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(2024年2月 )
中国人民解放軍
中国脅威論 (ちゅうごくきょういろん,英 : China threat theory )とは、中華人民共和国 の覇権主義 が他国または世界にとって重大な脅威になるとする言説。中華人民共和国の経済的および政治的成長を弱める、米国 によって策定されたいわゆる「中国封じ込め政策」の過去また現在に大きく影響を及ぼした。
冷戦下の中国脅威論
ソ連脅威論と中国脅威論
日本やアメリカにおいては1950年代 から1990年代 、つまり冷戦 中の脅威はソビエト連邦 であった(ソ連脅威論)[ 1] [ 2] 。
1960年には日米安保条約 が締結、日米同盟による安全保障 が図られた。
1960年代には中国脅威論が展開され、日本は米国と共に反共主義 及び封じ込め 戦略が展開された[ 1] 。
一方で1964年10月に中国は初の核実験 を行ったが、当時の米国の態度は緩やかなものであったといわれている[ 2] 。これは中ソ間に対立がみられたからであり、ソ連と決別した中国の核は米国の対ソ戦略上において牽制的に有利に働くだろうという目論見があったためである[ 2] 。
ベトナム戦争 では北ベトナム を支援する中国と南ベトナム を支援するアメリカの間に当初は対立が見られた[ 1] 。しかし、ベトナム戦争で苦戦を強いられていたアメリカは中ソ国境紛争 でソ連との関係が悪化していた中国に接近[ 1] 。その後、リチャード・ニクソン 大統領 の中国訪問 の衝撃[ 1] を経て、1972年に日中国交正常化 が実現した。
対ソ戦略という観点で米中関係には利害の一致が見られ、1970年代末からはアメリカが中国に兵器や軍事技術を供与し軍の近代化に協力した経緯がある[ 2] 。
1980年代にソ連脅威論が再び台頭するが、ソビエト連邦の崩壊 によって終了する。
中ソ関係と中国脅威論
東西冷戦は資本主義 と社会主義 のイデオロギー 的対立であったが、社会主義国 として中国とソ連がパートナーの関係にあったのは冷戦 初期の短い期間である[ 2] 。
1960年代初頭には中国とソ連は対立関係をはらんでおり、1962年には新疆 などで国境紛争が頻繁に発生していた[ 2] 。
冷戦後の中国脅威論
冷戦の終結後は、ならずもの国家 の脅威が論じられ、東アジア においてはジョージ・W・ブッシュ によって北朝鮮 が名指された[ 1] 。
中国脅威論は米国の産業政策 復活を後押ししており第二次世界大戦 後、75年以上続いた「パクス・アメリカーナ」が米中ハイテク冷戦 により存続が危ぶまれることで産業政策導入の機運を高めていることが指摘されている[ 3]
2000年代にはテロリズム の脅威と“ならずもの国家”の脅威が結びつく一方で、中国脅威論も再び台頭した[ 1] 。西側諸国 では近年[いつ? ] の中国脅威論では過去数十年単位で見た軍事費 の伸び率の高さや不透明性、共産主義 国家としての報道・言論規制、国境線問題、抑圧的な人権 政策、愛国主義的歴史教育、輸出の拡大による貿易摩擦、甚大な環境破壊、資源の囲い込み等から今後中国が周辺諸国の又は地球規模での脅威となっていくとする見方で、この論説は、日本 ・台湾 ・米国 ・オーストラリア ・ベトナム ・インド などで展開されている。また米中冷戦 とともに言及されることがある。
中国の輸入原油の80%が
マラッカ海峡 経由である(2004年限在)。
