S級駆逐艦(英語: S-class destroyer)は、イギリス海軍の駆逐艦の艦級。基本となるアドミラルティS級と、特型としてのソーニクロフトS級、ヤーロウS級がある[1][2]。
来歴
ドイツ帝国海軍の新しい大型駆逐艦が同時期のR級を凌駕する性能を備えているとの情報を受けて、1916年度計画より、イギリス海軍の駆逐艦は、砲熕火力を強化したV級・W級に移行した[1]。
しかしその後、この情報は過大評価されていたと判断されたことから、1917年2月、第三海軍卿(英語版)は、駆逐艦の建造をR級に基づいた設計に差し戻すことを決定した。これによって、1917年度で建造されたのが本級である[2]。
設計
基本配置はアドミラルティ改R級のものが踏襲されているが、船首楼部の設計は大きく改正された。従来は平坦な前甲板とV字形に軽いフレアを付した前部断面となっていたのに対し、本級では船首楼甲板はタートルバック型とされ、かなり強いシアとフレアが付されたことで、艦首部乾舷は5.4メートルに達し、凌波性は大きく向上した。1918年8月、本国艦隊に属していた8隻は、荒天下でもC級軽巡洋艦「カースター」と問題なく随伴し、中には20~24ノットを発揮した艦もあり、凌波性の高さが実証された[3]。またヤーロウS級は他社艦と比して排水量とGM値が小さく、低い精悍なシルエットを備えていた。ソーニクロフトS級は1番砲をプラットフォーム上に設置したほか、扁平な1番煙突が特徴であった[1]。
機関構成もR級と同様で、ブラウン・カーチス式オール・ギヤード・タービンを基本として、パルマーズ社艦および「ティルベリィ」「ティンタージェル」「ストレナウス」ではパーソンズ式が採用された。またヤーロウS級では、直結タービンの搭載が固守された[1]。
ボイラーはヤーロウ式重油専焼水管ボイラーを基本として、ホワイト社艦ではホワイト・フォスター式が搭載された[1]。
なお計画速力は36ノットとされていたが、アドミラルティS級では排水量超過の艦が続出し、これを達成できない艦も少なくなかった。これに対し、ソーニクロフトS級およびヤーロウS級ではいずれも計画速力を達成し、「タイリアン」では39.401ノットを発揮した[1]。
装備
艦砲は、40口径10.2cm砲(QF 4インチ砲Mk.IV)を3門搭載した。この砲は当時のイギリス駆逐艦の標準装備であったが、アドミラルティ改R級で採用された長砲身・大発射速度のMk.Vと比べると後退と言えた。対空兵器としては39口径40mm高角機銃(QF 2ポンド・ポンポン砲)を搭載した[1]。
水雷装備としては、当時の駆逐艦の標準装備である53.3cm連装魚雷発射管2基が搭載された。また大戦中の駆逐艦の一部では、戦訓に基づいて、冷走魚雷用の45cm魚雷発射管の装備も行われていたが、本級ではこれが当初から盛り込まれた[1]。ただしアドミラルティS級では、上記の通り排水量増大から速力低下が生じていたことから、これを補うため、後期建造艦では45cm魚雷発射管を省いた艦もあった[2]。
同型艦
- アドミラルティS級
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- シムーン(HMS Simoon)
- シミター(HMS Scimitar)
- スコッツマン(HMS Scotsman)
- スカウト(HMS Scout)
- サイザ(HMS Scythe)
- シーベアー(HMS Seabear)
- シーファイヤ(HMS Seafire)
- サーチャー(HMS Searcher)
- シーウルフ(HMS Seawolf)
- シャーク(HMS Shark)
- スパローホーク(HMS Sparrowhawk)
- スプレンディド(HMS Splendid)
- スポーティブ(HMS Sportive)
- ステュルワート(HMS Stalwart)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Stalwart)[4]
- ティルベリィ(HMS Tilbury)
- ティンタージェル(HMS Tintagel)
- セイバー(HMS Sabre)
- サラディン(HMS Saladin)
- サーダニックス(HMS Sardonyx)
- シーク(HMS Sikh)
- サーダー(HMS Sirdar)
- ソンム(HMS Somme)
- スピアー(HMS Spear)
- スピンドリフト(HMS Spindrift)
- サクセス(HMS Success)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Success)[5]
- シャムラック(HMS Shamrock)
- シカリ(HMS Shikari)
- セナター(HMS Senator)
- シポイ(HMS Sepoy)
- セラフ(HMS Seraph)
- シレイピス(HMS Serapis)
- シリーン(HMS Serene)
- セサミ(HMS Sesame)
- スワロー(HMS Swallow)
- ソーズマン(HMS Swordsman)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Swordsman)[6]
- ストレナウス(HMS Strenuous)
- ストロングホールド(HMS Stronghold)
- スターディ(HMS Sturdy)
- ステッドファスト(HMS Steadfast)
- スティーリング(HMS Sterling)
- ストーンヘンジ(HMS Stonehenge)
- ストームクラウド(HMS Stormcloud)
- トリビューン(HMS Tribune)
- トリニダッド(HMS Trinidad)
- タクティシアン(HMS Tactician)
- タラ(HMS Tara)
- タスマニア(HMS Tasmania)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Tasmania)[7]
- タツー(HMS Tattoo)
→ 1920年1月27日付で豪海軍に貸与(HMAS Tattoo)[8]
- トロウジャン(HMS Trojan)
- トルーアント(HMS Truant)
- トラスティ(HMS Trusty)
- タービュレント(HMS Turbulent)
- テネドス(HMS Tenedos)
- サネット(HMS Thanet)
- スレイシアン(HMS Thracian)
→1941年12月25日、香港の戦いにおいて鹵獲され、第百一号哨戒艇として日本海軍に編入
- ヤーロウS級
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- トーチ(HMS Torch)
- トマホーク(HMS Tomahawk)
- トライフォン(HMS Tryphon)
- チューモルト(HMS Tumult)
- トルクォイズ(HMS Turquoise)
- タスカン(HMS Tuscan)
- タイリアン(HMS Tyrian)
- ソーニクロフトS級
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- スピーディ(HMS Speedy)
- トバゴー(HMS Tobago)
- トーベイ(HMS Torbay)
→1928年3月1日付でカナダ海軍に移管、シャンプレーン(HMCS Champlain)に改名[9]
- トリアドー(HMS Toreador)
→1928年3月1日付でカナダ海軍に移管、バンクーバー(HMCS Vancouver)に改名[9]
参考文献
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×は退役艦級・△は未成艦級・{ }は将来艦級・国旗は建造国 |
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WW1期 |
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戦間期 |
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WW2期 |
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WW2後 |
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