2018年のF1世界選手権は、FIAフォーミュラ1世界選手権の第69回大会として開催された。
ドライバーズチャンピオンシップは前年に引き続きメルセデスのルイス・ハミルトン、フェラーリのセバスチャン・ベッテルの2人によって争われた。
序盤はベッテル2連勝で幕を開け、ハミルトンは第4戦アゼルバイジャンGPまで未勝利であったが、サマーブレイクまでには両者とも一進一退の接戦となる。後半戦ハミルトンおよびメルセデス陣営は安定して結果を残したことで一気にリードを広げ、第19戦メキシコGPにてハミルトンのドライバーズチャンピオンが決定した。
ハミルトンはファン・マヌエル・ファンジオとミハエル・シューマッハに続く2年連続5回目のチャンピオン獲得であり、獲得数はファンジオに並ぶ歴代2位タイとなった[1]。
コンストラクターズチャンピオンシップはメルセデスが、21戦中11勝13ポールポジションを獲得し第20戦ブラジルGPで2014年のレギュレーション変更以来、フェラーリに次ぐ5年連続5回目となるチャンピオン並びにダブルタイトルを獲得した[2]。メルセデスは1999年から2004年にかけてコンストラクター6連覇を経験しているフェラーリ勢の連覇記録まであと1に迫った。
一方でバルテリ・ボッタスの扱いを巡り、チームに対する批判も存在した。ここ数年タイトル争いが不利な状況でない限り、メルセデスはドライバーのレースを優先する姿勢を重視[3][4]する方針を取っていたが、第9戦オーストリアGPのダブルリタイア以降、ボッタスのセカンドドライバー扱いを明確化した[5]。第16戦ロシアGPでのチームオーダー発令に対しては、ボッタスから勝利を譲られる形となったハミルトン自身も批判的であった[6]。
フェラーリは、今季唯一全てのレースで入賞を果たしたマシンの好調やキミ・ライコネンの5年振りの優勝など明るいニュースもあったが、前年同様にシーズン後半で失速し、ドライバーズとコンストラクターズ部門共にチャンピオンを逃す結果となった。
ドライバー面でいえばミスらしいミスをしなかったハミルトンに対し、ベッテルはスピンや接触など度重なるミスを犯した。特に第11戦ドイツGPでの首位走行中からのリタイアを筆頭にそれがなければ得られたであろうポイント[7]は結果的にタイトル争いに大きな影響を与えた。また、ベッテルのミスについては、1996年王者デイモン・ヒルが「ベッテルはプレッシャーにさらされておかしくなってしまったのではないか」[8]と擁護した声もあったが、内容は違えど「ミスをなくさない限りハミルトンに勝てない」という厳しいコメント[8][9]が多く、勝てないベッテルに批判が集中した。
2016年王者のニコ・ロズベルグはベッテルに対し、「これほど多くのミスを犯しては、ルイス・ハミルトンを倒すことはできないよ」と指摘[8]した一方で「フェラーリはあまりに多くの戦略ミスを犯し、チームのまとまりもなかった」とも指摘。2014年、2015年とかつてチームメイトだったハミルトンに打ち負かされた経験から、ミスを繰り返したベッテルには”自信を取り戻す”[10]、チームには“詰めの甘さ”を克服する事がタイトル奪還のカギであるとコメントした[11]。
上記2チームに唯一対抗できる存在であったレッドブルは、この年もPU供給における問題を抱えながら参戦する状況もあって成績が安定せず、ルノー製PUの戦闘力や信頼性不足、両ドライバーの同士討ちなどのポイントの取りこぼしやレースパフォーマンスに苦しみ、ダニエル・リカルドとマックス・フェルスタッペンが共に2勝を挙げたもののコンストラクターズ選手権3位でシーズンを終えた。フェルスタッペンは序盤に見られた走りの荒さを修正して終盤戦にはメキシコGPでの優勝を含む5戦連続表彰台を獲得するなど更なる成長を見せ、ハミルトンやフェラーリ勢に次ぐドライバーズランキング4位でシーズンを終えた。
レッドブルはここ数年来PU供給元であったルノーとの関係が悪化していたこともあり、この年からジュニアチームのトロ・ロッソに供給を開始したホンダ製PUのパフォーマンスや信頼性の向上を評価し、6月19日にホンダと2019年から2年間のパワーユニット供給契約を結んだ。ホンダはトロ・ロッソにも引き続きPU供給を行い[12]、第4期活動としては初めて2チーム供給となる。
