C級駆逐艦 (英語 : C-class destroyer )はイギリス海軍 の駆逐艦 の艦級。1941年 ・1942年 度戦時予算に基づく第11〜14次戦時急造艦隊 として、Ca級 ・Ch級 ・Co級 ・Cr級 の4グループ32隻が建造され、1944年から1945年にかけて就役した[1] [2] [3] 。
来歴
第二次世界大戦 の勃発を受けてイギリス海軍 は戦時緊急計画 を発動し、駆逐艦の急造に着手した。まず、1940-1年度計画で建造を予定していた中間的 駆逐艦(J級 に準じた設計)の建造を前倒ししてO級 ・P級 が建造されたのち、新しい戦時要求の反映や急造に適応した設計への変更が図られ、Q級 ・R級 ・S級 ・T級 と、1940年 度戦時予算のもとで、6次にわたる戦時急造艦隊の建造が進められた[1] 。
1941年2月、1941年 度戦時予算では、更に5次にわたる戦時急造艦隊の建造が盛り込まれることとなった。U級 ・V級 ・W級 ・Z級 に続き、最後の1941年度艦たる第5陣(戦時急造艦隊としての通算では第11陣)として、1942年2月16日に発注されたのがCa級である[1] 。
そして1942年 度戦時予算では、戦時急造艦隊の掉尾を飾る艦として、3グループ24隻が建造されることとなった。これがCh級・Co級・Cr級である[1] 。
設計
基本的にはZ級の準同型艦であり、J級 以来の単煙突・船首楼型という船型のほか、Q級で導入された燃料搭載量の増大や復原性の改善、艦尾のトランサム・スターン、またS級で導入されたトライバル級 と同様の艦首形状も踏襲された[1] [3] 。
機関もQ級・R級以来の構成が踏襲され、アドミラルティ 式3胴型水管ボイラー (蒸気圧力300 lbf/in2 (21 kgf/cm2 )、温度332.2℃)、パーソンズ 式オール・ギヤード・タービン による2軸推進、出力40,000馬力 である[4] 。
装備
センサー
イギリス海軍では、1940年7月よりレーダーの艦載運用に着手してきた。しかしこの画期的なセンサーから得られる膨大な情報を適切に作戦行動に反映するためには、艦内組織にも変革が求められた。まず導入されたのが、レーダーを含む目標情報を集中処理する区画としてのAIO(Action Information Organisation )であった。これはバトル・オブ・ブリテン での国土防空 に成果を上げたフィルター・ルーム ・コンセプトに範を取ったものであり、またアメリカ海軍のCIC(Combat Information Center ) と軌を一にしたものでもあった。また、特に高精度の293型レーダー の実用化に伴い、これで捕捉 した目標情報を射撃指揮 に直接活用するためのTIU-2(Target Indication Unit )も開発され、1944年6月以降の竣工艦で装備されるようになり、その専用区画としてTIRが設置された。そしてまた、通信・通信傍受情報を処理するQD区画も実装されるようになっていった[1] 。
本級は、戦時急造艦隊としては初めて、これらの情報処理システム を完全に実装した艦級となり、このために第二次世界大戦直後、15型 ・16型 のような大規模改修が実現するまでの間は、他の戦時急造艦隊よりも優れた艦として扱われていた。ただしCa級のうち、1944年7月以前に竣工した「カンブリアン」「カプリス」「カサンドラ」ではAIOのみの装備となった[1] 。
武器システム
艦砲 としては、Z級で装備化された45口径11.4cm砲(QF 4.5インチ砲Mk.IV )と、最大仰角55度の単装砲架であるCP Mk.Vの組み合わせが踏襲された。また射撃指揮装置 もZ級と同様に「Kタワー」ことK Mk.I方位盤が搭載され、方位盤から油圧サーボ弁を操作しての砲架の遠隔操縦が可能とされた。そしてCh級以降では、イギリス初の完全な両用方位盤であるMk.VI DCTが搭載された[1] 。また戦後、Ca級でもデアリング級 と同じMk.6M方位盤への換装が行われた[5] 。
