アンフィオン級潜水艦

アンフィオン級/アケロン級/A級潜水艦
Amphion-class/Acheron-class/A-class submarine
「アスチュート」(HMS Astute, P447)
「アスチュート」(HMS Astute, P447)
基本情報
種別 潜水艦
運用者  イギリス海軍
就役期間 1945年 – 1974年
計画数 46隻
建造数 16隻
前級 V級潜水艦
次級 エクスプローラー級潜水艦
要目
排水量 1,120トン(水上), 1,620トン(水中)
長さ 280.5 ft (85.5 m)
22.3 ft (6.8 m)
吃水 16.8 ft (5.1 m)
主機 ヴィッカース式ディーゼルエンジン2基
※「アケロン」「アフレイ」「イニーアス」「アラリック」「アーティミス」「アートフル」のみ海軍本部式ディーゼルエンジン2基。
4,300 馬力 (水上), 1,250馬力 (水中)
※「エース」「アフレイ」「イニーアス」以外は1955年から1956年にかけてディーゼル・エレクトリックに変更。
推進器 2軸推進
速力 18.5ノット (34.3 km/h; 21.3 mph)(水上)、8ノット (15 km/h; 9.2 mph)(水中)
航続距離 10,500海里 11ノット時(水上)、90海里 3ノット時(水中)
燃料 重油165トン(最大219トン)
潜航深度 150m
乗員 61名
兵装 21インチ(533mm)艦首魚雷発射管×6門(内蔵式4門・外装式2門、外装式は後に撤去)
21インチ(533mm)艦尾魚雷発射管×4門(内蔵式2門・外装式2門、外装式は後に撤去)
魚雷16本または機雷26個
Mk XXII 4インチ(10.2cm)単装砲英語版またはMk XXIII 4インチ(10.2cm)単装砲英語版×1基
20mm単装機銃×1門
7.7mm単装機銃×3門
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アンフィオン級潜水艦(あんふぃおんきゅうせんすいかん、Amphion-class submarine)は、1940年代イギリス海軍が建造した潜水艦。「アケロン」をネームシップとしてアケロン級潜水艦Acheron-class submarine)、また全艦が「A」で始まる名前を持っていたためA級潜水艦A-class submarine)とも呼ばれる。

本級のうち、「アライアンス英語版」のみゴスポート王立海軍潜水艦博物館英語版博物館船として陸上保存されている。

概要

1941年に真珠湾攻撃が発生して太平洋が戦場となると、イギリス海軍は自らが保有する潜水艦の中に、そのような広大な海域での活動に適した航続距離を持つ大型潜水艦を保有していないことに気づいた[1]。そこで、対日戦に伴う太平洋での活動を想定し海軍本部が1943年度計画で建造した大型潜水艦が本級である[2]。本級は、X艇以外では第二次世界大戦中にイギリス海軍が完全に新規の設計で建造した唯一の艦級であった。しかしながら、計画された46隻中完成したのは16隻のみであり、残りの30隻はキャンセルされた。また、大戦中に完成した艦に至っては「アンフィオン」と「アスチュート」の2隻にとどまり、結果として戦闘には全く寄与しなかった[3]

基本設計はT級潜水艦の拡大発展型となっており、量産性を考慮した簡易化と完全溶接構造の艦体を持つほか、T級用の資材を多く流用できるように検討されていた。艦形はリバー級潜水艦の系統を引く複殻式を採用した。水上航行時の凌波性や水中放射雑音低減が考慮され、航続距離も11ノットで10,500海里の航行能力を確保した[2]。溶接構造の採用によって艦体構造が強化された結果、安全潜航深度もT級から1.5倍に増大した[4]

装備の面でも充実が図られ、魚雷発射管の門数を艦首6門、艦尾4門の計10門としたほか、潜望鏡深度で使用可能な対空レーダー、太平洋での行動を考慮した空調設備などが取り入れられた[2]。戦後には、順次シュノーケルも追加されている[1]

ただし、拡大したとはいえ本級のサイズはアメリカ海軍ガトー級潜水艦の7割程度にとどまっており、仮に太平洋戦線で本格的に活動していた場合は相応の制約があっただろうという見方もある[2]

ソ連潜水艦に対抗するため、1955年から1960年にかけて14隻が近代化改装を受けて水中高速潜水艦になり1970年代まで現役にとどまった[5]。艦体前後と司令塔が流線形に変更され、外装式魚雷発射管と備砲の撤去、艦首上部に大型のソナードームの追加が行われた。1960年代にインドネシアとマレーシアの対立英語版が発生すると、インドネシアの武装ジャンク船対策として本級の一部の艦にはMk XXIII 4インチ(10.2cm)単装砲または20mm機銃1基が設置された[6]