21年連続2桁増で急増する軍事費[ 4] 、軍事費の内訳の不透明性、兵器や人員の実態の不透明性、核戦力の充実、日本 の沖ノ鳥島 における排他的経済水域 の否定、数々の示威行為(人工衛星破壊・アメリカ海軍 原子力空母 至近での潜水艦 浮上・日本の領海侵犯 ・排他的経済水域での無断調査・台湾近海でのミサイル 演習)により、中国脅威論が展開されている。2006年のアメリカ国防総省 の年次報告書では、軍事費の増大などを背景に「周辺諸国への潜在的な脅威になっている」と述べている。
経済大国 として「世界の工場」と呼ばれる中国は廉価な製品の輸出によって他国の現地産業を圧迫しているという脅威論もある。
この輸出攻勢の背景には外資の誘致による工場の乱立や安い人件費 の他に、中国当局が固定相場制によって人民元 が輸出に有利になるよう誘導している背景があり、人民元の変動相場制への転換圧力にもなっている(人民元改革 も参照)。
中国は10億を超える人口を抱えていること、エネルギー効率が悪いことから石油 等地下資源 の確保に積極的なため、新たな脅威論の要因となっている。2005年 には米国大手石油会社・ユノカル の中国企業中国海洋石油総公司 による買収騒動はアメリカ議会上院 が法案を出すほどの事態に発展した。
この他、中国からの移民 は世界各国で摩擦を生んでいる。
古くから東南アジア 諸国などでは華僑 が国の政治・経済に大きな影響力を有しており、近年では欧米や日本への移民の急増により、各地でチャイナタウン が形成されるなど、存在感を増している。
中国の軍事的な脅威として中国人民解放軍 によるサイバーテロ が論じられもする。ニューヨーク・タイムズ は、ダライ・ラマ14世 のコンピューターなど、103か国の政府や個人のコンピューターが、主に中国からのサイバー攻撃を受けていたと報じた[ 5] 。
またF-35戦闘機 の機密情報にアクセスしようというサイバー攻撃があったことを、アメリカ空軍 が発表している[ 6] 。
2010年には米国の調査機関が中国人民解放軍陸水信号部隊によるサイバー攻撃の事例を発表した[ 7] 。
2012年 3月11日 のサンデー・タイムズ は、中国のハッカーがF-35戦闘機のデータを盗み出すため、BAEシステムズ のコンピューターに侵入していたと報じた[ 8] 。
国別の反応
日本
東シナ海
近年の中国における急増し続ける軍事費について、識者を中心に軍事的脅威が唱えられている。
中国の軍事費は1989年度から21年連続2桁増という勢いで増加しており、その予算の内訳が明確に示されたことはない。
また装備の取得・開発費や戦略ロケット部隊や人民武装警察 の予算は軍事予算に含まれておらず、実態は公表されている予算の3倍の額になるという指摘もなされており、2005年8兆円(同年ロシア 6.5兆円)2006年10兆円、2007年14兆円と見込まれており、これに従うならば軍事支出では世界2位で、国際関係上、旧ソ連が占めていた地位に近づきつつある[ 9] 。
2008年3月4日、姜恩柱報道官は、中国の2008年度(1 - 12月)国防予算は前年度実績比17.6%増の4,177億元(約6兆600億円)に上ることを明らかにした[ 10] 。
上記の通り研究開発費などを含む実際の軍事費はさらに大きいとみられるが、公表額においてもフランス を上回り、米国、イギリス に次ぐ世界3位の軍事費になった公算が大きい。
核およびミサイル配備
DF-21の射程(赤線)
中国人民解放軍ロケット軍 のミサイル発射基地については軍事機密のため公開されてこなかったが、1980年代に一部公開され、すべてではないが一定程度公開されている。
中国は核弾頭 搭載可能な中距離弾道ミサイル DF-21 とDF-3をはじめ日本を射程内に収めている。
元海上自衛隊 第5航空群 司令川村純彦は中国のミサイル約800基のうち約100基は日本を照準としていると発言している(2006年 時点)[ 11] 。
