2005年J1最終節(2005ねん・J1・さいしゅうせつ)は、2005年(平成17年)12月3日におこなわれた日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)ディビジョン1(J1)最終第34節のことを指す。特に本項目では、試合開始時点で優勝の可能性のあったセレッソ大阪(C大阪)・ガンバ大阪(G大阪)・浦和レッドダイヤモンズ(浦和)・鹿島アントラーズ(鹿島)・ジェフユナイテッド市原・千葉(千葉)の5チームの試合について記す。
最終戦までの経緯
1996年シーズン以来となる1ステージ制となったこのシーズンは、2004年シーズンの16クラブにJ2から昇格した川崎フロンターレ(川崎)と大宮アルディージャ(大宮)を加えた18クラブ2回戦総当たり(全34節)で行われた。
開幕前はリーグ戦2連覇を果たしている横浜F・マリノス(横浜FM)が優勝候補の筆頭ではあったが、昨シーズンの2ndステージでは優勝争いに絡めず、またFUJI XEROX SUPER CUPで東京ヴェルディ1969にPK戦の末敗れ不安要素も見られていた。また昨シーズン年間勝点1位・2ndステージ王者の浦和レッドダイヤモンズ、イビチャ・オシムが率いて頭角を顕していたジェフユナイテッド市原・千葉(千葉)等が優勝争いに絡むのではないかと目されていた。また1990年代後半から2000年代初頭に優勝を争っていた鹿島アントラーズ(鹿島)とジュビロ磐田(磐田)は世代交代の過渡期に入ってはいたものの、実力的にも上位進出が狙えるチームであった。
この年の序盤はFC東京、鹿島、横浜FMが第4節まで3勝1分けでトップ集団を形成したが、FC東京は第5節から6連敗し、横浜FMも勝ち星を積み重ねられず、共に優勝争いから後退しはじめる。代わって名古屋グランパスエイト(名古屋)、サンフレッチェ広島F.C(広島)、千葉が浮上してきたが、互いに敗戦や引き分けなどを繰り返し、またC大阪、G大阪といった関西勢や大宮、川崎の昇格2クラブも上位に絡むなどの混戦を呈した。
第11節終了時には首位鹿島が2位の名古屋との勝点差を10に広げ、且つ2位から14位のアルビレックス新潟(新潟)までが勝点差6の中でひしめく状況となったが、これを境に鹿島の快進撃は影を潜めるとともに2位以下の激しい争いからG大阪が抜け出すと第22節に首位を奪取。さらに日本代表GK川口能活を補強し守備の立て直しを図った磐田、エースマルシオ・パッソス・ジ・アルブケルケの途中離脱がありながらも途中加入のロブソン・ポンテとトミスラフ・マリッチがチームにフィットした浦和、3年前の降格からチームの立て直しに成功した広島といったタイトルホルダーや、後に日本代表監督となるイビチャ・オシム率いる千葉も浮上し、また終盤には一時最下位だったC大阪が怒涛の追い上げを見せ上位に食い込む。首位に立ったG大阪は一時、2位と勝点5差をつけるもその後は一進一退の攻防が続き、千葉の優勝で終了したヤマザキナビスコカップ2005後の第30節には、勝点差8の中に6チームがにひしめく状況となった。
第30節終了時点での上位順位表[1]
順位 |
クラブ |
試合 |
勝点 |
勝利 |
引分 |
敗戦 |
得失点差 |
得点 |
失点
|
1 |
ガンバ大阪 |
30 |
57 |
17 |
6 |
7 |
+25 |
76 |
51
|
2 |
鹿島アントラーズ |
30 |
54 |
15 |
9 |
6 |
+20 |
54 |
34
|
3 |
セレッソ大阪 |
30 |
53 |
15 |
8 |
7 |
+6 |
42 |
36
|
4 |
浦和レッズ |
30 |
50 |
14 |
8 |
8 |
+21 |
56 |
35
|
5 |
ジェフユナイテッド千葉 |
30 |
50 |
13 |
11 |
6 |
+12 |
50 |
38
|
6 |
川崎フロンターレ |
30 |
49 |
15 |
4 |
11 |
+13 |
51 |
38
|