本級のうち、「アンドリュー英語版」は1953年にシュノーケルの有効性を実証するためバミューダ諸島からイングランドまで大西洋横断を行い、15日間・2,500海里を潜水状態で航行する記録を立てている[1]。また、「アンドリュー」は極東での任務のため1964年に4インチ砲が装備され、退役まで装備していた。「アンドリュー」は甲板砲を装備した最後のイギリス海軍潜水艦であり、また最後まで現役であった第二次世界大戦時のイギリス海軍潜水艦となっている[1][7]

アフレイ英語版」は1951年4月16日、スプリング・トレイン演習英語版中に沈没事故を起こし75名が死亡した。「アフレイ」は2024年現在、事故で失われた最後のイギリス海軍潜水艦となっている[1]

1972年、「イニーアス英語版」はブローパイプ英語版携行地対空ミサイルを基にした潜水艦発射近距離艦対空ミサイル「SLAM」の発射実験に用いられた[1]。これはブラジル海軍イスラエル海軍の要請で開発されたもので、後にイスラエル海軍のガル級潜水艦で装備が検討された。

艦名一覧

博物館船として展示されている「アライアンス」。近代化改装で追加された特徴的なソナードームが見える。

バロー=イン=ファーネス、ヴィッカース・アームストロング建造艦

※当初「アンカライト」と命名されていたが、就役前に姉妹艦「アンフィオン」と艦名を交換した。

※当初「アンフィオン」と命名されていたが、就役前に姉妹艦「アンカライト」と艦名を交換した。

バーケンヘッド、キャメル・レアード建造艦

グリーノック、スコッツ造船工学社建造艦

チャタム工廠建造艦

デヴォンポート工廠建造艦

以下の2隻は進水したものの、完成しないまま処分された。

建造中止

バロー=イン=ファーネス、ヴィッカース・アームストロング建造艦
  • アンドロマキHMS Andoromache, P424
  • アンサーHMS Answer, P425
  • アンタゴニストHMS Antagonist, P428
  • アンテュースHMS Antaeus, P429
  • アンザックHMS Anzac, P431
  • アフロダイテHMS Aphrodite, P432
  • アプローチHMS Approach, P435
  • アーケイディアンHMS Aacadian, P436
  • アーゴシーHMS Argosy, P438
  • アトランティスHMS Atlantis, P442
ウォーカー・オン・タイン、ヴィッカース・アームストロング建造艦
  • アドミラブルHMS Admirable, P434
  • アスペリティHMS Asperrity, P444
  • オースティアHMS Austere, P445
  • アズテックHMS Aztec, P455
  • アドヴァーサリーHMS Adversary, P457
  • アウェイクHMS Awake, P459
ポーツマス工廠建造艦
  • アバラードHMS Abelard, P451
  • アカスタHMS Acasta, P452
キャメル・レアード建造艦
  • アジャイルHMS Agile, P443
  • アグレッサーHMS Aggressor, P446
  • アギトHMS Agate, P448
  • アルセスティスHMS Alcestis, P453
  • アラジンHMS Alladin, P454
グリーノック、スコッツ造船工学社建造艦
  • アスガードHMS Asgard, P458
  • アスターテHMS Astarte, P461
  • アシュアランスHMS Assurance, P462
チャタム工廠
  • アデプトHMS Adept, P412

登場作品

映画

渚にて』(監督:スタンリー・クレイマー、出演:グレゴリー・ペックエヴァ・ガードナー1959年
  • 「アンドリュー」が、架空のアメリカ海軍原子力潜水艦「ソーフィッシュ」(USS Sawfish)役として撮影に用いられている。
007は二度死ぬ』(監督:ルイス・ギルバート、出演:ショーン・コネリー若林映子丹波哲郎浜美枝1967年
  • 「イニーアス」が、劇中に登場するM1潜水艦役として撮影に用いられている。
トランスフォーマー/最後の騎士王』(監督:マイケル・ベイ、出演:マーク・ウォールバーグローラ・ハドック2017年

脚注

出典

  1. ^ a b c d e f 1943 - 1977: Amphion Class”. RN Subs. 21 April 2024閲覧。
  2. ^ a b c d 世界の艦船 1997, p. 98.
  3. ^ 世界の艦船 2016, p. 144.
  4. ^ 世界の艦船 2016, p. 145.
  5. ^ 世界の艦船 1997, p. 100.
  6. ^ Boat Database - Andrew”. www.rnsubs.co.uk. The Barrow-in-Furness Branch of the Submariners Association. 20 March 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。21 April 2024閲覧。
  7. ^ John Lambert and David Hill (1986). The submarine Alliance (Anatomy of the ship series). Conway Maritime Press. p. 19. ISBN 0-85177-380-X 

参考文献

関連項目

Strategi Solo vs Squad di Free Fire: Cara Menang Mudah!