E493系電車(E493けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の事業用交直流電車(牽引車)。
概要
JR東日本ではこれまで、在来線における入換作業及び回送列車の牽引には日本国有鉄道(国鉄)から継承した各種の機関車を使用していたが、いずれも製造から40年近くが経過し老朽化が進行していることや、電車方式を採用することにより、機関車・貨車特有のメンテナンス方法や運転操縦を廃し、効率的なメンテナンスを可能とする目的から[1]、これらの置き換えのために開発された[1]。
電化区間であれば電化方式を問わず走行可能なように交直流切り替え方式を採用した。
入換・回送列車牽引用に機関車を所有していた事業者が電車で置き換えた(機関車を廃止した)事例としては東武鉄道、相模鉄道、西武鉄道、近江鉄道などがあり、鉄道ジャーナリストの松沼猛は、「旅客列車の電車化・気動車化が行われた中で、利用目的が限定的で動力車操縦免許が同一でも運転操作の異なる機関車を淘汰させる流れの一環ではないか」と推察している[3]。
構造
基本的な車体構造は同時期に導入が発表されたGV-E197系気動車とほぼ同一であり、
クモヤE493形 (Mzc1)・クモヤE492形 (Mzc2) の2両固定編成を組む[4]。牽引両数に応じて、2両単独編成から2編成連結させた4両での組成が可能となっている[4]。
車体
オールステンレス構造で、全長21,100 mm、全幅2,800 mm、屋根高さ3,410 mmとなる[5]。中央本線の狭小トンネルに対応するために屋根高さを他の車両よりも低くしている[6]。レール輸送用のキヤE195系(JR東海キヤ97系・東日本仕様)と統一感を持たせる為、正面窓下から側面にはJR東日本のコーポレートカラーであるグリーンと黒の帯を配し、前頭部は黄色く塗装されている[4]。帯に関しては量産先行車の01編成が車体を全周して装飾されているのに対し、量産車の02編成は車体前頭部のみに装飾されている。
車内に走行機器などを搭載するため、車両全長を営業用車両と同等の21,600mmとし、扉は有効開口幅1,300mmの貨物用側引戸と2,500mmの機器搬入口が両側にそれぞれ一対ずつ設けられている[7]。
前照灯および尾灯はLED照明とし、前照灯は車体上部と腰部に2灯ずつ設置され、尾灯に関しては上部に2灯となっている。
側窓は量産先行車では両側に開閉可能な二段窓が片側に2ヶ所ずつ設けられていたが、量産車では片側1ヶ所ずつに省略された。
車内に走行機器や主電動機のブロアーが搭載され、通気性の向上を目的にルーバーが多数設けられることから、フレームや台枠などの強化を施している。
床下機器は台車も含め灰色で塗装されているが、スカートのみ濃灰である。
運用の都合上、電車などとの連結も考慮し、自動連結器と密着連結器の双頭型連結器を車両前面に搭載し、電車・客車などとの協調運転を可能にするためのブレーキシステムを備えている。
前頭部は同社の一般型電車で多用されている正面非貫通で、踏切障害事故対策として衝撃吸収構造を採用しており、同時期に登場したGV-E197系気動車と車体構造を同一としている[4]。
機器類
制御装置は半導体素子にIGBTを適用した2レベル電圧形PWM-VVVFインバータ制御を採用した主変換装置(CI 29形・日立製作所製[8])を搭載している[6]。1台のインバータ装置で主電動機2台を制御する1C2M構成となっている[9]。
ブレーキ方式(ブレーキ制御装置)は、回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用している[9]。保安ブレーキとして直通予備ブレーキ、抑速ブレーキ、耐雪ブレーキを有している[6]。その他に滑走防止機能が付いている[6]。今後多くの車両を牽引することを見据えて、乗務員室に設けられた指令切替スイッチにより、最大4モード(電気指令式ブレーキ車対応2モード・空気ブレーキ車対応2モード)の各運転モードに対応したブレーキ出力の切り替えが可能となっている[6][10]。
台車には軸はり式軸箱支持機構を備えるボルスタレス台車であるDT89A形(全電動台車)を採用している[6]。空転・滑走防止のためのセラミック噴射装置と車輪摩耗低減のためのフランジ塗油装置を備えている[6]。連結器は双頭連結器を装備している。
モニタ装置はMON30を搭載しており、乗務員支援機能、検修機能、運転状況記録機能を有している。制御伝送(加減速の伝送)機能は有していない。検修支援機能としては、各種記録情報をCBM目的でモニタ装置内のSSDに保存している。編成内基幹伝送はイーサネット、編成間基幹伝送はARCNETによる[2]。
編成表
新潟トランシスで製造され、尾久車両センターに量産先行車の01編成と量産車の02編成の、2両2編成が配置されている。
E493系電車 編成表
形式
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新製配置日
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クモヤE492形 (Mzc2)
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クモヤE493形 (Mzc1)
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搭載機器
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VVVF・SIV・PT
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VVVF・SIV・PT
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01
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1
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1
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2021年3月26日
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02
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2
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2
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2023年4月17日
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- VVVF:VVVFインバータ制御装置
- SIV:補助電源装置
- PT:シングルアームパンタグラフ
運用
量産先行車の01編成が2021年2月9日に新潟トランシスを出場し、郡山総合車両センターに回送され[11]、2021年3月26日付で尾久車両センターに配置された[12]。新潟トランシスがJR各社向けに電車を製造するのは初めてのことである。
2021年4月には常磐線にて試運転を開始[13]。
2021年5月17日から20日にかけ、田端運転所 - 長野総合車両センター間にて、無動力のEF64形を牽引し、配給列車を想定した性能確認試運転を実施した。
2022年9月2日には篠ノ井線における試運転に伴い、長野総合車両センターへ回送、同5日から8日までの間、同センター - 松本駅間を単独で1日1往復ずつ実施。9日には尾久車両センターへ返却のため回送された。以降、松本駅 - 富士見駅間でも試運転を実施した。
各種試験を完了し、2023年に量産車02編成を投入[14]。新潟トランシスを出場後、3月14日までに郡山総合車両センターに回送された。今後はATC(自動列車制御装置)採用区間を除く、JR東日本管内すべての電化区間で配給・回送列車を中心に運用する予定としている[4]。
2024年5月17日に、キハE130系気動車幕張車両センター木更津派出所属車が郡山総合車両センターへ入場するにあたって配給列車の牽引機として02編成が充当され、本系列による牽引運用が始まった[15]。
脚注
注釈
出典
参考文献
- 安在恵一郎、吉場裕一(東日本旅客鉄道鉄道事業本部運輸車両部車両技術センター)「E493系事業用交直流電車」『鉄道ファン』第61巻第8号(通巻724号)、交友社、2021年8月1日、pp.78 - 80・175 - 176、OCLC 61102288。
関連項目
外部リンク
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電車 |
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気動車 |
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客車 |
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貨車 | |
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蒸気機関車 | |
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電気機関車 |
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ディーゼル機関車 | |
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