『ストリートファイターII'』(ストリートファイターツー ダッシュ、英題:Street Fighter II Champion Edition)は、カプコン制作の対戦型格闘ゲームであり、『ストリートファイターII』(以下:『ストII』)のバージョンアップ版である[1]。
本作は1992年4月[2]よりアーケードゲームとして稼働し[2]、のちに家庭用ゲーム機などの他プラットフォームにも移植された。
システム
『ストII』ではCPU専用だったシャドルー四天王[注釈 1]がプレイヤーキャラクターとして使用可能になり[1]、同キャラクター対戦も可能になった他、リュウとケンの性能も異なるようになった。本作以降はファイナルラウンドが第4ラウンド目に変更され(前作では10ラウンド目だったためまず起こりえなかった。そのため雑誌などでは本作の新要素として紹介された)、プレイ内容がいかなるものであっても1点も得点が加算されなくなった。また、必殺技でKOすると通常の3倍の得点が入るようになった[3]。
開発
対戦部分での改良とバランス調整に主眼を置いて開発された。西谷は大堀とのインタビューの中で、『ストII』の好評を受けてバージョンアップ版の発売を認められた際はうれしかったが、少し技を変えただけの基板を発売することに罪悪感を感じたため、四天王のプレイアブル化などの要素を追加したと振り返っている[1]。
本格的な新作ではなかったため仕様変更の苦労が多く、例えば四天王のアニメパターンの追加でメモリ容量を空けるために、一部ステージのオブジェクトやグラフィックがカットされた。これ以外にもキャラクターの動作やエンディング等のグラフィックなど、多くの修正が入った。
移植版
- PCエンジン
- 1993年6月12日発売。カプコン制作、NECホームエレクトロニクス販売。
- 当時すでにCD-ROM2やSUPER CD-ROM2が全盛だったPCエンジンだが、20MBitの大容量HuCARDを採用している。また、PCエンジンのパッドは2ボタンが標準だったが、この作品にあわせて6ボタン仕様のパッドが発売された。[注釈 2]また、PCエンジンGTなどの携帯型ゲーム機でもプレイできる。
- なお、初回分の購入で山下章の漫画や攻略本、コラムなどが収録された「春麗 FANBOOK」と「ミニうちわ」が当たるキャンペーンが行われた。
- バーチャルコンソールでWii向けに2009年11月10日に配信開始[5]。
- X68000
- 1993年11月26日発売。X68030でも動作する[6]。キャラクターやステージが変わるたびにフロッピーディスクを交換する必要があった(ハードディスクにインストールするか、メモリーを6MByteほど増設すれば、回避できる)。コンシューマー用の公式ジョイスティックであるCPSファイターを接続するCPSアダプターが付属していた。X68030以上で起動すると、多重PCMドライバがインストールされ、アーケード版と同等のADPCM4和音で音声が再生される。MIDI対応(GMレベル1)、チェルノブアダプタ対応(非公式)。
アレンジ移植
- セガ・マスターシステム
- 1997年にテックトイからブラジルでのみ発売。
- 使用キャラクターはリュウ、ケン、春麗、ガイル、ブランカ、バイソン(現地での名前はバルログ)、サガット、ベガ(現地での名前はM.バイソン)のみ。キャラクター選択画面のイラストは『スパII』のものが用いられている。8ビット機ゆえ制約のある内容となっており、たとえばリュウとケンから昇竜拳が削除されている。
- 当時の開発者が雑誌「ゲームラボ」とのインタビューの中で語ったところによると、マスターシステム版は90年代初頭に日本のカプコン本社で作っていたものの、今更出しても売れないということで凍結されたが、数年後にこのプロジェクトのことを思い出したブラジル法人が自国や新興国ならまだ売れると考えて本社に相談し、「カプコンのリソースを使わない」という条件付きで許諾が下り、販売元もカプコンではなく現地企業・テックトイが担った。もっとも、本社で作っていたバージョン(以下:カプコン開発版)はまともに遊べないほど完成度が低いうえ、このバージョンの制作にかかわっていた者たちも他のプロジェクトに参加しているか、カプコンを退職しているかのどちらかだったため、最初から作り直すしかなかったという。開発チームが世界中のセガ・マークIII/マスターシステムのコミュニティに連絡を取ったところ、ドイツにマスターシステムに明るいチームがおり、両国の歴史的な友好関係もあって快諾された。
