オーストラリア のゴールドコースト にあるQ1 は超高層マンションのうち世界第5位の高さを有する。
超高層マンション (ちょうこうそうマンション)とは、マンション (集合住宅 )のうち全高が高い物件の俗称 。超高層建築物 として外観がタワー(塔 )のように見えることからタワーマンション 、日本 では略して「タワマン 」とも呼称される。
日本の法律 では超高層マンションに対する法的な定義はないが、日本マンション学会『マンション学事典』(民事法研究会 発行)では「高さが60 m を超える建築物」と同義としている(ほぼ同程度の高さとなる20階超も含まれる)[ 1] 。なお、建築基準法第20条 は、高さが60メートルを超える建築物について規定している。
世界
世界最高層の超高層マンション
世界最高層の超高層マンションは、「世界の超高層マンションの一覧 」を参照。
アメリカ合衆国
ニューヨーク市 では、早くも20世紀 前半・世界大恐慌 の前後には高層アパートメントの建築ラッシュを迎えている[ 1] 。同時期、同市セントラル・パーク の西側沿いには、「サン・レモ(The San Remo)」(1930年 、27階建て)、「エルドラード(The Eldorado)」(1931年 、30階建て)、「センチュリー・アパートメント(The Century Apartment)」といった、主にアールデコ 様式を用いた何れもツイン・タワー形式のアパート が計5施設完成している。これらのアパートは現在でも歴史的建築物として保存され、ステータス を備えた超高級アパートメントとして高額で売買が行われている。
第二次世界大戦 後には、同市マンハッタン のミッドタウン やアッパーイースト 地区には無数の高層アパートメントが林立するようになった。欧米における集合住宅の居住形態ではベランダ やバルコニー が必要とされないため、それらの建物の外観はオフィスビル やホテル などとの区別が付き難いことが多い。
2001年 、マンハッタン東部、国際連合本部ビル の正面に完成し、不動産王ドナルド・トランプ が所有する「トランプ・ワールド・タワー(Trump World Tower)」(262 m、72階)は、1990年代 以降に西半球 で建設された高層ビルとしては最高の高さである。住居専用の建築としては現在でも西半球で最高層となっている。同ビル1階には日本料理 店が入居するほか、日本人 MLB 選手が居住していることでも知られる。
ヨーロッパ
欧州では、1960年代 にピークを迎えたが、イギリス の首都ロンドン にあるローナン・ポイント で起きた爆発事故などにより1970年代 抑制傾向が目立ち、公営住宅 が連想されるなど、一般的にはあまりよいイメージを持たれていない[ 1] 。
日本
日本の超高層マンションの先駆けとされる「与野ハウス」(2008年撮影)
日本の住宅 ではかつて一戸建ての持ち家へのこだわりが強く、災害(地震 ・火災 )の面からも高層居住への不安もあり、高層共同住宅 の整備はアメリカなどの大都市より遅れた。また、高層建築物に対応できる消防車 (高機能なポンプ車・高層用はしご車など)が配備出来ていない自治体 も多かった(現在は11階以上にスプリンクラー設備 設置が義務化)。
しかしながら1974年 (昭和 49年)、鹿島建設 が自社の社宅 「椎名町アパート」[ 注釈 1] (18階建て)をRC構造 により東京都 豊島区 で建設したことでマンションの高層化が可能であることが立証された。その後、1976年 (昭和51年)に住友不動産 が埼玉県 与野市 (現在のさいたま市 中央区 )に21階建て、高さ66mの分譲マンション 「与野ハウス」を竣工させ、これが日本における超高層マンションの第1号とされる。当初は、容積率 や日照権 などの問題から、超高層マンションを建てるには広い土地が必要であり、土地取得が容易な郊外 や河川 沿いなどに立地する例が多かった。
1997年 (平成 9年)、規制緩和 の一環として容積率 上限を600 % まで、日影規制 の適用除外とする「高層住居誘導地区」が、第140回国会 において議決され、また、廊下・階段等を容積率の計算から除外する建築基準法 の改正が成立した。これにより都市再開発 が後押し荒れ、超高層マンションの建設は急増、東京都心 や湾岸地域などで住居が大量に供給されたことにより、都心回帰 と呼ばれる現象も惹起した。その後、大都市近郊の鉄道路線 駅前や地方都市 中心街などにも超高層マンションが多く建設されるようになった。
