"Who Do You Think You Are?"(フー・ドゥ・ユー・シンク・ユー・アー?)は、2004年からBBCで放送が開始された、家族史を扱ったイギリスのドキュメンタリー番組。番組では、各回ゲストの有名人が自分の家族史に向き合う。制作はウォール・トゥ・ウォール・メディア(英語版)が担当している[1][2]。高視聴率番組でもあり、600万人を超える視聴者を記録したこともある[3]。同名の海外版も10ヶ国以上で制作されている。略称は頭文字を取った "WDYTYA?" である[4]。
スプリンガーはイングランドで生まれ幼い頃にアメリカへ移住した人物で、イギリスを旅しながら1939年8月に両親がナチス・ドイツからの難民として逃れてきた歴史を辿る。彼は、イングランドで両親の保証人になり50ポンド[注釈 4]を支払った人物がいることを知るが、両親以外の家族は見捨てられ亡くなった。彼は続いて曾祖父の故郷ノイシュテティン(独: Neustettin、現ポーランド・シュチェチネク(英語版))を訪れ、反ユダヤ人的政治家エルンスト・ヘンリチ(英語版)が暴力沙汰を起こした後、曾祖父のアーブラハム・シュプリンガー(独: Abraham Springer)[注釈 5]が働きかけて外部からの支援を勝ち取ったことを知る。スプリンガーは母方の祖母マリー・カルマン(独: Marie Kallmann)が強制送還されたウッチ・ゲットーを訪ねる。彼女は1942年5月にヘウムノ強制収容所へ送られた。またスプリンガーの父方の祖母ゼルマ・シュプリンガー(独: Selma Springer)は、テレージエンシュタットで亡くなっている。
カーワンは成長後、自分とアイルランドの英雄マイケル・コリンズに繋がりがあることを知ったが、それがどのようなものなのかまでは知らなかった。彼女は母方の祖父の母マーガレット・コリンズ・オドリスコル(英: Margaret Collins O'Driscoll、カーワンの曾祖母)とコリンズがきょうだいだったことを知る。また、コリンズの生誕地であるコーク県クロナキルティ(英語版)を旅する。カーワンは、アイルランド共和軍 (IRA) に参加していた祖父フィニアン・オドリスコル(英: Finian O'Driscoll)がどんな活動をしていたか探る。父方の家系を遡ると、曾祖父ヘンリー・カーン(英: Henry Kahn)は、ロシア帝国からやって来たポーランド系ユダヤ人で、19世紀末にアイルランドのカトリック女性と結婚するため祖国を捨てたことが分かる。カーワンは、カトリック教会がふたりの結婚を拒んだため、曾祖父母がプロテスタントのアイルランド聖公会で結婚式を挙げたことに驚く。
ペンリー=ジョーンズはインドを旅し、家族がインドにルーツを持つという噂を確かめようとする。彼の5代前に当たるトーマス・ジョンストン(英: Thomas Johnstone)は、ロイヤル・マドラス・フュージリアーズ (Royal Madras Fusiliers) の特務曹長で、イギリスによるインド大反乱鎮圧に従事していた。彼はジョンストンの妻ルイーザ・コラム(英: Louisa Collum)がイギリス・インドのハーフだったことを突き止める。
ローリングは母親の父方の曾祖父に当たるルイ・ヴォラン(仏: Louis Volant)について調べる。彼はフランス人の給仕頭で、1920年代にはサヴォイ・ホテルで働いていた。ヴォランは、第一次世界大戦の戦功が認められ、戦功十字章(英語版)を受けた。ローリングはパリでメイドとして働きつつ、未婚でヴォランを生んだ母サロメ・シューシュ(仏: Salomée Schuch)についても調べる。彼女は17歳の時、普仏戦争中にドイツ帝国の一部となった故郷アルザス・ブリュマトを離れた。その後、彼女はルイの父と結婚し、帰化してフランスの国籍を得た。
カトリック教会の迫害から逃れてきたユグノーにルーツを持つジャコビは、フランスを旅して、プロテスタントだった祖先が受けた迫害の恐怖を探る。6代前のジョゼフ・デ・ラ・プレーニュ(仏: Joseph de la Plaigne)はルイ14世の優れた財務官で、1685年のナントの勅令廃止以来隠れプロテスタントとして生きた。彼は信仰が暴かれたことで、1701年に王によりロシュ城へ投獄される。翌年、彼は賄賂を渡して脱獄し、ロンドンへ逃げたと考えられている。デ・ラ・プレーニュは死の2年前の1708年、70歳の時に、同じユグノーのサロメ・デ・ラ・バスティード(仏: Salomé de la Bastide)と結婚した。彼女はアーマンド・デ・ラ・バスティード大佐(仏: Colonel Armand de la Bastide)のきょうだいで、デ・ラ・プレーニュの45歳年下だった。ふたりの間には1709年に息子ギヨームが生まれ、ウィリアム・キャヴェンディッシュ (第2代デヴォンシャー公爵)を名付け親として洗礼を受けた。彼は後に、イギリス風に「ウィリアム・ラプレイン」(英: William Laplain)と名前を変え、デヴォンシャー公爵家の司祭を務めた。
