EUの原産地名称保護制度のイタリア国内版ともいえる、伝統的農産食物製品を保護するProdotti agroalimentari tradizionali italiani (PAT)という制度でシチリア自治州の特産品として名称の保護が認められている。ただし認証がされている名称は2021年2月時点ではカッサテッラ名ではなくシチリア語のカッサテッディ (cassateddi )や、地名が付いたCassateddi di Calatafimi や Cassatella di Agira、そして特色的なフィリングの材料ひよこ豆の名を冠したCassatella di ceci(シチリア語:cassatedda di cicir)である[9]。
トラーパニ地方 - この地方のバージョンは発祥地と見なされていることもあり、一番良く知られており、リコッタと削ったチョコレートのフィリングを練りパイ生地に詰め半月形に閉じたものを揚げたものであり、上記のPATでシチリア州産としてCassateddi di Calatafimi の名で保護されている。生地にはマルサラ酒で、フィリングにはシナモンで香りと風味を加える[2][4]。
ラグーザ地方 - カッサテッレ・アッラ・リコッタ(cassatelle alla ricotta)やシチリア方言でカッサテッディ・ラウザー二(cassateddi rausani)と呼ばれる。平た目のカップ状の生地にリコッタのフィリングを詰め、生地は閉じずにオープンフェイス状でオーブンで焼く。羊乳製の替わりにこの地域の特産品である放牧在来牛の牛乳製リコッタ・イブレア(ricotta iblea)を使う事もある。細い乾燥パスタを砕いてフィリングに加えることもある。一方でヴィットーリア周辺では「甘いラビオリ(ravioli di ricotta dolci)」として生地を閉じて揚げたものも食される[2][11][4]。
メッシーナ地方 - この地方ではパンツェロット・フリット・ディ・リコッタ (panzerotto fritto di ricotta) やバロ・ディ・リコッタ(balò di ricotta)と呼ばれ、揚げたものが食される[4][12][13]。バロ・ディ・リコッタは生地にイーストを入れることもありフィリング入りのドーナッツに近いものもある。
シラクーザ地方 - シラクーザの揚げラビオラはカターニア地方のものと似ているが、しかし名前はローマナ・アッラ・リコッタ(romana alla ricotta)と呼ばれる 。焼きラビオラはブリオシュのような生地が使われる[4]。
パルレモ地方 - この地方、特にパルティニーコとラスカリ地域のカッサテッダ(cassatedda)はリコッタの替わりにひよこ豆が使用される(alla crema di ceci)。これはひよこ豆を茹でて潰すか濾して、砂糖、チョコレートチップ、ズッカータ(Zuccata、瓜の一種の砂糖漬け)などを加えて作られる、香り付けにはレモンゼスト、シナモン、ココアパウダーなどが使われる。ズッカータが無い場合はラグーサ地方のように砕いた乾燥パスタも利用される[15]。
エンナ地方 - PATでカッサテッレ・ディ・アジーラ(Cassatella di Agira)の名前で保護されている。生地は柔らかいショートブレッド・ビスケット生地でオーブンで焼いたもので、フィリングには、砂糖、細かく刻んだアーモンド、ココアパウダー、その他の香味を水と混ぜ熱し、そこへひよこ豆の粉を加えたクリームを使用する[16][17][18]。ひよこ豆の替わりにイチジクのフィリングが使われることもある[17]。
カルタニッセッタ地方 - この地方のラビオラ・ディ・リコッタ・ニッセッナ[注釈 3](raviola di ricotta nissena)はカルタニッセッタの典型である折りパイ生地を使っているのが特徴である。生地を丸く薄く伸ばしてリコッタを詰め、やはり二つ折りの半月状に閉じて揚げた後、粉砂糖を振りかけて完成する[19]。スフォリアテッレによく似ているが、ニッセッナのラビオラは揚げてあり、スフォリアテッレはオーブンで焼いたものである。