この年も上位3チーム(メルセデス、フェラーリ、レッドブル)とそれ以下のチームとの戦力差の大きさは顕著であり、上位勢は「3強」「トップ3」などと称された一方、それ以外の中団グループは時に「Bグループ」「Bリーグ」などと称された。中団グループの間では事実上の最上位であるコンストラクターズ4位・ドライバーズ(ランキングおよび各レース予選・決勝の)7位(8位)[13]の通称「ベスト・オブ・ザ・レスト」[14]を争う戦いが繰り広げられた。
中団グループの中でルノー、ハース、フォース・インディアが抜きん出ており、この3チームが「ベスト・オブ・ザ・レスト」を争う展開となった。ルノーはこの3チームの中で純粋な速さは一歩劣ったものの安定して入賞を重ねたためコンストラクターズ4位を獲得。ハースはシーズン前テストの結果から速さが期待されていたものの、チームのピット作業ミスやドライバーの危険走行によるペナルティなどに見舞われたことが影響した。フォース・インディアはコンストラクターズポイント剥奪によってランキングは大きく下がったものの(後述)、一発の速さを見せルノー・ハースと対等に戦い、来年以降に期待を残した。そしてドライバーズランキング7位はこの3チームそれぞれのドライバーであるニコ・ヒュルケンベルグ(ルノー)、ケビン・マグヌッセン(ハース)、セルジオ・ペレス(フォース・インディア)の3人が最終戦まで争ったが、僅差でヒュルケンベルグが7位を獲得した。
これに対し、中団グループによる4位争いになかなか絡めなかったのがマクラーレン、トロ・ロッソ、ザウバーの3チームであり、この中で前年最下位だったザウバーはアルファロメオの支援を得たことによりレースパフォーマンスが大幅に向上、新人であるシャルル・ルクレールの活躍も相まって度々のQ3進出や入賞を果たした。
ウィリアムズは唯一この中団グループから大きく引き離された。前年をもって引退したベテランのフェリペ・マッサの後任について多くのドライバーがシートを争っていたが[15]、1月16日にセルゲイ・シロトキンがレギュラードライバー、2010年までF1に参戦していたロバート・クビサがリザーブドライバーとしてそれぞれ起用されることが発表された。前年デビューのランス・ストロールによる入賞によりノーポイントは免れたが、コンストラクターズランキング最下位でシーズンを終えた。
なおマッサの引退により、1970年のエマーソン・フィッティパルディから続いていたブラジル人F1ドライバーがこの年は不在となった[16]。
度重なる成績不振や信頼性不足によりマクラーレン・ホンダは2017年をもって関係を解消。前年にマクラーレンは今年からルノーと3年間のパワーユニット供給契約を結び、ホンダはルノーを手放したトロ・ロッソへとパワーユニット供給先を変更するというルノー(とカルロス・サインツJr.)を巻き込んだ事実上のパワーユニット交換が行われた[17]ことで、今シーズンはこの2チームのパフォーマンスに注目が集まった。
開幕前テストではトロ・ロッソ・ホンダがチーム史上最高の周回数を記録し信頼性向上を見せる一方、マクラーレン・ルノーはマシントラブルを繰り返し不安が残った。迎えた開幕戦オーストラリアグランプリではマクラーレンはダブル入賞、トロ・ロッソはピエール・ガスリーがリタイア・ブレンドン・ハートレイが15位と明暗分かれる結果となった。
トロ・ロッソはその後、第2戦バーレーングランプリでガスリーが予選6位・決勝4位、第17戦日本グランプリでは予選Q3に両者進出するなど時折光る走りを見せるも、年間を通してパフォーマンスが安定しなかった他、テクニカルディレクターのジェームス・キーの離脱で開発が停滞。ランキングは前年の7位から9位に転落することとなった。ホンダPUはパフォーマンスでは目立った結果は残せたとは言えないが、信頼性の向上やチームへのサポートが評価され、翌期のレッドブルに採用されることとなった。