デ・ラ・トゥーアは貴族の血を引いている。彼女の6代前に当たるマリア・エリザベス・アダーレイ(英: Maria Elizabeth Adderley)は、ロバート・ホバート (第4代バッキンガムシャー伯爵)の養女で、1796年にアラン・ハイド・ガードナー (第2代ガードナー男爵)(英語版)と結婚した。夫婦は、1805年に、ストラスモア伯爵の甥であるヘンリー・ジェイディス(英: Henry Jadis)とマリアの情事がガードナーに露見したことで離婚する。ガードナー男爵夫人はジェイディスとの間に非嫡出子であるヘンリー・フェントン・ガードナー(英: Henry Fenton Gardner、1802年生まれ)を儲けた。ヘンリーは、自分にはガードナー家の爵位を継ぐ権利があると主張し(英: The Gardner Peerage Case、ガードナー爵位事件の意味)、この後1825年に貴族院から非嫡出子と宣言された。デ・ラ・トゥーアはジェイディスの母で、ジョン・デラヴァル (初代デラヴァル男爵)の娘だったソフィア・アン(英: the Hon. Sophia Ann)の足跡を辿るため、リンカンシャーのドディントン・ホール(英語版)やシートン・デラヴァル・ホールを訪れる。デ・ラ・トゥーアはこの旅で、ソフィアが結婚前に子どもを身籠もっていたこと、そして彼女の身分に相応しくないジョン・ジュディスという男と急ぎ結婚したという悲劇を聞かされる。呑んだくれのジェイディスからの暴力を受け、ソフィアは彼と離婚したが、これにより村八分にされてしまった。彼女はアヘンチンキ中毒に陥り、38歳で亡くなっている。
ホルデンは母方にフランス系のルーツがあるという噂を調べる。彼女は7代前のコリン・トーマス(英: Collin Thomas)が、コードウェイナー(英語版)(革靴を作る職人)見習いとして働いた後、15歳でイギリス海軍に入隊したことで1年間投獄されていた。10年後、半島戦争で英国軍として戦っていた時、彼はフランス人女性と出会い、南西フランスのボルドー近郊で家庭を持つ。その後、トーマスは妻と1番上の子どもを連れてコーンウォールの家へ戻った。ホルデンはまた、父方の祖父で精神科の看護師だったフランク・ホルデン(英: Frank Holden)が、1940年6月のランカストリア沈没の生存者だったことを知る。この船は、サン=ナゼールの港外で爆撃を受けて沈没し、多数の死者を出した。
番組の調査で、父方の家系がタインサイド(英語版)出身であること、またシェリルの先祖には大勢の炭鉱夫がいたことが分かる。さらに遡って父方の家系のある分家を調べている時に、調査員は彼女の先祖に数人の水夫が含まれていることに気付く。次に母方の家系を調べると、彼女の祖母であるオルガ・リドリー(英: Olga Ridley)は、イーディス・アニー・バートン(英: Edith Annie Burton)の産んだ双子のひとりと分かる。バートンは、男やもめで妻の遺児もいるジョゼフ・リドリー(英: Joseph Ridley)という男性の家政婦として働いていた。リドリーは第一次世界大戦中、フランスでダラム軽歩兵隊(英語版)所属の工兵 (pioneer) として働いた。また、国政調査より、戦前は食糧雑貨の卸売商人として働いていたことが分かる。
番組DVDは、シリーズ11分までがイギリス(リージョン2)で発売されている。2007年10月には、BBCマガジン (en) から、テレビシリーズの内容を月刊で刊行する雑誌 "Who Do You Think You Are? Magazine" の出版が開始された。また、シリーズ1から4までのボックスセットがアコーン・メディアUK(英語版)より発売されている[42]。
NBC放送のアメリカ版(英語版)は、2010年3月5日に初放送され、同年6月13日にはBBC Oneでも放送された。同じ年にはオランダ版の "Verborgen Verleden"(意味:隠された過去)が放送開始され、2010年から2013年にかけて、各8話の4シリーズが放送された。また2005年から2008年にかけて、同じくオランダのテレビ局で、"Verre Verwanten"(意味:遠い親戚)という番組も放送されている。2010年9月には、デンマークのテレビ局デンマーク放送協会が、"Ved du hvem du er?" (en) と銘打ったデンマーク版の第1シリーズを放送した。2010年9月1日には、フランス2でフランス版 "Retour aux Sources" 2エピソードが放送され、ヴァンサン・ペレーズ、クレメンティーネ・セラリー(英語版)が特集された[50]。
2011年1月、ノルウェーのテレビ局ノルウェー放送協会は、ノルウェー版の "Hvem tror du at du er?" 放送を開始した。
2012年1月9日から、フィンランド国営放送でフィンランド版 "Kuka oikein olet?" の放送が始まり、地元の有名人に焦点を当てて15エピソードが放送された[51]。