また中国軍は台湾に照準を合わせたミサイルを2005年から2006年にかけて710基から790基に増強している[ 12] 。
以下、日本を射程内としているものとして推定される基地について記す[ 13] 。
中国の国防の観点からは、日本 、韓国 、台湾 、フィリピン 、およびそれら各地域の駐留アメリカ軍 、およびアメリカ本土 までを射程にいれている[ 14] 。
瀋陽基地(第51基地、96101部隊):遼寧省 瀋陽。1990年代初めに吉林省通化から移転。東風3号、東風21号 を装備。
第806導弾旅(96111部隊):陝西省 韓城 : 標的:アメリカ[ 13] 。東風31号 を配備。
第810導弾旅(96113部隊):大連 金州 : 標的 : 日本、韓国[ 13] 。東風3号配備。
第816導弾旅(96115部隊):吉林省 通化 : 標的 : 日本[ 13] 。DF東風15 を配備。
第822導弾旅(96117部隊):山東省 萊蕪 : 標的 : 日本[ 13] 。2000年に編成、東風21号配備。
皖南基地(第52基地、96151部隊):安徽省 稽嶺山。東風3号、東風21号、東風15号、東風11号、東風18号を装備
第807導弾旅(96161部隊):安徽省池州 : 標的 : 台湾[ 13] 。東風21号配備。
第811導弾旅(96163部隊):安徽省祁門 : 標的 : 台湾
第815導弾旅(96165部隊):江西省 楽平 : 標的 : 台湾
第817導弾旅(96167部隊):福建省 永安 : 標的 : 台湾
第818導弾旅(96169部隊):広東省 梅州 : 標的 : 台湾
第819導弾旅(96162部隊):江西省贛州 : 標的 : 台湾
第820導弾旅(96164部隊):浙江省 金華 : 標的 : 台湾
第801導弾旅(96261部隊):河南省霊宝 : 標的:アメリカ[ 13]
第804導弾旅(96263部隊):河南省欒川 : 標的:アメリカ
第813導弾旅(96265部隊):河南省南陽 : 標的:アメリカ
湘西基地(第55基地、96301部隊):湖南省 懐化。東風4号、東風5号を装備。東風31号?
第803導弾旅(96311部隊):湖南省靖州 : 標的:アメリカ
第805導弾旅(96313部隊):湖南省通道 : 標的:アメリカ
第814導弾旅(96315部隊):湖南省会同 : 標的:アメリカ
第824導弾旅(96317部隊):湖南省洞口 : 標的:日本、台湾[ 13]
? 湖南宜春新営区 : 標的:日本、台湾[ 13] 。
空軍近代化
Su-27 フランカー
従来、中国人民解放軍空軍 は3,000機のJ-6戦闘機 (中国製MiG-19 )を保有していた。J-6は日本を空襲 できるまでの航続性能が無いため日本の国防 上の脅威ではなかったが、1990年代末からこれら旧式機が寿命更新期を迎えると、Su-27 がロシアからの輸入/ライセンス生産 方式で量産され始め、更に2006年からは中国国産のJ-10 の年産50機程度の量産が始まった。
これら新型機の導入により、中国空軍の戦闘機の世代は一気に2世代新型になって置き換わり始め、航空自衛隊の航空戦力に追いつきつつある。
新型戦闘機の多くが上海周辺から沖縄 /九州 、又は北朝鮮の租借地 から日本海 沿岸を空襲できる航続性能を持っており、一部は東京 空襲さえ可能となった。
また、日中間海域の航空シミュレーションでも、アメリカ空軍 の本格来援までは中国側が優勢を占める可能性が高い。
これら中国空軍近代化により自衛隊 の再編成にも影響を及ぼしている。
将来的には、中国空軍は日本に航続距離が届く戦闘機2,400機を保有することになると見られている[ 15] 。
日本では、当時の小泉政権が歳出削減のため、戦闘機の定数を300機から260機に削減していた。