一方のマクラーレンは、フェルナンド・アロンソが開幕から5連続入賞を果たし、ホンダPU時代には考えられない安定した成績を残すも、同じルノーPUを積むレッドブル及びルノーと比較するとレースパフォーマンスに劣っており、早々に翌年のマシン開発に専念することとなった。チームも体制の刷新に動きチーム代表のエリック・ブーリエが退任、さらにはアロンソの引退も発表された。期待された結果を残せたとは言えないものの、ランキング6位は前年と比較すれば大きく上回る結果であり、翌2019年の躍進につながることとなる。
フォース・インディアは直近で2年連続4位と成績自体は好調であったが、2014年頃から続いていた財政難が今年から分配金の前借りが出来なくなったことを受けて一気に深刻化。ついにハンガリーGP後にレギュラードライバーであり債権者の1人でもあったペレスは、400名ものスタッフの雇用を守りながらチームの活動を継続するため、自らの手で破産申請を行った[18]。その後チームはウィリアムズ所属のランス・ストロールの父親であるローレンス・ストロールが率いるコンソーシアムが買収[19]。国籍をインドからイギリスに変更、チーム名を「レーシング・ポイント・フォース・インディア・F1チーム」と改名。これによって長年悩まされた財政難は解消されたが、このチーム譲渡は「新チームのエントリー」とみなされたことによりハンガリーGP以前のコンストラクターズポイントは無効、ドライバー(ペレス、オコン)のポイントのみ有効とされた。シーズン終了後、チーム名をレーシング・ポイントに改称した。
サマーブレイクを迎えた頃、ドライバー市場の動きも活発化して多くのドライバーの去就が注目を浴びたが、今年は多くの移籍が発生した。特に優勝を狙える3強チームのうち、メルセデスは早々にハミルトンとボッタスの続投を発表。フェラーリはベッテル、レッドブルはフェルスタッペンの契約が残っているため3強のシートで確定していないのは2席であった。
その確定していない1人であったリカルドはサマーブレイクまでレッドブル残留が確定的と報じられていたが[20]、来季よりルノーと2年契約を結んだことを正式に発表して衝撃を与えた。チームメイトはニコ・ヒュルケンベルグ[21]。これによりルノーは契約の残るヒュルケンベルグとリカルドで確定、トロ・ロッソから1年間のレンタル移籍となっていたサインツが押し出されたため古巣へ戻る形でレッドブルへ昇格する報道もあったが、マクラーレンのアロンソが8月14日に引退を発表、サインツはその後任として迎えられることによりレッドブルとの関係を終えた[22]。結果、リカルドの後任にはトロ・ロッソのガスリーがデビュー2年目にして抜擢され[23]、そのガスリーの後任はレッドブル・ジュニアチームにライセンスポイントの条件を満たせるドライバーが不在ということもあり、前年途中でトロ・ロッソから解雇され、フェラーリの開発ドライバーに転身していたダニール・クビアトの再起用が決定[24]。トロ・ロッソのもう1席は前述の影響でブレンドン・ハートレイの続投という見方もあったものの、特筆すべき成績を残せていなかった事もあり、シーズン中から解雇の噂が絶えず、その過程で多数の候補者の名前が挙がった末、アレクサンダー・アルボンの起用が決定[25]。これによりハートレイは1年でシートを失い、そのままF1を去るかと思われたが、マシンの開発能力が評価され、フェラーリが2019年の開発ドライバーとして起用したことを発表。結果的にクビアトと入れ替わる形となった。
フェラーリのもう1席は、ライコネンがこの年は5年振りの優勝などベッテルやメルセデス勢を脅かすほどの活躍を見せた。その一方でフェラーリ・ドライバー・アカデミー(FDA)に在籍し同年ザウバーからデビュー後に評価を上げたシャルル・ルクレールに来季のシートを明け渡す、との報道が流れ始めたのに対しライコネンは実質ノーコメントを貫いていた。そんな中、ルクレール起用の最先鋒だった会長のセルジオ・マルキオンネが急逝。一旦はライコネンのフェラーリ残留の見方が有力となったが[26]、生前のマルキオンネが締結したと言うルクレールとの仮契約の一件や彼自身の年齢の観点からライコネン引退説[27]までもが流れる。発表予定日から遅れて9月11日にフェラーリはルクレールとの契約を正式発表。それに合わせ、ザウバーがライコネンの契約を正式発表[28]された。ただしライコネン曰く、フェラーリ放出決定後にザウバーとの交渉を開始し[29]、2020年までの2年契約が成立したことによるもので、双方のシートがトレードという形となったのはあくまで結果論と語っている。この余波を受けたのがザウバーのマーカス・エリクソンで、これまでエリクソンはスポンサーとの強固な関係を生かして来季も残留確定と見られていたが、アルファロメオとフェラーリの繋がりからザウバーのレギュラードライバー2人のうち1人をフェラーリが指名できるとされており(ライコネンはフェラーリ放出が決まった直後にザウバーが独自に契約した)、その枠にFDA所属のアントニオ・ジョビナッツィを起用したため、リザーブドライバーに降格となった。
