『仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王』(かめんライダー はちにんライダーたいぎんがおう)は、1980年(昭和55年)3月15日に、「東映まんがまつり」の一編として公開された中編映画。
資料によっては『8人ライダーVS銀河王』のみをタイトルとして記述している。
概要
『仮面ライダーX』の劇場用新作『五人ライダー対キングダーク』以来、約6年ぶりの仮面ライダーシリーズ劇場版新作[2]。シリーズで初めて40分台で制作され、A級制作費作品となった[3][注釈 1]。
東映まんがまつり枠で特撮ヒーロー作品が上映されるのも、1978年夏興行の『スパイダーマン』『宇宙からのメッセージ・銀河大戦』以来であり、本作品以降、再び新作特撮映画が組み込まれるようになった[3]。
主役のスカイライダーは、テレビシリーズに先駆けて第28話以降のパワーアップした姿で登場している[4][2]。原作者の石森章太郎が総監督をつとめ、アクションシーンや特撮シーンは規模の大きいものになっているが、ドラマ部分の少ないアクション中心の作品である。
あらすじ
宇宙から襲来した機械生命体・銀河王は、水素を応用したΣエネルギーを研究中だった宇宙ステーション「天海」を襲撃した。研究の中心人物・羅門博士は、死の間際に愛犬エレンにΣエネルギーの方程式を記憶させ、地球へ脱出させる。エレンを追う銀河王はネオショッカーと手を組み、地球での行動を開始した。スカイライダーは仮面ライダー1号から仮面ライダーストロンガーまでの仮面ライダー7人とともに、富士山麓のネオショッカー大要塞で銀河王・ネオショッカー連合軍と対決する。
登場人物
本作品では洋と魔神提督以外、テレビシリーズのレギュラー陣は一切登場していない。
主要人物
- 羅門博士
- Σエネルギー開発の責任者で、宇宙ステーション「天海」での実験に成功するものの、直後に天海や、ほかの乗員ごと銀河王に狙われ、愛犬エレンの頭脳にΣエネルギーの製造方程式を記憶させ、地球へ脱出させた後にサドンダスに襲われ、命を落とす。
- 羅門レミ
- 羅門博士の娘。愛犬エレンとともにネオショッカーに拉致される。
- 真樹泉
- 羅門博士の助手。レミを救出するため、ブンと共に洋の後を追う。
- 羅門ブン
- 羅門博士の息子。泉に気があるお調子者の青年。洋とは友人同士。
- 準備稿『9人ライダー対銀河大要塞』では少年という設定であった[4]。
歴代の仮面ライダー
中盤で怪人二世部隊に立ち向かうために登場。全員とも素顔の出演はなく、変身後の姿のみ登場。詳細はリンク先を参照。
ネオショッカー
テレビ本編の敵対組織。
- ジャガーバン
- 劇場版のオリジナル怪人。モチーフはジャガー。超金属製のジャガー剣と盾が武器[6]。
- 怪人軍団の主戦力で、アルマジーグとユーモラスな会話も交わしていた。
- 1号のライダーキックで倒され、「天は我を見放した」と叫んで絶命した[注釈 2]。
- 絵コンテ段階での名称はジャガージンであった[8]。
- アルマジーグ
- 劇場版のオリジナル怪人。モチーフはアルマジロ。
- 鋭い爪が武器で、体を丸めて体当たりをするが、ジャガーバンに乗られた際、相性の悪さが垣間見られた。
- こちらも1号のライダーキックで倒された。
- 絵コンテ段階での名称はアルマロジンであった[8]。
- 怪人二世部隊
- ジャガーバンに召集された、過去のネオショッカー怪人と同型の怪人軍団。歴代ライダーとの戦闘で全滅した。
- 構成メンバーはクモンジン、サソランジン、ゴキブリジン、ヤモリジン、シビレイジン、オオカミジン、サイダンプ、コゴエンスキー、ムササベーダー兄弟、マダラカジンの11体[3]。
銀王軍
銀河王の率いる組織。本編中に名前は登場せずパンフレットでの紹介のみ。
- 銀河王
- 50年ごとに他の惑星を滅ぼしていくとされている機械生命体で、戦闘では手からの強力な衝撃波を使う。ネオショッカーとの連合戦が失敗に終わり、撤退を考えたところでスカイライダーに基地を破壊されたうえ、銀河王シップは発射直後に爆風が引火して炎上する。最後は、「残念、無念」の台詞とともに部下もろともミサイル発射口に落下し、爆死した。なお、脱出中には自分の先を行く戦闘員たちを薙ぎ払うなど、エゴイストな面も見せていた。