空自は「量」を「質」で補うために、寿命を迎えるF-4EJ改 の代替に最新鋭F-22 ステルス戦闘機 の導入を切望しているが、F-22は最先端技術の塊であるため、2007年7月25日の米国下院歳出委員会で禁輸措置の継続が決定された。
中国空軍近代化を象徴する事件の一つとして、2011年 8月 中旬ごろに中国空軍のSu-27もしくはSu-30 が東シナ海 の日中中間線 を越え、海上自衛隊 の情報収集機を追尾したことが挙げられる。
中間線より日本の側で、中国側による威嚇行為が行われたのはこれが初めてである。尖閣諸島 へ近づかれる恐れがあると判断した航空自衛隊 が、那覇基地 のF-15J戦闘機 をスクランブル 発進させると中国軍の戦闘機は引き返した[ 16] 。
海軍の近代化
巡航ミサイル打撃力
ロシア から輸入した12隻(877EKM型2隻・636型2隻・636M型8隻、636型と636M型は改キロ級)のキロ級潜水艦 の内、636M型8隻がロシア製GPS (GLONASS )誘導の3M-54E1(対艦)/3M-14E(対地)巡航ミサイル の潜水艦発射型「クラブS 」の運用能力があるとされる。
これは144発の巡航ミサイルで、自衛隊 の指揮通信設備・航空基地・固定レーダーサイト ・陸上自衛隊 補給処・石油 備蓄の攻撃が可能な戦力である。
宋型 ・元型潜水艦 ・漢型原子力潜水艦 ・その他殆どの水上艦・JH-7A攻撃機 ・H-6爆撃機 装備のYJ-8 対艦ミサイル は対地攻撃型が無く、対艦攻撃型だけだった。しかし対地型YJ-85巡航ミサイルが航空機に配備されるに及んで、これの艦載用が中国海軍艦艇にも装備されれば、巡航ミサイル同時投射能力が数百-1,000本前後に激増することになり、日本の国防上懸念されている。
揚陸艦隊の増強
071型揚陸艦
従来は、中国人民解放軍陸軍 (兵力160万人・戦車 7,100両)の規模が陸上自衛隊(兵力16万人・戦車900両)を上回っていても、中国海軍の揚陸艦 の数が少なかったので日本の国防上大して問題ではなかった。
しかし、中国は台湾(24万人・戦車900両)を武力併合できる軍事能力を得るため、急ピッチでドック型揚陸艦 を量産し、 揚陸艦隊の増強を図っている。
2005年時点で戦車225両・歩兵 3万人の輸送を出来る体制で、輸送能力はロシアを抜いて世界2位になった。
2010年7月1日より施行された国防動員法 により、有事の際の輸送・揚陸に使用する目的での民間船舶の徴用 が可能になった。
2015年には米太平洋揚陸艦隊と互角の戦車425両・歩兵4万人を1往復で輸送できる揚陸艦隊を持ち、3-4往復で台湾を征服するのに必要な戦車1,300両・歩兵16万人を輸送可能になると見られている。
空母艦隊
旧ソ連/ウクライナ の航空母艦 「ヴァリャーグ 」を購入、建造を再開して2012年に「遼寧 」として就役させた。
中国海軍は2010-2017年に65,000t通常動力大型空母 を3隻、2015-2022年に10万t原子力空母3隻を建造し、旧式フリゲート 艦40隻を3-4目標同時処理能力を持った防空フリゲート艦36隻に更新予定である。
又、艦載機 や戦闘機、潜水艦、各種戦闘艦艇などをロシアから大量に購入中である。
第一列島線・領海に関して
接近阻止・領域拒否 の構想のもと、2020年には第一列島線 、第二列島線以内の制海権 の確保を目指しているといわれている[要出典 ] 。
度重なる示威行為も中国脅威論を助長する一因となっている[要出典 ] 。
実際に中国原子力潜水艦が日本の領海 を侵犯をしたり(漢級原子力潜水艦領海侵犯事件 )、中国軍艦艇が日本の排他的経済水域 で度重なる無断調査を行ったりするなど、日本への挑発行為を繰り返している。また、尖閣諸島 の領有権を主張し、自らの排他的経済水域を日中中間線 を大きく越えた沖縄トラフ までであると主張し、沖ノ鳥島 の日本領有を否定するなども日本側の警戒心を喚起している。