その後もこれら上位陣の攻防は続く中、首位のG大阪が名古屋・大宮・千葉相手に3連敗を喫し勝点を上積みできず、2位鹿島も2分け1敗と停滞。その間隙を縫って、この3試合を上位陣で唯一無敗(1勝2分け)で乗り切った3位C大阪が、最終節前の第33節で遂に首位へ浮上、4位浦和・5位千葉も2勝1敗でそれぞれ勝点を6ずつ上積みした。一方で、6位川崎はC大阪・磐田に連敗して第32節の時点で優勝戦線から脱落した。
第33節終了時点での上位順位表[2]
順位 |
クラブ |
試合 |
勝点 |
勝利 |
引分 |
敗戦 |
得失点差 |
得点 |
失点
|
1 |
セレッソ大阪 |
33 |
58 |
16 |
10 |
7 |
+8 |
46 |
38
|
2 |
ガンバ大阪 |
33 |
57 |
17 |
6 |
10 |
+22 |
78 |
56
|
3 |
浦和レッズ |
33 |
56 |
16 |
8 |
9 |
+24 |
61 |
37
|
4 |
鹿島アントラーズ |
33 |
56 |
15 |
11 |
7 |
+18 |
57 |
39
|
5 |
ジェフユナイテッド千葉 |
33 |
56 |
15 |
11 |
7 |
+13 |
54 |
41
|
6 |
川崎フロンターレ |
33 |
50 |
15 |
5 |
13 |
+9 |
52 |
43
|
上位が終盤で勝ち星を大きく上積みできなかったこともあって勝点差はさらに詰まり、最終節を前に首位と勝点差2の中に5チームがひしめく状態となり、まれに見る大混戦となった。
最終節
概要
最終節の組み合わせは以下の通り。優勝の可能性を残す5チーム(下記の太字で表したチーム)すべてが別の会場で戦うという組み合わせの妙となった。
※左側がホームチーム。開始予定時刻はすべて午後2時。
1位C大阪は勝てば他4会場の結果に関係なく優勝できるが、得失点差で他4チームに大きく劣るため、引き分け以下の場合、優勝には他4チームがいずれも引き分け以下であることが必要で(敗戦の場合はG大阪の敗戦も必要)、優勝のためには勝利が必須条件とも言えた。またC大阪が引き分け以下の場合、2位G大阪は勝てば他3会場の結果に関係なく優勝であり(勝てなかった場合はG大阪引き分け・C大阪敗戦・他3チームいずれも引き分け以下の場合のみ優勝)、優勝には勝利が最低条件となる、同勝点で並ぶ3位浦和、4位鹿島、5位千葉の間には、それぞれ1節では逆転困難な程度の得失点差が付いていたことから、この日のために5試合すべてに中継車を送り込んだNHKでは、実況中継の中で「勝ったクラブのうち(試合前時点で)最も順位が上のクラブが優勝」と説明していた。
前半
各会場とも午後2時4分に試合開始。
3分、C大阪のMF久藤清一が右サイドからあげたクロスをFW西澤明訓がヘディングしゴール左角に得点、先制。
4分、浦和のDF堀之内聖が得点、先制。7分、鹿島のFW野沢拓也が得点、先制。さらに12分にはG大阪もFW・クレメルソン・デ・アラウージョ・ソアレスがペナルティエリア間近からゴール左上角へのミドルシュートを決め先制。この時点で上位4チームがともにリードした。13分には浦和のMFロブソン・ポンテがFKを直接決めて追加点を重ねた。
- C大阪 1 – 0 F東京
- 川崎 0 – 1 G大阪
- 新潟 0 – 2 浦和
- 鹿島 1 – 0 柏
- 千葉 0 – 0 名古屋
15分終了時点での順位
昇降 |
順位 |
クラブ |
試合 |
勝点 |
勝利 |
引分 |
敗戦 |
得失点差 |
得点 |
失点
|
- |
1 |
セレッソ大阪 |
34 |
61 |
17 |
10 |
7 |
+9 |
47 |
38
|
- |
2 |
ガンバ大阪 |
34 |
60 |
18 |
6 |
10 |
+23 |
79 |
56
|
- |
3 |
浦和レッズ |
34 |
59 |
17 |
8 |
9 |
+26 |
63 |
37
|
- |
4 |
鹿島アントラーズ |
34 |
59 |
16 |
11 |
7 |
+19 |
58 |
39
|
- |
5 |
ジェフユナイテッド千葉 |
34 |
57 |
15 |
12 |
7 |
+13 |
54 |
41
|
上位4クラブが揃ってリードしているため、この時点での順位の変動はなし。
