Google 日本語入力 (グーグルにほんごにゅうりょく、英 : Google Japanese Input )とは、Google が開発した日本語入力システム (日本語IME )である。
2009年 12月3日にベータ版 として公開され、2010年 12月16日に正式版が公開された。
また、Mozc ( モズク ) という名称で公開されたオープンソース 版についても本記事にて説明する。
特徴
Google 日本語入力の一番の特徴は、変換辞書の豊富な語彙とそのファイルサイズの小ささである。
Google 日本語入力ではインターネット 上から自動的に辞書 を生成することにより、予測変換 機能やタイプミス に対して「もしかして機能」を実装している。
専門用語 や学術用語 、話題の人名((存命の)芸能人 や政治家 、または漫画 やアニメ 、ゲーム に登場する架空の人物 等)から、流行り廃りの激しいインターネットスラング にまで対応する。
特に固有名詞の語彙は、他の日本語入力システムと比べ極めて多い[3] 。
予測変換に用いる辞書は、Google 検索 の検索ワード からなるビッグデータ を使用し生成するため、検索されやすい流行言葉 などの予測精度は、インターネット上で大きな話題となった[4] 。
他方、検索ワードが予測変換に影響するため、一般的な語彙と同音 な流行言葉が予測変換を埋めてしまう[5] 。
プログラムの設計は、他の日本語IME (日本語入力システム )と違い、他のソフトウェア に依存する部分を小さくし、プロセス を分けている。
このため、Google 日本語入力のクラッシュ に巻き込まれる(依存関係にある)ソフトウェアが少ない。
加えて辞書のアップデート時の再起動が不要になる利点ももたらした[6] 。
開発の概略
Googleで「もしかして機能 」を担当、形態素解析 エンジン・MeCab の開発者でもある技術者の工藤拓 が、その経験から日本語入力ソフトウェア としての可能性を感じ、またオープンソース の日本語入力ソフトウェア・PRIME の開発経験を持つ技術者の小松弘幸 もアイディアを温めていた[7] 。
その後、この2人が中心となって「20%ルール」(勤務時間の20%を自由に使って良いというGoogleの社内ルール)のプロジェクトとして開発を開始し、この分野に詳しい貢献者を徐々に増やしながら公開に至った。
2010年2月17日から、新機能のテストとバグの早期発見を目的に開発版(アルファ版 )がリリースされ、同年12月16日には正式版がリリースされた。開発版は今もダウンロードして使用することが可能だが、Google 日本語入力チームは安全性の観点から通常の使用には正式版を勧めている[8] 。
2010年5月11日、オープンソース 版のGoogle 日本語入力であるMozc がリリースされた。そして2011年12月15日にはAndroid 向けのベータ版がリリースされ、2013年4月に正式版となった[9] 。
更新履歴
主としてPC用のGoogle 日本語入力の更新履歴である。更新頻度は多くないが、確実に行われている。
Android 版
Android 向けのGoogle 日本語入力は2011年12月15日にベータ版がリリースされ、2013年4月に正式版に昇格した[9] 。2020年8月よりGboard への統合が予告され、GoogleがユーザーにGboardアップグレードを推奨するようになる[36] 。2021年3月31日、サポート終了[37] [38] 。
Android版では、Google 日本語入力としての変換エンジンのほかにフロントエンドとなるソフトウェアキーボードも1つのパッケージとして配布されている。Androidの中でも特にタッチパネル端末ではソフトウェアキーボードで文字を入力することが主となるため、QWERTY配列 のほかiOS でも採用されているテンキーをフリックして入力する方式(フリック入力 )のほかに、Android版Google 日本語入力独自のキー配列であるGodanキーボード というローマ字入力をテンキーで行うことに主眼をおいた配列も実装されている[41] 。
バージョン1.9では、Androidの日本語IMEで主流の拡張機能 であるマッシュルーム にも対応した[42] 。
2021年 3月31日 に、Google 日本語入力のAndroid版はサポートが終了した[37] 。
Gboard 版
GoogleがAndroid/iOS向けに開発している仮想キーボードGboard にはGoogle 日本語入力が組み込まれている。こちらはPC版とは異なり更新は通常通りである。
ただしスタンドアロン版の「Google 日本語入力」アプリ[43] とは別物であり、既にGoogle 日本語入力を別途インストールしたAndroid端末では「Gboard」、「Google 日本語入力」アプリの両者共存が可能である。
