W は、ラテン文字 (アルファベット )の 23 番目の文字 。小文字は w 。
字形(V を二重化したもの)はU とともにVに由来する[ 注釈 1] 。形の類似した文字にギリシャ文字 のω (オメガ)があるが、全く異なる文字であり、Wは下が尖っているのに対してω は丸い。
英語 名ダブリュー(double U )は「二重のU」の意味だが、ロマンス系の言語 などでは「二重のV」の名で呼んでいる(下記参照)。
その名のとおり、古英語で使われはじめた二重音字 「vv」または「uu」に由来する文字である[ 注釈 2] 。
字形
筆記体
ジュッターリーン体
Vを横に2つ連ねた形であり、大文字、小文字同形である。しばしば2つのVを重ねて(左のVの右斜線と右のVの左斜線を交差させて)書く。V同様、筆記体では下部を丸めて書き、右上で折り返す。フラクトゥール は
W
w
{\displaystyle {\mathfrak {W\ w}}}
。
呼称
二重のV
伊 : doppia vu , doppio vu (ドッピャヴ/ドッピョヴ)
西 : uve doble , ve doble (ウベドブレ/ベドブレ)
葡 : vê dobrado , vê duplo (ヴェードブラド/ヴェードゥプロ)[ 注釈 3]
洪 : dupla vé (ドゥプラヴェー)
羅 : dublu ve (ドゥブルヴェ)
芬 : kaksois vee (カクソイスヴェー)
仏 : double vé (ドゥブルヴェ)
エス :duobla vo , ĝermana vo (ドゥオブラヴォ/ヂェルマーナヴォ(ゲルマン人のV))
二重のU
音素名称
音素
国際音声記号 としては、小文字 [w] は有声両唇軟口蓋接近音 。
各言語 においてこの文字が表す音価は、
イタリア語 、エスペラント語 、スペイン語 、フランス語 、ポルトガル語 などでは外来語にのみ使い、起源によって [w] または [v] (スペイン語では [β] )で発音する。またこれらの言語において [w] は一般に、母音音素 /u/ の異音として解釈できるものである。
インドネシア語 、英語 などでは 有声両唇軟口蓋接近音 [w] 。
英語では、音素 /w/ は後続の短母音を変化させる。ただし、母音の後にさらに軟口蓋音 (/k, ɡ, ŋ/ )がつづく場合にはこの限りではない。
ウェールズ語 では/w/ のほかに母音/ʊ, uː/ をも表す。例:cwm /kʊm/ 「谷」。
オランダ語 では唇歯接近音 [ʋ] (上の歯を下唇に接近させた [w] )を表す。
スラヴ語 でもおおむね [v] で、v と同じ音素を持つ。スラヴ語において、v と w は外来語を除いて片方しか使われない。チェコ語 ・クロアチア語 などでは v を、ポーランド語 などでは w を使い、もう片方は外来語にのみ使われる。
中国語 のピンイン では、介音 /u/ [ŭ] が頭子音 をともなわない(音節頭に来る)場合に用いる。頭子音をともなう場合は u を用い、書き分けを行っている。なお、「五」「烏」など主母音,尾音無しで介音/u/ のみの場合、あくまで発音は/u/ であり半母音/w/ が(たとえば英単語のwoodやwolfなどのようには)発音されるわけではないが、子音(半母音)があるかのようにwuと表記する。
朝鮮語のローマ字表記 では、母音字母の内、発音に/w/ を含むㅘ 、ㅙ 、ㅝ 、ㅞ 、ㅟ はwa、wae、wo、we、wiとなりwを含む。なお、ㅚ も/w/ を含む発音だがoeとなりwを含まない。
ドイツ語 では有声唇歯摩擦音 [v] 。
日本語のローマ字 ではワ行の音写に用いる。ワ行の子音 /w/ は [w] に似るが、母音の/u/ と同様に円唇性が弱い。方言差や話者個人によっても変わるが、実際には後舌と軟口蓋を接近させない両唇接近音 [β̞] として発音されることが多い。 /u/ の標準的な音価を [ɯ] と記すような場合には、これを [ɰ] と記述することがある。なお、訓令式およびヘボン式では「ゐ」「ゑ」「を」は「い」「え」「お」と同じ発音のため、子音無しのi、e、oとなり、実際にwが使われるのは「わ」のwaのみである。日本式では「ゐ」「ゑ」「を」もwi、we、woと表す。IMEにおけるローマ字入力では「を」は通常woになるが、「ゐ」「ゑ」はwyi、wyeと入力する場合や、直接入力出来ないがwi、weと入力して表れる「うぃ」「うぇ」、もしくはi、eと入力して表れる「い」「え」を変換すると候補に出てくるなど、IMEによってまちまちである。
歴史
