電磁誘導 を利用した発電の例。磁石を回転させることにより磁界 が変化し、電位差 が発生する。
発電 (はつでん、英 : electricity generation )とは、運動エネルギー などを利用して、電気 を発生させることをいう[ 1] 。
概説
発電とは、電力以外のエネルギー を電力 へ変換することである。発電の種類としては、例えば、水力発電 、風力発電 、太陽光発電 、地熱発電 、火力発電 、原子力発電 などがある。
原理としては、機械エネルギー [ 2] (運動エネルギー )を電磁誘導 を用いて電力に変換するもの(発電機 )だけでなく、化学変化 のエネルギーを利用したもの(電池 )、光起電力効果 によるもの(太陽電池 によるもの)、ゼーベック効果 によるもの(熱電素子 によるもの)、圧電素子 によるもの、モノとモノをこすることによって生じる静電気 を利用するものなどがある。
発電は、発電所 で行われているだけでなく、家庭や企業などでもしばしば行われる(自家発電 )[ 注釈 1] 。また、夜間に前照灯 をつけて自転車 で走る時は、乾電池 式や充電式でなければ、人がペダルを踏む力でダイナモ を動かして発電し、電球 を点灯することも過去には多く、また、オートバイ や自動車 で走行する時は、オルタネーター で発電し、電装 品等を働かせるために使用している。最近実用 化されはじめた燃料電池車 では燃料電池 で発電し、電動機 を動かし走る。
発電の種類
※ 構想・実験・研究段階であり、実用化に至っていないものもある。
発電機による発電
発電機 は電磁誘導 によって運動エネルギー を電力に変換する装置である。具体的にはコイル に対して磁石 を回転させることで電気を発生させる。動力 を何から得るかによって以下のように様々な種類がある。
火力発電 :燃料 の持つ化学エネルギー を燃焼 により熱 に変換し、さらに運動エネルギーに変換する発電。熱を得る方法、熱から運動を得る方法によりさらに細分される。
原子力発電 :核反応により熱エネルギーを得る発電。運動エネルギーへの変換は、通常は蒸気タービンを用いる。
核融合発電 :原子核の融合によってエネルギーを得る発電。
水力発電 :水の位置エネルギー 及び運動エネルギーによる発電。
揚水発電 :余剰電力を使って水を汲み上げておき、電力需要の高い時にそれを利用する。
マイクロ水力発電 :小規模な水力発電。建設費や運用費が安い。
地熱発電 :地熱により熱エネルギーを得る発電。
太陽熱発電 :太陽光の熱エネルギーによる発電。太陽光を直接電気に変える太陽光発電とは別。
風力発電 :風の運動エネルギーによる発電。
波力発電 :波の運動エネルギーによる発電。
海流発電 :海流の運動エネルギーによる発電。潮流発電ともいう。
潮力発電 :潮の干満の運動エネルギーによる発電。潮汐発電ともいう。
炉頂圧発電 :高炉 の高圧ガスでタービンを回す発電。
冷熱発電 :液化天然ガス (LNG) の冷熱を利用し、中間熱媒体を液化、循環させる方法と、気化した高圧ガスで直接タービンを動かす方法がある。主に LNG の受け入れ基地などで用いられる。
海洋温度差発電 :海面の温水と深海の冷水の温度差を利用してタービンを回す発電。
人力発電 :人間を動力源とする発電。燃料や電池の補給が難しい局面で重宝される。
運動以外のエネルギーを電力に変換する発電
運動以外のエネルギーを電力に変換する発電には以下のようなものがある。
発電の原理
電磁誘導
発電機は前述のように電磁誘導により電力を生む。電磁誘導 による発電は、磁力線 を導体が横切ることによって起こる現象であり、得られる出力は以下のように表される。
e
=
− − -->
v
B
l
sin
-->
θ θ -->
{\displaystyle e=-vBl\sin \theta \,}
e は起電力 (V )、v は速度 (m /s )、B は磁束密度 (Wb /m2 )、l は横切る導体の長さ (m)、θ は磁力線からの偏角 (rad ) である。これは、磁力線を長さ l の導体が速度 v で横切ったときに導体に発生する起電力を求める式である。この式から、電磁誘導 によって大きな起電力 e を得るためには、
磁界を強くする
速度を上げる
磁力面積を拡大する
ことが必要であるとわかる。
電気化学反応
電池 のうち「化学電池 」と呼ばれる種類の電池は電気化学反応により電力を生む。電気化学 反応は、2 種以上の活物質 の接触によって生じるもので、反応で生じた電極間の電圧を出力として取り出す。この出力は、単純には以下の式のように表される。
e
=
− − -->
Δ Δ -->
G
n
F
{\displaystyle e={\frac {-\Delta G}{n{\mathrm {F} }}}}
e は起電力 (V)、ΔG は反応におけるギブズエネルギー 変化、n は反応電子 の価数 、F はファラデー定数 (C /mol ) である。これは、反応に関与する活物質の活量 がすべて 1 で平衡 状態にあるときの標準電極電位 である。
光起電力効果
電池のうち「物理電池」、その中でも「光電池(太陽電池 )」と呼ばれる種類の電池は光起電力効果 により電力を生む。
ゼーベック効果