「Google 日本語入力」アプリのサポート終了後も、Gboardに組み込まれたGoogle 日本語入力のエンジンは更新されている。
Mozc
Mozcとは、Google 日本語入力のオープンソース版である。これは2010年 5月11日 にGoogle日本語入力をChrome OS に移植するために必要な部分をオープンソース 化したものである[48] 。Gboardほどの更新頻度ではないが、確実に更新されている。
オープンソース版のMozcとGoogle 日本語入力との大きな違いは、Mozcは日本語変換エンジンでありこれを用いて日本語入力を行うにはibus 、uim 、Fcitx のようなインプットメソッドを別途インストールする必要がある点である。またGoogle 日本語入力の売りであるインターネット上の語句を収集して生成される変換辞書を使わず、代わりにMozcプロジェクトが作成した変換辞書を使う点も異なる。変換辞書などを含めた完全にオープンソース化に対応しないのは、インターネットから収集してきたデータが変換辞書として使われている関係上、SEO対策に悪用されないようにするためであるという[48] 。
Webデータから自動抽出された大規模語彙データは含まれていません。 語彙集合は基本的に IPAdic と同一です。 そのため、固有名詞以外の変換精度は Google日本語入力 とほぼ同一です。以下、Google 日本語入力で使用している辞書および IPAdic との主な違いです。
IPAdic に収録されていない、表外動詞や形容詞が一部含まれています。
IPAdic に収録されていない、Web 上に多く出現するカタカナ語が含まれています。
IPAdic の中にある単語のみで構成され、Web上によく出現する複合語 が追加 されています。(例: 再起動, 社員証)。
Google 日本語入力で使用されている辞書に含まれている カタカナ→ 英語 は含まれていません (例:アンドロイド→Android)。
Google 日本語入力で使用されている辞書に含まれている 郵便番号 → 住所 は含まれていません。
— Google Japan Blog、Google 日本語入力がオープンソースになりました[48]
2014年現在のMozcプロジェクトの成果物(ソフトウェア )では、言葉と言葉のつながり(コロケーション )をもって変換精度を高める処理[注釈 4] や、言い間違い[注釈 5] を訂正する処理については実装されているものの、それを実現するための対応するデータが実質的に含まれていない点もGoogle 日本語入力と異なる点である[49] 。
仕様
波ダッシュ「〜 」は、音声記号等として用いられるチルダ 「~、~」とは異なる文字記号であるが、Google 日本語入力の Windows 版のみ互換性問題の回避・解決のため、波ダッシュ「〜 」にチルダ 「~、~」がマッピングされている。
Google日本語入力のWindows版では、この非互換性の問題の解決のため、Windows独自のマッピングに即した変換処理を行なっております。
— 波ダッシュと全角チルダの扱いについて - Google プロダクト フォーラム[50]
この背景には、かつてUnicode 仕様書が間違っていたことに端を発し、その仕様書通りに実装・マッピングしたマイクロソフト社の Windows では波ダッシュとして全角チルダ が不適切に長年使用されてきた歴史がある。その結果、Windows 版のみ「なみ」や「から」と入力・変換を試みると候補に『~ [半] 波ダッシュ』と『~ [全] 波ダッシュ』が列挙・表示される。これらはチルダである。
制限
差別用語 や猥語など社会通念 上好ましくない、ないしマスメディア が表現の自主規制 している言葉は、Google日本語のサジェスト機能では表示されない。ただし、スペースキーを押した変換からは、当該の単語が変換される様にはなっている。同様の制限はATOK 及びMicrosoft IME でも行われている。
脚注
注釈
^ 単語リストのアップデートの確認が無効の場合は「+」以降のバージョンが異なる場合がある。
^ 単語リストのアップデートの確認が無効の場合は「+」以降のバージョンが異なる場合がある。既にサポートを終了している。
^ 単語リストのアップデートの確認が無効の場合は「+」以降のバージョンが異なる場合がある。
^ 例えば「あつい」という言葉を変換する際に、「本が」「厚い」、「夏が」「暑い」というような組み合わせで候補の順を変える処理のこと。
^ 例えば、「ふいんき」を「雰囲気(ふんいき)」に訂正するなど。
出典
関連項目
外部リンク