古代ローマ人の時代のラテン語 では、W の文字は存在せず、/w/ の音素 は V の文字を使って表記していた。しかし、V の文字は/w/ と同時に母音 の/u/ を表しており、さらに英語 などのゲルマン語 には、元来のラテン語にない/v/の音素があったため、V は一文字で 3 音素を表すことになった。そこで、/w/ の音素を表す場合は V を重ねてVVと表記する慣習が生まれ、やがて二つのVが繋がって一つの文字になり 、Wとなった。一方で母音の/u/ を表すにはVの字の底を丸くしたU を用いるようになり、これが各地域に定着した。さらにドイツ語 では /w/ の音素が消滅したため、新しく作られたWの字は/v/ の音素を示すようになった。
語頭に /w/ を含むゲルマン語の語彙がロマンス諸語に伝わると、werra→guerra のように /gw/ に変化した。
W の意味
一般的な略語
西 (w est)。
女性 (w oman)。
幅 (w idth)。
ウエスト (w aist)。人体のサイズを表示するときに、B(バスト)やH(ヒップ)とともによく使われる。
ウェイト (w eight)(体重 )。医療略語。
W eek(週間)の略。主に医学の分野ではよく使われる。例:3W(3週間という意味)。
w orld(世界 )。ワールドカップ (スポーツの国際大会)を「W杯」とするなど。
日本語 では、「二倍の、二つの、二人の」などを意味するダブル(double) の意味で使われる(当て字 )[ 2] 。これは英語名「ダブリュー」(double U )が「ダブル」と音が似ていること(また、俗に「ダブリュー」を「ダブル」と誤って発音されてしまうこともある)が起源である。この表現は日本語独自のもので、本来は誤用であり、日本人 、もしくは、日本語に精通した外国人 以外には当然ながら通じない。英語圏ではdoubleの略としてはD を用いる。
日本におけるインターネット 上のチャット や掲示板 では、笑いを文字表現する際、"w arai"の省略として「w」と表すことがある[ 3] (用例: 面白いねw)。基本的に全角 で、「ワラ」と読むのが一般的。「www」と並べて書くこともあり、草が生えているように見えることから「草」「草生える」「大草原」などと表現されることもある[ 4] 。「芝」という表現もある[ 4] 。
英語の疑問詞における、"Who, What, When, Where, Why"の総称。詳しくは記事「5W1H 」を参照のこと。
一般用照明器具 の取付のうち壁付。構内電気設備配線用図記号 (JIS C 0303:2000) で用いられる。
科学分野
タングステン の元素記号。
物理学 では仕事 、仕事関数 を表す記号として用いられる。
仕事率 (電力 など)の単位 、ワット 。
熱力学 では、まぎらわしさ回避のため速度を v ではなく w と表す。
数学 では、x, y, z に次ぐ第四の未知数に使われる。(小文字)
第二のベクトル空間(大文字)
コクセター群 やワイル群 (大文字)
非SI接頭辞
ウェカ (w eka) (1030 )(大文字)
ウェコ (w eko) (10−30 )(小文字)
ウェクト (w ekto) (10−30 )(小文字) - ジム・ブロワーズ (Jim Blowers) の提案
三十二 を意味する数字。三十六進法 など、三十三進法以上(参照: 位取り記数法#Nが十を超過 ) において三十二(十進法 の32 )を一桁で表すために用いられる。ただし、アルファベットの I と数字の 1 、およびアルファベットの O と数字の 0 が混同し易いために、アルファベットの I と O を用いないことがあり、この場合、J が十八 、K が十九 、…、N が二十二 、P が二十三 、…、W が三十 を意味する。
固有名詞
符号位置
大文字
Unicode
JIS X 0213
文字参照
小文字
Unicode
JIS X 0213
文字参照
備考
W
U+0057
1-3-55
W
W
w
U+0077
1-3-87
w
w
W
U+FF37
1-3-55
W
W
w
U+FF57
1-3-87
w
w
全角
Ⓦ
U+24CC
‐
Ⓦ
Ⓦ
ⓦ
U+24E6
1-12-55
ⓦ
ⓦ
丸囲み
🄦
U+1F126
‐
🄦
🄦
⒲
U+24B2
‐
⒲
⒲
括弧付き
𝐖
U+1D416
‐
𝐖
𝐖
𝐰
U+1D430
‐
𝐰
𝐰
太字
他の表現法
脚注
注釈
^ さらに言えば、VはY とともにギリシャ文字 のΥ (ウプシロン)に由来し、キリル文字 のУ は同系の文字である。Υ (ウプシロン)の別形に由来するF とも同系といえる。
^ 当時 v と u の峻別は存在しなかったと言ってよく、したがって「vv」と「uu」のどちらであったと定めることも難しい。
^ ポルトガル語では「dâblio 」(ダブリォ)と呼称されることもある。また、ブラジルポルトガル語 での呼称は「dáblio 」(ダブリォ)である。
出典
関連項目