- ドイツのチームにカプコン開発版を見せたところ、そのまま完成させるくらいなら作り直すべきだという判断を示した。グラフィックはカプコン開発版を流用するのではなく、アーケード版のデータを原色化したり解像度を落とすなどして作り直した。また、彼らは雰囲気さえ出ればよいとの考えからデータの使いまわし [注釈 3]と簡略化 [注釈 4]を繰り返した。
- なお開発当時はブラジルの通貨を持ち出すのは難しかったため、ブラジル法人のスタッフが個人でドイツに送金した。
- 携帯アプリ
- docomoより2005年6月1日[11]に、auより2006年6月15日に、Softbankより2006年8月16日に配信開始。
- キャラクター選択時に決定キーを長押しすることで色違いのキャラクターを選択できる。エンディングはアプリ内に内包され、ステージ背景も全キャラクター分用意された。アプリの大容量化により、アプリの制限容量を超える分については外部データという形で供給されている。
反響
本作においてもハメ技は多く存在しており、特にベガはダブルニーハメ[注釈 5]やサイコ投げ[注釈 6]といったハメ技により、一部のゲームセンターでは使用を禁じられていた[12]。
評価
「ゲームラボ年末年始2022」における移植版の評価
機種 |
判定
|
PCエンジン |
良
|
X68000 |
良
|
マスターシステム |
劣化
|
ライターのpusaiは雑誌 「ゲームラボ年末年始2022」に寄せた記事の中で、移植版のうちPCエンジン版について、8ビット機のわりに性能が高く、二重スクロールなど削除された部分はある者の、グラフィックはおおむね良好だとしている。また、pusaiはX68000版について、オリジナル版の基板に近い性能だけあってグラフィックは完璧だが、音源が異なるので曲が異なるとしたほか、媒体の都合上ローディングに難があると指摘している。マスターシステム版については無茶移植と呼びつつも、見た目の再現度は高く、マスターシステムのゲームにしては美麗だとしている。また、pusaiはマスターシステム版について、動きがカクカクするものの、ゲームボーイ版『ストリートファイターII』よりは遊べると評価している。
海賊版
違法に改造した本作の海賊版が出回っており、カプコンが業界紙「ゲームマシン」(1993年1月発行)に注意喚起広告を出すほどだった[13][注釈 7]。
この海賊版は「レインボー」[注釈 8]、「スーパー」や「ハイパー」といった様々な呼称が存在していた[15]。プレイヤーの中には悪徳メーカーが販売していた不正コピー基板とは知らず、正規の新作と信じてプレイしていた人も少なくなかった[16]。これらの海賊版の主な特徴としては、バトル途中にキャラクターを変更できることや、飛び道具を持っていないキャラクターが技を繰り広げる際に、別のキャラクターの飛び道具も一緒になって飛んでくること[注釈 9]が挙げられる[15]。
脚注
注釈
- ^ M・バイソン、バルログ、サガット、ベガ
- ^ 2ボタンパッドでもプレイ可能だが、その場合RUNボタン・Iボタン・IIボタンにパンチ・キックを2種類振り分け、セレクトボタンを押して切り替えるシステムであった。
- ^ 使いまわしの対象にはスタッフロールも含まれている 。
- ^ たとえば、オリジナル版のサガットのステージには巨大な寝仏像があるが、マスターシステム版では削除されている 。
- ^ ダブルニープレスと特定の動作を延々と続け、相手に何もさせないようにする戦法 [12]。
- ^ サイコクラッシャーアタックで接近し、強制的に投げを狙う戦法[12]
- ^ ライターのDamien McFerranはレッドブルに寄せた記事の中で、初代『ストII』の時点から海賊版が存在していたと指摘しており、その中にはシャドルー四天王を操作できるものもあったことから、本作も海賊版対策だったのではと推測している[14]。
- ^ タイトルロゴが虹色であることに由来する[15]。
- ^ 例えば、ザンギエフのダブルラリアットで波動拳が飛んでくる[15]。
出典
参考文献
- レトロゲーム愛好会『メガドライブコンプリートガイドデラックス With マークIII』主婦の友インフォス、2020年8月28日。ISBN 978-4-07-442206-7。
- 『ゲームラボ年末年始2022』三才ブックス、2021年12月21日。
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