Dは、ラテン文字(アルファベット)の4番目の文字。ギリシャ文字のΔ(デルタ)に由来し、キリル文字のДに相当する。小文字は d 。
字形
大きく分けて2つの字形が使われる。
- 縦線の右に半円を1つ続けた形で、大文字がそうである。フラクトゥールではのようである。しばしばOやPやbとの区別のため縦線に横棒を加えてÐのように書くことがある。また、アイスランド語、フェロー語のÐ ð、並びに南スラヴ諸語やベトナム語の Đ đ、エヴェ語のƉ ɖは別の字である。
- 縦線の下部の左に円を1つ付けた形で、小文字がそうである。フラクトゥールののように、しばしば上に延びた線が左に曲がることがあるが、この場合、線が折り返してはならず、また円との接点より下には線が続いていてはならない。そうでないとaと区別が付かなくなる。
呼称
音素
この文字が表す音素は、[d](有声歯茎破裂音)ないしその類似の歯茎音である。
- ドイツ語では語末や無声子音の前で無声化する。そのため、母音の前であってもこの[t](無声歯茎破裂音)を表す事がある (例:zweitausendeins)。
- フランス語では語末の d を黙字とする(一部例外あり)。ただし、後続の単語が母音で始まっていれば、リエゾンして[t]となる([d]とはならない)。
- 英語では、規則動詞の過去形の語尾-edは、その前の音により[d]、[t]、[Id]などと変化する。
- 中国語やその方言のピンインでは無気の[t](無声歯茎破裂音)を表す。
- 中国南方の方言では、広東省教育部門式の広東語ローマ字のように歯茎内破音[t̚]を表す例もある。
- ベトナム語では有声歯茎摩擦音の[z]を表す。ただし、南部方言では硬口蓋接近音の[j]で発音される。「Đ」や「đ」が声門閉鎖を伴う有声歯茎破裂音の[ʔd]または歯茎入破音[ɗ]を表す。
- 日本語のローマ字表記では訓令式、ヘボン式共にダ行(タ行濁音)の子音に用いられる。ただし、「ぢ」「づ」は「じ」「ず」と同じ発音のため、それぞれ「JI」、「ZU」となる。日本式やIMEにおけるローマ字入力では、「ぢ」「づ」も含めた全てのダ行に用いられる。
- 朝鮮語のローマ字表記である文化観光部2000年式では有声音、無声音に関わらず初声のㄷに用いられる。マッキューン=ライシャワー式では有声で発音されるㄷに用いられる。
Dの意味
学術的な記号・単位
- 数学
- 五百を意味する数字。ローマ数字で用いる。
- 十三を意味する数字。十六進法や二十進法など、十四進法以上(参照: 位取り記数法#Nが十を超過) において十三(十進法の13)を一桁で表すために用いられる。
- "differential"(微分)の頭文字として、数学では微分関連の記号としてよく使われる。(例)dy/dx, 微分作用素 D, (余)鎖複体の微分 d
- 数学では、一般に既知の数、集合、行列等を示す、A, B, Cに次ぐ文字として、また判別式を示す文字として用いられる。
- 円の直径(diameter)
- 数学・自然科学では差 (difference)、距離 (distance)、次数 (degree) や 次元 (dimension) を示す文字として用いられる。
- 単位
- その他
- 導来圏
- ドイツ語で与格(間接目的語を表す格)Dativの略。
- 電界効果トランジスタ(FET)の端子の一つ。ドレイン (drain)
- ダイオード (diode)
- 洋楽で用いられる音名の一つ(英米式、独式)。イタリア式では「re」、日本式では「ニ」に相当。→ニ (音名)
- 音階の2番目の音であることから、音楽関係者の間で2を表す隠語として使われる。例:D(デー)万=2万(円)
- Dで、ドイッチュ番号(シューベルトの作品に付せられる)
- Rh血液型における抗原の一つ。これにより、+と−とが判定される。
- 電磁気学の分野では電束密度を表す。
- ケッペンの気候区分の冷帯(亜寒帯)を表すD。
- 水素の同位体重水素(deuterium)を表す記号(D:大文字)。
- 化学で、キラリティーのある分子を識別する記号 (dextro)。
- 遅延スイッチ。構内電気設備配線用図記号(JIS C 0303:2000)で用いられる。スイッチの図記号に傍記。
- 博士号 (doctor) の略。D1と表記されれば博士課程1年生の意。
- 没年 (Death year) の略字として使われる。d. 1945と表記されれば1945年没の意。
- 経済学で、需要(Demand)。
その他の記号
- 日(day)
- 自動車のATのドライブ(前進及び通常走行位置)。
- ダイニング(dining 食事)の略。