また、琉球独立運動 の標榜を中国が利用する危険性を、青山繁晴 ら複数の政治家・専門家が指摘している。
中国側から見て、沖縄県 周辺は中国海軍の太平洋 への出口であり、米原子力潜水艦 が中国に巡航ミサイル攻撃をしたり、米空母 が近寄ってくるのを防ぐ前線飛行場として、韓国 /台湾を海上封鎖するための対艦ミサイル 設置区域として、またアメリカ軍 が使用した場合は台湾/上海空爆の拠点として極めて重要な要衝である[要出典 ] 。
日本民主党 の沖縄2000万人ステイ構想 (移民ではない)は保守 層から批判された[要出典 ] 。
さらに日本側の抗議にもかかわらず日中中間線をまたぐ形で海底のガス田 を開発中で、日中間の懸案事項となっている。
首相の中国牽制発言
2010年 10月24日 、自衛隊の中央観閲式 に出席した菅直人 総理大臣 は、「軍事力の近代化を進め、海洋における活動を活発化させている中国にみられるように(情勢は)厳しさを増している」と中国の強大化について初めて名指しで言及した[ 17] 。
その他
実際にこれらの事例から中国を忌避し、東南アジア や国内に回帰する企業[どこ? ] は後を絶たない。
また労働者 からは中国人 に仕事が奪われてしまうという意味で、脅威論とは言わないまでも否定的な意味で捉えられることが多々ある。
米国
貿易摩擦 を背景とした産業界の圧力により、アメリカ政府は中国に対して人民元切り上げ圧力を強めている。
また、上述のアメリカ国防総省 の報告書にもあるとおり、軍事面でも警戒する声が強まっている。人工衛星 の破壊実験や演習中の米国空母至近での潜水艦の浮上などアメリカに対する示威行為も目立つようになり、アメリカ議会 などで度々話題となっている[要出典 ] 。
また、中華イージス艦とも渾名される蘭州級駆逐艦 は、20年間にわたりアメリカ海軍 から情報を盗み出していたチー・マック(麦大智)ら中国系アメリカ人 4人のもたらした技術情報に基づいて開発された事が判っており、大きな問題となった[ 19] 。
リチャード・アーミテージ は国際連合大学 ウ・タントホールで2006年6月27日に行われた講演で、米国一極超大国時代は2020年以降に不確実になる可能性があると述べた[ 20] 。
2011年 11月9日 、アメリカ国防総省 は「エアシー・バトル 」(空・海戦闘)と呼ばれる特別部局の創設、中国の軍拡に対する新たな対中戦略の構築に乗り出していることが明らかとなった。この構想には中国以外の国は対象に入っていないとアメリカ側は事実上認めており、ある米政府高官は「この新戦略は米国の対中軍事態勢を東西冷戦スタイルへと変える重大な転換点となる」と述べた[ 21] 。
中国高官による核攻撃発言
1995年、人民解放軍副総参謀長の熊光楷中将が「もし米国が台湾に介入したら、中国は核ミサイル でロサンゼルス を破壊する。米国は台北 よりロサンゼルスを心配した方がよい」として、台湾海峡での武力紛争 に米国が介入した場合、中国はロサンゼルスに対して核攻撃する可能性があると表明した[ 22] 。
なお、中国は伝統的に1964年から核の先制不使用を自国の核戦略 としてきた[ 23] 。しかし2005年 7月14日 、国防大学 教授・中国人民解放軍 少将の朱成虎 は「(中国は一貫して)核兵器先制不使用」は軍事戦略の基本方針であり、非核の通常兵器 による戦争になっても、先に核兵器 は使用しないと宣言してきたが、「核兵器先制不使用」は「非核の国との戦争にのみ適用される原則だ」「この種の方針はよく変わる」と明言した[ 24] 。
