZERO2』までの各キャラクターのエンディングは『II』に繋がる伏線を垣間見ることができる。リュウやケンの最終ボスがベガでないのも、『II』へのつながりを考えてのもの[2]。
世界観などの設定を担当した村田治生[3]は『II』シリーズのパラレルワールド的な世界と考えており、イメージとしては『I』の数か月後の話だが厳密にはどういうものかは決めておらず、キャラクターの生年月日も考えていないと語っている[2]。また、「プレイヤーに想像して自由に世界をつくってほしいので押しつけがましい設定をするのは止めている」としており、『I』『II』と同じ時間軸かどうかはあいまいにしている[4]。『ZERO』のコンセプトの1つとして、プレイヤーが「もしかしたらこんなことが昔あったんじゃないかな」と考えているような夢の対決的なものをやってみたいというものがあり、本シリーズに登場するナッシュも『II』に名前だけ登場したナッシュと同一人物かは明記されておらず[2]、エンディングで死んでいるとも生きているとも思ってかまわないとしている[5]。村田によると『ストリートファイター』は全シリーズ通して世界観が繋がっているわけではなくキャラクターのストーリーごとに独立した世界があるが、『ZERO』ではそれを特に強調しており、『ZERO』と『ZERO2』のストーリーはリンクしていないという[1]。ただし、『ZERO3』はストーリー構成にこだわったと言い、それまでキャラクターごとに独立していた世界が1つにまとめられている[5]。また、最終ボスをベガに固定することで強いベガを復活させることをテーマとしている[5]。本シリーズのプロデューサーである船水紀孝は『ゲーメスト』のインタビューにおいて、スーパーコンボなど『ZERO』で使えていた技が『II』で使えなくなっていることについて、「ストーリー上では『II』の流れを汲んでいますが、早い話が異世界、パラレルワールドと受け取ってください」と答えている[6]。また、船水は設定を1回リセットしてパラレルワールドにしたいと思い、村田の「もう、いいじゃないですか」という一言で決まったと語っている[7]。
また、当シリーズの開発者の1人である伊津野英昭へのインタビューでは、元々はBENGUSが描いた初代『ストリートファイター』のイラストを使い、スーパーファミコン(略称:SFC)に移植する前提で『ストリートファイタークラシック』(略称:SFC)を出そうという企画が転じて当タイトルになったことや、CPシステム基板の在庫処理の必要があったこと、また『ストリートファイターIII』に当時のカプコン開発陣のエースが投入されていたことから、若手を中心に「やりたいことやったらいいんじゃないか?」というコンセプトのもと、製作されたことが語られている[8]。
岡本吉起によると、『ZERO』は5万枚に上るCPシステムI基板の倉庫在庫を一掃する目的で、ビッグタイトルである『ストリートファイター』を利用するために企画されたものだという。既にスペックが陳腐化したCPシステムI基板で、開発スタッフにかなりの無理をしてもらい制作したものの、経営会議の場で「(上位互換基板である)CPシステムII基板でやってくれ。CPシステムIの在庫は『ZERO』の売り上げで処分する」と言われたとのこと。会社側にCPシステムI基板の全処分を約束させた上で『ZERO』はCPシステムII基板で販売されたが、結局その約束は果たされなかったとのことである[9]。
アメリカ市場では、 "ZERO" という単語にはネガティブな意味合いが強いため[10]、タイトルが"Street Fighter ALPHA"(ストリートファイター アルファ)に変更された。そのため「ZEROカウンター」は "ALPHA COUNTER" に、『ZERO3』の「Z-ISM」は "A-ISM" に変わっている。アジア圏では日本と同じ『ZERO』のままである。
本シリーズは隠しキャラクターが多いことが特徴。隠しキャラクターは以下の通り。
本シリーズ(『ZERO2』を除く)では「ドラマチックバトル(または、ドラマティックバトル)」と呼ばれる、2対1の対戦を行うモードが存在する。
『ZERO』では隠しモードとして存在し、リュウ・ケン対ベガの組み合わせに限られている。劇場版アニメ『ストリートファイターII MOVIE』のクライマックスを再現したモードであり、見に行ったスタッフたちが映画に感銘を受けたことで再現された[33]。AC版『ZERO』ではこのモードに限り同映画の主題歌『恋しさと せつなさと 心強さと』のインストバージョン(そのままの楽曲は入れられなかった[33])が流れるというタイアップ・ファンサービスを兼ねたものになっている。このためAC版『ZERO』の基板にはJASRACのシールが貼られ、そのコストは基板1枚当たり30円と言われている(収録されたバージョンの長さが2分3秒で、当時の許諾料のレートは10円/分(端数切り上げ)であったため)[34]。なお体力ゲージはプレイヤー側の2人で共有となっており、両者が同時に攻撃を受けるとダメージが倍増する(『ZERO』『ZERO2 ALPHA』も同様)。CPSチェンジャー版のみプレイヤーキャラクター2体を自由選択可能に変更されている。