- ダイニングルーム(食堂 食事室)
- 鉄道車両の用途を表す副記号で、食堂車を表す(2階建て車と区別するため大文字で書く)。
- 鉄道車両の用途を表す副記号で、2階建車両を表す(食堂車と区別するため小文字で書く)。
- デザイナー (designer) の略。
- 古代ローマ人の個人名デキムス (Decimus) の略。
- テレビ・ラジオの放送業界や、音楽業界などでのディレクターの意味。
- 二重を意味するdoubleの略。日本ではこの意味でWが使われることもあるが、英語圏では用いられない(詳しくはWの記事を参照)。
- 欧米のアスキーアートにおいて、しばしば空けた口を意味する。(例 :-D)
- 欧州の自動車のカテゴリー、全長を基準に設定されている記号。Dセグメント。
- 「デルタ」フォネティックコードの第四コード。
- デジタルの略。DA変換など。
商品名・作品名・固有名等
- コンピュータ
- 電気・機械
- 作品・キャラクター名等
- 芸能・スポーツ
- その他
符号位置
大文字 |
Unicode |
JIS X 0213 |
文字参照 |
小文字 |
Unicode |
JIS X 0213 |
文字参照 |
備考
|
D
|
U+0044
|
1-3-36
|
D
D
|
d
|
U+0064
|
1-3-68
|
d
d
|
半角
|
D
|
U+FF24
|
1-3-36
|
D
D
|
d
|
U+FF44
|
1-3-68
|
d
d
|
全角
|
Ⓓ
|
U+24B9
|
‐
|
Ⓓ
Ⓓ
|
ⓓ
|
U+24D3
|
1-12-36
|
ⓓ
ⓓ
|
丸囲み
|
🄓
|
U+1F113
|
‐
|
🄓
🄓
|
⒟
|
U+249F
|
‐
|
⒟
⒟
|
括弧付き
|
ᴰ
|
U+1D30
|
‐
|
ᴰ
ᴰ
|
ᵈ
|
U+1D48
|
‐
|
ᵈ
ᵈ
|
上付き文字
|
𝐃
|
U+1D403
|
‐
|
𝐃
𝐃
|
𝐝
|
U+1D41D
|
‐
|
𝐝
𝐝
|
太字
|
𝐷
|
U+1D437
|
‐
|
𝐷
𝐷
|
𝑑
|
U+1D451
|
‐
|
𝑑
𝑑
|
イタリック体
|
𝑫
|
U+1D46B
|
‐
|
𝑫
𝑫
|
𝒅
|
U+1D485
|
‐
|
𝒅
𝒅
|
イタリック体太字
|
𝒟
|
U+1D49F
|
‐
|
𝒟
𝒟
|
𝒹
|
U+1D4B9
|
‐
|
𝒹
𝒹
|
筆記体
|
𝓓
|
U+1D4D3
|
‐
|
𝓓
𝓓
|
𝓭
|
U+1D4ED
|
‐
|
𝓭
𝓭
|
筆記体太字
|
𝔇
|
U+1D507
|
‐
|
𝔇
𝔇
|
𝔡
|
U+1D521
|
‐
|
𝔡
𝔡
|
フラクトゥール
|
𝔻
|
U+1D53B
|
‐
|
𝔻
𝔻
|
𝕕
|
U+1D555
|
‐
|
𝕕
𝕕
|
黒板太字
|
ⅅ
|
U+2145
|
‐
|
ⅅ
ⅅ
|
ⅆ
|
U+2146
|
‐
|
ⅆ
ⅆ
|
黒板太字イタリック
|
𝕯
|
U+1D56F
|
‐
|
𝕯
𝕯
|
𝖉
|
U+1D589
|
‐
|
𝖉
𝖉
|
フラクトゥール太字
|
𝖣
|
U+1D5A3
|
‐
|
𝖣
𝖣
|
𝖽
|
U+1D5BD
|
‐
|
𝖽
𝖽
|
サンセリフ
|
𝗗
|
U+1D5D7
|
‐
|
𝗗
𝗗
|
𝗱
|
U+1D5F1
|
‐
|
𝗱
𝗱
|
サンセリフ太字
|
𝘋
|
U+1D60B
|
‐
|
𝘋
𝘋
|
𝘥
|
U+1D625
|
‐
|
𝘥
𝘥
|
サンセリフイタリック
|
𝘿
|
U+1D63F
|
‐
|
𝘿
𝘿
|
𝙙
|
U+1D659
|
‐
|
𝙙
𝙙
|
サンセリフイタリック太字
|
𝙳
|
U+1D673
|
‐
|
𝙳
𝙳
|
𝚍
|
U+1D68D
|
‐
|
𝚍
𝚍
|
等幅フォント
|
Ⅾ
|
U+216E
|
1-3-36
|
Ⅾ
Ⅾ
|
ⅾ
|
U+217E
|
1-3-68
|
ⅾ
ⅾ
|
ローマ数字500
|
記号 |
Unicode |
JIS X 0213 |
文字参照 |
名称
|
ᴅ |
U+1D05 |
‐ |
ᴅ
ᴅ |
LATIN LETTER SMALL CAPITAL D
|
🄳 |
U+1F133 |
‐ |
🄳
🄳 |
SQUARED LATIN CAPITAL LETTER D
|
🅓 |
U+1F153 |
‐ |
🅓
🅓 |
NEGATIVE CIRCLED LATIN CAPITAL LETTER D
|
🅳 |
U+1F173 |
‐ |
🅳
🅳 |
NEGATIVE SQUARED LATIN CAPITAL LETTER D
|
他の表現法
関連項目
脚注