- サドンダス
- 銀河王の配下の宇宙怪獣で、同軍における最強の存在でもある。翼による飛行能力を持ち、姿を消しての攻撃が得意[注釈 3]。スカイライダーとの初戦において、パイルドロップで致命傷を負わされる。その後、スカイライダーが基地を脱出しようとする寸前には再び現れたものの、そこで力尽きて爆死する。
- 石森による原案に登場したテラノドジンが原型とされる[10]。高久による初期台本でも、ジャガー怪人とアルマジロ怪人に並んでプテラノドン怪人がネオショッカーの怪人として登場する予定であった[4]。
- 映画『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』に登場するミュータミットのサドンダスは、本作品のサドンダスが基になっている[9]。
- スペースクルー(ロボットクルー)
- 銀河王配下の戦闘員で、宇宙服を着たような外見。瞬間移動などの特殊能力を持つ。
登場メカ
- 戦車
- ネオショッカー所有の兵器。テレビ版第26・27話に登場したものと同一であるが、こちらは後部が分離して砲台になる。
- シグマミサイル
- Σエネルギーを搭載した最終兵器。ネオショッカー大要塞から打ち上げられた直後、スカイライダーに大要塞内の発射装置を破壊されたために墜落して大爆発し、大要塞ごと壊滅する。
キャスト
声の出演
スーツアクター
いずれも大野剣友会。
スタッフ
主題歌
- オープニングテーマ「輝け! 8人ライダー」[注釈 4]
- 作詞 - 八手三郎 / 作曲 - 菊池俊輔 / 編曲 - 武市昌久 / 歌 - ささきいさお、ザ・チャープス
- エンディングテーマ「燃えろ! 仮面ライダー」[注釈 5]
- 作詞 - 石森章太郎 / 作曲・編曲 - 菊池俊輔 / 歌 - 水木一郎、こおろぎ'73
- 挿入歌「渋谷でのんだくれてる」[注釈 6]
- 作詞・作曲・歌 - 中村ブン
制作
企画の変遷
石森章太郎による原案では、仮面ライダーが羅門博士の開発した重力制御砲を利用しようと目論むネオショッカーの吸血鬼軍団と対決するという物語で、スカイライダーの飛行能力を活かした空中戦を見せ場としていた[10]。完成作品にも登場する羅門博士やネオショッカーの富士山麓基地はこの段階で創作されていたが、羅門博士は仮面ライダーとネオショッカーの双方を利用していた黒幕という扱いであった[10]。敵キャラクターにはネオショッカー幹部のドラキュラ伯爵とその配下であるプテラノドンをモチーフとしたテラノドジンが設定され、石森によるラフデザインも描かれていた[10]。
しかし、テレビシリーズの視聴率が振るわないことへの強化策として9番目の仮面ライダーとなる仮面ライダーV9の導入が検討され、本作品はその登場編として改訂された。V9はアメリカ航空宇宙局の宇宙飛行士・沖正人が変身するという設定で、空を象徴するスカイライダーよりもスケールの大きな宇宙で活躍するキャラクターと位置づけられていた。高久進により執筆された準備稿『9人ライダー対銀河大要塞』[3][4][注釈 7]は石森の原案を基にしながらV9の設定を活かすため、宇宙からの侵略者である銀河大帝とネオショッカーが手を組むという展開に改められた。東映プロデューサーの平山亨による案では、後に宇宙怪獣であることが明かされるネオショッカー大首領の正体についても触れることが検討されていた。
その後、テレビシリーズが歴代ライダーの客演によって視聴率が持ち直してV9の登場が見送られたため、本作品もそれに合わせる形に再度改められた。内容はほとんど改訂されず、V9の登場シーンが他の仮面ライダーに変更される程度にとどまった。
筆が進むにつれて文字が難読になっていったため、途中から石森プロのスタッフによって文字書きが行われた[8]が、絵コンテは石森によって全編が執筆された。絵コンテでのタイトルは『8人ライダーVSギンガオー』であり[8]、予告編でもこの表記となっている。
当初は単独での公開を想定していたが、興行館の都合などによって東映まんがまつりの一編として公開されることとなり、上映時間が短縮された[4]。