近距離用の対空兵器 としては、S級 以降標準となったヘイズメイヤー式のFCS連動56口径40mm連装機銃 1基が基本構成とされていたが、「カプリス」では56口径40mm連装機銃のかわりに39口径40mm4連装機銃 (2ポンド・ポンポン砲 )を搭載した。またこれを補完するため、Ca級のうち「カッサンドラ」以外の艦は39口径40mm単装機銃を、Ch級では「チーフテン」「シバラス」「チャイルダース」は56口径40mm単装機銃を、Co級では「コメット」は70口径20mm連装機銃 2基と70口径20mm単装機銃2基を、「コンコード」「コーマス」「コンソート」は56口径40mm単装機銃2基を、それ以外の艦は39口径40mm単装機銃2基を搭載した[1] 。
なお対艦兵器 としては21インチ4連装魚雷発射管 2基が予定されていたが、Ch級以降では、Mk.VI DCT方位盤を搭載するための代償重量として、4連装魚雷発射管は1基のみとなった[1] 。
同型艦
C級駆逐艦は一個小艦隊 (Flotilla )を編成する8隻毎に1バッチとして発注され、その8隻のうちの2隻は駆逐艦戦隊(Squadron )を率いる嚮導駆逐艦 とされた。
また、それまでのイギリス海軍の嚮導駆逐艦は、艦名に海軍軍人の名を用いる慣例があったが、本級からはその慣例はなくなった。
※印付きの艦は、嚮導駆逐艦を表す。
Ca級
近代化改修後の「カサンドラ」(1964年撮影) 閉鎖化された艦橋と、後部に追加された上部構造物に注目
Ca級は、終戦近くに就役しており、終戦後間もなく予備役編入された。1953年から1960年にかけて以下の近代化改修が行われた[6] 。
3番砲塔(X砲塔)を、スキッド 対潜迫撃砲 ×2基に換装。
後部の4連装魚雷発射管と爆雷を撤去。
残る3基の砲塔に、遠隔機力操作 機能を付与。
2連装ボフォース40mm機関砲を新型のMk5連装砲架に換装。
艦橋を、12型フリゲート と同型の閉鎖式艦橋に改修(「シーザー」「カンブリアン」「カプリス」「カサンドラ」のみ)
さらに1963年には、「キャヴァリア」と「カプリス」に限り、GWS-20 シーキャット PDMSの4連装発射機を1基追加した[6] 。
Ca級は1960年代後半から1970年代前半に退役したが、「キャヴァリア」のみが1977年10月よりケント州 チャタム のチャタム工廠 にて博物館船として展示されている。
Ch級
「チルダース」。1945年12月撮影。
Ch級は1943年に起工されたが、8隻とも就役は日本の降伏後であったため、実戦投入前にWW2は終戦となった。
1950年代に2隻がパキスタン海軍 に売却されたが、うち1隻が第三次印パ戦争 においてインド海軍 のミサイル艇 の攻撃により大破し、沈没こそ免れたものの解体された。
Co級
「コーマス」(1946年6月28日撮影)
Co級はCh級と同様に1943年に起工されたが、その就役はWW2終戦に間に合わなかったため、WW2には参加していない。
本級はCa級と同様に全艦がイギリス海軍で運用され、外国への譲渡は行われなかったが、1950年代末から1960年代初めに退役した。
Cr級
Cr級は1943年から1944年にかけて8隻が起工されたが、いずれも就役は日本の無条件降伏後であり、WW2に参加する機会はなかった。
また、就役前に6隻が外国(ノルウェーへ4隻、カナダへ2隻)へ譲渡されたほか、残る2隻も1958年にパキスタン海軍に譲渡された。
脚注
^ 建造当初の艦名はコルソ(HMS Corso )であったが、進水後の1946年6月に改名。
^ 建造当初の艦名はクロージアーズ (HMS Croziers , R27)。
^ 建造当初の艦名はクリスタル (HMS Crystal , R38)
^ 建造当初の艦名はクロムウェル (HMS Cromwell , R35)
^ 建造当初の艦名はクラウン (HMS Crown , R46)
参考文献
関連項目
× は退役艦級・△ は未成艦級・{ }は将来艦級・国旗は建造国 揺籃期
WW1 期
戦間期
WW2 期
WW2後