2011年までの中国国防白書には「中国は、いつ、いかなる状況下であっても、核兵器を先制的に使用しない」と核保有国で唯一核の先制不使用を表明していたが、2013年から記述が削除された[ 25] 。
朱成虎発言(2005年)
2005年 7月14日 に、国防大学 教授・中国人民解放軍 少将の朱成虎 は香港 でウォール・ストリート・ジャーナル やフィナンシャル・タイムズ など各国の報道機関を前に、アメリカ が台湾有事 に介入した場合、中国は核戦争 も辞さないと発言した[要出典 ] 。発言は以下の通り。
「我々(中国)は核兵器の先制攻撃により中国以外の人口を減らすと共に自民族を温存させる事に力を注ぐべきで、この核戦争後に百年余りの屈辱に満ちた歴史を清算し未来永劫この地球を支配する様に成るだろう。世界の人口は無制限に迅速に増加している。今世紀中に爆発的増加の極限に到達するはずだ。しかし地球上の資源は有限なのだから、核戦争こそ人口問題を解決するもっとも有効で速い方法である。中国政府は全力で核兵器の開発に取り組んでおり、十年以内には地球上の半数以上の人口を消滅させるだけの核兵器を装備することが可能である。中国は西安以東の全都市が焦土となる事を覚悟している。米国も数百の都市が破壊される事を覚悟しなければならない」
「もしアメリカが中国と台湾との軍事紛争に介入し、ミサイルや誘導兵器を中国領土内の標的に向けて発射すれば、中国は核兵器で反撃する。現在の軍事バランスでは中国はアメリカに対する通常兵器での戦争を戦い抜く能力はないからだ」
「アメリカが中国の本土以外で中国軍の航空機や艦艇を通常兵器で攻撃する場合でも、中国側からのアメリカ本土核攻撃は正当化される。(アメリカによる攻撃の結果)、中国側は西安以東のすべての都市の破壊を覚悟せねばならない。しかしアメリカも数百の都市の中国側による破壊を覚悟せねばならない」
— 朱成虎、2005年7月14日[ 26] [ 24]
韓国
中国政府は2006年 9月14日 、韓国が総合海洋科学基地を設置している離於島は韓国領土として認められないとの見解を示した。更には中国国内で離於島を中国領にしようとする民間団体「蘇岩礁 (離於島の中国名)保衛協会」の結成が進められている。また、白頭山 や間島 に関しても領土的な摩擦が発生している[要出典 ] 。
歴史認識 でも高句麗 史を巡っての認識の違いが存在する。
2007年からは、成長著しい大国中国と、大国である日本との間に挟まれた韓国はこの2つの国に経済的・軍事的に従属する立場に転落するのではないかという「サンドイッチ論 」という主張が『中央日報 』などの主要紙に載るようになっている[ 27] [ 28] 。
2017年 4月6日 にフロリダ州 で米中首脳会談が行われたが、その際に中国 の習近平 総書記 (国家主席 )が「朝鮮半島 は中国の一部だった」と発言したことをアメリカ のドナルド・トランプ 大統領 が明らかにした[ 29] [ 30] 。ドナルド・トランプ大統領は、「習近平主席が中国と朝鮮半島の歴史について話した。数千年の歴史と数多くの戦争について。朝鮮 は実は中国の一部だった」「朝鮮は実際に中国の一部だった(Korea actually used to be a part of China )」「習主席から中国と韓国の歴史について聞いた。北朝鮮 ではなく韓半島全体の話だった。(中国と韓国には) 数千年の歳月の間、多くの戦争があった」「(習主席の歴史講義を)10分間聞いて(北朝鮮問題が)容易ではないことを悟った」と語った[ 29] [ 30] 。これに対して、韓国の保守派 から「(中国は)実際は手段や方法に関係なく隣国に対する覇権を追求してきた。習主席は米国のトランプ大統領に『韓半島は中国の一部だった』という妄言まで口にした。それが彼らの本心だ。中国共産党 と習主席はその属性からして覇権を追求し、暴力的かつ反民主的で反人権的だ」という露骨な中国脅威論が出ている[ 31] 。
