横須賀地方隊(よこすかちほうたい、英称:Yokosuka District)は海上自衛隊の地方隊のひとつ。主要部隊は神奈川県横須賀市にある横須賀基地に配備されている。日本の表玄関とも称すべき海域の防衛を担当しており、後方支援任務も海上自衛隊最大の規模と内容を有し、任務も多岐にわたっている[1]。
概要
1952年(昭和27年)4月26日、海上保安庁の付属機関として海上警備隊が発足し、地方機関として海上警備隊横須賀地方監部が設置された。同年8月1日、保安庁警備隊発足と同時に横須賀地方隊が新編された。
警備区域は、主に岩手県以南で三重県以東の太平洋(岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都(沖ノ鳥島を除く)、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県および三重県の区域並びに青森県と岩手県の境界線が海岸線と交わる点から90度に引いた線と三重県と和歌山県の境界線が海岸線と交わる点から170度に引いた線との間にある東京都(沖ノ鳥島を除く)およびこれらの県の沿岸海域[2][3])。
主な任務は、担当警備区域の防衛・警備、災害派遣、自衛艦隊等の正面部隊に対する後方支援業務、機雷・爆発性危険物の除去及び処理、民生協力等である。横須賀地方隊が対応する補給、造修については、全海上自衛隊艦艇の約1/3を担当しており、海外派遣艦艇(南極輸送を含む。)の支援に関しては、横須賀所在の艦艇に限らず全て支援している[1]。
横須賀地方隊所属の艦艇は第41掃海隊の廃止により、補助艦艇のみとなったが、横須賀地方総監は必要に応じフォースユーザー(事態対処責任者)として護衛艦隊や航空集団から提供された護衛艦や回転翼機を運用して事態対処にあたる。
また、記念艦「三笠」の保存を支援している[1]。
沿革
- 4月26日:海上保安庁に海上警備隊が発足し、地方機関として海上警備隊横須賀地方監部が田浦港町の旧海軍水雷学校跡地(現:第2術科学校)に設置された。
- 8月1日:保安庁の創設により海上警備隊が警備隊に改編され「横須賀地方隊」が新編。
- ※新編時の横須賀地方隊の編成(横須賀地方総監部、横須賀・函館・西部・呉・大阪・徳山・下関・佐世保各航路啓開隊)
- ※新編時の横須賀地方総監部の編成(総務部、警備部、航路啓開部、経理補給部、技術部)
- 9月16日:各航路啓開隊を廃止し、横須賀基地警防隊、館山航空隊、呉地方基地隊を新編。大湊地方隊、佐世保地方隊が新編され、横須賀地方隊の警備区域が縮小される。
- 10月16日:総監部組織の改組(航路啓開部の廃止、調査室の設置、通信所の昇格)
- 10月19日:横須賀地方総監部が田浦から西逸見町の旧海軍港務部跡(現在地)に移転。
- 7月1日:「防衛庁」が創設され「海上自衛隊」が発足。自衛艦隊及び呉地方隊が新編され横須賀地方隊の警備区域が縮小される。
- 5月1日:「横須賀通信隊」を新編。
- 11月1日:総監部組織の改組(副総監を設置)
- 12月1日:「横須賀水雷調整所」を新編。
- 4月1日:横須賀基地警防隊に「横須賀防備隊」及び「剣崎警備所」、「観音崎警備所」を新編。
- 6月1日:横須賀基地警防隊を「横須賀警備隊」に改称。
- 9月1日:「横須賀教育隊」を新編。
- 2月1日:総監部組織の改組(総務部を廃止し人事部を新設、防衛部に第1~第4幕僚班を設置)
- 「横須賀補給所」、「横須賀工作所」を新編。
- 3月1日:横須賀防備隊に「水中処分隊」を新編。
- 9月1日:館山航空隊が「第21航空群」に改編され航空集団隷下に編成替え。
- 10月1日:「木更津航空補給所」を新編。
- 2月1日:「下総航空工作所」を新編。
- 3月1日:横須賀警備隊に「船越分遣隊」を新編。
- 7月15日:砕氷艦「ふじ」が就役し横須賀地方隊に編入。
- 2月4日~5月10日:自衛艦隊とともに羽田空港沖の全日空機遭難事故に対し災害派遣を行う。
- 6月26日:「父島基地分遣隊」を新編。
