ダスプレトサウルス族 (ダスプレトサウルスぞく、学名 :Daspletosaurini )は、後期白亜紀 カンパニアン中期 にララミディア大陸 に生息していたティラノサウルス亜科 の族 。ダスプレトサウルス とタナトテリステス で構成されている。ある時点では、それらはすべてダスプレトサウルス・トロススの標本として割り当てられていたが、2017年 以降のいくつかの論文 では、それらが別の種 であることが判明した。これらの研究では、ダスプレトサウルス族の分類群に含まれるか、ティラノサウルスに至るティラノサウルス亜科の系統に関して側系統群 に含まれるかにかかわらず、このグループの無系統性が見出されたが[1] [2] [3] 、2023年 の研究では、形態学 的及び層序学 的データに基づいてこの説に反論している[4] 。
概要
ダスプレトサウルス3種とタナトテリステスとヒト との大きさの比較図
ダスプレトサウルス族は全長約9メートルに達する大型の肉食恐竜だった[1] 。ただし、ティラノサウルス などの属は全長12メートルを超えることもあるため、ダスプレトサウルス族は最大のティラノサウルス科ではなかった[5] 。
ダスプレトサウルス族は、前眼窩前腹側の上顎骨 の非常に粗い皮下表面の存在などの特徴をもっている。上顎 の狭窄した頬骨枝。上顎の前腹側の隅は、最初の2つの歯槽の歯槽縁と皮下表面の前縁の間で測定した場合、先細って65°未満の浅い角度をなす。前頭前板は背側から見ると幅が広く、前側から見ると背内側に強く弧を描いている。歯顎は第3歯槽または第3歯間板の腹側に位置し、14本以上の上顎歯を有している[2] 。
分類
2020年のタナトテリステスの論文では、Vorisらはダスプレトサウルス族をティラノサウルス科 内の新しい族として、ズケンティラヌス 、タルボサウルス 、ティラノサウルスからなる亜科の姉妹分類群として設立した。以下のクラドグラム は、Vorisらによって実行された系統解析の結果を示している[2] 。
2022年、Warshaw & Fowlerは、ダスプレトサウルスの3種が、ズケンティラヌス、タルボサウルス、ティラノサウルスにつながる系統のティラノサウルス科での成長過程を経て進化したと提唱した。化石が断片的なため、タナトテリステスとナヌークサウルスはこの系統から除外された。以下のクラドグラムは、Warshaw & Fowlerが2022年に発表した系統解析の結果を示している[3] 。
2023年、ScherrとVoiculescu-Holvadは、ダイナソーパーク累層 とオールドマン累層 のダスプレトサウルス・トロスス、ダスプレトサウルス・ウィルソニ、及び無名種の層序範囲は明らかな重複を示しており、ダスプレトサウルスの全種が進化のある時点で互いに同時期であったことから、属内の種分化の主要因は無原因ではない可能性を示していると主張した。系統学的解析の結果、ダスプレトサウルス・ホルネリは、層序的には最も新しい種にもかかわらず、最も基盤的な位置する種であることが判明した。著者らは、中間的な形態学的特徴から、無原因進化がダスプレトサウルスの進化の主な原動力であった可能性を完全には否定しなかったが、ダスプレトサウルス・ウィルソニはダスプレトサウルス・トロススのジュニアシノニム である可能性も示唆した。また、ダスプレトサウルスがタナトテリステスから進化したのではないと主張したが、これは形態学的、層序学的データに基づく裏付けが見つからなかったためであり、形態学的変異があまり見られない化石記録の性質と限られた標本のため、無原因進化が明確に裏付けられることはないかった。系統分析のために提示されたクラドグラムを以下に示す[4] 。
脚注
^ a b Carr, Thomas D.; Varricchio, David J.; Sedlmayr, Jayc C.; Roberts, Eric M.; Moore, Jason R. (2017). “A new tyrannosaur with evidence for anagenesis and crocodile-like facial sensory system” . Scientific Reports 7 : 44942. Bibcode : 2017NatSR...744942C . doi :10.1038/srep44942 . PMC 5372470 . PMID 28358353 . https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5372470/ .
^ a b c Voris, Jared T.; Therrien, Francois; Zelenitzky, Darla K.; Brown, Caleb M. (2020). “A new tyrannosaurine (Theropoda: Tyrannosauridae) from the Campanian Foremost Formation of Alberta, Canada, provides insight into the evolution and biogeography of tyrannosaurids”. Cretaceous Research 110 : 104388. doi :10.1016/j.cretres.2020.104388 .
^ a b Warshaw, Elías A.; Fowler, Denver W. (2022). “A transitional species of Daspletosaurus Russell, 1970 from the Judith River Formation of eastern Montana” . PeerJ 10 : e14461. doi :10.7717/peerj.14461 . https://peerj.com/articles/14461 .
^ a b Scherer, Charlie Roger; Voiculescu-Holvad, Christian (2023-11-28). “Re-analysis of a dataset refutes claims of anagenesis within Tyrannosaurus -line tyrannosaurines (Theropoda, Tyrannosauridae)” . Cretaceous Research (In press): 105780. doi :10.1016/j.cretres.2023.105780 . ISSN 0195-6671 . https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0195667123003087 .
^ “Dinosaurs: The Most Complete, Up-to-Date Encyclopedia for Dinosaur Lovers of All Ages, Winter 2011 Appendix ” (2011年). 2012年1月13日 閲覧。
関連項目