台湾
南シナ海
中国は台湾が独立を宣言するなら武力を持ってこれを鎮圧し併合すると公言していることから、特に本省人 の間では軍事的に中国を重大な脅威と捉えている。現実に中国は台湾への武力攻撃を念頭に置いた反分裂国家法 を制定するなど、軍事的圧力を捨ててはいない。また、1996年の台湾初の民選総統 選挙で、親日 派で台湾独立 傾向の強い李登輝 が優勢と知ると、台湾近海でミサイル演習を実行しあからさまな軍事圧力を加えたこともあった[要出典 ] 。
現在、台湾では中国との戦争を忌避したいがために台湾独立には否定的で現状維持を望んでいる国民が大半を占めているとされる。2003年 に三通 が始まって以降、言語がほぼ同じ事から経済的な交流は進んでおり、特に台湾企業の中国進出は近年著しい。経済の面から中国本土との関係は切っても切れないものになってきており、中国に併呑されるという危機感もあるが、全体的に見れば経済的な面での脅威論は下火になってきている。
オーストラリア
脅威論への異論
日本共産党 は、米中・日中間の経済的相互依存関係の強まりや、中国の対外政策に照らせば、中国を「脅威」とする考えには根拠が無いと主張している[ 34] 。また、中国脅威論とは中国の軍拡で公共の場所での軍事的権益を脅かされる可能性が出てきたアメリカが声高に中国の脅威を主張し、日本もそれになぞっているだけであると主張している[ 35] 。
石破茂 は、「中国の軍事費の伸びだけで『脅威』とは言えない。軍人の給与 上昇にかなりの部分が使われている事実がある」と2009年 12月8日 のシンポジウムで述べた[ 36] 。
また、2009年まで内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当」を務めた柳澤協二 は「冷戦時代のソ連 とは体制的な対立関係があったが、中国とは(経済発展 という)同じ方向を向いて競争しており、相手を滅ぼす動機がない。中国が日本を滅ぼしたら中国の経済は成り立たないし、米中関係でも同じことが言える」と、2010年4月20日の国会 内の講演で述べている[ 35] 。
ただ、この柳沢や日本共産党などが主張する「グローバル化で経済関係が密接だから、戦争を仕掛けると自分が損をするから戦争は起きえない」という「資本主義の平和 」論には異論もある。実際第一次世界大戦 に於いて英独両国は緊密な経済関係を持ちながら開戦したし、中野剛志 は「国家は必ずしも合理的に行動しないことや、合理的に行動したとしても戦争が起きる可能性がある」と著書で述べている。また、この平和論はグローバル化への警戒感が少ない日本で特に根強く信仰されている考え方だという[ 37] 。
中国の欧州連合代表部 は声明で、「我々の防衛と軍事的近代化の追求は正当で、合理的 で、開放的で透明性があるものだ」と主張した。また、北約は中国の発展を「理性的な方法で」とらえ、「中国の正当な利益と権利を、集団政治を操作 し、対立を生み出し、地政学的競争をあおるための口実にするのをやめる」べきだと付け加えた[ 38] 。
崩壊論との違い
日米で流布された中国崩壊論については米国防総省の諮問機関である国防政策委員会 (英語版 ) のマイケル・ピルズベリー 委員長は中国脅威論を打ち消すための中国の情報工作だったと述べている[ 39] 。
脚注
出典
参考文献
関連項目
外部リンク
日本語
古森義久 「外交弱小国 日本の安全保障を考える ~ワシントンからの報告~」日経BP社SAFETY JAPAN
台湾週報(中央通訊社 )
英語