『ZERO2 ALPHA』では独立した1つのゲームモードとなった。プレイヤーキャラクター2体は自由に選択可能で、プレイヤー1人で始める場合はCPUがパートナーになる。敵キャラクターはアドン、サガット、ベガ、真・豪鬼の順に登場し、真・豪鬼を倒せばエンディングとなる。このモードではスーパーコンボゲージが常時LV3に固定されるため、スーパーコンボ・オリジナルコンボが無制限に使用可能で、このモードならではの連続技を追求できる。
『ZERO3』では一部キャラクターのCPU戦(コンピュータが対戦相手を操作するストーリーモード)で、最終ボスであるファイナルベガ戦の前にユーリ&ユーニと1対2で対戦する「逆ドラマチックバトル」と呼ばれるステージがある。またPS版と『ZERO3↑↑』以外の「ドラマチックバトルモード」での1人プレイでは、選択したキャラクターと関連のあるキャラクターがパートナーになる(例えばリュウを選べばケン、さくらを選べばかりん、サガットを選べばアドンなど)。敵キャラクターとしてV-ISMアドン、X-ISM豪鬼、S-ISMバイソン、バルログ、サガット、ファイナルベガ(バルログとサガットもS-ISMになるが、ゲージ仕様以外はZ-ISMと同じ)の順に登場する。PS版ではリュウ&ケン、ユーリ&ユーニ、同キャラクターのコンビのいずれかによるアーケードと同様のプレイか、もしくはメンバー自由選択の1戦のみとなっている。『ZERO3↑↑』ではパートナーも任意に選択でき、対戦相手はランダム5人+それまでの作品における2人目以降(X-ISM豪鬼、S-ISMバイソン、S-ISMバルログ、S-ISMサガット、ファイナルベガ)となっている。なお『ZERO3』では体力ゲージがチームのメンバーで個別となっている一方、スーパーコンボゲージは通常の仕様となった。
『ZERO2 ALPHA』より追加。CPUと1キャラにつき1ラウンドずつ戦うモード。使用キャラクターがK.O.された時点でゲームオーバーとなる。スーパーコンボゲージはラウンド終了時点で溜った分は次のラウンドに持ち越され、体力ゲージは全回復せずに一定分だけ回復した上で次のラウンドに持ち越されるルールになっている。体力回復量は「必殺技のヒット数」「フィニッシュ」「残り時間」「運」から算出される。必殺技の場合は14ヒット以上の回復量は増加しない。残り時間の場合は、同じ時間で敵を倒してもステージが進むにつれて回復量は目減りする[35]。『ZERO3』では、ガードゲージが減らされた場合は、次のラウンドでリセットされる。
『ZERO2 ALPHA』より追加。無条件で高難易度設定の真・豪鬼と対戦するだけのモードである。勝敗に関係なく対戦が終了するとゲームオーバーとなる。
『ファイナルファイト』を含む歴代の『ストリートファイター』シリーズから様々なキャラクターが登場している[36]。最終的に『II』シリーズのキャラクターは全員登場した。
以下のキャラクターリストでは、末尾に出身国あるいは国籍と初出を示す。
以下は家庭用作品『ZERO2'』で追加されたキャラクター。
以下はPS版『ZERO3』で追加されたキャラクター。
以下はGBA版『ZERO3↑』の隠しキャラクター。この他は『ZERO3↑↑』にのみ登場。
『ZERO3↑↑』のみに登場する追加キャラクター。
2000年8月31日、OVA化。『ストリートファイターII』10周年記念作品として発売された。リュウの弟と名乗る少年シュンなどのオリジナルキャラクターが登場。ケイン・コスギは国外版でもリュウの声を担当している。
真の格闘家を目指して戦いの旅を続けていたリュウは、自分の中に眠る「殺意の波動」に苦悩していた。そんな彼の前に、弟と名乗る少年、シュンが現れる。一方、世界各地の格闘家を連れ去っていたプロフェッサー、サドラーは、リュウの殺意の波動を狙っていた。
2005年10月25日、アメリカで発売。日本国内では、2009年8月5日に発売された『ストリートファイター ザ・レジェンド・オブ・チュンリー』の初回限定版DVDに特典として収録されている。日本国外版タイトルは『Street Fighter Alpha: Generations』。
ゲーム本編では語られなかった豪鬼の過去や、リュウと豪鬼の対峙、「殺意の波動」にまつわる悲劇と因縁などに焦点が置かれているが、一部の設定やデザインに関しては本作独自の要素も存在する。
師・轟鉄のもと「剛徳寺」にて修業を続ける若き格闘家・豪鬼。彼の傍には、ともに修業に励む兄・剛拳と、豪鬼を慕う轟鉄の娘・さやかがいたが、武の道を究めんとする豪鬼は禁じ手とされる波動の力に固執し、師である轟鉄を決闘の末に殺害。轟鉄の形見となった首飾りを奪い、姿を消す。
それから時は流れ「真の格闘家」を目指して修業の旅を続ける青年リュウは、師・剛拳の墓参りのため剛徳寺を訪れた際に、かつて自身の師を死に至らしめた男・豪鬼と再会する。己が進むべき道について苦悩するリュウだったが、ひょんなことから同門の技を使う謎の老人と出会ったことで、一時彼のもとに身を寄せることとなる。老人のもとでの修行や、老人の孫娘・風花との交流、リュウを追って現れた女子高生格闘家さくらとの試合などを経て迷いを振り切ったリュウは、宿命の相手である豪鬼と対峙する。