20分、FC東京MF鈴木規郎がゴールを奪い同点。試合前1位のC大阪はリードを失い、試合前2位のG大阪が暫定首位になる。
37分、川崎のDF寺田周平がコーナーキックからのボールを頭で決めてG大阪も同点になる。ちょうどその時、長居ではC大阪のFW古橋達弥がFC東京の選手に倒されたことにより、C大阪はPKを得たものの、FC東京の執拗な抗議により焦らされたこともあったのか、C大阪MFジョゼ・カルロス・ガルシア・レアルの放ったPKはFC東京GK土肥洋一により阻止され、得点のビッグチャンスを逃した。
この時点で、同点のC大阪、G大阪を抑え、試合前3位の浦和が暫定首位に立った。さらに44分、鹿島がアレシャンデル・ペレイラ・カルドーゾが追加点をあげる。
- C大阪 1 – 1 F東京
- 川崎 1 – 1 G大阪
- 新潟 0 – 2 浦和
- 鹿島 2 – 0 柏
- 千葉 0 – 0 名古屋
前半終了時点での順位
昇降 |
順位 |
クラブ |
試合 |
勝点 |
勝利 |
引分 |
敗戦 |
得失点差 |
得点 |
失点
|
↑2 |
1 |
浦和レッズ |
34 |
59 |
17 |
8 |
9 |
+26 |
63 |
37
|
↑2 |
2 |
鹿島アントラーズ |
34 |
59 |
16 |
11 |
7 |
+20 |
59 |
39
|
↓2 |
3 |
セレッソ大阪 |
34 |
59 |
16 |
11 |
7 |
+8 |
47 |
39
|
↓2 |
4 |
ガンバ大阪 |
34 |
58 |
17 |
7 |
10 |
+22 |
79 |
57
|
- |
5 |
ジェフユナイテッド千葉 |
34 |
57 |
15 |
12 |
7 |
+13 |
54 |
41
|
後半
インターバルの間に、G大阪がDFシジクレイ・デ・ソウザを實好礼忠に交代し守りを修正、後半がスタート。
48分、C大阪MFジョゼ・カルロス・ガルシア・レアルのドリブル突破からのこぼれ球をFW西澤明訓がゴール左隅に叩き込み、再びリード、暫定首位に返り咲く。試合前2位のG大阪も56分にDF宮本恒靖のゴールで勝ち越すも62分に川崎MF谷口博之のヘディングにより再び同点にされる。
一方、58分、鹿島FW野沢拓也が決め、3点リード。60分に浦和FWトミスラフ・マリッチが得点し、こちらも3点リード。試合前3位の浦和が3点リードしたことにより、試合前4位の鹿島、試合前5位の千葉は、優勝から遠のく。
- C大阪 2 – 1 F東京
- 川崎 2 – 2 G大阪
- 新潟 0 – 3 浦和
- 鹿島 3 – 0 柏
- 千葉 0 – 0 名古屋
60分終了時点での順位
昇降 |
順位 |
クラブ |
試合 |
勝点 |
勝利 |
引分 |
敗戦 |
得失点差 |
得点 |
失点
|
↑2 |
1 |
セレッソ大阪 |
34 |
61 |
17 |
10 |
7 |
+9 |
48 |
39
|
↓1 |
2 |
浦和レッズ |
34 |
59 |
17 |
8 |
9 |
+27 |
64 |
37
|
↓1 |
3 |
鹿島アントラーズ |
34 |
59 |
16 |
11 |
7 |
+21 |
60 |
39
|
- |
4 |
ガンバ大阪 |
34 |
58 |
17 |
7 |
10 |
+22 |
80 |
58
|
- |
5 |
ジェフユナイテッド千葉 |
34 |
57 |
15 |
12 |
7 |
+13 |
54 |
41
|
その後約15分5会場とも得点なく推移したのち、等々力において、川崎DF森勇介がG大阪の左サイドのMF家長昭博の突破を阻止すべく守りにいくも、ペナルティエリア内でファウルを起こし、G大阪にPKが与えられる。G大阪は79分にMF遠藤保仁が冷静に決め再びリード。この時点で再び、千葉以外の4チームがリードした状態になる。
同じく79分、鹿島もPKを獲得し、これを決めるべく投入されたMF本田泰人がゴール、4点リード。80分には浦和MF山田暢久もゴールしこちらも4点リード。さらにスコアレスが続いていたフクアリでは82分、名古屋のFW鴨川奨のゴールにより千葉が1点リードされた。
- C大阪 2 – 1 F東京
- 川崎 2 – 3 G大阪
- 新潟 0 – 4 浦和