- 3月2日:総監部組織の改組(副総監を廃止し幕僚長を設置、人事部を管理部に改称、第1~第4幕僚班を幕僚室に改称、第5幕僚室を新設、監察官を新設)
- 「横須賀造修所」、「横須賀衛生隊」を新編。横須賀工作所を廃止。
- 5月20日:「第33護衛隊」を新編。
- 4月11日:「横須賀音楽隊」を新編。
- 12月15日:「第42掃海隊」を第2掃海隊群から編入。
- 4月5日:総監部新庁舎が落成。
- 11月12日:砕氷艦「しらせ」が就役し横須賀地方隊に編入。
- 7月1日:「横須賀誘導弾整備所」を新編。
- 4月11日:砕氷艦「ふじ」を除籍。
- 7月1日:横須賀水雷調整所を廃止し「横須賀水雷整備所」を新編[4]。
- 12月16日:第42掃海隊が廃止。「第46掃海隊」を第2掃海隊群から編入。
- 7月1日:部隊改編により横須賀防備隊が廃止。警備隊の組織改編及び「横須賀基地業務隊」を新編。剣崎警備所を廃止。
- 3月12日:第46掃海隊が廃止。「第10掃海隊」を新編。
- 3月19日:「第41掃海隊」を新編。
- 3月24日:第37護衛隊が廃止。第41護衛隊を第4護衛隊群から編入し「第21護衛隊」に改称。
- 12月8日:補給整備部門の組織改編。
- 木更津航空補給所が「航空補給処」に、下総航空工作所が「航空補給処下総支処」に改編され、補給本部隷下に編成替え。
- 横須賀補給所と横須賀造修所が統合され「横須賀造修補給所」に改編。
- 水雷整備所と誘導弾整備所が統合され「横須賀弾薬整備補給所」に改編。
- 4月13日:第33護衛隊が廃止。
- 3月22日:横須賀通信隊が「横須賀システム通信隊」に改編されシステム通信隊群隷下に編成替え。
- 3月26日:体制移行による部隊改編により、第21護衛隊が「第11護衛隊」に改称され護衛艦隊隷下に編成替え。
- 3月~7月:東日本大震災発災に伴い、JTF-THの指揮の下、横須賀地方総監を指揮官とする海災部隊を編成。
- 3月26日:横須賀警備隊観音崎警備所が廃止。
- 4月1日:総監部内部の組織改編により政策補佐官を新設。
- 4月1日:総監部内部の組織改編により政策補佐官を廃止し参事官を新設。
- 4月3日:部隊改編により地方隊直轄艦艇(「えんしゅう」、「輸送艇2号」)を横須賀警備隊隷下に編成替え。
- 3月12日:第41掃海隊が廃止[5]。
- 年度末:大湊地方隊を統合し、「大湊地区隊」を置く予定[6]。
編成
※ 令和6年3月12日時点
総監部
主要幹部
官職名 |
階級 |
氏名 |
補職発令日 |
前職
|
横須賀地方総監 |
海将 |
真殿知彦 |
2024年08月02日 |
海上幕僚副長
|
幕僚長 |
海将補 |
金刺基幸 |
2024年03月28日 |
掃海隊群司令
|
参事官 |
事務官 |
中素明 |
2020年09月01日 |
北関東防衛局装備部長
|
管理部長 |
1等海佐 |
三好昇次 |
2024年08月02日 |
海上幕僚監部装備計画部艦船・武器課 艦船管理室長 →2024.8.1 横須賀地方総監部管理部勤務
|
防衛部長 |
近藤匡 |
2023年07月31日 |
システム通信隊群司令
|
経理部長 |
岡田健治 |
2023年12月01日 |
海上自衛隊補給本部需品部長
|
技術補給監理官 |
小野彰一郎 |
2022年12月01日 |
海上自衛隊補給本部艦船・武器部長
|
監察官 |
大元貞典 |
2021年06月01日 |
大湊警備隊司令
|
歴代の横須賀地方総監
(特記ない限り海将・指定職5号)
代 |
氏名 |
在職期間 |
出身校・期 |
前職 |
後職 |
備考
|
01 |
吉田英三 |
1952年8月1日 1953年3月31日 |
海兵50期・ 海大32期 |
海上警備隊横須賀地方監部長
|
第一船隊群司令 兼 第三船隊群司令 |
警備監補
|
02 |
溪口泰麿 |
1953年4月1日 1954年9月19日 |
海兵51期・ 海大33期 |
海上警備隊横須賀地方監部次長 →1952年8月1日 横須賀地方副総監 |
自衛艦隊司令 兼 第1護衛隊群司令 |
警備監補 →1954年7月1日 海将補
|
03 |
吉田英三 |
1954年9月20日 1958年5月31日 |
