グアリコ (学名 Gualicho)は獣脚類恐竜の属の一つ。模式種はグアリコ・シンヤエ(Gualicho shinyae)である。当時ゴンドワナ大陸の一部を形成していた、現在でいう北パタゴニアにあたる地域に生息していた。化石はウインクル層(前期白亜紀セノマニアン期後期からチューロニアン期前期、約9300万年前前後)から知られる。
有名なティラノサウルスのように、グアリコは二本指の退化した前肢を持っていた。この事は、グアリコがカルノサウルス類であるという事を前提として、ティラノサウルス類やアベリサウルス類に起こった前肢の退化がカルノサウルス類においても同様に起こっていたことを意味する[1]。
2007年2月、フィールド自然史博物館のプレパレーター、新谷明子はエゼキエル・ラモス・メシア・ダムの西、ビオランテサイトで新種の獣脚類の骨格を発見した。2016年、その標本はマコヴィッキーらによって命名・記載された。属名はマプチェ神話やテュエルチェ文化における悪魔のような存在であるグアリチュを意味する。種小名は発見者、新谷への献名である[2]。
ホロタイプ MPCN PV 0001 は、頭骨を欠く部分骨格で成る。それは四つの胴椎、三つの中部尾椎、肋骨、腹肋骨、左の肩甲骨、左前肢、右前腕、両方の恥骨の遠位端、右の大腿骨、左の大腿骨の遠位端、右の脛骨および腓骨の近位端、中足骨要素、三つの右足の末節骨で構成される。ほとんどの骨は発見された時、本来の解剖学的な位置のままだったが、大部分は風化によって破損していた[2]。
グアリコは、胴椎の類似から同じくウインクル層のビオランテサイトから発見されたメガラプトラに属するアオニラプトルのシノニムである事が示唆されている[3][4]。しかしながら、アオニラプトルは国際命名規約の要項を満たしていないため無効名である[5]。
グアリコの系統解析では、メガラプトラとネオヴェナトル類について二つの可能性が示唆されている。一つはそれらがカルカロドントサウルス科である可能性、もう一つはそれらがカルノサウルス類よりもコエルロサウルス類に近縁である可能性である[2]。
以下のクラドグラムは2016年のマコヴィッキーらによる分析に基づく[2]。
メトリアカントサウルス科
アロサウルス科
カルカロドントサウルス科
デルタドロメウス
グアリコ
ネオヴェナトル
キランタイサウルス
メガラプトラ
以下のクラドグラムは2018年のポルフィリらによって発見された12の最も節約的な系統樹の厳密な平均結果に従う [6]。また、結果は異なるが、方法論の分析は、2016年の Apesteguiaらの分析と実質的に同一である。その分析でサンプリングされなかった2つのメガラプトラ、トラタイェニアとムルスラプトルが組み込まれているという事のみが異なる[2]。
エオカルカリア
コンカヴェナトル
アクロカントサウルス
アロサウルス
シンラプトル
モノロフォサウルス
シャオキロン
カルカロドントサウルス
ティラノティタン
マプサウルス
ギガノトサウルス
フクイラプトル
ムルスラプトル
トラタイェニア
メガラプトル
アエロステオン
アウストラロヴェナトル
オルコラプトル
ティラノラプトラ
Cau (2024)は獣脚類の類縁関係のレビューにおいて、グアリコをデルタドロメウスの姉妹群とし、両分類群をともにエラフロサウルス亜科(英語版)に配置した[7]。
Calvo et al. (2025)はグアリコの上腕骨を成体のメガラプトルの標本を含む他のメガラプトル類のものと比較し、重大な形態学的差異があるため両分類群が近縁でないと結論した。またCalvo et al. (2025)はグアリコの上腕骨の形態がコエルロサウルス類の様々な分類群と数多くの類似性を共有していることを指摘し、特定の分岐群へ確証を持ってグアリコを分類できないとした[8]。