先進国(せんしんこく、英: Developed country、Advanced country)は、高度な工業化や経済発展を達成し、工業力や科学技術力で他国より先行しており、生活・公衆衛生・健康・教育・インフラ整備・人権保障などの水準が高く、政治的に自由で安定している国家のこと。対義語は「後進国」であったが、侮蔑的とされるようになったため、現在では発展途上国(開発途上国)の呼称が一般的である。
歴史的に列強と呼ばれた元宗主国の大国を中心にヨーロッパや北アメリカ、東アジアの国々に多く、全体的にみると北半球北部〜中部の国に多い。そのため、主に南アジアやアフリカ、南アメリカなどの南半球や赤道付近に多く分布する発展途上国との摩擦は南北問題と表現される。先進国とされる国家のうち、特に国家規模が大きいアメリカ合衆国、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、カナダの7ヵ国については、G7(最も裕福な自由民主主義国群)と呼ばれる。
先進国の定義には単一のものがあるわけではなく、曖昧である。大国(超大国を含む)と同義の扱われ方をすることもあるが、先進国の基準は一人当たりの経済力と生活の質に重点を置いている。中国やインド、ブラジルなどは経済力で世界的に上位に位置する大国であるが、国民一人当たりの経済力では中位・下位であり、また都市部とそれ以外の地域格差が大きいため、先進国には含まれない。一方、経済的には裕福であっても、国家の規模が極めて小さなミニ国家(モナコやリヒテンシュタインなど)や、工業化や自由化が進んでいない国家(中東産油諸国など)も、先進国としては扱われない場合が多い。また、チェコなど一部の旧東側諸国のように、先進国の基準を満たしているにもかかわらず評価が分かれる場合や、台湾など高所得ながら政治的な問題(台湾問題)から国際機関への参加が難しいために統計に現れない例、アルゼンチンや旧ソビエト連邦(ロシア)、南アフリカ共和国のように政治経済の失敗から脱落した例もある。
明確な認定基準がないため、定義する国際機関や企業によっても異なる。定義のひとつとしては、経済協力開発機構(OECD)加盟国を先進国として扱うというものがある。だが、OECDにはトルコ[注釈 1]やメキシコ、チリ、コロンビア、コスタリカといった、先進国としては国際的に扱われることがない国家も加盟している。国際通貨基金による定義では、2017年時点で、39カ国を経済先進国(Advanced Economies)としている[1]。また、アメリカ中央情報局(「The World Fact-Book」)[2]も、経済先進国(Advanced Economies)として、独自の定義を掲げている。
また、近年ではIT化・デジタル化の進展により、電子申請や電子決済、電子商取引といった各種サービスの利便性・開発度などの面で、従来の先進国とそれ以外の国家間の格差縮小、逆転現象(リープフロッグ型発展)も起こっており、一層曖昧になっている。
以下は、国連非加盟のため、統計に現れにくい地域である。
以下は、欧米の主な株価指数算出企業による評価(2019年9月時点)を挙げる。欧米のグローバルな株価指数算出企業では、先進国の定義にあたり、その国の株式市場の規模に加え、取引の透明性やガバナンスの確保等を規準としている。この規準に従い、透明性が一定期間担保された場合の先進国への昇格や、損なわれた場合の除外措置が行われており、アイスランドなど生活水準の高い国であっても取引規模が極小または株式市場が存在しない場合、また、韓国・ポーランド・キプロスについては評価が分かれている。ギリシャはソブリン危機以前は先進国として分類されていたが、同危機以降、いくつかの格付け会社から先進国基準の投資適格を満たさないと判断され、先進国から除外されるケ-スがあった[7]。