- 鹿島 4 – 0 柏
- 千葉 0 – 1 名古屋
85分終了時点での順位
昇降 |
順位 |
クラブ |
試合 |
勝点 |
勝利 |
引分 |
敗戦 |
得失点差 |
得点 |
失点
|
- |
1 |
セレッソ大阪 |
34 |
61 |
17 |
10 |
7 |
+9 |
48 |
39
|
↑2 |
2 |
ガンバ大阪 |
34 |
60 |
18 |
6 |
10 |
+23 |
81 |
58
|
↓1 |
3 |
浦和レッズ |
34 |
59 |
17 |
8 |
9 |
+28 |
65 |
37
|
↓1 |
4 |
鹿島アントラーズ |
34 |
59 |
16 |
11 |
7 |
+22 |
61 |
39
|
- |
5 |
ジェフユナイテッド千葉 |
34 |
56 |
15 |
11 |
8 |
+12 |
54 |
42
|
試合前首位のC大阪は1点リードで優勝目前まで来たが、ロスタイム突入直前の89分。FC東京は相手ゴール前に攻め込む。対するC大阪はクリアの応酬を繰り返す混戦となったが、そのこぼれ球をFC東京のMF今野泰幸により決められ、同点に追いつかれてしまう。それとほぼ同時、千葉がPKを得るとMF阿部勇樹が決め、続けざまに千葉MF坂本將貴のゴールで逆転に成功、ロスタイム突入時点でC大阪以外の4チームがリードする。
C大阪が同点に追いつかれ最後の最後で暫定首位に浮上したG大阪はロスタイム、FWクレメルソン・デ・アラウージョ・ソアレスがこの日2点目となる駄目押し点を入れ、2点リード。あまりに劇的な展開に、一部サポーターが観客席からピッチに飛び出し、選手たちと抱き合って狂喜乱舞するという光景が生まれた。ここで全試合終了。
- C大阪 2 – 2 F東京
- 川崎 2 – 4 G大阪
- 新潟 0 – 4 浦和
- 鹿島 4 – 0 柏
- 千葉 2 – 1 名古屋
G大阪が念願の「タイトルホルダー」となった。C大阪はまたしても目前でタイトルを取り逃しただけでなく、得失点差により5位まで順位を落とす結果となった。
最終順位表[3]
昇降 |
順位 |
クラブ |
試合 |
勝点 |
勝利 |
引分 |
敗戦 |
得失点差 |
得点 |
失点
|
↑1 |
1 |
ガンバ大阪 |
34 |
60 |
18 |
6 |
10 |
+24 |
82 |
58
|
↑1 |
2 |
浦和レッズ |
34 |
59 |
17 |
8 |
9 |
+28 |
65 |
37
|
↑1 |
3 |
鹿島アントラーズ |
34 |
59 |
16 |
11 |
7 |
+22 |
61 |
39
|
↑1 |
4 |
ジェフユナイテッド千葉 |
34 |
59 |
16 |
11 |
7 |
+14 |
56 |
42
|
↓4 |
5 |
セレッソ大阪 |
34 |
59 |
16 |
11 |
7 |
+8 |
48 |
40
|
試合データ
ジェフユナイテッド千葉 v 名古屋グランパスエイト
その後
G大阪とC大阪は共に関西勢として初のリーグ優勝のタイトルを争い、明暗がハッキリと分かれる結果となった。
初タイトルを取ったガンバ大阪は翌シーズン以降も安定した強さを見せ続け、2011年までは2008年を除くシーズンで常に3位以内に入る躍進を見せる(2008年はACL優勝と天皇杯優勝の二冠を達成)。2012年シーズンには史上初のリーグ最多得点数・得失点差がプラスでJ2降格の憂き目に遭うものの、1年でJ1復帰を果たすと2014年シーズンには国内タイトル3冠を獲得するなど強豪チームとしての地位を確立する。
一方土壇場で首位から5位に転落したセレッソ大阪は翌シーズンに守備陣が崩壊し、よもやの残留争いに巻き込まれてしまう。33節終了時には自動降格圏外の16位に位置するも最終節で敗れ17位に沈み、2000年〜2001年シーズンと同じように優勝争いをした翌年に降格の憂き目に遭うこととなる。最終節までリーグ優勝争いに加わったシーズンは2005年を最後に無く、2020年現在までリーグ優勝は1度も成し遂げられていない(国内3大タイトルではカップ戦での優勝と天皇杯での優勝が1回ずつ)。
脚注
関連項目