電池のうち「物理電池」、その中でも「熱電池」と呼ばれる種類の電池はゼーベック効果により電力を生む。ゼーベック効果 は、2種以上の物体の接触点の温度差によって生じるもので、反応によって生じた電極間の電圧を出力として取り出す。2 種の物体を用いた場合のこの出力は、単純には以下の式のように表される。
e
=
(
S
B
− − -->
S
A
)
⋅ ⋅ -->
(
T
2
− − -->
T
1
)
{\displaystyle e=(S_{\mathrm {B} }-S_{\mathrm {A} })\cdot (T_{2}-T_{1})}
e は起電力 (V)、S A と S B はそれぞれ物体 A, B のゼーベック係数 、T 1 と T 2 は 2 つの接点の温度 (K ) である。
その他
原子力電池 のうち実用化されているものは、放射性崩壊 により発生する熱をゼーベック効果により電気に変換するものなどで、上記を参照のこと。理論上は放射性崩壊によるエネルギーが直接電子を放出させる「熱イオン変換方式」もあるが実用化はされていない。
各国の電源構成
電源構成とは発電に用いるエネルギー源や発電方法の組み合わせのことである。エネルギーミックスともいう[ 3] 。2015年の全世界の総発電量は24,255TWhであった。これは地球が太陽から 1 年間に受けるエネルギー 1,525,284,000TWh の 0.001 % に相当する。電力源の内訳の66.3%は化石燃料 、23.1%は再生可能エネルギー 、10.6% は原子力 による。化石燃料の大半は石炭と天然ガスであり、石油による発電量は総発電量の4.1%である。再生可能エネルギーは水力が16.0%あり大半を占める。水力以外の再生可能エネルギーは全体の7.1%であり石油を超えている。しかし資源量全体では風力よりも太陽光、太陽熱の方が遥かに大きい(「再生可能エネルギー」項目参照)。また太陽光発電による発電量は総発電量の1%であった。数値はIEA/OECDより[ 4] これらの燃料の中には電力以外に熱源、動力源として消費されるものもあるがここでは電力源のみを考慮している。
発電所のエネルギーフロー
世界の発電量の推移
全世界で2015年に火力、原子力、水力、コージェネレーション ・プラント、その他の発電所で消費された総エネルギーは石油換算トン で1,737Mtoe。これは全世界の一次エネルギー 供給量(TPES)13,647Mtoeの12.7%であった。
生産された電力はグロス で 1,735,579 ktoe 相当の電力 (20,185 TWh) であった。発電効率は 39 %。残りの 61 % の一部 ( 3 %) はコージェネレーションの熱源として利用されたが大半は排出された。また 289,681 ktoe 相当の電力(発電量の 17 %)は発電所での内部消費と送電ロスで消費され、最終的に消費者へは 1,446,285 ktoe 相当の電力 (16,430TWh) が供給された。これは発電およびコージェネレーションに投入されたエネルギーの 33 % であった。Key World Energy Statistics 2017 - IEA
世界の総電力の電力源 2015年
-
石炭
石油
ガス
原子力
水力
風力
太陽光
再生可能エネルギー全体
合計
電力 (TWh/年)
9,538
990
5,543
2,571
3,978
838
247
5,534
24,176
割合
39.4%
4.0%
22.9%
10.6%
16.4%
3.4%
1.0
22.8
100%
2008年の主要国の電源構成
以下の表にリストした 30 ヶ国は人口がトップ 20 位か、国内総生産 (GDP) が 20 位以内の国と、参考にサウジアラビア を含めた。CIA World Factbook 2009より
これら 30 ヶ国の合計は対全世界比、人口で 77 %、GDP で 84 %、消費電力で 83 % であり、各指標の 30 ヶ国の平均値は全世界の平均値と近似している。
電源構成の内訳(TWh/年 2008年度)
国名
化石燃料
原子力
順位
再生可能
バイオマス 他
合計
順位
石炭
石油
ガス
小計
順位
水力
地熱
太陽光
太陽熱
風力
潮汐
小計
順位
バイオ マス
廃棄物
その他
小計
順位
全世界
8,263
1,111
4,301
13,675
-
2,731
-
3,288
65
12
0.9
219
0.5
3,584
-
198
69
4
271
-
20,261
-
率
41%
5.5%
21%
67%
-
13%
-
16%
0.3%
0.06%
0.004%
1.1%
0.003%
18%
-
1.0%
0.3%
0.02%
1.3%
-
100%
-
中国
2,733
23
31
2,788
2
68
8
585
-
0.2
-
13
-
598
1
2.4
-
-
2.4
14
3,457
2
インド
569
34
82
685
6
15
12
114
-
0.02
-
14
-
128
6
2.0
-
-
2.0
16
830
5
アメリカ合衆国
2,133
58
911
3,101
1
838
1
282
17
1.6
0.88
56
-
357
4
50
22
0.8
73
1
4,369
1
インドネシア
61
43
25
130
19
-
-