他媒体展開
映像ソフト化
いずれも東映ビデオより発売。
- VHS(セル、レンタル)共通。2000年8月4日にVHSが発売された[21]。
- LD(セルのみ)
- DVD:「仮面ライダー THE MOVIE BOX 1972-1988」(2003年12月5日発売)、単巻.VOL.3(2006年3月21日発売)
- BD:「仮面ライダー THE MOVIE Blu-ray BOX 1972-1988」(2011年5月21日発売)に収録。
- UHD:「仮面ライダー THE MOVIE 1972‐1988 4KリマスターBOX」(2021年11月10日発売)に収録。
漫画
テレビシリーズ
- 『仮面ライダー (スカイライダー)』
- 本作品のテレビ本編。怪人二世部隊やネオショッカー大戦車が第27話と第28話に登場。
- 第52話では、ドクターXの診察室に銀河王の手が吊されているほか、棚に銀河王の部下数体の頭が並べられている。
他映画作品
- 『仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX』(2011年12月10日公開)
- 『仮面ライダーフォーゼ』と『仮面ライダーオーズ/OOO』をメインとしたクロスオーバー作品。本作品に登場したサドンダスと銀河王がリメイクされて登場する[9]。
- リメイクされたサドンダスと銀河王の登場作品については、仮面ライダー×仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGA MAX#ミュータミットを参照。
他漫画作品
- 『新 仮面ライダーSPIRITS』
- 新解釈を交えて仮面ライダー1号から仮面ライダーZXまでを取り上げた、村枝賢一による漫画作品。銀河王やサドンダスが登場する。
脚注
注釈
- ^ 制作費は通常の東映まんがまつり用作品の2倍である[4]。当初は、子供向け興行ではなく一般映画として公開される可能性もあった[3]。
- ^ 映画『八甲田山』のパロディである[7]。
- ^ 書籍『仮面ライダー怪人大全集』では、瞬間移動能力と記述している[6]。
- ^ クレジットは「輝やけ! 8人ライダー」。
- ^ クレジットでは「いま斗いの陽が昇る」と誤表記。
- ^ 羅門ブンを演じる中村ブンが劇中でギターを弾きながら歌唱。
- ^ 『9人ライダーVS大戦車軍団』という仮題もあったとされる。
出典
- ^ a b 仮面ライダー1971-1984 2014, p. 404, 「全仮面ライダー結集作」
- ^ a b c d e 大全集 1986, p. 225, 「仮面ライダー劇場用作品製作メモ」
- ^ a b c d e f g 映画大全集 1993, p. 134, 「仮面ライダー劇場用映画作品研究」
- ^ a b c d e f 怪人大全集 1986, p. 138, 「仮面ライダー劇場用怪人大全」
- ^ 石井博士ほか『日本特撮・幻想映画全集』勁文社、1997年、268頁。ISBN 4766927060。
- ^ a b c d e 仮面ライダー1971-1984 2014, pp. 410–413, 「石ノ森氏 本編絵コンテ」
- ^ a b c 完全超悪 2020, p. 308, 「DESIGNER INTERVIEW 麻宮騎亜[仮面ライダーフォーゼ]」
- ^ a b c d 仮面ライダー1971-1984 2014, pp. 404–405, 「石ノ森章太郎氏劇場用直筆アイデアメモ」
- ^ a b c d 藤川裕也編 編「第5章 岡田勝時代 4.スカイライダー劇場版」『大野剣友会伝 ヒーローアクションを生んだ達人たち』岡田勝監修、風塵社、1999年7月15日、156頁頁。
- ^ 「2000TV・映画 特撮DVD・LD・ビデオ&CD」『宇宙船YEAR BOOK 2001』朝日ソノラマ〈宇宙船別冊〉、2001年4月30日、67頁。雑誌コード:01844-04。
参考文献
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