M3装甲車 (M3 Scout Car、M3スカウトカー )とは、第二次世界大戦 中にアメリカ軍 によって使用された斥候 (スカウト)用装甲車 である。この車輛はまた、製造社の名前であるホワイト・モーター社にちなんでホワイト・スカウトカー としても知られる。本車は警備 、偵察 、指揮 、連絡、救急 、砲 牽引 などを含む様々な任務に投入された。
開発経緯
設計 はクリーブランド に拠点を持つホワイト・モーター 社によって1937年 に始められた[1] 。これは6.4mm厚の表面硬化された装甲 を持った[2] 四輪駆動 で[2] 、機構的には、サイドバルブ ガソリンエンジン 、前進4速・後進1速のノンシンクロ ・コンスタントメッシュ方式変速機 と[1] 2速のトランスファー 、リーフ リジッド サスペンション [2] 、ノンアシスト のステアリング [1] など、平凡かつ堅実なものであったが、この時代の自動車としては珍しい、真空倍力装置 付きブレーキ を備えていた[2] 。ホイールベース は3,300mm、トレッド は1,657mm、車輪は幅220mm、径510mmである。通常、12-plyの軍用タイヤ を装備した[1] 。燃料容量は110リットルである[1] 。
原型車輛は64輌が発注され、全車が第7騎兵 旅団 へ配備された。最終的にアメリカ陸軍 では改良型を採用することに決定し、これをM3A1 と呼称した。この新型は車体を延長し、拡幅していた。車体前面のバンパー には超壕 用のローラー が取り付けられた。M3A1は最大7名の歩兵 を乗せられ、火力 支援として3挺の機関銃 を装備した。12.7mm口径の機関銃、および2挺の7.62mm口径機関銃である。これらの兵器は車体の周囲にめぐらされたレール上を滑動できた[2] 。
M3A1の生産は1940年 に始まり、1944年 に終了したが、この間に20,918輌が生産された[2] [1] 。
本車の設計はM3ハーフトラック のような後のアメリカ軍半装軌式車輛、また戦後のソビエト連邦軍 のBTR-40 の設計に影響を与えている。初期のM2ハーフトラックはレール滑動式の機関銃架と装甲配置を模倣した。
戦歴
第一次中東戦争 時、イスラエルで使用された改造型。
イスラエル仕様の後部。本車はラトルン戦車博物館 に展示されている。
移動方法が馬 から自動車に変わっても、騎兵の任務は伝統的に偵察と索敵で、本車は主にアメリカ陸軍の騎兵隊部隊が装備した。また高性能無線機 を搭載して装甲指揮車としても使用された。
M3A1の最初の戦闘は1941年 から1942年 のフィリピン戦 であり、その後北アフリカ戦線 とシチリア侵攻 にも投入された。1943年 の中期、本車は設計に起因する防御力の脆弱さ、砲を持たないが故の火力の不足、貧弱な路外 走行能力などから前線 から引き上げられ、大多数のアメリカ陸軍の部隊はM3A1からM8グレイハウンド装甲車 またはM20装甲車 、あるいはM3ハーフトラック へ装備改編した。しかしながら少数のM3A1が部隊に保持され、ノルマンディー上陸作戦 にも投入された。また太平洋戦線 においてはアメリカ海兵隊 でも使用された。ただし戦闘には全く投入されていない。
M3A1はまた、レンドリース法 によってソ連赤軍 に供給された(3,034両。これらの車輌は最終的に1947年 まで軍務に投入された)ほか、イギリス 、自由フランス軍 、ベルギー 、チェコスロバキア 、ポーランド 軍の部隊に供給された。戦後、多数の車輌がアジア やラテンアメリカ 諸国へ払いさげられた。ソ連赤軍では本車は通常、偵察車輌として用いられたが、それを支援する偵察砲兵部隊のZiS-3 76mm野砲 牽引車としても用いられた他、戦争を通じて広範な任務に充てられた。イギリス軍と自由フランス 軍においてM3A1は砲兵観測車として使用されたほか、救急車、捜索任務に用いられた。
戦後、M3A1は1948年 の第一次中東戦争 でイスラエル国防軍 に用いられた。いくつかのM3A1は戦闘室を完全装甲化し、旋回式の銃塔 を設け、ドイツ 製のMG34機関銃 を銃塔と助手席に装備し、サンドイッチ装甲車 と呼ばれる即製の改造装甲戦闘車輌として用いられた。フランスではM3A1を第一次インドシナ戦争 およびアルジェリア戦争 に投入した。1990年代 後半、唯一軍務に本車を投入していたのはドミニカ共和国 であった。
使用国
パットン将軍 の搭乗車。
救急車に改造された車輛。
派生型
T5E1迫撃砲搭載型。極少数が試作された。
37mm M3対戦車砲 を搭載したM3A1E3
M3(1938)
原型車輛。64輌生産。
M3A1(1941)
車体を大型に拡張。
M3A1E1
ディーゼルエンジン を装備。100輌生産。
M3A1E2
装甲化された天井を装備。
M3A1E3
T6/M25に装備された37mm M3対戦車砲 を搭載。量産に至らず。
M3A1 Command Car (1943)
増強された装甲を持つ。12.7mmブローニングM2重機関銃を装備。
脚注
参考文献
Berndt, Thomas. Standard Catalog of U.S. Military Vehicles . Iola, WI: Krause Publications, 1993. ISBN 0-87341-223-0 .
TM 9-705
TM 9-1705
TM 9-1706
TM 9-1709
外部リンク
ウィキメディア・コモンズには、
M3装甲車 に関連する
メディア および
カテゴリ があります。