海兵50期・ 海大32期 |
自衛艦隊司令 兼 第1護衛隊群司令 |
練習隊群司令 |
再任
|
04 |
寺井義守 |
1958年6月1日 1960年3月15日 |
海兵54期・ 海大36期 |
鹿屋航空隊司令 |
海上自衛隊幹部学校長 |
就任時海将補 1958年8月1日 海将昇任
|
05 |
福地誠夫 |
1960年3月16日 1961年8月14日 |
海兵53期・ 海大35期 |
自衛艦隊司令 |
海上幕僚監部付 →1961年12月15日 退職 |
|
06 |
麻生孝雄 |
1961年8月15日 1963年6月30日 |
海兵55期・ 海大37期 |
海上自衛隊第1術科学校長 |
退職 |
|
07 |
石黒 進 |
1963年7月1日 1964年12月15日 |
海兵57期・ 海大39期 |
舞鶴地方総監 |
海上幕僚監部付 →1965年1月1日 自衛艦隊司令官 |
|
08 |
山下雅夫 |
1964年12月16日 1965年6月30日 |
海兵57期 |
佐世保地方総監 |
退職 |
|
09 |
板谷隆一 |
1965年7月1日 1966年4月29日 |
海兵60期 |
護衛艦隊司令官 |
海上幕僚長 |
|
10 |
山本啓志郎 |
1966年4月30日 1967年6月30日 |
海上幕僚副長 |
自衛艦隊司令官 |
|
11 |
佐藤文雄 |
1967年7月1日 1968年12月31日 |
海兵59期 |
大湊地方総監 |
退職 |
|
12 |
竹山百合人 |
1969年1月1日 1970年6月30日 |
海兵61期 |
海上自衛隊第1術科学校長 |
|
13 |
北村謙一 |
1970年7月1日 1972年3月15日 |
海兵64期 |
護衛艦隊司令官 |
自衛艦隊司令官 |
|
14 |
石隈辰彦 |
1972年3月16日 1973年11月30日 |
海兵65期 |
退職 |
|
15 |
安永 稔 |
1973年12月1日 1975年3月16日 |
海機47期 |
大湊地方総監 |
|
16 |
須藤吉樹 |
1975年3月17日 1976年5月16日 |
海経28期 |
海上幕僚副長 |
|
17 |
宮田敬助 |
1976年5月17日 1977年6月30日 |
海兵69期 |
|
18 |
時 忠俊 |
1977年7月1日 1978年6月30日 |
海機50期 |
|
19 |
常廣栄一 |
1978年7月1日 1980年2月14日 |
海兵71期 |
統合幕僚会議事務局長 兼 統合幕僚学校長 |
|
20 |
佐藤文夫 |
1980年2月15日 1981年6月30日 |
海兵73期 |
舞鶴地方総監 |
|
21 |
穗積釮彦 |
1981年7月1日 1982年6月30日 |
海兵74期 |
海上幕僚副長 |
|
22 |
片桐宏平 |
1982年7月1日 1984年1月16日 |
海上自衛隊幹部学校長 |
|
23 |
安陪祐三 |
1984年1月17日 1985年7月31日 |
海兵75期 |
佐世保地方総監 |
|
24 |
沖 為雄 |
1985年8月1日 1986年6月16日 |
立教大・ 1期幹候 |
海上自衛隊幹部学校長 |
|
25 |
東山収一郎 |
1986年6月17日 1987年7月6日 |
東京水産大・ 4期幹候 |
航空集団司令官 |
海上幕僚長 |
|
26 |
寺井愛宕[注釈 1] |
1987年7月7日 1989年8月30日 |
海保大2期・ 6期幹候 |
退職 |
|
27 |
後藤 理 |
1989年8月31日 1991年3月15日 |
防大1期 |
海上幕僚副長 |
|
28 |
原田政昭 |
1991年3月16日 1993年3月23日 |
防大3期 |
|
29 |
福地建夫[注釈 2] |
1993年3月24日 1994年12月14日 |
防大5期 |
海上自衛隊幹部学校長 |
海上幕僚長 |
|
30 |
佐藤 雅 |
1994年12月15日 1996年3月24日 |
海保大7期・ 12期幹候 |
呉地方総監 |
退職 |
|
31 |
山本安正 |