12
8.3
-
-
-
-
20
17
-
-
-
-
-
149
20
ブラジル
13
18
29
59
23
14
13
370
-
-
-
0.6
-
370
3
20
-
0.2
20
4
463
9
パキスタン
0.1
32
30
62
22
1.6
16
28
-
-
-
-
-
28
14
-
-
-
-
-
92
24
バングラデシュ
0.6
1.7
31
33
27
-
-
1.5
-
-
-
-
-
1.5
29
-
-
-
-
-
35
27
ナイジェリア
-
3.1
12
15
28
-
-
5.7
-
-
-
-
-
5.7
25
-
-
-
-
-
21
28
ロシア
197
16
495
708
4
163
4
167
0.5
-
-
0.01
-
167
5
0.02
2.5
-
2.5
13
1,040
4
日本
288
139
283
711
3
258
3
83
2.8
2.3
-
2.6
-
91
7
15
7.3
-
22
3
1,082
3
メキシコ
21
49
131
202
13
9.8
14
39
7.1
0.01
-
0.3
-
47
12
0.8
-
-
0.8
17
259
14
フィリピン
16
4.9
20
40
26
-
-
9.8
11
0.001
-
0.1
-
21
16
-
-
-
-
-
61
26
ベトナム
15
1.6
30
47
25
-
-
26
-
-
-
-
-
26
15
-
-
-
-
-
73
25
エチオピア
-
0.5
-
0.5
29
-
-
3.3
0.01
-
-
-
-
3.3
28
-
-
-
-
-
3.8
30
エジプト
-
26
90
115
20
-
-
15
-
-
-
0.9
-
16
20
-
-
-
-
-
131
22
ドイツ
291
9.2
88
388
6
148
6
27
0.02
4.4
-
41
-
72
9
20
9.4
-
29
2
637
7
トルコ
58
7.5
99
164
16
-
-
33
0.2
-
-
0.85
-
34
13
0.1
0.1
-
0.2
19
198
19
コンゴ民主共和国
-
0.02
0.03
0.05
30
-
-
7.5
-
-
-
-
-
7.5
22
-
-
-
-
-
7.5
29
イラン
0.4
36
173
209
11
-
-
5.0
-
-
-
0.2
-
5.2
26
-
-
-
-
-
215
17
タイ
32
1.7
102
135
18
-
-
7.1
0.002
0.003
-
-
-
7.1
23
4.8
-
-
4.8
10
147
21
フランス
27
5.8
22
55
24
439
2
68
-
0.04
-
5.7
0.5
75
8
2.1
3.8
-
5.9
9
575
8
イギリス
127
6.1
177
310
7
52
10
9.3
-
0.02
-
7.1
-
16
18
8.1
2.9
-
11
5
389
11
イタリア
49
31
173
253
9
-
-
47
5.5
0.2
-
4.9
-
58
11
4.4
3.3
0.9
8.6
6
319
12
韓国
192
15
81
288
8
151
5
5.6
-
0.3
-
0.4
-
6.3
24
0.5
0.2
0.1
0.7
18
446
10
スペイン
50
18
122
190
14
59
9
26
-
2.6
0.02
32
-
61
10
2.5
1.6
0.3
4.3
11
314
13
カナダ
112
9.8
41
162
17
94
7
383
-
0.03
-
3.8
0.03
386
2
8.3
0.2
-
8.5
7
651
6
サウジアラビア
-
116
88
204
12
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
204
18
台湾
125
14
46
186
15
41
11
7.8
-
0.004
-
0.6
-
8.4
21
0.5
3.0
-
3.5
12
238
16
オーストラリア
198
2.8
39
239
10
-
-
12
-
0.2
0.004
3.9
-
16
19
2.2
-
-
2.2
15
257
15
オランダ
27
2.1
63
92
21
4.2
15
0.1
-
0.04
-
4.3
-
4.4
27
3.7
2.9
0.1
6.8
8
108
23
国名
石炭
石油
ガス
小計
順位
原子力
順位
水力
地熱
太陽光
太陽熱
風力
潮汐
小計
順位
バイオ マス
廃棄物
その他
小計
順位
合計
順位
2020年の主要国の電源構成
以下の表にリストした 30 ヶ国は人口がトップ 20 位か、国内総生産 (GDP) が 20 位以内の国と、参考にサウジアラビア を含めた[ 5] [ 6] 。CIA World Factbook の値より算出
発電する生物
生物の中には、発電器官 を有する種が存在し、他の生物に対する攻撃、物体の探知、コミュニケーション等に電気を利用している。そういった能力を持つ種の殆どは魚類である[ 7] 。
強発電魚
100V以上の電圧を生む発電魚。
弱発電魚
5V前後の電圧を生む発電魚。
発電菌
脚注
注釈
出典
関連項目
外部リンク