2023年 末時点、日本で一番高さのある超高層マンションは、東京都港区 の麻布台ヒルズレジデンス A(高さ237.20 m、54階)である。建設中の超高層マンションで、一番高さのあるものは東京都港区の「麻布台ヒルズレジデンスB」(高さ262.89 m、64階)で2024年に竣工予定となっている。その後、2030年度に「六本木五丁目西地区再開発事業(通称:第二六本木)B街区」(高さ288m 、70階)が計画されている。それによって、新たに日本一が塗り替えられることになる。
タワーマンションは、デベロッパーによる子育て層を対象にした営業活動もあり、入居者はファミリー層が多い[ 2] 。大型タワーマンションの場合、1棟あたり1,000戸以上あり、一つの町とも言えるものであり、大規模マンション 、タワーマンションが丁目を占めている地域もある[ 2] 。生活に必要な様々な店が周辺に開業してコンパクトシティ を形成しているが、初期のタワーマンションでは住人の高齢化に伴い、保育所 などの数は既に少ない傾向がある[ 2] 。
『朝日新聞 』朝刊2024年8月27日付地域総合面(東京 版16面)「数字は語る」[ 3] で紹介された東京カンテイの調査結果によると、全国のタワマンの数は2023年12月末時点で1515棟。うち792棟が首都圏 (東京都、神奈川県 、千葉県 )で、うち479棟が東京都。首都圏以外では近畿圏 389棟で、うち272棟が大阪府 、中部圏 は98棟で、うち67棟が愛知県 。同社によると9県はタワマンがゼロである(青森県 、石川県 、奈良県 、三重県 、鳥取県 、島根県 、徳島県 、宮崎県 、大分県 )。
現在の超高層マンション
2023年 (令和 5年)12月末時点での全国の高さ170 m以上の超高層マンションは下記の通り。
高さの国内最高の変遷
1976年~1987年:与野ハウス(66 m)
1987年~1989年:ベル・パークシティ G棟(115.95 m)
1989年~1991年:大川端リバーシティ21 リバーポイントタワー(132 m)
1991年~1993年:イーストコート3番街(140 m)
1993年~1998年:オークプリオタワーレジデンス (167 m)
1998年~2004年:エルザタワー55(185.8 m)
2004年~2006年:アクティ汐留(190.25 m)
2006年~2009年:クロスタワー大阪ベイ(200.375 m)
2009年~2022年:The Kitahama(209.35 m)
2022年~2023年:虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー(221.55 m)
2023年~ - :麻布台ヒルズ レジデンスA(237.20 m)
階数の国内最高の変遷
1976年~1987年:与野ハウス(22階)
1987年~1989年:ベル・パークシティG棟(36階)
1989年~1992年:大川端リバーシティ21 リバーポイントタワー(40階)
1992年~1993年:桜宮リバーシティ・ウォータータワープラザ(41階)
1993年~1998年:オークプリオタワーレジデンス (50階)
1998年~2004年:エルザタワー55(55階)
2004年~2008年:アクティ汐留(56階)
2008年~2009年:THE TOKYO TOWERS(58階)
2009年~2017年:パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー(59階)
2017年~:ザ・パークハウス西新宿タワー60(60階)
建設中・計画中
高さ170 m以上の建設中、計画中の超高層マンションは以下の通りである。計画中のため高さ、階数、竣工年に関して変更のある可能性があるものを含む。
名称
高さ
階数
竣工年
所在地
六本木五丁目西地区第一種市街地再開発事業 B街区
288m
70階
2030年
東京都港区
麻布台ヒルズ レジデンスB
262.82m
64階
2024年
東京都港区
西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業 A-1街区北棟
229m
63階
2031年
東京都新宿区
西新宿三丁目西地区第一種市街地再開発事業 A-1街区南棟
228m
62階
2031年
東京都新宿区
(仮称)六本木一丁目北地区計画
225m
50階
2028年
東京都港区
日本橋一丁目東地区第一種市街地再開発事業
213m
51階
2032年
東京都中央区
(仮称)中之島5丁目3番地計画
205m
57階
2031年
大阪市北区
西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業
201.20m
54階
2028年
東京都港区
グランドシティタワー月島
199.45m
58階
2026年
東京都中央区
(仮称)大阪市北区中之島5丁目計画
196.65m
52階
2030年
大阪市北区
