『サード』は1978年の日本映画[1][3]。
少年院教務官の経験を持つ作家・軒上泊による少年院を舞台にした青春映画で、1975年の『祭りの準備』以降、主に日本アート・シアター・ギルド(ATG)作品に顕著だった列島改造ーオイルショック後の「地方の閉塞性」を主題にした映画の一本[4]。
高校生・妹尾新次と女友達の「新聞部」たちは、大きな街に出るための金をかせごうと、売春をすることにした。
しかしヤクザとトラブルになり、相手を撲殺してしまう。
少年院に入った新次は、かつて野球部で3塁をまもっていたことから、「サード」というあだ名をつけられる。
夜ともなれば、慰問に訪れた「赤いセーター」「黄色いスカート」の女たちを思いうかべて妄想にふける生活だ。
新次は悪夢にうなされる。自分の守る3塁を敵チームがどんどん駆け抜けホームを目指す。いざ自分が長打を打つと、ホームを目指して走るのだが、ホームが消えている。仕方なしに再度走るのだがホームはみつからない。
東陽一監督は1969年の『沖縄列島』を作るために制作会社・東プロを興したが、500万円で制作した同作は自主上映でフィルムを担いで全国行脚し、上映すればするほど雪だるま式に赤字が増えた[2]。1971年に制作した初の劇映画『やさしいにっぽん人』では1200万円の借金を抱え[2]、まわりは皆、離れていった[2]。本作の制作に当たり、引き受けてくれるところは大手にはなく ATGに企画を持ち込み、了承されて新たに制作会社・幻燈社を作った[2]。
サードを演じる永島敏行は、野球部出身のキャリアを買われ、『ドカベン』の続いての野球選手役に抜擢された[4]。前半は少年院内の話で後半からサード(永島)の高校時代の回想シーンとなる[3]。これに伴い高校の同じクラスの新聞部(森下愛子)とサード、IIB(吉田次昭)とテニス部(志方亜紀子)が二組のカップルになり、四人で今住む街から大きな街へ行くため、売春で金を稼ぐ[3]。四人に罪の意識が0で、ゲーム感覚でこれを行う[3][4]。公開当時19歳の森下は何度も裸になり、大きくはないが美乳を見せる。後半4分の1からまた少年院に話が戻る。野球に関わるシーンはホームベースのないダイヤモンドを走り続けるという主人公の人生をダブらせるモチーフとして使われる。タイトルは『サード』ながらベースランニングがほとんど。
森下愛子は「自然のまま撮られたから、まったく緊張感がなくて、楽しい雰囲気でいつのまにか、アップした感じ。私は父親がいないので監督に『お父さん』って呼んだら『そんな年じゃない!』って怒られちゃいました」などと話している[2]。
括弧内は作品年度を示す、授賞式の年は翌年(2月)