化石はアルゼンチン西部に分布する上部白亜系下部セノマニアン階のカンデレロス層から産出し[4]、Coria and Salgado, 1995 で記載された[2]。頭骨と体骨格の大部分が知られている[4]。同国のパタゴニアからはギガノトサウルスのボーンベッドが報告されている。この成因として彼らが社会性を持って群れをなしていた、あるいは一時的な集団を形成して狩りを行っていたなど、複数の解釈が可能である[1]。
1997年のインタビューで、コリアは新しい標本に基づいてギガノトサウルスの全長を13.7 - 14.3メートル、体重を8 - 10トンと推定し、カルカロドントサウルスよりも大型であったとした。これについて数少ない不完全な標本に基づいて体サイズを断定するのは難しいとセレノが指摘し、両名は大きさ比較の決定よりも重要な観点があることに同意した[16]。1998年に古生物学者ジョージ・O・カルヴォとコリアは複数の歯を備えた断片的な左歯骨(MUCPv-95)をギガノトサウルスに割り当てた。この標本は1987年に Los Candeleros の近隣で発見され、1988年にカルヴォにより収集されたものであった。カルヴォは1989年に標本を記載し、新しい獣脚類の分類群に属するものかもしれないと指摘していた。両名は、長さ62センチメートルで8%ほど長いことを除いて、歯骨がギガノトサウルスのホロタイプ標本のものと区別できないことを発見した。歯骨の後側は不完全であったが、彼らはホロタイプ標本の頭骨長を約1.8メートル、より大型の標本の頭骨長を1.95メートルと推定し、獣脚類の中で最も長い頭骨とした[17][18][19]。
1999年、カルヴォは不完全な歯(MUCPv-52)をギガノトサウルスに割り当てた。この標本は1987年にA・デルガドにより Lake Ezequiel Ramos Mexia の近隣で発見されたもので、従ってギガノトサウルス属の標本では最初に発見されたものということになる。また、カルヴォは複数の獣脚類の足痕化石が大きさに基づけばギガノトサウルスのものであると提唱した。最大の足痕は長さ50センチメートルで間隔が130センチメートル、最小のものは長さ36センチメートルで間隔100センチメートルであった。足跡からは趾行性であったことと大型の趾骨が存在したことが示唆され、また卓越した鉤爪の跡も確認された。趾骨の印象化石は足跡の長さの大部分を占めており、ある足痕は指よりも後方の部分が薄かった。これらの足跡化石はギガノトサウルスの主要な化石よりも高い層序水準から発見されているものの、ギガノトサウルスおよびそれと同じ地層から産出する歯化石や竜脚類恐竜と同じ地層から産出している[18]。
体格に関する議論
2001年、物理学者の Frank Seebacher は3次元方向の大きさを変数に用いる恐竜の体重推定計算の新しい多項式法を提唱し、12.5メートルという当初の推定に基づいてギガノトサウルスの体重を6.6トンと見積った[20]。コリアとカリーは2002年にギガノトサウルスの脳頭蓋を記載し、その際にホロタイプの頭骨長を1.6メートルと見積り、大腿骨体の周囲長520ミリメートルを外挿することで体重を4.2トンと推定した。脳化指数は1.9であった[9]。2004年、古生物学者 Gerardo V. Mazzetta らは、ギガノトサウルスの大腿骨がスーのものよりも大きい一方で脛骨が8センチメートル短い1.12メートルであることを指摘した。彼らはホロタイプ標本をティラノサウルスと同等の大きさで、体重は8トン(スーよりも僅かに軽い)とした。しかし同時に、より大型の歯骨は、等比数列的にホロタイプ標本と類似するのであれば、同様に推定した場合体重10トンの個体のものである可能性が浮上した。多変量回帰分析を行うことにより、彼らはホロタイプ標本を6.5トン、大型の標本8.2トンと見積る、別の推定値も算出した。この場合、後者は陸上の動物食性動物において史上最大ということになる[21]。
2005年に古生物学者のクリスティアーノ・ダル・サッソ(英語版)らは、オリジナルの化石が同様に第二次世界大戦で破壊されていたスピノサウルスの新しい吻部の化石を記載し、全長16 - 18メートル、体重7 - 9トンと結論付け、他の度の獣脚類の最大値をも上回るとした[22]。2006年にコリアとカリーは、パタゴニアからギガノトサウルスに近縁で体サイズも近いマプサウルスを記載した[23]。2007年には、古生物学者 François Therrien と Donald M. Henderson がギガノトサウルスとカルカロドントサウルスのいずれも全長13.5メートル、体重13.8トン(ティラノサウルスを超過)であったとし、ギガノトサウルスのホロタイプ頭骨長を1.56メートルと推定した。ただし彼らは、この測定値が不完全な頭骨の復元のされ方に依存しており、より正確な推定値を得るにはより完全な標本が必要であることを指摘している。また、彼らはダル・サッソらのスピノサウルスの復元が余りにも大きすぎるとし、全長14.3メートル(最低12.6メートル)、体重20.9トン(最低12トン)と見積った。彼らは、これらの恐竜が厳密な二足歩行の動物における生物機能学的な上限に到達していると結論付けた[24]。2010年には、古生物学者グレゴリー・ポールはカルカロドントサウルス類の頭骨が余りに長く復元され過ぎていると提唱した[25]。
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