フォース・インディアは当初2名とも残留が有力視されていたが、チームの買収元がランス・ストロールの父親率いるコンソーシアムだったためストロールの移籍が早々と確実視されたほか、チーム消滅の危機から救ったペレスも残留が確定的であったため、バックアップの薄いオコンは他チームへの移籍を狙うこととなるが、支援元であるメルセデスを始めほとんどのシートが埋まっていたほか、オコン自身がメルセデス育成ドライバーという点が障害となって移籍先が見つからず、次年度はメルセデスのリザーブドライバーとなった。
ウィリアムズはストロールが上記の理由でチームを去る事が確定的となったため、その後任が誰になるか注目を浴びた。その中でリザーブドライバーを務めるクビサの復帰が何度も噂されたが、ウィリアムズが最初に契約を発表したのはメルセデス育成ドライバーのジョージ・ラッセルであった。そしてシーズン終盤になりシロトキンに代わってクビサの起用が発表され、2010年以来となる9年振りのF1復帰が決まったことから、シロトキンは1年でF1を去ることになった。
8月14日、2005年・2006年王者のフェルナンド・アロンソが2019年のF1世界選手権に参加しないことを表明[30]。ただ、完全にやめると宣言したわけではなく、あくまで2019年の参戦をしないことを明言しただけにとどまった。とはいえ、2000年代前半にデビューしたドライバーは同期デビューのライコネンを残すのみとなった。アロンソは本年のル・マン24時間レースで優勝し、世界三大レースのうちモナコグランプリとル・マンの2つを制した[31]。なお、アロンソは2021年にF1に復帰した。
前年度チャンピオンのルイス・ハミルトンはカーナンバー「44」を継続して使用するため、4年連続でカーナンバー「1」が不在のシーズンとなる[52]。
2017年6月19日、FIA世界モータースポーツ評議会において暫定的な年間スケジュールが発表され[93]、その後12月7日に下記の修正を反映した正式な年間スケジュールが発表された[94]。前年より開催枠が1つ増え、歴代最多タイとなる全21戦でシーズンが進行する。
上位10台には以下のポイントが加算される。
(略号と色の意味はこちらを参照)
ポイントシステムおよび以下の書式はドライバー部門と同一である。
ペナルティポイントが12ポイントに達すると1戦出場停止。ポイントは12ヶ月間有効となる。
かつて他ドライバーが使用していたカーナンバーで、このシーズンから新たに使用できるカーナンバーは以下。
フォーミュラ1が自ら、インターネット配信サービス「F1 TV」の提供をスタートさせた[34]。対応言語は英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の4つで、配信対象国はドイツ、フランス、アメリカ、メキシコ、ベルギー、オーストリア、ハンガリー、およびラテンアメリカ各国となっており、日本を含むアジア地域は含まれていない[144]。
本年もCS放送のフジテレビNEXTで全戦生中継を行う。スカパー!(スカパー!オンデマンド)、J:COM(J:COMオンデマンド)、ひかりTVのいずれかでフジテレビNEXTに加入すると、インターネットでの視聴も可能となる。前年に引き続き、日本GPの決勝のみ翌日にBSフジで録画放送された。
インターネット配信サービス「DAZN」でも引き続き全戦生中継を行う。レース終了後から次のレースが始まるまで見逃し配信で視聴することができる[145]。
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