南池袋二丁目B地区市街地再開発
195m
57階
2025年
東京都豊島区
(仮称)東高島駅北地区 C地区棟計画 C-2地区 B棟
195m
52階
2031年
横浜市神奈川区
本町一丁目特定街区(西武船橋店本館跡地開発)
193.00m
51階
2028年
千葉県船橋市
グランドシティタワー池袋
189.88m
52階
2027年
東京都豊島区
THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY 東棟
189.0m
54階
2027年
東京都中央区
THE TOYOMI TOWER MARINE&SKY 西棟
189.0m
54階
2027年
東京都中央区
ワールドタワーレジデンス
185.49m
46階
2024年
東京都港区
本通三丁目地区市街地再開発計画 南棟
185m
53階
2033年
広島市中区
(仮称)うめきた2期地区開発事業 南街区分譲棟
184.00m
51階
2028年
大阪市北区
プラウドタワー池袋
182m
47階
2026年
東京都豊島区
月島三丁目南地区第一種市街地再開発事業
181.53m
48階
2028年
東京都中央区
(仮称)東高島地区 C地区棟計画 C-1地区
180m
47階
2030年
横浜市神奈川区
HARUMI FLAG SKY DUO PARK VILLAGE
179.60m
50階
2025年
東京都中央区
HARUMI FLAG SKY DUO SUN VILLAGE
179.60m
50階
2025年
東京都中央区
ザ・パークハウス武蔵小杉タワーズ ノース
175.67m
50階
2028年
川崎市中原区
ザ・パークハウス武蔵小杉タワーズ サウス
175.67m
50階
2027年
川崎市中原区
渋谷二丁目西地区 C街区
175m
41階
2029年
東京都渋谷区
グラングリーン大阪 THE NORTH RESIDENCE
172.55m
46階
2026年
大阪市北区
高輪ゲートウェイシティ(第1期) 住宅棟(1街区)
172.12m
44階
2026年
東京都港区
泉岳寺周辺地区市街地再開発事業
170m
41階
2024年
東京都港区
西日暮里駅前地区第一種市街地再開発事業
170m
47階
2030年
東京都荒川区
問題点の指摘
超高層マンションの固有振動 の周期 は低層の建物に比べ長いため、地震動 の周期の長い海溝型巨大地震 の地震動との共振の可能性あり、制震 工法や免震 工法で建設される建物もあるが、長周期地震動 との共振に備えて家具の固定が推奨されている[ 1] 。さらには、地震でエレベーターが停止すると、上階の住人は徒歩で非常階段 を昇り降りしなければならないという「高層難民」の発生も懸念されている[ 4] 。
また、規模が大きく区分所有者の人数も多くなる超高層マンションは、購入者が重視するポイントに眺望が挙げられ、低層階と高層階との価格格差が大きくなることが一般的であり(数倍となることも見られる)[ 注釈 2] 、それによる区分所有者間の所得・資産格差の大きさが、管理組合 運営へ影響しやすい[ 1] 。法政大学 経済学部の坂本憲昭は、2016年時点で初期の超高層マンションでは居住者の高齢化が始まっており、都市の人気エリアであっても急激な高齢化により、医療や介護の施設の不足など山村と同じ問題に直面すると指摘している[ 2] 。
子育ての観点からは、名門会会長の西村則康 が「学力の平均値で見れば、恐らく高層マンション住まいの子供の方が、そうでない子供よりも高いように思う」としつつも[ 5] 、「五感 への刺激が圧倒的に少ないために、身体感覚が自然に鍛えられるべき時期に十分鍛えられない[ 5] 」「傾向として、実体験が乏しいために物事をイメージできず、理解するのに時間がかかる傾向にあるのは事実だ」と述べている[ 6] 。
また、東海大学 医学部 講師の逢坂文夫は、平成5年度の『厚生省 心身障害研究報告書』において、超高層マンションの高層階に住むと女性の流産 率が高まり、子供が低体温やアレルギー疾患になりやすいと報告している[ 7] [ 8] 。
第1子の出生年数および流産・死産割合は、昨年度と同様に、居住階の上昇に伴い顕著な増加を示した。影響因子と推測していた喫煙および飲酒の要因では、現在のところ明らかな影響はみられなかった。しかしながら、それらの因子以外に居住階の上昇に伴い何等かの影響を助長している成績が明らかにみられ、その原因の探求は、今後の課題点である。
— 逢坂文夫『居住環境の妊婦に及ぼす健康影響について』[ 9]
超高層マンションを舞台にした作品
超高層マンション住民の葛藤などをテーマとした日本の小説は「タワマン文学 」と呼ばれることもある。
脚注
注釈
出典
参考文献
関連項目