1996年3月25日 1997年10月12日 |
防大7期 |
統合幕僚会議事務局長 |
海上幕僚長 |
|
32 |
古澤忠彦 |
1997年10月13日 1998年12月7日 |
防大8期 |
退職 |
|
33 |
坂部邦夫 |
1998年12月8日 2001年1月10日 |
防大10期 |
舞鶴地方総監 |
|
34 |
福谷 薫 |
2001年1月11日 2002年7月31日 |
防大12期 |
海上自衛隊幹部学校長 |
|
35 |
齋藤隆 |
2002年8月1日 2005年1月11日 |
防大14期 |
舞鶴地方総監 |
海上幕僚長 |
|
36 |
吉川榮治 |
2005年1月12日 2006年8月3日 |
防大15期 |
大湊地方総監 |
|
37 |
荒川堯一 |
2006年8月4日 2007年11月1日 |
防大16期 |
海上幕僚副長 |
退職 |
|
38 |
半田謙次郎 |
2007年11月2日 2009年3月23日 |
防大17期 |
呉地方総監 |
|
39 |
松岡貞義 |
2009年3月24日 2010年7月25日 |
防大18期 |
航空集団司令官 |
|
40 |
高嶋博視 |
2010年7月26日 2011年8月4日 |
防大19期 |
統合幕僚副長 |
|
41 |
河村克則[注釈 3] |
2011年8月5日 2012年7月25日 |
防大21期 |
海上幕僚副長 |
退職 |
|
42 |
武居智久 |
2012年7月26日 2014年10月13日 |
防大23期 |
海上幕僚長 |
|
43 |
井上力 |
2014年10月14日 2015年11月30日 |
防大24期 |
舞鶴地方総監 |
退職 |
|
44 |
堂下哲郎 |
2015年12月1日 2016年12月21日 |
防大26期 |
|
45 |
道満誠一 |
2016年12月22日 2018年3月26日 |
潜水艦隊司令官 |
|
46 |
渡邊剛次郎 |
2018年3月27日 2019年12月19日 |
防大29期 |
教育航空集団司令官 |
|
47 |
杉本孝幸 |
2019年12月20日 2020年12月21日 |
呉地方総監 |
|
48 |
酒井良 |
2020年12月22日 2022年3月29日 |
防大31期 |
海上幕僚長 |
|
49 |
乾悦久 |
2022年3月30日 2023年8月28日 |
大湊地方総監 |
退職 |
|
50 |
伊藤弘 |
2023年8月29日 2024年8月1日 |
防大32期 |
呉地方総監 |
退職 |
|
51 |
真殿知彦 |
2024年8月2日 |
防大33期 |
海上幕僚副長 |
|
|
脚注
注釈
- ^ 第4代横須賀地方総監・寺井義守の長男
- ^ 第5代横須賀地方総監・福地誠夫の次男
- ^ たちかぜ自衛官いじめ自殺事件における情報隠蔽を見過ごした責任により注意処分を受け退官
出典
参考文献
- 『世界の艦船』第462号 特集・横須賀地方隊(海人社、1993年3月号)
関連項目
外部リンク
海上自衛隊 Japan Maritime Self-Defense Force |
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幕僚機関 | | |
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主要部隊 |
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主要機関 |
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主要基地 | |
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歴史・伝統 |
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その他 | |
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